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第76話 地の精霊
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『お主が、今代の精霊に寵愛されし者か。』
巨大なスライムのような形を取った。地の精霊ガイアが、アベルに向かって言う。
「寵愛されているかどうかはして。 精霊の加護を受け賜わっております。」
『ホッホ。中々に謙虚よのう。』
「謙虚などでは在りません。 事実を言葉に出しただけです。
精霊様達には、お世話に為っていますが。どちらかと言えば、友と言った言葉が適切に感じます。」
『ホッホ。 精霊を友と呼ぶか。
図太いのか。無神経なのか。 はたまた傑物なのか。』
「頓着なだけだと思いますよ。」
『ホッホ。 愉快、愉快。』
地の精霊ガイアと、アベル本人はニッコニコだが。
アベルの後ろで、2人の会話を聞いている。レイジとアントワネリーは心臓がドッキドキのバックバクだ。
「ねえ。あんなにフレンドリーに接して大丈夫なのかい?」
アンネが小声でレイジに訊ねる。
「俺に聞かれても分かる訳は無いだろう。」
顔面蒼白で、胃の辺りを押さえながら言うレイジ。
* * *
現在。アベル達は、シグルートの街から4日の所に在る地下神殿に来ている。
大無死から存在する地下神殿で。特に重要な物も無く。出て来る魔物もスライムだけと言う。初心者向けの旨味の無い神殿。
そんな所に、地の精霊が居ると言う事を聞いた時は驚いた。
* * *
『して。お主は、全ての精霊の加護を集めたとして何を成す気なのかな?』
「他の精霊達にも言われたんですが。僕は何も成す気はないですよ。
僕の望みは、ルナとの子供を産んで。子供の成長を見ながら。共に年老いて死ぬこと。
ただ、それだけです。
大富豪に為るとか。英雄とかに為る気も在りません。
今は、たまたま結果的に、お金を持っていると言うだけで。
普通の家庭より、少しだけ贅沢をしているのは認めますが。
贅沢三昧で暮らす気は無いです。」
『ホッホッホ。本当に、欲は在るが。強欲ではないな。ましてや無欲とは程遠い。
成る程。実に愉快な人の子だ。』
「喜んでいただけたらなら幸いです。」
『確かに。こんなに面白そうな人の子に加護を与えないと損をしてしてしまうな。
アベル。地の精霊ガイアの加護を受け取ってくれるか?』
「お断りするのは?」
『断られたら。無理やり着けるだけじゃ。』
「それ、僕に拒否権が無いじゃないですか。」
『ホッホッホ。そうとも言うな。』
「それでは。改めて。謹んで加護を戴きたく存じます。」
『うむ。地の精霊ガイアの加護を受けとってくれ。』
すると、アベルの身体の中に、いつも感じる以上の精霊力が流れ込んでくる。
「いっ! これは!?」
一瞬、身体の痛みを訴えかけるが我慢する。
『少しばかり耐えよ。主の中の光と闇の精霊の成長を促しておるのだ。
多少の苦痛は在ると思うが。身体に害が残る訳でない。』
体感的に5秒ほど。身体の痛みが引いていく。
『『アベル!』』
手の甲の紋章が光ったかと思うと、リトたち妖精サイズの光と闇の精霊の姿が眼前に現れる。
光の精霊アレキサンダー。
光の精霊の名の如く。白く薄く輝く少年の姿を取っている。
闇の精霊シャドウ。
闇の精霊の名の如く。黒い姿の少女の姿を取っている。
『ガイア!精霊力を分けてくれて有り難う!』
アレキサンダーが言う。
『ガイア。有り難うね。』
こちらはシャドウ。
『なに。例には及ばんよ。
お主たちも、その方が都合が良かろうて。』
『『うん!』』
ガイアに返事を返して、アベルの方に飛んでいくと。
『アベル。今まで有り難う。』
『私たちが、消滅しないように休まてくれて有り難う。』
「もう大丈夫なの?」
『『うん!』』
『小精霊から中精霊に昇格できたからね。』
「昇格?」
アレキサンダーの言葉を復唱する。
『大精霊みたいに、大きな能力は使えないですが。
それなりに、アベルの手助けをする事は出来ますよ。』
シャドウが付け足す。
一瞬。どう返したら良いのか悩んだアベルだが。
「うん。これからも、宜しくね。アレキサンダー。シャドウ。」
笑顔で、両手を差し出す。
『宜しくな!』
『宜しくです!』
アレキサンダーも、シャドウも。アベルの人差し指を両手でしっかりと握り上下に揺らす。
「ねえ、レイジさん。」
「なんだ。」
「いま、私たちって。とんでもない事を目の当たりにしてるんだと思うんだけど。」
「奇遇だな。俺も実は、そう思ってたところなんだ。」
「「はあぁああ。」」
2人揃って、大きな溜め息を吐き出すのだった。
巨大なスライムのような形を取った。地の精霊ガイアが、アベルに向かって言う。
「寵愛されているかどうかはして。 精霊の加護を受け賜わっております。」
『ホッホ。中々に謙虚よのう。』
「謙虚などでは在りません。 事実を言葉に出しただけです。
精霊様達には、お世話に為っていますが。どちらかと言えば、友と言った言葉が適切に感じます。」
『ホッホ。 精霊を友と呼ぶか。
図太いのか。無神経なのか。 はたまた傑物なのか。』
「頓着なだけだと思いますよ。」
『ホッホ。 愉快、愉快。』
地の精霊ガイアと、アベル本人はニッコニコだが。
アベルの後ろで、2人の会話を聞いている。レイジとアントワネリーは心臓がドッキドキのバックバクだ。
「ねえ。あんなにフレンドリーに接して大丈夫なのかい?」
アンネが小声でレイジに訊ねる。
「俺に聞かれても分かる訳は無いだろう。」
顔面蒼白で、胃の辺りを押さえながら言うレイジ。
* * *
現在。アベル達は、シグルートの街から4日の所に在る地下神殿に来ている。
大無死から存在する地下神殿で。特に重要な物も無く。出て来る魔物もスライムだけと言う。初心者向けの旨味の無い神殿。
そんな所に、地の精霊が居ると言う事を聞いた時は驚いた。
* * *
『して。お主は、全ての精霊の加護を集めたとして何を成す気なのかな?』
「他の精霊達にも言われたんですが。僕は何も成す気はないですよ。
僕の望みは、ルナとの子供を産んで。子供の成長を見ながら。共に年老いて死ぬこと。
ただ、それだけです。
大富豪に為るとか。英雄とかに為る気も在りません。
今は、たまたま結果的に、お金を持っていると言うだけで。
普通の家庭より、少しだけ贅沢をしているのは認めますが。
贅沢三昧で暮らす気は無いです。」
『ホッホッホ。本当に、欲は在るが。強欲ではないな。ましてや無欲とは程遠い。
成る程。実に愉快な人の子だ。』
「喜んでいただけたらなら幸いです。」
『確かに。こんなに面白そうな人の子に加護を与えないと損をしてしてしまうな。
アベル。地の精霊ガイアの加護を受け取ってくれるか?』
「お断りするのは?」
『断られたら。無理やり着けるだけじゃ。』
「それ、僕に拒否権が無いじゃないですか。」
『ホッホッホ。そうとも言うな。』
「それでは。改めて。謹んで加護を戴きたく存じます。」
『うむ。地の精霊ガイアの加護を受けとってくれ。』
すると、アベルの身体の中に、いつも感じる以上の精霊力が流れ込んでくる。
「いっ! これは!?」
一瞬、身体の痛みを訴えかけるが我慢する。
『少しばかり耐えよ。主の中の光と闇の精霊の成長を促しておるのだ。
多少の苦痛は在ると思うが。身体に害が残る訳でない。』
体感的に5秒ほど。身体の痛みが引いていく。
『『アベル!』』
手の甲の紋章が光ったかと思うと、リトたち妖精サイズの光と闇の精霊の姿が眼前に現れる。
光の精霊アレキサンダー。
光の精霊の名の如く。白く薄く輝く少年の姿を取っている。
闇の精霊シャドウ。
闇の精霊の名の如く。黒い姿の少女の姿を取っている。
『ガイア!精霊力を分けてくれて有り難う!』
アレキサンダーが言う。
『ガイア。有り難うね。』
こちらはシャドウ。
『なに。例には及ばんよ。
お主たちも、その方が都合が良かろうて。』
『『うん!』』
ガイアに返事を返して、アベルの方に飛んでいくと。
『アベル。今まで有り難う。』
『私たちが、消滅しないように休まてくれて有り難う。』
「もう大丈夫なの?」
『『うん!』』
『小精霊から中精霊に昇格できたからね。』
「昇格?」
アレキサンダーの言葉を復唱する。
『大精霊みたいに、大きな能力は使えないですが。
それなりに、アベルの手助けをする事は出来ますよ。』
シャドウが付け足す。
一瞬。どう返したら良いのか悩んだアベルだが。
「うん。これからも、宜しくね。アレキサンダー。シャドウ。」
笑顔で、両手を差し出す。
『宜しくな!』
『宜しくです!』
アレキサンダーも、シャドウも。アベルの人差し指を両手でしっかりと握り上下に揺らす。
「ねえ、レイジさん。」
「なんだ。」
「いま、私たちって。とんでもない事を目の当たりにしてるんだと思うんだけど。」
「奇遇だな。俺も実は、そう思ってたところなんだ。」
「「はあぁああ。」」
2人揃って、大きな溜め息を吐き出すのだった。
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