追放から始まる新婚生活 【追放された2人が出会って結婚したら大陸有数の有名人夫婦になっていきました】

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです

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第74話 友達

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*時は流れて半年*


「あっ!セツナ先生! お早う御座います!」

「お早う御座います。エミリアさん。」

登校途中の道筋で、生徒と顔を合わせて挨拶をするセツナ。

このエミリアと言う生徒。

貧民街の出の者なのだが。こと、錬金術師アルケミストの才においては他の生徒と比べても、セツナとタイガ並みに抜きんでている。

開校して僅かに1週間で、錬金術師アルケミストの初級を解放させてしまい。

1ヶ月経つ頃には、初級錬金術を網羅させていた。

しかも、エミリアは来月には成人の儀を迎える事になる。

「エミリアさん。教員の件は考えてくれていますか?」

「えっと……まぁ、一応は……」

「学院生として在学できるのは成人の儀まで。

錬金の才能が有りと認められれば、更に半年間は在学できますが。
その間に才能が開花しなければ、錬金の才は無しと見なされて学院に滞在できなくなります。

もちろん、職の斡旋などはしますが。

そこから先は自己責任です。

嫌な言い方をしますが。学院は錬金術師アルケミストを育成する場であって。

慈善で生徒を受け入れている訳では在りません。」

そう。未来の錬金術師アルケミストを育成するために。

最低限では在るが。衣食住の全てを提供しているのだ。

満6歳~14歳までの未成年者を対象に。

卒業後は、錬金術師アルケミストを生業にしても良いし。

お金を払う事で、錬金学校に通学し続ける事も出来る。

また、成人の儀で錬金術師アルケミスト職業ジョブが無くても職業ジョブに見合った就職先を紹介して貰える。

在学時に、簡単な計算式と文字も教えてくれるので。

他の職にも就きやすくなる。

「エミリアさんなら。教員として教えながらでも、自分の錬金術師アルケミストとしての技術を伸ばす事も可能だと私は思うのですが。」

「本当に、そうなんでしょうか?

貧民街出身の私なんかに務まるのでしょうか?」

(ご自身の出自にコンプレックスを抱いていますのね。)

「エミリアさん。ひとつ良い事を教えて差し上げましょう。

私の師。 今でこそは、錬金術師アルケミストとして色々な偉業を出していますが。

1年ほど前までは、血盟クランで役立たずと言われて諭されて解雇されたんです。」

「えっ!?」

「当時は、錬金術師アルケミストの情報すらなく。

職業ジョブは授かっていても、何もできない役立たず。

それが、当時の師でした。」

「そんな……上級錬金術式まで使える凄い人が?」

「そうですよ。師の恩人とも言える人物に出会い。

錬金のヒントを手に入れて、錬金術師アルケミスト職業ジョブを解放させる。

そこからは、1人で何の手掛かりも無く、ただひたすらに手探りで試行錯誤を繰り返し失敗を重ねて、それでも心折れずに頑張って頑張って。

良き夫に支えられて。友と研磨しながら、今の地位にいるんです。

まあ、もっとも本人は、地位になど固執も無く。ひたすらに錬金術の向上以外は頭に無いんですが。」

「その人には、支えてくれた、旦那様と友人が居たんですよね。

でも、私には何もないんです。

好きな人も、好きになってくれる人も。家族も、友人も。」

エミリアは、学院に入る前の月に母親を亡くした。

父は誰だかすらも分からなく。母親が死んで天涯孤独の身となった。

母の残した貯金も尽き。働くにも、市民権も保証人も居ないエミリアに、子供でも雇ってくれる取る所など在るはずも無く。

途方に暮れていた所に、錬金学校の噂を聞きつけて、藁にも縋る思いで門をたたいたのだ。

「あら?私はエミリアさんと、友達だと思っていたのですけれど。

私の独りよがりでしたのかしら?」

「えっ?」

「生徒である前に。友達として心配して居るからこそ。

エミリアさんに声を掛けているのですけれど。

そうですかあ。エミリアさんは、私の事など眼中になかったと。

シクシク。」

ワザとらしく声を上げて泣く仕草をするセツナ。

「せ、せ、セツナ先生!」

「友達だとおもっていたのにぃ~。」

「友達です!」

「はい。」

伏せていた顔を上げて笑顔で返すセツナ。

「それでは、これからは学院以外の場所ではエミリアって呼び捨てで呼びますからね。

エミリアも、学院以外の場所ではセツナって呼んでくださいね。」

「はい……。」

何だろう。やられた感は在るけれど。悪くはない気持ち。

「セツナ。」

「はい。」

「今日は、学院を休んで、ジックリ考えてみたいと思います。」

「分かりました。」

「それでは。」

そう言って、宿舎に帰宅しようとしたエミリアにセツナが声を掛ける。

「エミリア。

例えアナタが教員の事を断っても。私たちは友達ですからね。」

そう言って、エミリアに向かって笑顔で手を振るセツナ。

(狡いですよセツナ……。)

エミリアの顔は綻んでいた。
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