【完結済み】 50のオッサン 異世界に行く

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです

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アキト

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生来イクルさん・・・」

イクルの死を知って、アキトが呟くように言う。

「まだ本気を出さぬか。 もう1人2人、死なぬと本気を出せぬか。

回復役が邪魔だな。」

そう言って、ゼアルが再び左手をかざす。

そのゼアルの左手が、何の前触れも無く跳ね上がった。

アキトが、ゼアルの左腕を蹴り上げていた。

「ふっ。」

ゼアルは口角を上げると、嬉しそうにアキトを見る。


 * * * * * * *


アキトの思考はクリアだった。

生来イクルが死んで、もっと激情に駆られるのかと思ったが。

自分でもビックリするくらいに冷静だった。


アキトにとって、生来イクルとは、年の離れたような兄の様な存在だった。

年が離れているにもかかわらず。

年上ぶらずに、自分の言葉をキチンと受け止めて真面目に返してくれる。仲の良い親友とも呼べるような存在だった。

そして、アキトが尊敬していた存在だった。

女性陣の中では、余りのアキトと生来イクルの仲の良さに、アキト同姓愛説イクルが好きが出回るほどに。

《もっと、色々と話したかった。》

ゼアルに向かって、神剣を振り下ろす。

ゼアルはアキトの攻撃を受け止めて、切り返す太刀でアキトに攻撃をする。

《もっと、色んな事を教えて欲しかった。》

ゼアルの攻撃を受け流して、神剣で切り返す。

徐々に、アキトとゼアルの打ち合う速度が上がっていく。

キッ!キッ!キッ! っと。

アキトの神剣と、ゼアルの持つ剣の音だけが部屋の中に響く。

一合、二合、三合・・・・。十合。

剣と剣とが打ち合う音だけが。

最初こそは、アキトの攻撃を片手で受けていたゼアルだが。

徐々に上がっていくアキトの攻撃速度に、余裕がなくなって来たのか、いつの間にか両手でアキトの攻撃を受け止めていた。

「ようやく、本気を出してきたか。 だが、まだだ。 もっとだっ! もっと本気を出せっ!」

歓喜の声を上げながら、ゼアルが剣を振るう。

《守れなくて!ゴメンなさいっ!》

ついに、アキトの神剣が、ゼアルの肩を切りつけた。

肩口から、血をしたたらせて、ゼアルが吠えた。

「もっとだ! もっと我を楽しませろ! ゆうしゃあぁぁぁああああああっ!」



 * * * * * * *


『母様っ!』

『私も感じた。 死んだのだな。』

シノンとセツは、世界中を飛び回っていた。

理由は、三大陸の船団と魔人族との船団とを、分断して結界で閉じ込めていたからだ。

生来イクルの、出来るだけ死者は出したくないと言う、甘い甘い理由の為に。


『うん。 でも、おかしいの。』

『何が?』

イクルとの契約が切れていないの。』

契約は、契約者が死ぬと解除される。

それが解除されていない。

『相も変わらず、ビックリ箱人間ですね・・・。 色んなことわりを無視しまくっています。』

言葉とは裏腹に、シノンの表情は嬉しそうだった。
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