【完結済み】 50のオッサン 異世界に行く

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです

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魔人族の

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魔王城の中でも、アキト達は魔人族に遭遇する事なく進んでいた。

もう、ここまで来ると。誰の目から見ても、明らかに誘い込まれていると判る。

少し大きめのホールに出た。

ホールの奥には階段があり。

階段の前では、若い魔人族の男性が1人立っていた。

「お待ちしておりました。 勇者ご一行様。

わたくし、魔人族の国の元帥をさせていただいておりす。

パーシバルと言う者でございます。」

右手を胸に当て軽く頭を下げて、アキト達に挨拶をするパーシバル。

「魔王の元にまで案内してくれるのかい?」

声を上げたのは、アレス。

「はい。その通りでございます。 ですが。

さすがに、この人数で、押し寄せられても迷惑ですので。

少しばかり、選別させて戴きたく思います。」

そう言い切った瞬間。パーシバルから、膨れ上がった魔力の波がホールを覆った。

そして、魔力の波が過ぎた後に、その場に立っていたのは32人だけだった。

「意外に、残りましたね。」

パーシバルの言葉に周囲を確認すれば。

20人ほどは床に倒れ。過半数は、床に膝を突いて辛うじて意識を保っている者。

また、立っている者でも。 大多数は、辛うじて膝を突くのを耐えている感じの者。

「一応、立ってられる方は。 魔王様に御目通りする資格はございますが。

はっきり申し上げまして。 辛うじて立って居られる方は、おすすめはしません。

魔王様は、私以上の魔力を当ててこられるので。

それでも、魔王様に御目通りしたいと言うのなら。

無理には御停めしませんので、お好きになさってください。

それでは、こちらに。」

そう言って。 背中を向けて、階段を登っていくパーシバル。



 * * * * * * *



エンスト王と別れて、自分に用意された部屋に戻ろうと廊下を進む。

ドアを開けて、部屋の中を見れば。

1人の女性がソファーに座っている。

「やあ。 君が転移者だね。」

開口一番に、そう言ってきた。

一瞬、身構えて。 腰の剣に手を伸ばしかけて辞めた。

王城には、転移防止と空からの侵入に対しても結界を張っている。

どちらの経路で侵入したのかは知れないが。

この部屋に居る時点で、イクルが抵抗しても無駄な力量なのは想像に容易たやすい。

「それで。 魔人族の方が、僕に何か御用でも?」

そう。 女性の背中には、2対の白い翼が畳まれている。

「おっと。 コレは失礼。 あたしは、エルレイン。

魔人族の国で、宰相をさせて貰ってる。

そう言って、立ち上がって、左胸に右手を当てて軽く頭を下げる。

「それは、どうも。 僕は、イクル・タカナシ。

貴方の言う通りの転移者です。」

イクルも、同じ様にエルレインに右手を胸に当てて頭を下げて挨拶をする。

そして、エルレインの前のソファーに腰かける。

「驚かないのかい?」

「いえ。 十分に驚いてますよ。」

「反応が薄いね。」

「驚き過ぎて、3周くらい回って。 どう反応して良いのか分からないだけです。」

「誰も呼ばないの?」

「悟られない様に潜入したのでしょう。

それに、僕を殺す気なら。

部屋に入る前。もしくは、部屋に入った瞬間に殺してるでしょ。」

この結界を壊すことなく、更に城の兵士たちに悟られる事なく。

この部屋に侵入してる時点で、イクルは詰んでいるのだ。

現存する最高戦力たちは、今は魔王城。

確かに、騎士たちを呼べば、このエルレインを倒せるかもしれないが。

コッチ側の被害も大きくなるのは目に見えている。

「それで、僕に何か用でも?」

「単刀直入に言うけど。 魔王様が、貴方に会いたいって事で。アタシが迎えに来たんだ。」

「一応、聞きますが。 僕に拒否権は?」

「嫌なら嫌でいいよ。 無理やり連れて行くだけだから。」

「それって、拒否権は無いって事ですよね。」

肩をすぼめながら言うイクル。

「で? どうする?」

エルレインが言ってるのは、大人しく着いて来るのか、抵抗するのかって事だ。

「着いて行きますよ。 でも、お願いが1つ。

手紙を書いても良いでしょうか?」

「手紙?」

「ええ。 突然いなくなると、皆が心配するのでね。」

そう言って、エルレインの目の前で手紙を書く。

と言うか。最早、書置き程度の内容だが。

「そんだけで良いのかい?」

書かれた内容を見て、エルレインが呆れたように言う。

「ええ。 それでは、行きましょうか。」

そう言って、エルレインの側に立つ。

「そんじゃ、行くよ。」

「あっと! 言い忘れていましたが。

僕は魔力が無いので、転移の際には誰かに触れていないと、一緒に転移されないので。

失礼ですが、腕を掴んでも良いでしょうか?」

「どうぞ。」

「それでは。 失礼して。」

そう言って、エルレインの腕を掴む。

「飛ぶよ。」

「宜しく、お願いします。」

はぁ、と一息溜め息を吐きながら。

(調子が狂う・・・)

と内心で思いながら、転移魔法を発動させて。

その場から、エルレインとイクルの姿が消えた。

残された書置きには。

【 魔王からの迎えが来たので。 ちょっと会いに行って来ます 】

とだけ。書かれていた。
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