9 / 17
白薔薇学園ゲーム
転校生
しおりを挟む
男子校には姫と呼ばれる存在がいる。むさ苦しい男子だけの生活の中で、唯一のオアシス的な立ち位置になるのがその姫的存在だ。可愛らしい、綺麗、色々要素はあるにしろ、転校生である徳永玲は、その姫ポジションを直ぐに与えられた。
一方で冬馬はクラスメイトになった徳永玲を遠くからチラチラ観察していた。
妄想姉の作った主人公徳永玲は、華奢で可愛らしい男子生徒だった。目の前の徳永玲はどう考えても主人公そのものだ。と言う事は、これから大和や、花柳先輩と京極先輩らと徳永玲が近づくのだろうか?…真琴にも?
冬馬はここはゲーム通りになってホッとするところだと思うのに、なぜかモヤモヤしていた。距離を取った彼らが徳永玲とどうなろうと自分には関係がないのに。
とは言え真琴が徳永と距離を詰めるのは何だか気に入らない。それとも真琴は隠れキャラだから徳永に気づかれないかもしれない。
「あの、藤原君だよね?君って顔が広いって聞いたんだけど、生徒会にも所属しているの?」
休み時間に机の側に近寄って来た徳永に、いきなりそんな風に声を掛けられて、冬馬は一瞬口籠った。それから気を取り直して微笑んだ。
「あー、所属してるって言うか、以前助っ人してたけどね。もうやってないよ。何?生徒会に入りたいの?」
すると恥ずかしそうに俯いた徳永は、首を振って言った。
「そう言う訳じゃないけど…。僕花柳先輩のファンなんだ。花柳先輩が生徒会長だって聞いて、何か役に立ちたいって思っただけだよ。」
実際に話してみても庇護欲の湧くタイプだと冷静に分析しながら、冬馬は今助っ人をしている生徒の名前を教えた。
「そいつに頼んで連れて行って貰ったら?結構忙しいから助っ人は何人居てもいいだろうし。」
冬馬がそうアドバイスすると、輝く様な笑顔を見せて徳永は礼を言って席に戻って行った。きっと近いうちに徳永が生徒会に出入りする様になるだろう。そしてラブラブゲージを積み重ねてあの中の誰かと恋人になるのかもしれない。
冬馬は自分から彼らと距離を取ったくせして、あの居心地の良い生徒会室が徳永に侵略されることに何だか嫌な気がした。そんな風に思うなんて随分自分勝手だけど。
だから廊下を歩いている時に、京極先輩に捕まった時にあんな態度を取ってしまったのかもしれない。
「冬馬、ちょっと時間あるか?」
いつも誰かしら取り巻きが一緒の京極先輩は珍しく一人で、変わらず愛想の無い表情で冬馬に話しかけて来た。人によっては冷たく感じるだろうその眼鏡の奥の瞳は、見かけだけなのを冬馬は知っていた。
京極先輩に連れられて行ったのは非常階段の奥で、何か他人にきかれてはいけない事でも話すのだろうかと、落ち着かない気持ちで冬馬は周囲を見回した。
「冬馬が俺たちと距離取ってるのはどんな理由なんだ?」
ズバリ核心をつく京極先輩の言葉に、無駄なことが嫌いな先輩らしさが滲み出ていて、冬馬は思わず微笑んだ。しばらく先輩と距離を取っていたせいで何だか懐かしい。
「…冬馬は変わったな。そんな風に笑うような奴だったか?」
ハッとして京極先輩と目を合わせると、先輩はツイと目を逸らした。
「冬馬が俺たちと関わり合うのが嫌になったのは何か理由があるのか?別にもう一度生徒会の仕事をさせたいとかそう言う事じゃないんだが、当たり前だった存在が居ないってのは結構寂しいものなんだ。」
京極先輩からそんな感情めいた事を言われて、冬馬は目を見開いた。正直自分の存在価値を認めてもらえた気がして嬉しかった。何と言っても、京極先輩はこの学園一出来る男には違いないのだから。
「…ありがとうございます。京極先輩が僕のことを買い被っているとしても、そんな風に言ってもらえて嬉しいです。俺が…。理由は言えませんけど、別に皆の事が嫌いになったとかそう言う事じゃないんです。
俺には相応しくないって言うか。もっと適正な人間があそこには必要だと思っただけです。」
そこまで言った時、少し怒りを滲ませた表情の京極先輩が、校舎の壁際にいた冬馬を追い詰めた。壁ドンされた冬馬は顔を上げて、仄暗い京極先輩の瞳を見上げた。
「…必要かどうかをお前が決めるのか?随分生意気だな、冬馬。適正じゃないか…。そうだな、そうかもしれないな。お前が来なくなったせいで、俺はお前の価値を改めて認識した。
…お前は生徒会にはもう相応しくない。」
京極先輩が冷たい口調でそう呟くので、冬馬は少なからずショックを受けて、悲しみで顔が強張るのを感じた。
「こうしてそんな顔の冬馬を目の前にすると、前より甘やかしてグズグズにしたくなるからな。側に置いておくと仕事にならないだろう?」
先輩はそう言って、怒った様な顔のまま冬馬を見つめた。予想もつかないその言葉に、冬馬は目を見開いて京極先輩の顔を見つめた。心臓が不規則に打つのを感じる。
…もしかして、口説かれてる?
一方で冬馬はクラスメイトになった徳永玲を遠くからチラチラ観察していた。
妄想姉の作った主人公徳永玲は、華奢で可愛らしい男子生徒だった。目の前の徳永玲はどう考えても主人公そのものだ。と言う事は、これから大和や、花柳先輩と京極先輩らと徳永玲が近づくのだろうか?…真琴にも?
冬馬はここはゲーム通りになってホッとするところだと思うのに、なぜかモヤモヤしていた。距離を取った彼らが徳永玲とどうなろうと自分には関係がないのに。
とは言え真琴が徳永と距離を詰めるのは何だか気に入らない。それとも真琴は隠れキャラだから徳永に気づかれないかもしれない。
「あの、藤原君だよね?君って顔が広いって聞いたんだけど、生徒会にも所属しているの?」
休み時間に机の側に近寄って来た徳永に、いきなりそんな風に声を掛けられて、冬馬は一瞬口籠った。それから気を取り直して微笑んだ。
「あー、所属してるって言うか、以前助っ人してたけどね。もうやってないよ。何?生徒会に入りたいの?」
すると恥ずかしそうに俯いた徳永は、首を振って言った。
「そう言う訳じゃないけど…。僕花柳先輩のファンなんだ。花柳先輩が生徒会長だって聞いて、何か役に立ちたいって思っただけだよ。」
実際に話してみても庇護欲の湧くタイプだと冷静に分析しながら、冬馬は今助っ人をしている生徒の名前を教えた。
「そいつに頼んで連れて行って貰ったら?結構忙しいから助っ人は何人居てもいいだろうし。」
冬馬がそうアドバイスすると、輝く様な笑顔を見せて徳永は礼を言って席に戻って行った。きっと近いうちに徳永が生徒会に出入りする様になるだろう。そしてラブラブゲージを積み重ねてあの中の誰かと恋人になるのかもしれない。
冬馬は自分から彼らと距離を取ったくせして、あの居心地の良い生徒会室が徳永に侵略されることに何だか嫌な気がした。そんな風に思うなんて随分自分勝手だけど。
だから廊下を歩いている時に、京極先輩に捕まった時にあんな態度を取ってしまったのかもしれない。
「冬馬、ちょっと時間あるか?」
いつも誰かしら取り巻きが一緒の京極先輩は珍しく一人で、変わらず愛想の無い表情で冬馬に話しかけて来た。人によっては冷たく感じるだろうその眼鏡の奥の瞳は、見かけだけなのを冬馬は知っていた。
京極先輩に連れられて行ったのは非常階段の奥で、何か他人にきかれてはいけない事でも話すのだろうかと、落ち着かない気持ちで冬馬は周囲を見回した。
「冬馬が俺たちと距離取ってるのはどんな理由なんだ?」
ズバリ核心をつく京極先輩の言葉に、無駄なことが嫌いな先輩らしさが滲み出ていて、冬馬は思わず微笑んだ。しばらく先輩と距離を取っていたせいで何だか懐かしい。
「…冬馬は変わったな。そんな風に笑うような奴だったか?」
ハッとして京極先輩と目を合わせると、先輩はツイと目を逸らした。
「冬馬が俺たちと関わり合うのが嫌になったのは何か理由があるのか?別にもう一度生徒会の仕事をさせたいとかそう言う事じゃないんだが、当たり前だった存在が居ないってのは結構寂しいものなんだ。」
京極先輩からそんな感情めいた事を言われて、冬馬は目を見開いた。正直自分の存在価値を認めてもらえた気がして嬉しかった。何と言っても、京極先輩はこの学園一出来る男には違いないのだから。
「…ありがとうございます。京極先輩が僕のことを買い被っているとしても、そんな風に言ってもらえて嬉しいです。俺が…。理由は言えませんけど、別に皆の事が嫌いになったとかそう言う事じゃないんです。
俺には相応しくないって言うか。もっと適正な人間があそこには必要だと思っただけです。」
そこまで言った時、少し怒りを滲ませた表情の京極先輩が、校舎の壁際にいた冬馬を追い詰めた。壁ドンされた冬馬は顔を上げて、仄暗い京極先輩の瞳を見上げた。
「…必要かどうかをお前が決めるのか?随分生意気だな、冬馬。適正じゃないか…。そうだな、そうかもしれないな。お前が来なくなったせいで、俺はお前の価値を改めて認識した。
…お前は生徒会にはもう相応しくない。」
京極先輩が冷たい口調でそう呟くので、冬馬は少なからずショックを受けて、悲しみで顔が強張るのを感じた。
「こうしてそんな顔の冬馬を目の前にすると、前より甘やかしてグズグズにしたくなるからな。側に置いておくと仕事にならないだろう?」
先輩はそう言って、怒った様な顔のまま冬馬を見つめた。予想もつかないその言葉に、冬馬は目を見開いて京極先輩の顔を見つめた。心臓が不規則に打つのを感じる。
…もしかして、口説かれてる?
312
お気に入りに追加
390
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる