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サーバー対抗戦:最終日
しおりを挟むサーバー対抗戦:3日目
この日は、イクルは現実世界での事情の為に対抗戦は欠席になる。
代わりに、ねぎトロを選抜メンバーに。
「ん? 何やってんだアイツら?」
遠くから、アインサーバーの男性プレイヤーが言う。
視界の向こう側では、両手で耳を塞いで、何かを見つめている他のサーバーのプレイヤー達が居る。
アインサーバーの全員で、その方向に向かうと・・・。
何とも言えない、不快な音が聞こえてくる。
近づくにつれて、それが【歌】だと言う事が理解できる。
が・・・・。
「これ・・・歌なのか・・・?」
思わず言葉に出してしまう程に、その歌声と言うには。奇妙過ぎる歌だった。
そう、一言で言い表すなら。
【騒音】
それも、騒音公害と言っても過言ではないレベルの・・・。
思わず、両手で耳を塞いでしまうアインサーバーのプレイヤー達。
その視線の先には・・・。
「夢を追いかけてえぇぇ・・・・」
ねぎトロが、気持ち良さそうに歌っている。
「くっ・・・」
龍虎王が顔を顰めながら、ガイに攻撃を繰り出すも、その動きには一切の繊細さがない。
いや、龍虎王どころか。
ツヴァイサーバーを除く、全サーバーのプレイヤー達の動きに繊細さが無い。
「誰かっ! この騒音を止めてくれっ!」
ドライサーバーの幸太郎が声を上げて言うが、その声すらも、ねぎトロの歌声で掻き消されていく。
先程から、ねぎトロに遠距離での攻撃を仕掛けてはいるものの。
その攻撃の全ては、ねぎトロを守る、コロン、カナタ、カーマインによって防がれて、ねぎトロまで攻撃が届かない。
「なんで、ツヴァイの連中は平気なんだっ!!」
フェンフサーバーの男性プレイヤーが、片手で眉間を抑え込みながら怒鳴るように言う。
ツヴァイサーバーのプレイヤー達が、ねぎトロの騒音に耐えられているのは、単に耳に詰め込んでいる、キョウとミリアさん合作の【耳栓】のお蔭だ。
★耳栓:アイテム★
*ただ単に、外部からの音を消音するだけのアイテム。
*音を消音する以外は何の効果もない。
*因みに。ねぎトロと狩りに行く時には、ツヴァイサーバーでは必需品となっている。
*注意:余談*
この耳栓。キョウとミリアさんしか作れない専売勅許アイテムで、キョウが暴利を貪っているのは言うまでもない・・・。
「ってか。 歌い手の歌声って、こんなに効果範囲が広かったっけ!?」
裕司が、耳を塞ぎながら言う。
戦闘中に、両手で耳を塞ぐなど自殺行為も良い所なのだが。
何故か、ツヴァイサーバーのプレイヤー達は、自分達からは攻め込んでは来ない。
攻撃を仕掛けようと近づくと反撃はしてくるが、自分達からは他のサーバーのプレイヤーには攻撃を仕掛けようとはしないのだ。
裕司の疑問も尤もだ。
普通の歌い手の歌声の効果範囲は、せいぜい30メートル前後の筈だ。
これに、吟遊詩人特化型のプレイヤーですら40メートルも届けば良い方だろう。
だが、ねぎトロの歌声は、どう考えても、半径100メートル以上は拡散されている。
「たぶん手に持っている物(アイテム)のせいだと・・・。」
水無月も、眉間にしわを寄せながらも、辛うじて武器を構えた姿勢で言う。
そう、ねぎトロが手に持っているアイテム。
それは、【マイク】だった。
★マイク:ねぎトロ専用アイテム★
*自分の歌声を、広範囲に渡って、お届けするアイテム。
*声を遠くに聞こえる様にする効果以外は何もない。
このマイクと言うアイテム。
ねぎトロが称号を取った時に、運営側から贈られたアイテムなのだ。
ねぎトロが取った称号は鯖称号。
その称号名は、【制御不能の歌い手】と言う称号だった。
《運営・・・何て物を渡してくれているんだ・・・。》
イクルが、マイクを見た時に、素直に思った感想だった・・・。
イクル達とのワールドレイド討伐の時から、更に磨きのかかった最凶の歌声。
本人は気持ち良さそうに歌っているが、他人から言わせれば。
酷い! とにかく酷い!
それ以外の言葉が見つからない程に酷いっ!
聞くに堪えないと言う言葉は、まさにこの為に在るような言葉だと確信する程に酷いっ!
攻撃リズム、呪文の詠唱、その他の行動。
全てに、影響が出る程に酷いっ!
その効果は、ねぎトロが歌いだしてから、状態異常として、効果が表れる程に酷いっ!
なにせ、ねぎトロの歌は状態異常効果として、ツヴァイサーバー以外のプレイヤーには【全ステータス&スキル値60%減少】の効果を与えているのだから・・・。
味方以外の者には、正に最凶最悪の歌い手)。
それが、いま!目の前に居る、ねぎトロ!
「なんで、歌でスキル値が下がるのよっ!」
葉子が耳を塞ぎながら喚く様に言う。
「俺に聞くなっ!」
同じく耳を塞ぎながらシュウが答える。
と、言うか。怒鳴る・・・。
* * * * * *
《これほどまでとは・・・。》
気持ち良さそうに歌うねぎトロを見ながら、ガイは目の前の敵対プレイヤー達を見つめる。
イクルから、今日は負けても良いので、好き勝手にしてくれと言われている。
ただ、ねぎトロの、対人での歌の性能を見極めてくれれば良いとだけ言われてはいた。
そして、いざ。ねぎトロが歌いだしてみると。
ガイの予想以上の効果が・・・。
以上と言うか、遥か斜め上と言った方が良いだろう。
ねぎトロ耐性の無い、他のサーバーの住人には、ねぎトロの歌声は何よりも堪えているようだ。
中には、頭を抱えて、地面を転がりまわっているプレイヤーも数人いる。
試しに、耳栓を外して、ねぎトロの歌を聴くガイ。
「確かに、酷い事は酷いが・・・」
多少の違和感は有る物の、そこまでか?
と、言う表情で、他のサーバーのプレイヤー達を見るガイ。
ガイ・・・。 すでに、ねぎトロ耐性が90%を超えているらしい・・・。
結果として。
この日は、ねぎトロが連続で12曲ほど歌った所で、全サーバーの司令官が白旗を挙げて降参した。
【ツヴァイサーバー以外の司令官が降参宣言をしたので、サーバー対抗戦を終了いたします】
システムアナウンスの声が流れた。
アインサーバー :司令官降参:生存人数12人
ツヴァイサーバー:司令官健在:生存人数12人
ドライサーバー :司令官降参:生存人数12人
フィーアサーバー:司令官降参:生存人数12人
フェンフサーバー:司令官降参:生存人数12人
ドライサーバー :司令官降参:生存人数12人
と言う。
稀にみる珍妙な結果に終わる3日目だった・・・。
ねぎトロ・・・・恐るべし・・・。
*余談*
この日を境に、音痴の歌い手が、各サーバーでも出現し。
元祖音痴歌い手の、ねぎトロは。
全ての音痴歌い手から崇めたてられた・・・。
応援ありがとうございます!
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