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終章:3
しおりを挟むゲルドの存在値を取り込み終えると。
そこには、黒い何かが残っていた。
「これが【無】・・・。」
その黒い塊り。無は、イクルの拳ほどの大きさだった。
本来ならば、ゲルドを食らい尽くし。 巨大な恒星くらいには為り現れる予定のはずなのだが。
ゲルドの存在値をイクルが吸収したために、目の前の無の存在は余りにも小さかった。
それでも、目に見えて大きくなって行く様が伺えた。
拳大の大きさから、僅か1分足らずで、バレーボール位にまで大きさを変えているのだから。
「凄いな・・・。 確かに、これなら。 数年で、次元宇宙を無に還しそうだ。」
誰にと言う訳では無い。 思わず独り言が漏れただけだった。
イクルは左手に持つ、刀を無に向けて突き刺す。
ゲルドの時とは違い。
無は、刀に纏わりつく様に吸収されていく。
無を吸収していく中で、イクルが顔を顰める
感覚的には、気持ちが悪い。としか言いようがない感覚。
身体の中で、何かが蠢いている感じだ。
その不快感を耐える事数分。
ようやく、イクルの身体の中から不快感が薄れていく。
「はあああぁあ。」
大きな溜め息をつく。
小さくなった星を見詰める。
「帰りますか・・・。」
* * * * * * *
イクルがゲルドと宇宙に行ってから、3日が経って居た。
アキト達は魔王城に残り、事後処理に追われていた。
なにせ、魔王に操られていた魔人族の人たちが一斉に自我を取り戻したのだ。
その混乱は計り知れない物になる筈だった。
が。 その混乱は、僅か1日で収まってしまった。
原因は、シノンと雪。
2人(匹?)が 聖母竜の姿で、星中を駆け回り。
「此度の戦は。 他の次元から来た邪神が魔人族の王である魔王を操り。
我々の世界を混乱に落としめた。
それを、納めたのが。 神の使徒である人族の勇者アキト。
人々よ。遺恨や禍根は残るだろうが。
どうか、これ以上の無駄な争いは納めよ。
納めぬなら。 私たち全ての幻獣たちが。 全ての人の子の敵と為ろうと思え。
私達が望むのは星の安寧であり。
貴様たち、人の子らの繁栄ではない。」
と、まぁ。
見事なまでの悪役っぷりで。 この混乱を収めてくれたのだ。
この際に、神の使徒としてアキト達の名前を出し。
更には、他次元の神ゲルドを邪神として狩りだしたために。
魔人族へのバッシングも、思ったよりも少なくなり。
魔人族への対処の方は、神の使徒として、魔王を倒した勇者たちに一任された。
まぁ、他種族からすれば。 魔人族から恨み事を買うのを避けて、勇者たちに丸投げしたとも言えるのだが。
ただ、アキト達にとっては。 出来るだけ魔人族への対処は柔らかくして欲しかったので。
渡りに船 と言った感じだった。
* * * * * * *
その頃、イクルはと言うと。
* * * * * * *
「だあああぁあっ! くそっ!
何時に為ったら辿り着くんだよっ!」
あれから、まだ宇宙を漂っていた。
無を吸収してから、ものの5分もしない内に。
急速にブーストの効果が切れてしまい。
さらに、無が存在しなくなったことにより。
神人としての能力が大幅に削られていった。
米粒ほどの大きさから、パチンコ玉ほどの大きさに変わった星だが。
今の感じだと、星に辿り着くのは、何時になる事やら。
飢えと喉の渇きは、少ない神力を使い、容器に入った水と、食べ物を作って凌いで入るが。
静寂感と孤独感が半端なく辛い。
無の存在が近くに無ければ、神人としての能力は具現化されず。
今のイクルは、少し神力を持つ。 死ぬ事の出来ない身体で、ちょっとだけ強い人。
っと、言った感じに過ぎない。
「もうちょっと、気を利かせてくださいよ・・・」
此処には居ないシオンと、自分を必要として産み出した次元宇宙に文句を垂れる。
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