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1周年記念アップデート 3

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「・・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「えっと? どうかしたのかしら?」


ドアを開けて、ハウスの中に入れて貰い、椅子に座る女性プレイヤーと視線が合って固まる俺(イクル)と、椅子に座って俺を見ている女性プレイヤー(水無月)。

アップデート完了後。

俺(イクル)は仕事の都合で、3時間ほど遅れてUSOにログインする。

首都フィーアで、菩提山ぼだいやまさんことラクスと合流。

そこから、記録石ルーンストーンを分けて貰い、ラクスさんたちのハウスに飛ぶ。

ハウスに入り、見知った顔のプレイヤーが1人、椅子に座ってお茶を飲んでいた。

そして、今の現状。

「先生!」

猛烈な勢いで、椅子を倒しながら立ち上がり、俺に向かって突進してくる水無月。

思わず条件反射で、水無月の突進を躱しながら、背中に手を当てて押してしまう。

自分の突進力と、俺に背中を押されたことで。

水無月はそのままの勢いで、体制を崩しながら加速してハウスの入り口の壁に、それはそれは良い音を立てながらブチ当たった・・・生命力(HP)ゲージが僅かに減る。

「先生いぃぃ!」

恨めしそうな表情で、水無月が俺を見る。

因みにだが。

水無月の生命力(HP)ゲージは減ったが。

今の場合は、水無月の勢いを加速させただけなので、俺自身には犯罪者(攻撃者)フラグは立っていない。

なので、ネームプレートは灰色には為らずに白色のままだ。

興奮収まらぬ水無月を、無理やり席に座らせて、俺はラクスとのいきさつを水無月に説明する。

「・・・・・・と、言う訳で。

俺と先生の娘さんが、当面の間ラクスさんのUSO内での行動を見ると言う事だ。」

病院での出来事を、簡単に水無月に説明をする。

「はい!先生!」

水無月が手を挙げて言う。

「ん?」

「先生のハウスに行きたいです!」

ラクスを見ると、彼女はクスクスと笑っていた。


 * * * * * * *


「・・・・・」

自分のハウス前に転移門ゲートを出して、転移門ゲートを出た所で固まるイクル。

「凄い人ですね・・・。」

ラクスが言う。

「いつも、こんな感じですか?」

水無月。

「んな訳ないだろう。」

そう。 イクルのハウスの前には、かなりの数のプレイヤー達が出入りしていたのだ。

確かに、イクルのハウスの1階と2階は解放してあり、買い物に来るプレイヤー達で賑わう時もあるのだが。

今の状況は、明らかに普段とは違いプレイヤーの数が多すぎるのだ。

人ごみを掻き分けながら、ラクスと水無月とはぐれない様にハウス内に入り。

2階の昇降機で3階に上がり応接室に入る。

「おっ、帰って来たか。」

応接室の中に入ると、キョウが声を掛けてきた。

「キョウさん! お久しぶりです!」

近づいてきたキョウに向かって、水無月がお辞儀をする。

「おっ! 久しぶりだな。 元気してたか?」

「はい。 また、お世話になります!」

キョウと握手を交わす水無月。

キョウ以外には、幽霊騎士団ファントム・ナイツのメンバーと、サーバー対抗戦で出会った、ゼクスサーバーの裕司と、フィーアサーバーのサクラが居た。

「キョウ。状況説明。」

キョウの話によれば。

アップデートのログインできない期間中に。

ミリアさんが息子の裕司に、現実世界リアルでイクルのハウスの事を話し、それを裕司がギルメン達に話す。

そこからギルメン達が、自分たちの知人のプレイヤー達に話して話が広まる。

「それでも、数が多すぎないか?」

イクルが、ゼクスサーバーで噂が広まったとしても、プレイヤーの数が多すぎる事に疑問を持つと。

「フィーアサーバーは、水無月が原因だ。

私たちも、水無月から情報を聞いて見に来たんだ。

かなり良質の回復剤や、珍しい料理などが置いてあると聞いた。」

物凄く野太い声がして、その方向に顔を向けるとサクラが居て。

昔馴染みの連中と、初めて顔合わせをする蒼夜たちと挨拶を交わす水無月の方を見ながら言った。

ほうほう・・・・。 どうやら、フィーアサーバーで噂を広めてくれたのは、どうやら水無月らしい。

しかも盛大に・・・。

そう言えば、裕司は水無月の事を【水姉】と言ってたな。

そして、裕司はミリアさんの現実世界リアルでの息子。

裕司と水無月は、現実世界リアルつながりでの接点があると言う事だろう。

「えっと・・・」

顔を引き攣らせながら、水無月がイクルの方に視線を向ける。

イクルは黙ったまま水無月に近づくと、ウィンドウを操作して左手に10tハンマーを具現化させて、水無月に向けて10tハンマーで水無月の身体を・・・。

「ソフィア。 俺にはコーヒーを、新しい客人には紅茶を頼む。」

「畏まりました。」

イクルの言葉で、ソフィアはドアを開けて出て行く。

「取り合えず。座ろうか。」

イクルの言葉に、水無月以外の全員が椅子に腰かける。

壁に頭部突き刺さり状態から解放されて、水無月もソファーに腰を降ろそうとする。

それをイクルがひと睨み。

イクルの視線を見て、水無月がソファーから離れて床に正座。

「イクル。 そこまで怒らなくても良いだろう。

みぃちゃんだって、悪気が在った訳じゃないし。

むしろ、宣伝のつもりで広げてくれたんだろうし。」

イクルを見ながらキョウが言う。

「俺が怒っているのはソッチじゃない。」

「あぁ・・・ソッチの方ね・・・。」

イクルの言葉に、キョウが納得する。

そう、俺が怒っている理由は。

「これだけの、プレイヤーが一気に買い物に来るんだ。

当然、店舗を貸しているプレイヤーの人たちも或る程度の在庫の余裕は有るだろうが。

在庫にも限りがある。

そして、当然だが。

そのプレイヤーを狙って、不届きな考えを持つプレイヤー達も寄って来る。」

現に、今さっきから、システムメッセージが凄い勢いで流れていく。

ハウスに搭載した【自動BAN追放】システムが作動しっぱなしなのだ。

★自動BAN追放システム:課金システム:3000円★
*ハウス内での【掏り】【犯罪者(フラグ持ち)以外への攻撃】を行った場合、自動的にBAN追放できるシステム。
BAN追放されると、ハウスの所持者が解除するまで、ハウスが解放状態でもハウスの中には入れなくなる。


システムに在るという事は、システム上に問題は無くとも。

その行為を快く思湧いないプレイヤーも居る。

基本的にイクルは、PKプレイヤー・キラーだろうが、掏りだろうが、システムに在る事は否定しない派だ。

人の楽しみ方は、それこそ千差万別で、人が困るのを見て楽しむプレイヤーも居る。

ゲームの中でも、嫌がらせ行為を行い、他のプレイヤーを引退にまで追い込んだプレイヤーも存在する。

それに関しては言う事は無い。

自分の知っているプレイヤーならともかく、見も知らずのプレイヤーの事にまでイクルは関わるつもりはない。

身内の出来事なら、カバーもするし対処も講じる。

イクルはUSOをプレイして遊ぶ唯の1人のプレイヤーなのだから。

「すいませんでした・・・。」

イクルの言葉を聞いて、水無月は申し訳なさそうに首を垂れる。

「理解したようだな。 座って良いぞ。 ただし、次からは気を付ける様に。」

「はい・・・。」

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