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第45話 王様との謁見の筈なのに

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マリーに案内された部屋に入ると。

部屋の中には、既にクラウス公爵が腰を掛けて待っていた。

「お久しぶりです。クラウス公爵様。」

「2年ぶりか?フォルスト辺境伯も壮健そうで何よりだ。

座ってくれ。 マリー皆に茶を頼む。」

「畏まりました。」

「それで、どちらが精霊の加護を?」

「アベル。」

レイジに言われて、アベルが1歩前に出て頭を下げる。

「お初に、お目にかかります。クラウス公爵様。

自分は、アベルと申します。」

「ふむ。良ければ、精霊の加護の紋章を見せて貰っても?」

手袋を外して、クラウス公爵の方に近づき、膝をついて右手を差し出す。

クラウス公爵は差し出された手の甲の紋章を繁々と見つめる。

「初めて見るのだが。少し、書き写させて貰っても良いか?」

「はい。」

「マリー。アベル殿の手の甲の紋章を書き写してくれ。」

「畏まりました。」

マリーは、羽ペンとインク瓶。それと羊皮紙を用意すると。

アベルの手の甲の紋章を書き写す。

六芒星の中に円が描かれ。その円の中に見慣れない模様が。

六芒星の頂点の部分にも、少し小さな模様が描かれている。


 * * * *


翌々日(2日後)。

昼過ぎに、王宮からの迎えの馬車が来て、クラウス公爵とアベル達を乗せて王宮に。

待合室で、アベル、ビート、コーウェル神父の3人が待たされて。

レイジと、クラウス公爵は別の部屋に案内された。

待たされること30分。

ようやく、案内の兵士が現れて、レイジ達と合流。

15分ほど、階段を昇り降りさせられて謁見の間の扉前に。

(うわぁ……。入りたくない……。)

扉を前にして、アベルが最初に思ったのはコレだった。

危険察知がビンビンに働いているのだ。

王様に謁見するのに、何故か危険察知のスキルが発動中。

しかも、レイジ達に知らせようにも、伝える手段が無い。

危険察知が働いているので、謁見の間に入りたくないです。

なんて言える訳も無く。

アベルの思いとは裏腹に、扉が開かれていく。

開かれた扉の先には、数多くの貴族たちが中央を挟んで並んでいる。

手前が、下級貴族。王の元に向かう程に上級貴族の爵位持ち。

先にクラウス公爵と、レイジが入っていき。

その次に、アベル達が部屋に足を踏み入れた瞬間だった。

アベルの足元から、植物のつたが左右に伸びて脇に並んでいた貴族たちを絡めとる。

その数、16。

その様子に、城の兵士たちが、剣を槍を構えて、魔術師メイジは魔術の詠唱に入り、アベルに視線を向ける。

「アベル!?」

レイジが、慌ててアベルの方を振り向くが、アベル自身も何が起きているのか判ってない表情だった。

『人の王よ。 我たちを怒らせたいのか?』

アベルの左右には、樹の精霊ドライアドと、風の精霊ジンが姿を現せていた。
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