助けた竜がお礼に来ました

コプラ

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マッチョな友達とお出掛け

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「シャノン、明日湖の方へ出掛けないか?」

そう話しかけて来たのは、最近仲良くしているカインだ。カインは一見マッチョ兄貴っぽいけど、中身は繊細な男だ。何年も前から好きな相手が居るらしくて、モテモテなのに、女の子には見向きもしない。硬派で一途な男だ。

一度誰に片想いしてるのか聞いた事がある。カインはそっぽを向いて床を見つめながら言った。

「相手は僕が恋してる事を知らないんだ。2年前に一目惚れしたんだけど、家族が大事にしてたから全然近寄れなくて。でもきっといつか僕のことに気づいてくれると信じてる。」

そう、真剣な横顔で告白したカインを僕は正直ちょっと怖いなと思った。前世で言うと、それってちょっとストーカーっぽいよね?僕はふーんと気のない返事をして、上手くいくとイイねと当たり障りない返事をした記憶がある。


なんでそんな事を思い出したかと言うと、うん、今僕は貞操の危機なんだ。

湖は綺麗で静かだったけれど、湖に行こうって言ってた他のメンバーは急な予定が入っちゃって、結局僕とカインだけでやって来た。二人きりだからって行かないとも言えず、僕は友達を信用しないなんてダメだぞと自分に言い聞かせながら、今ここに至る。

カインは後ろから僕に抱きつくと言った。

「シャノン、僕が2年前から恋してるのは君なんだ。僕の気持ちを受け止めてくれないか?」

僕はびっくりするのと同時に、怖くなった。良く知ってるはずのカインが何だか全然知らない人に思えて来た。
だって許可もなく抱きつくとか怖いじゃん。キャッ素敵って、細マッチョ女子なら思うのかもしれないけど、僕はそうゆうのがダメで人付き合いを避けて来た過去があるのに…。


僕はやんわり腕を振り解くと、カインの顔を見て言った。

「あ、あのね、僕カインの事は友達として好きだよ。でも、恋愛感情的にはどうだろう。僕まだ人を好きになった事がないから…。」

カインは僕を怖いくらい真っ直ぐに見つめて言った。

「僕はずっとシャノンしか見てないんだ。だからシャノンも僕のこと好きになって欲しい。」

そう言うと僕をグッと抱きしめてキスしてきた。僕は無理矢理キスして来たのにムカついてカインを突き飛ばした。


「やめろよ!無理矢理にキスするなんて!」

カインは酷く傷ついた顔を一瞬したけれど、急にオスのような欲望を滲ませた顔で言った。

「シャノンが他の人のものになるくらいなら、俺は嫌われたってシャノンを自分のものにするっ。好きなんだ!」

そう言うと、僕を押し倒した。僕はしばらく抵抗していたけど、マッチョカインには力では全然敵わなかった。
僕はここでやられちゃうんだと自分を憐れに思って、多分諦め始めていた。


カインが僕の首筋に口づけ始めたので、僕が身を硬くして横を向いた時、数メートル先にあの青い目の竜がいた。僕が知ってるより随分大きくなってたけれど、あの目はぽっちゃり竜の目だ。

僕は竜に手を伸ばして囁いた。

「…助けて。」

次の瞬間、竜はぶっとい尻尾でカインを文字通り弾き飛ばした。
カインはゴロゴロと転がって、呻いていた。そしてこちらを見ると、酷くびっくりした顔をした。


僕はフラつきながら立ち上がると竜の首に抱きついた。そしてカインを見下ろしながら言った。

「もう僕に構わないで。僕は無理強いする様なやつは好きじゃない。友達としては好きだったのに…、残念だよ、カイン。」

カインは顔を酷く歪めて苦しそうな表情を浮かべた後、よろめきながら立ち上がって歩き去った。
僕はカインを複雑な感情で見送ると、青い目の竜に向き直った。


「…助けてくれてありがとう、僕のかわいい竜さん。久しぶりだね。別れてから一年も経ってないのに、とても大きくなったんだね。僕の方が小さくなっちゃった。もう君の事抱っこ出来ないし、…僕のお家にも入れないね。」

僕は今のショックな出来事と竜に会った嬉しさで、感情がぐちゃぐちゃになってしまっていた。
大好きな竜の匂いに包まれて、僕はシクシク涙がこぼれて止まらなくなってしまった。

ふと僕は、誰かに抱き抱えられてる事に気づいた。僕は竜に抱きついてたのに、知らない人に抱きしめられていた。
僕はゆっくりと手を突っ張らせて距離を取ると、恐る恐る僕を抱きしめていた人を見上げた。


「…誰ですか?」

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