50 / 80
第45話 王様との謁見の筈なのに
しおりを挟む
マリーに案内された部屋に入ると。
部屋の中には、既にクラウス公爵が腰を掛けて待っていた。
「お久しぶりです。クラウス公爵様。」
「2年ぶりか?フォルスト辺境伯も壮健そうで何よりだ。
座ってくれ。 マリー皆に茶を頼む。」
「畏まりました。」
「それで、どちらが精霊の加護を?」
「アベル。」
レイジに言われて、アベルが1歩前に出て頭を下げる。
「お初に、お目にかかります。クラウス公爵様。
自分は、アベルと申します。」
「ふむ。良ければ、精霊の加護の紋章を見せて貰っても?」
手袋を外して、クラウス公爵の方に近づき、膝をついて右手を差し出す。
クラウス公爵は差し出された手の甲の紋章を繁々と見つめる。
「初めて見るのだが。少し、書き写させて貰っても良いか?」
「はい。」
「マリー。アベル殿の手の甲の紋章を書き写してくれ。」
「畏まりました。」
マリーは、羽ペンとインク瓶。それと羊皮紙を用意すると。
アベルの手の甲の紋章を書き写す。
六芒星の中に円が描かれ。その円の中に見慣れない模様が。
六芒星の頂点の部分にも、少し小さな模様が描かれている。
* * * *
翌々日(2日後)。
昼過ぎに、王宮からの迎えの馬車が来て、クラウス公爵とアベル達を乗せて王宮に。
待合室で、アベル、ビート、コーウェル神父の3人が待たされて。
レイジと、クラウス公爵は別の部屋に案内された。
待たされること30分。
漸く、案内の兵士が現れて、レイジ達と合流。
15分ほど、階段を昇り降りさせられて謁見の間の扉前に。
(うわぁ……。入りたくない……。)
扉を前にして、アベルが最初に思ったのはコレだった。
危険察知がビンビンに働いているのだ。
王様に謁見するのに、何故か危険察知のスキルが発動中。
しかも、レイジ達に知らせようにも、伝える手段が無い。
危険察知が働いているので、謁見の間に入りたくないです。
なんて言える訳も無く。
アベルの思いとは裏腹に、扉が開かれていく。
開かれた扉の先には、数多くの貴族たちが中央を挟んで並んでいる。
手前が、下級貴族。王の元に向かう程に上級貴族の爵位持ち。
先にクラウス公爵と、レイジが入っていき。
その次に、アベル達が部屋に足を踏み入れた瞬間だった。
アベルの足元から、植物の蔦が左右に伸びて脇に並んでいた貴族たちを絡めとる。
その数、16。
その様子に、城の兵士たちが、剣を槍を構えて、魔術師は魔術の詠唱に入り、アベルに視線を向ける。
「アベル!?」
レイジが、慌ててアベルの方を振り向くが、アベル自身も何が起きているのか判ってない表情だった。
『人の王よ。 我たちを怒らせたいのか?』
アベルの左右には、樹の精霊ドライアドと、風の精霊ジンが姿を現せていた。
部屋の中には、既にクラウス公爵が腰を掛けて待っていた。
「お久しぶりです。クラウス公爵様。」
「2年ぶりか?フォルスト辺境伯も壮健そうで何よりだ。
座ってくれ。 マリー皆に茶を頼む。」
「畏まりました。」
「それで、どちらが精霊の加護を?」
「アベル。」
レイジに言われて、アベルが1歩前に出て頭を下げる。
「お初に、お目にかかります。クラウス公爵様。
自分は、アベルと申します。」
「ふむ。良ければ、精霊の加護の紋章を見せて貰っても?」
手袋を外して、クラウス公爵の方に近づき、膝をついて右手を差し出す。
クラウス公爵は差し出された手の甲の紋章を繁々と見つめる。
「初めて見るのだが。少し、書き写させて貰っても良いか?」
「はい。」
「マリー。アベル殿の手の甲の紋章を書き写してくれ。」
「畏まりました。」
マリーは、羽ペンとインク瓶。それと羊皮紙を用意すると。
アベルの手の甲の紋章を書き写す。
六芒星の中に円が描かれ。その円の中に見慣れない模様が。
六芒星の頂点の部分にも、少し小さな模様が描かれている。
* * * *
翌々日(2日後)。
昼過ぎに、王宮からの迎えの馬車が来て、クラウス公爵とアベル達を乗せて王宮に。
待合室で、アベル、ビート、コーウェル神父の3人が待たされて。
レイジと、クラウス公爵は別の部屋に案内された。
待たされること30分。
漸く、案内の兵士が現れて、レイジ達と合流。
15分ほど、階段を昇り降りさせられて謁見の間の扉前に。
(うわぁ……。入りたくない……。)
扉を前にして、アベルが最初に思ったのはコレだった。
危険察知がビンビンに働いているのだ。
王様に謁見するのに、何故か危険察知のスキルが発動中。
しかも、レイジ達に知らせようにも、伝える手段が無い。
危険察知が働いているので、謁見の間に入りたくないです。
なんて言える訳も無く。
アベルの思いとは裏腹に、扉が開かれていく。
開かれた扉の先には、数多くの貴族たちが中央を挟んで並んでいる。
手前が、下級貴族。王の元に向かう程に上級貴族の爵位持ち。
先にクラウス公爵と、レイジが入っていき。
その次に、アベル達が部屋に足を踏み入れた瞬間だった。
アベルの足元から、植物の蔦が左右に伸びて脇に並んでいた貴族たちを絡めとる。
その数、16。
その様子に、城の兵士たちが、剣を槍を構えて、魔術師は魔術の詠唱に入り、アベルに視線を向ける。
「アベル!?」
レイジが、慌ててアベルの方を振り向くが、アベル自身も何が起きているのか判ってない表情だった。
『人の王よ。 我たちを怒らせたいのか?』
アベルの左右には、樹の精霊ドライアドと、風の精霊ジンが姿を現せていた。
791
お気に入りに追加
2,243
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~
あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。
その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。
その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。
さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。
様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。
ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。
そして、旅立ちの日。
母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。
まだ六歳という幼さで。
※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。
上記サイト以外では連載しておりません。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる