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動乱 編
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その日の晩。 身内だけの小さな宴会が行われた。
喜一と鳴海は、兄弟同然に育った苺花の事を心の底から祝った。
十花も、少し複雑そうな表情ではあったが、姉として慕ってきたのだ。嬉しくないはずはない。
散々、苺花の事を頼むと連呼され、漸く喜一と鳴海から解放されて。
いまは酔いを醒ますべく、少し離れた縁側で一息ついていた。
「ふう。」
大きく息を吐き出して、部屋の中に視線を向けると。
喜一と鳴海が、苺花を捕まえて絡んでいる。
嫌そうな態度を取りながらも、何処か嬉しそうな苺花の表情。
「すまんの。 年甲斐も無くはしゃぎおって。」
玄馬が横に来て言う。
「いえ。 愛されている証拠でしょ。」
「ふむ。 時に芳乃君。 申し訳ないが、君の素性を深い所まで調べさせて貰った。」
少し目を細めながら、芳乃の顔を見る玄馬。
「当然ですね。 可愛い娘さんを、どこの馬の骨とも知れない男にやる訳には行かないでしょう。」
「中島君の報告から、兼ねてから気にはなっていた。 何故に、君は命を奪う事に抵抗感が低いのかとね。」
* * * * * * *
当時11歳。
芳乃は人を殺した。
いや、殺したと言うのは適切ではない。
殺してしまった。っと言った方が良いだろう。
芳乃の父親は酷い酒乱で、芳乃の母親は勿論。 芳乃や妹にまで暴力を働く人物だった。
その時も、芳乃と妹を殴る蹴るの行為で傷付け。
普段なら、そこで収まるものの。 なにが気に触ったのかは知らないが、母親に向かって刃物を振りかざした。
母親は、腕と足を切られて、恐怖の余りに動く事さえできなった。
そして、今まさに、母親に向かって、父親の持つ刃物が振り下ろされた瞬間だった。
幼い芳乃は、父親に向かって体当たりをした。
不運にも、父親の持つ刃物は、倒れた拍子に父親の胸に刺さってしまい呆気なく死亡する。
また此処で、母親が芳乃に手を差し伸べておれば話は違った方に向かったのだろう。
母親は、芳乃を責めてしまった。
母親に責められて、怖くなった芳乃は、無意識のうちに母親を突き飛ばしてしまう。
普通なら、子供の力で大人を突き飛ばしても、それほど影響は出ないものだが。
生憎と、母親の方も、目の前で父親が死ぬのを見て腰が抜けた状態だったのが災いして。
芳乃に突き飛ばされて、父親の遺体の上に重なる様に身体を重ねてしまった。
その時に運悪く、父親の胸部から突き出ていた部分が母親の頭部に突き刺さって母親も死亡。
結果的にだが、芳乃は自分の両親を殺してしまう形に。
その結果。 芳乃は施設に。
妹は親戚に引き取られた。
芳乃も妹も、この時に心に深い傷を負った。
妹の方は、成長と共に、少しづつだが過去の事と割り切れるように為っていったが。
芳乃は違った。
表向きには、正常に戻っていったように見えたが。
内面は、誰にも悟られない様に成長を遂げていた。
表向きには、温厚そのものである芳乃だが。
自分が傷つく前に傷付けろ。
それが、芳乃の防衛本能としてだろうか。
自分に害をもたらす者には、容赦の欠片も無く敵対行動をとった。
そう。芳乃は壊れていたのだ。
社会に出て、ある程度は自分でコントロール出来るようになったが。
それでも、自分に敵意を向けられると、押さえきれずに相手にダメージを与えてしまう。
買わないで済む怨みを買うようになる。
そのせいで、何度も転職と移住をする羽目に。
歳を重ねるごとに、マシには為っていったが。 根本は変わっていない。
それが、魔物や妖魔と言った者たちを処理しても忌避感 が少ない理由。
* * * * * * *
「申し訳ないです。」
「なぜ謝るのかな?」
「そりゃ、半分壊れてるような者ですから。」
「なら、儂らも似たようなものじゃろ。 まともな精神なら、とっくの昔にぶっ壊れておるわ。」
「・・・・。」
「すでに、闇側の世界の住人だ。 君らの子も、いずれはな・・・。」
「そうですね。」
「運良くか、運悪くかは分からんが。 苺花と君の子供だ。
間違いなく能力を受け継ぐだろう。 その覚悟だけは、持っておくと良い。」
「肝に銘じておきます。」
喜一と鳴海は、兄弟同然に育った苺花の事を心の底から祝った。
十花も、少し複雑そうな表情ではあったが、姉として慕ってきたのだ。嬉しくないはずはない。
散々、苺花の事を頼むと連呼され、漸く喜一と鳴海から解放されて。
いまは酔いを醒ますべく、少し離れた縁側で一息ついていた。
「ふう。」
大きく息を吐き出して、部屋の中に視線を向けると。
喜一と鳴海が、苺花を捕まえて絡んでいる。
嫌そうな態度を取りながらも、何処か嬉しそうな苺花の表情。
「すまんの。 年甲斐も無くはしゃぎおって。」
玄馬が横に来て言う。
「いえ。 愛されている証拠でしょ。」
「ふむ。 時に芳乃君。 申し訳ないが、君の素性を深い所まで調べさせて貰った。」
少し目を細めながら、芳乃の顔を見る玄馬。
「当然ですね。 可愛い娘さんを、どこの馬の骨とも知れない男にやる訳には行かないでしょう。」
「中島君の報告から、兼ねてから気にはなっていた。 何故に、君は命を奪う事に抵抗感が低いのかとね。」
* * * * * * *
当時11歳。
芳乃は人を殺した。
いや、殺したと言うのは適切ではない。
殺してしまった。っと言った方が良いだろう。
芳乃の父親は酷い酒乱で、芳乃の母親は勿論。 芳乃や妹にまで暴力を働く人物だった。
その時も、芳乃と妹を殴る蹴るの行為で傷付け。
普段なら、そこで収まるものの。 なにが気に触ったのかは知らないが、母親に向かって刃物を振りかざした。
母親は、腕と足を切られて、恐怖の余りに動く事さえできなった。
そして、今まさに、母親に向かって、父親の持つ刃物が振り下ろされた瞬間だった。
幼い芳乃は、父親に向かって体当たりをした。
不運にも、父親の持つ刃物は、倒れた拍子に父親の胸に刺さってしまい呆気なく死亡する。
また此処で、母親が芳乃に手を差し伸べておれば話は違った方に向かったのだろう。
母親は、芳乃を責めてしまった。
母親に責められて、怖くなった芳乃は、無意識のうちに母親を突き飛ばしてしまう。
普通なら、子供の力で大人を突き飛ばしても、それほど影響は出ないものだが。
生憎と、母親の方も、目の前で父親が死ぬのを見て腰が抜けた状態だったのが災いして。
芳乃に突き飛ばされて、父親の遺体の上に重なる様に身体を重ねてしまった。
その時に運悪く、父親の胸部から突き出ていた部分が母親の頭部に突き刺さって母親も死亡。
結果的にだが、芳乃は自分の両親を殺してしまう形に。
その結果。 芳乃は施設に。
妹は親戚に引き取られた。
芳乃も妹も、この時に心に深い傷を負った。
妹の方は、成長と共に、少しづつだが過去の事と割り切れるように為っていったが。
芳乃は違った。
表向きには、正常に戻っていったように見えたが。
内面は、誰にも悟られない様に成長を遂げていた。
表向きには、温厚そのものである芳乃だが。
自分が傷つく前に傷付けろ。
それが、芳乃の防衛本能としてだろうか。
自分に害をもたらす者には、容赦の欠片も無く敵対行動をとった。
そう。芳乃は壊れていたのだ。
社会に出て、ある程度は自分でコントロール出来るようになったが。
それでも、自分に敵意を向けられると、押さえきれずに相手にダメージを与えてしまう。
買わないで済む怨みを買うようになる。
そのせいで、何度も転職と移住をする羽目に。
歳を重ねるごとに、マシには為っていったが。 根本は変わっていない。
それが、魔物や妖魔と言った者たちを処理しても忌避感 が少ない理由。
* * * * * * *
「申し訳ないです。」
「なぜ謝るのかな?」
「そりゃ、半分壊れてるような者ですから。」
「なら、儂らも似たようなものじゃろ。 まともな精神なら、とっくの昔にぶっ壊れておるわ。」
「・・・・。」
「すでに、闇側の世界の住人だ。 君らの子も、いずれはな・・・。」
「そうですね。」
「運良くか、運悪くかは分からんが。 苺花と君の子供だ。
間違いなく能力を受け継ぐだろう。 その覚悟だけは、持っておくと良い。」
「肝に銘じておきます。」
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