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剣姫 編

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「良いんだよ。」

あっさりと言う苺花まいか

レイはと言うと、どうしたら良いのか分からずにオロオロしていた。

「レイ。 悪いけど、少し席を空けて貰って良いか?」

「え? あ。はい。」

そう言うと、レイは天井を抜けて俺の部屋に行く。

俺は、冷蔵庫から秘蔵の酒を取り出してくる。

「飲むか?」

「おっ! 聖海じゃないかっ! 良い趣味してるな。」

「普段は飲まないんだがな。」

「下戸か?」

「そこまでじゃあない。 そこそこは行ける。」

「そっか。 んじゃ、お言葉に甘えて。」

「おう。」

そう言って、コップを差し出してくる苺花まいかにお酌する。

「ほれ、お返し。」

苺花まいかに言われて、俺もコップを差し苺花まいかにお酌返しを。

「「ふう。」」

コップの半分ほどを一気に飲み干して、2人一緒に息を吐き出す。

「ふふ。」

苺花まいかが小さく笑う。

「ん?」

「いや。良いもんだねえ。と思ってさ。」

「そうか?」

「そうさ。」

ポケットからタバコを取り出し。

「吸っても良いか?」

「どうぞ。」

苺花まいかに了承を貰ってタバコに火を点ける。

「ふう。」

息を吐き出す。

煙草の煙が立ちのぼる。

「大好きな、お姉ちゃんを取られたと思ったんだろう。」

「ほんっとに、あの子は・・・。」

「それだけ好かれているんだ。 良い事じゃないか。」

「それじゃあ、駄目なんだ。」

苺花まいかの言葉に、何故?と顔に出てしまう。

「あの子はさ。 姫宮ひめみやを継がなけりゃならない。」

「姫・・・」

苺花まいかで良いよ。」

どっちも姫宮ひめみやなので、どう呼んだら良いのか言葉を詰まらせていると。

苺花まいかから、そう言われた。

「んじゃ、遠慮なく。 苺花まいかが長女なんだろう?」

「ほんと遠慮ないねぇ。 ふつうは〝さん〟付けでしょうに。」

「付けようか?」

「いいよ。 呼び捨ての方が気楽だし。」

「んじゃ。俺の事も、芳乃よしのと呼んでくれ。」

俺の言葉に、苺花まいかは〝ハイハイ分かった〟という風に手を振る。

「アタシは養子なんだ。」

少しの沈黙の後に、苺花《まいか》が唐突に言葉を紡ぐ。

「そうか。」

「それだけ!?」

「突っ込んで欲しいのか?」

「反応が薄いと思っただけだよ。」

「まぁ、50年も生きていればね。」

「大人だねぇ。」

「そりゃ、どうも。」

「なのに、あの子と来たら。 アタシが継げない事が不満なのさ。」

確か、中島君の用意してくれた資料には。

姫宮ひめみやで、最高の実力者は苺花まいかだったな。

現当主の喜一きいちしのぐ実力者で。

その実力は、五天と呼ばれる者たちと並んでいると。

五天とは。

世界魔術士協会での最高峰の実力を持つ者たちの呼び方で。苺花まいかは、その五天とも張り合える実力を持っているらしい。

なのに、苺花まいか剣姫けんひめ

剣姫けんひめとは、舞姫まいひめを護る存在。

舞姫まいひめとは、姫宮ひめみやの血を守っていく存在。

だからだ。 血の繋がっていない苺花まいかでは無くて。

姫宮ひめみやの血を濃く受け継ぐ十花とうかが後を継ぐのは必然。

血を受け継がせるのが陰陽道や、そう言った魔術の力を行使する者たちの能力ちからの根源となる。

苺花まいかは言わば。 一代限りの特殊個体なのだ。

「まぁ、出来過ぎる姉を持った妹の心境は。 正直。 俺には解からん。」

「ふふ。 ほんと、ズケズケと言う人だねえ。」

クイっと残りを飲み干す苺花まいか

「で。 お姉ちゃんとしては?」

苺花まいかのコップに酒を注ぎながら聞く。

「いい加減に、理解して諦めて欲しいと言うか。

アタシじゃ、姫宮ひめみやは継げない。」

「血の濃さが、能力ちからの根源とか、俺には判らん。」

「だろうねぇ。」

「大体。 そろそろ良い年なんだろう?」

俺の言葉に、ギョっとした表情で俺を見る苺花まいか

「アタシの年齢。 載ってた?」

「いんや。 載って無かったよ。」

「アタシ老けた!?」

「最初に会った時は20代半ばくらいと思ってたよ。」

「ならなんで?」

「話し方。雰囲気。それに勘?」

「ぷっ!」

「なに?」

「ほんと。 面白いな。芳乃よしのは。」

「で、実際いくつ?」

「女性に年を聞くかな普通・・・。」

「言いたくないなら別に答えなくても。」

「34。」

「思ったより。 行ってたな・・・。」

「うるへぇ!」

そう言って、苺花まいかが俺に向かって裏拳を放ってくる。

俺は、敢えて、それを顔面で受け止める。

「あっ!?」

まともに裏拳を食らった、俺を見て驚く苺花まいか

「なんで避けないんだよ!」

「ん。まぁ、女性に失礼な発言すいぃた御詫びふぁ。」

鼻を押さえながら言うので発音が狂う。
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