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神人
しおりを挟むと、言う経緯を話す生来。
「へぇ・・・」
「へ、へえぇえ・・・。 何と言うか・・・。」
父さんと母さんが、物凄く微妙な表情で、言葉を詰まらせて返事を返してくれている。
うん・・・。 分かります・・・。
俺も、自分で言ってて、無茶苦茶だってのは理解してるんで・・・。
「端的に纏めると。
お主は、神を凌ぐ存在でありながら。
人でも在る存在。
と、言う事で良いのだな?」
神が、生来に聞く。
「そう言う認識で間違っていないよ。」
「怖い物なしじゃないか!」
父さんが言う。
「残念だけど。 神人には制限が掛かっていてね。
決して、【俺TUEEE】って無双状態じゃないんだなコレが。」
「制限?」
母さんが聞き返す。
「うん。
神人は、確かに神をも滅せられる存在だけど。
その能力は、【神】と【神と同等】か、【それ以上】の存在にしか発揮されない。」
俺の言葉に、父さんと母さんが、わからんと言った風に表情を崩す。
「ふむ。 つまり、【普通の】者種には、神人の能力は働かないと?」
さすが神。 理解が早い。
「そう言う事。 神人の能力は、神とも呼ばれる存在を屠る能力。
それ以外のモノには、神人ではなく、人としての能力で対応される。」
シオンさんから貰った記憶では。 神人としての存在値を格上げしていくと。
神人以外の能力では、俺を傷付ける事は出来なくなるらしいけど。
今の俺は、産まれたての神人だから。
かなり存在値が低くて、普通の武器や魔法でも傷付ける事が出来る。
それでも、この星では、人類最高値以上の能力値を保有しているがね。
「一つ、尋ねたいのだが。」
神が生来に聞く。
「お主が、神人に生まれ変わったと言う事は理解した。
そして、儂の思っていた通りに、あの魔王も、他次元の神と理解した。
だが、それでも。 お主が神人として、この星に降り立った理由には乏しい気がする。」
さすが神様。 星神と言えど、俺の存在意義には疑問を持ちますか。
「そうだね。 普通、星が1つ2つ消滅しようが。
次元宇宙には関係ない事柄です。」
俺の言葉に、父さんと母さんが、陰鬱な視線を俺に向ける。
だけど仕方がない。
言葉の通りに、星の1つや2つ。
いや、数十数百の星が消滅しようとも、次元宇宙に綻びも入らなければ、星の消滅自体は何処かの並行宇宙で起こっている。
それが、次元宇宙の理。
神も、自分の管理する星が消滅するのは宜しくないが。
それが、次元宇宙の理なら納得もできる。
なら、何で。 俺が産まれたのか疑問に思うのも当然。
多分、神も理解しているのだが。 俺の口から確信を得たいだけなのだろう。
「魔王の中に。 【無】が宿っているからです。」
俺の言葉に、父さんと母さんは、何だそりゃ?って表情に。
神は諦めたような表情に。
「無ってなんだ?」
武彦父さんが聞いてくる。
「父さん。 消滅って言葉を説明できる?」
「在ったモノが消える。 もしくは無くなる。って感じだな。」
「うん。 それでも、消滅して無くなっても、そこに在ったって記憶は残るよね。」
「まぁな。 無くなっても、そこに在ったと言う記憶は残るだろうに。」
「そうだね。 父さんと母さんが死んで、存在しないとなっても。
父さんや、母さんの記憶が消える訳じゃないからね。」
俺の言葉に苦笑する2人。
「でもね。 無ってのは、無くなるって事じゃない。
もっと根本的な場所が違うんだよ。」
俺の言葉に、訳が分からないと言う表情になる。
「無って言うのは。
消えて無くなるのじゃなくて、元からなかったことになるんだ。
父さんと、母さんが。 元から居ない人で、誰の記憶にも残っていない。残らない。
いや、最初から居ないのだから、記憶に残る筈もない。
それが、無って事なんだ。」
生来の言葉に、更に困惑度が増す2人。
「例えば、重力の定義を起こしたニュートンと言う人物(他にも、アリストテレスや、ロバートフックなども存在する)。
仮だけど、ニュートンと言う人物が、無になったとするよ。
すると、どうなるのか?
ニュートンと言う人物が、無になって存在が誰の記憶からも、記録からも消えてしまい。
後世の人類に記録として残るのは、他の人の定説が植え付けられてしまう感じに為るんだ。」
「記録からも消える?」
「そう。 全ての書物と言う記録からも、最初から居なかった事になってしまうんだ。
それが、無って事。
消滅とかじゃなくて。 言葉の通りに無。 最初から、なにも存在しなかった。」
「それを、今の魔王が宿しているの?」
母さんが聞いてくる。
「そうだよ。 まぁ、まだ存在値が大きくない。
多分、生まれたての無って感じかな。」
「その、無ってのに。 お前は勝てると?」
父さんが聞いてくる。
「とどのつまり。 神人と無は、対極なんだ。
無が存在を無くそうとするモノなら。
神人は存在を護ろうとするモノ。」
「「はぁあ・・・」」
俺の言葉に、父さんと母さんが、ひときわ大きな息をついて俺を見る。
「それに、この無ってのは厄介な存在でね。
存在値が小さな内は、星を消滅させるくらいだけど。
育って存在値が大きくなっていくと、星を無に還し宇宙をも無に還していき。
更に存在値が大きくなっていくと、やがては次元を越えて並行宇宙を無に還し。
ついには次元宇宙の壁をも超えて、他の次元宇宙をも無に還して行く存在になっていくんだよ。」
「全次元宇宙の危機・・・」
それまで黙っていた、神が呟く。
「まぁね。 でも、それこそ、億とか兆の時間の単位じゃなくて。
さらに上の京や該どころか、もっと上の単位かも知れないけどね。」
そう、神人と、無の存在値上げはイタチごっこ。
何処かで無が消えれば、どこかで神人も消えている。
あるいは既に、幾つもの次元宇宙を無が無に還していて。
その無を、神人が降しているのかも知れない。
何処かで、新しい次元宇宙が産まれれば。
何処かで、無が次元宇宙を還す。
なら、一体。 神人と無とは何なのか。
シオンから受け継いだ記憶には無い。
恐らく、神人と無の関係を、こうだと言える存在は、始原の神人のシオンと。
生来を神人として誕生させた時空神。
それに、創世神と呼ばれる神だけだろう。と、生来は思う。
「さってと。 そろそろ・・・。」
アキト達の所に戻ろうか。と言いかけて、生来は或る事を思い出す。
「あぁ~。 あのさ。 神様。」
「どうかしたのか?」
「1つ。お願いしても良いかな。」
「内容に寄り蹴りだ。」
「俺の居た地球のさ。 家族に会いたいんだけど。」
生来の言葉に、神が目を細める。
「あっ! いやっ! 別に本人たちに直接に逢いたいって事じゃなくてさっ!
夢とか、記憶の中でとかでも良いから、逢えないかなぁ~って・・・。」
今の生来は、神人に為ったと言っても生まれたての状態に等しい。
次元宇宙に渡る次元跳躍どころか、並行宇宙を移動する次元移動の術さえも持ち合わせていない。
それらは、これから数百数千の時間を生きて、神人しての能力に目覚めていく。
今の生来は、ただの神と神に近い存在を屠れる存在。ただ、それだけなのだから。
「それくらいなら、構わん。
向こう側には、夢として残るように配慮しておこう。」
そう言った神の言葉と同時に、目の前に生来の家族が現れた。
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