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第65話 ダンジョン探索の事情アレコレ

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ダンジョン探索5日目。地下9階層。

「アベル。」

「ん?」

シャノンに声を掛けられて、アベルが足を止める。

「トイレ。」

「了解。」

そう言って、ディハルトとビートの元に行って少しだけ離れる。

離れると言っても5メートルほどだ。

シャノンは、マジックポーチの中から組み立て式の簡易トイレを出す。

四隅に伸縮式の棒を立てて真ん中に横棒を。

トイレの周りの布を持ち上げて、上の横棒に引っ掛ける。

最後に、マジックポーチとは違う、ポーチの中から瓶に入れたスライムを取り出してトイレの中に居れる。

準備完了。

小なら、シャリアかカナンに布を持ってもらって済ませればいいけど。

流石に、大の場合はそうはいかない。

大半の女性大陸商業組合プラントライセンス持ちに言える事なのだが。

戦闘中は、乳房を露出しようと、下半身が丸出しだろうと恥ずかしがる事はしない。

恥ずかしがるイコールが【死】に直結するからだ。

が、女を辞めている訳ではないので、平時には恥ずかしがるくらいの器量は持ち合わせている。

「アベル。あと何日分くらいだ?」

「そうですね。来るのに4日。潜って5日。

まだ余裕はありますが、ここら辺で切り上げるのが良いかと。」

「そうだな。戻るのにも、同じ日数を考えた方が無難だな。」

自動地図作成機能オートマッピングの御蔭で、帰り道が判っているとは言え、予測不能の事態は考慮しておくに限りますからね。

大陸商業組合プラントのクエストの採取物自体は集まっていますし、帰路の途中でも追加での採取も可能ですし。」

大陸商業組合プラントの採取依頼は、太陽草。月光草。賢者草。

の採取。

この3つの採取依頼は、大陸商業組合プラントでも常時依頼に為っている。

太陽草、月光草、賢者草は、高級回復薬の素材にもなるので常時依頼に為っている。

採取事態は難しくは無いが、採取できる場所が限られている為に高額クエストになりやすい。

なにせ、太陽草、月光草、賢者草は、ダンジョン内に生えているのだから。

さて、ダンジョン探索で、問題は何かと尋ねると。大半の大陸商業組合プラントライセンス持ちは、こう答える。

【食料とトイレ】

本来、ダンジョン探索は百人からの規模で行われる。

浅い階層ならいざ知らず。深い階層の探索になると。

支援する部隊が必要になる。

なにせ、食糧事情は最前線の探索する部隊の士気にも関わる。

最前線で探索攻略を行う部隊6人~10人。

その部隊に、物資を届けながら、採取したアイテムを持ち帰る部隊。

その支援部隊の支援をする部隊。

途中の中継での拠点の確保(深層に潜れば潜るほどに、中継点の数は増える)。

拠点防衛のための人員。

その拠点までの支援部隊の確保。と言った具合に。

最前線で探索する部隊の為に、百人以上の人員が必要になる。

狭い閉鎖空間での連続しての戦闘。

気を抜けない中での食事にトイレ。

身体を奇麗に保てない圧倒的なまでの不衛生。

どんなに、慣れた大陸商業組合プラントライセンス持ちでも、恐らく精神的均衡を保たれるのは20日前後(往復)。

マジックポーチが出回りっているとは言え、食糧事情は悩みが尽きない。

なにせ、時間の遅延や時間停止の効果でもマジックポーチに付属していないと、鮮度が保てるのは2~3日(問題なく食べれる)が良い所だ。

故に、探索中の食事のメインは、干し肉や、干し魚、乾パンなどを水で煮炊きして柔らかくした食事だ。

今回は、全員が個人でのマジックポーチ所持者の上に、ダンジョンに潜り慣れている人選なので良い方なのだが。

そろそろ、まともな味の付いた食事がしたくなってくる時期だ。

風呂にも入れない上に、身体も満足に拭いていられる状態でもない。

精神的にも、きつくなってくるころ。

「皆。そのまま聞いてくれ。

今回の探索は、ここ迄で引き返す。」

ビートの声で、女性陣から安堵の気配が察せれる。

「帰路の途中で、追加での採取を行いながらの帰還だ。

出るまでは、気を抜きすぎるなよ。」

「了解。」

全員が声を揃えて言う。
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