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激闘 編

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西暦2021年 利礼《りれい》参年 3月

世界魔術士協会 日本支部 東京


「局長!大変です!」

ドアを開けて、1人の女性が入って来るなり声も大きく局長に告げる。

「どうした?」

「時空振動を予見感知しました!」

「何をそんなに・・・。」

慌てている。いつもの事だろう。

と言いかけた局長の言葉を遮って。

「規模が違いますっ!

 ほぼ日本国内での全域で! 各都道府県の全ての場所で時空振動を予見感知しました!

しかも! そのほとんどが、中規模以上の次元の亀裂規模です!」

「なんだとっ!?」

「日本の主要都市の、札幌、名古屋、大阪、博多。ではランク4以上が想定。

東京に至っては、東京五区すべてランク4以上の規模です!

 ランク4以上の亀裂の出現時間までの最短時間は38時間です!」

「バカな! ランク4以上が複数同時出現だと!?

 即刻。協会全支部に連絡を入れて、救援要請を!

その後に、日本各地に緊急霊的避難警告を国に要請!

 同時進行で。 各五天たちにも連絡を入れて日本に収集を!」

「了解しましたっ!」

「いったい。 なにが起こったんだ・・・。」


 * * * * * * *


「オン マリシエイ ソワカ。」

印を結びながら真言を唱え。 符に呪を込めて霊符が出来上がる。

「へえ。陰陽道の符って、そう言う風にして作るのか。」

十花とうかの作業を見て、芳乃よしのが感心したように言う。

「戦場で、呪印なんて結べる訳ないしな。

 早九字の印を結ぶだけでも、どんなに熟練した陰陽師でも5秒はかかるし。

九字を唱えるだけでも2秒だ。

 ましてや、呪力を込めるのを戦いの最中に出来るもんじゃないさ。」

「ははは・・・。」

乾いた笑いで返す芳乃よしの

実戦で経験しただけあって、苺花まいかの言ってる事が判るのだ。

5秒あれば、10メートルは距離を詰められ攻撃されて。

2秒あれば、2~3回は武器を振るう事が出来る。

「いま作ったのは?」

孔雀くじゃく明王の能力ちからを模した浄化の符です。」

「孔雀明王?」

「あらゆる毒素と不浄を浄化すると言われている明王です。」

十花とうかが言う。

不動ふどう明王とか?」

「そうだな。 不動明王は炎の術式を使う時に良く用いられるな。

 ノウマク サンマンダ バザラダン カン。

 聞いたことないか?」

「ああ、漫画とかアニメとかで良く言ってるやつね。」

「不動真言は有名だからなあ。」

「俺でも知ってるくらいだし。」

不動ふどう明王。降三世こうさんぜ明王。

軍荼利ぐんだり明王。大威徳だいいとく明王。金剛夜叉こんごうやしゃ明王。

と、言う五明王を合わせて五大明王と呼ばれています。」

「不動明王は知ってるが。 他のは分からないな。」

「そうだろうね。 他にも薬師十二神将とか。

宮毘羅くびら伐折羅ばさら迷企羅めきら安底羅あんちら

頞儞羅あにら珊底羅さんちら因達羅いんだら波夷羅はいら

摩虎羅まこら真達羅しんだら招杜羅しょうとら毘羯羅びから

って神将がいるんだけどな。

 正直、十二神将も明王扱いにも為って居るし。

孔雀明王って、かなりマイナーな明王様だしな。

 あっ!そうそう。 因達羅いんだらなんて。国外での雷帝インドラと同一視されているからな。

不動明王が、大天使ミカエルだって説も在るぞ。」

「割とカオスだな。」

芳乃よしのが苦笑して言う。

「ノウマク サラバタタギャテイビャク サラバボッケイビャク

 サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ サラバビギナン ウンタラタ カンマン。」

再び、十花とうかの真言を唱える声が聞こえた。

「長い真言だな・・・。」

良く舌をかまずに言えると感心する芳乃よしの

「不動真言 火界咒かかいしゅ

 範囲攻撃の時に使う術式だよ。」

「ああ!」

十花とうかが良く使う、炎の範囲攻撃を思い出す。

「確かに、あんな長い真言を戦ってる最中には唱えられないな。」

「だろ。 先に符にしておけば、後は術式開放のキーワードと範囲を指定するだけで済むからな。

 ま、うっかり範囲指定を間違うと、魔力をゴッソリ持って行かれて、その場で昏倒なんて事も在るけどな。」
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