81 / 92
第74話 友達
しおりを挟む
*時は流れて半年*
「あっ!セツナ先生! お早う御座います!」
「お早う御座います。エミリアさん。」
登校途中の道筋で、生徒と顔を合わせて挨拶をするセツナ。
このエミリアと言う生徒。
貧民街の出の者なのだが。こと、錬金術師の才においては他の生徒と比べても、セツナとタイガ並みに抜きんでている。
開校して僅かに1週間で、錬金術師の初級を解放させてしまい。
1ヶ月経つ頃には、初級錬金術を網羅させていた。
しかも、エミリアは来月には成人の儀を迎える事になる。
「エミリアさん。教員の件は考えてくれていますか?」
「えっと……まぁ、一応は……」
「学院生として在学できるのは成人の儀まで。
錬金の才能が有りと認められれば、更に半年間は在学できますが。
その間に才能が開花しなければ、錬金の才は無しと見なされて学院に滞在できなくなります。
もちろん、職の斡旋などはしますが。
そこから先は自己責任です。
嫌な言い方をしますが。学院は錬金術師を育成する場であって。
慈善で生徒を受け入れている訳では在りません。」
そう。未来の錬金術師を育成するために。
最低限では在るが。衣食住の全てを提供しているのだ。
満6歳~14歳までの未成年者を対象に。
卒業後は、錬金術師を生業にしても良いし。
お金を払う事で、錬金学校に通学し続ける事も出来る。
また、成人の儀で錬金術師の職業が無くても職業に見合った就職先を紹介して貰える。
在学時に、簡単な計算式と文字も教えてくれるので。
他の職にも就きやすくなる。
「エミリアさんなら。教員として教えながらでも、自分の錬金術師としての技術を伸ばす事も可能だと私は思うのですが。」
「本当に、そうなんでしょうか?
貧民街出身の私なんかに務まるのでしょうか?」
(ご自身の出自にコンプレックスを抱いていますのね。)
「エミリアさん。ひとつ良い事を教えて差し上げましょう。
私の師。 今でこそは、錬金術師として色々な偉業を出していますが。
1年ほど前までは、血盟で役立たずと言われて諭されて解雇されたんです。」
「えっ!?」
「当時は、錬金術師の情報すらなく。
職業は授かっていても、何もできない役立たず。
それが、当時の師でした。」
「そんな……上級錬金術式まで使える凄い人が?」
「そうですよ。師の恩人とも言える人物に出会い。
錬金のヒントを手に入れて、錬金術師の職業を解放させる。
そこからは、1人で何の手掛かりも無く、ただひたすらに手探りで試行錯誤を繰り返し失敗を重ねて、それでも心折れずに頑張って頑張って。
良き夫に支えられて。友と研磨しながら、今の地位にいるんです。
まあ、もっとも本人は、地位になど固執も無く。ひたすらに錬金術の向上以外は頭に無いんですが。」
「その人には、支えてくれた、旦那様と友人が居たんですよね。
でも、私には何もないんです。
好きな人も、好きになってくれる人も。家族も、友人も。」
エミリアは、学院に入る前の月に母親を亡くした。
父は誰だかすらも分からなく。母親が死んで天涯孤独の身となった。
母の残した貯金も尽き。働くにも、市民権も保証人も居ないエミリアに、子供でも雇ってくれる取る所など在るはずも無く。
途方に暮れていた所に、錬金学校の噂を聞きつけて、藁にも縋る思いで門をたたいたのだ。
「あら?私はエミリアさんと、友達だと思っていたのですけれど。
私の独りよがりでしたのかしら?」
「えっ?」
「生徒である前に。友達として心配して居るからこそ。
エミリアさんに声を掛けているのですけれど。
そうですかあ。エミリアさんは、私の事など眼中になかったと。
シクシク。」
ワザとらしく声を上げて泣く仕草をするセツナ。
「せ、せ、セツナ先生!」
「友達だとおもっていたのにぃ~。」
「友達です!」
「はい。」
伏せていた顔を上げて笑顔で返すセツナ。
「それでは、これからは学院以外の場所ではエミリアって呼び捨てで呼びますからね。
エミリアも、学院以外の場所ではセツナって呼んでくださいね。」
「はい……。」
何だろう。やられた感は在るけれど。悪くはない気持ち。
「セツナ。」
「はい。」
「今日は、学院を休んで、ジックリ考えてみたいと思います。」
「分かりました。」
「それでは。」
そう言って、宿舎に帰宅しようとしたエミリアにセツナが声を掛ける。
「エミリア。
例えアナタが教員の事を断っても。私たちは友達ですからね。」
そう言って、エミリアに向かって笑顔で手を振るセツナ。
(狡いですよセツナ……。)
エミリアの顔は綻んでいた。
「あっ!セツナ先生! お早う御座います!」
「お早う御座います。エミリアさん。」
登校途中の道筋で、生徒と顔を合わせて挨拶をするセツナ。
このエミリアと言う生徒。
貧民街の出の者なのだが。こと、錬金術師の才においては他の生徒と比べても、セツナとタイガ並みに抜きんでている。
開校して僅かに1週間で、錬金術師の初級を解放させてしまい。
1ヶ月経つ頃には、初級錬金術を網羅させていた。
しかも、エミリアは来月には成人の儀を迎える事になる。
「エミリアさん。教員の件は考えてくれていますか?」
「えっと……まぁ、一応は……」
「学院生として在学できるのは成人の儀まで。
錬金の才能が有りと認められれば、更に半年間は在学できますが。
その間に才能が開花しなければ、錬金の才は無しと見なされて学院に滞在できなくなります。
もちろん、職の斡旋などはしますが。
そこから先は自己責任です。
嫌な言い方をしますが。学院は錬金術師を育成する場であって。
慈善で生徒を受け入れている訳では在りません。」
そう。未来の錬金術師を育成するために。
最低限では在るが。衣食住の全てを提供しているのだ。
満6歳~14歳までの未成年者を対象に。
卒業後は、錬金術師を生業にしても良いし。
お金を払う事で、錬金学校に通学し続ける事も出来る。
また、成人の儀で錬金術師の職業が無くても職業に見合った就職先を紹介して貰える。
在学時に、簡単な計算式と文字も教えてくれるので。
他の職にも就きやすくなる。
「エミリアさんなら。教員として教えながらでも、自分の錬金術師としての技術を伸ばす事も可能だと私は思うのですが。」
「本当に、そうなんでしょうか?
貧民街出身の私なんかに務まるのでしょうか?」
(ご自身の出自にコンプレックスを抱いていますのね。)
「エミリアさん。ひとつ良い事を教えて差し上げましょう。
私の師。 今でこそは、錬金術師として色々な偉業を出していますが。
1年ほど前までは、血盟で役立たずと言われて諭されて解雇されたんです。」
「えっ!?」
「当時は、錬金術師の情報すらなく。
職業は授かっていても、何もできない役立たず。
それが、当時の師でした。」
「そんな……上級錬金術式まで使える凄い人が?」
「そうですよ。師の恩人とも言える人物に出会い。
錬金のヒントを手に入れて、錬金術師の職業を解放させる。
そこからは、1人で何の手掛かりも無く、ただひたすらに手探りで試行錯誤を繰り返し失敗を重ねて、それでも心折れずに頑張って頑張って。
良き夫に支えられて。友と研磨しながら、今の地位にいるんです。
まあ、もっとも本人は、地位になど固執も無く。ひたすらに錬金術の向上以外は頭に無いんですが。」
「その人には、支えてくれた、旦那様と友人が居たんですよね。
でも、私には何もないんです。
好きな人も、好きになってくれる人も。家族も、友人も。」
エミリアは、学院に入る前の月に母親を亡くした。
父は誰だかすらも分からなく。母親が死んで天涯孤独の身となった。
母の残した貯金も尽き。働くにも、市民権も保証人も居ないエミリアに、子供でも雇ってくれる取る所など在るはずも無く。
途方に暮れていた所に、錬金学校の噂を聞きつけて、藁にも縋る思いで門をたたいたのだ。
「あら?私はエミリアさんと、友達だと思っていたのですけれど。
私の独りよがりでしたのかしら?」
「えっ?」
「生徒である前に。友達として心配して居るからこそ。
エミリアさんに声を掛けているのですけれど。
そうですかあ。エミリアさんは、私の事など眼中になかったと。
シクシク。」
ワザとらしく声を上げて泣く仕草をするセツナ。
「せ、せ、セツナ先生!」
「友達だとおもっていたのにぃ~。」
「友達です!」
「はい。」
伏せていた顔を上げて笑顔で返すセツナ。
「それでは、これからは学院以外の場所ではエミリアって呼び捨てで呼びますからね。
エミリアも、学院以外の場所ではセツナって呼んでくださいね。」
「はい……。」
何だろう。やられた感は在るけれど。悪くはない気持ち。
「セツナ。」
「はい。」
「今日は、学院を休んで、ジックリ考えてみたいと思います。」
「分かりました。」
「それでは。」
そう言って、宿舎に帰宅しようとしたエミリアにセツナが声を掛ける。
「エミリア。
例えアナタが教員の事を断っても。私たちは友達ですからね。」
そう言って、エミリアに向かって笑顔で手を振るセツナ。
(狡いですよセツナ……。)
エミリアの顔は綻んでいた。
297
お気に入りに追加
2,125
あなたにおすすめの小説

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
婚約者に見捨てられた悪役令嬢は世界の終わりにお茶を飲む
めぐめぐ
ファンタジー
魔王によって、世界が終わりを迎えるこの日。
彼女はお茶を飲みながら、青年に語る。
婚約者である王子、異世界の聖女、聖騎士とともに、魔王を倒すために旅立った魔法使いたる彼女が、悪役令嬢となるまでの物語を――
※終わりは読者の想像にお任せする形です
※頭からっぽで
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。


異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる