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第30話 貴族様が来ました
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トントン。
ドアノッカーを叩く音がする。
「はい。」
アベルが、少しドアを開いて外を見る。
「突然の訪問失礼。
こちら、錬金術師殿の滞在する家と聞いてきたのだが。
合っているか?」
「合っています。お待ちを。」
ドアを閉めて、ドアチェーンを外してドアを開ききる。
「中へどうぞ。」
「失礼するよ。」
ソファーに座る、ルナとエリスを見て、軽くお辞儀をする男性。
2人も、男性に御辞儀を返す。
「お茶を持ってきますので。座って寛いでてください。」
男性を促し、アベルは台所に向かう。
男性は、ソファーの前で2人に視線を向けて。
「初めまして。お嬢さんがた。 私は、エギンと言います。」
「ルナです。」
「エリスです。」
そこにアベルが、お茶をカップに入れてエギンの前に置く。
そして、エギンの対面の席に腰を下ろす。
「今日は、突然の来訪の無礼を許し願いたい。」
そう言って、エギンはテーブルに置かれたカップを手に取り中身を口にれる。
その様子を見て、アベルが額に手を当てたまま首を垂れる。
「アベル?」
ルナが、アベルに声を掛ける。
「辺境伯様。出された茶を、口するなど不用心が過ぎませんか?」
「「!!?」」
アベルの言葉に、ルナと、エリスが驚く。
「おや? 一応、偽名を名乗ったはずだが?」
「英華の剣に所属の時に。1度だけですが、ご尊顔を拝見したことが御座います。」
「はっはははは! こりゃ参った。」
「それで、護衛も付けず。こんな所に何用ですか?」
「あ~。良い良い。今日は忍びで来ている。敬語は無しだ。
改めて、シグルート領、辺境伯のレイジだ。
なに、最近自領で噂になっている、錬金術師殿の顔を拝見したくてな。
激務を、前倒しで終わらせて来たと言う訳だ。
茶を口にしたのは、毒が入っていないのは判っていたからだ。
それで。どちらの女性が、錬金術師殿なのかな?」
「2人ともです。」
「2人とも、錬金術を使うのか?」
「はい。私も、エリスも、錬金術師です。」
「ええ。使う術式は異なりますが。」
「ほう。 使う術式の違いは?」
「私は、錬金釜を使用しての錬金で。」
「私は、錬金陣を使用しての錬金です。」
「出来上がった物の性能の差に影響は?」
「付与効果に、多少の違いは出ますが。
出来上がった物に対しての劣悪の差は御座いません。」
「着く付与効果に関しては。素材での選別時で決定されるので。
素材固定の、付与効果以外の、付与に関しては、運任せになりますね。」
「ほう……。」
「それで?本題は?」
「ん? 本題?」
「「「えっ?」」」
「何を驚いている?」
「いや、お貴族様だから、てっきり無理難題を……。っと失礼。」
「お前、本当に失礼な奴だな。と言いたいが。
辺境伯なんぞしてると、礼節よりも、自領にとって、使えるか、使えないかの方が問題なんだよ。
実質。シグルートの周辺は、魔物の徘徊率が高い上に。
他の街と比べても、ダンジョンや危険地域の類も多い。
そんな場所で、貴族だからって、ふんぞり返っていてみろ。
速攻で、他の領地の貴族たちに良いように使われるってもんだ。
そこに来て、僅かに8か月で、商業大陸組合ライセンスを10等級から、4等級に上げたライセンス資格者が居ると聞いたら。
合わない訳には、いかんだろうに。」
レイジが言った言葉に、思わずルナに目線を向けてしまうアベル。
「おっ。そっちの嬢ちゃんか。 ルナだったな。」
「は、はい……。」
「そんなに、緊張するなってのも無理だよな。
何も、取って食おうって訳じゃない。
むしろ逆だ。」
「逆ですか?」
「そうだ。 お前たちを【囲いたい】。」
「囲うですか?」
「そうだ。 簡単に言うと。俺を。後ろ盾に着けろって話だ。」
「それは、辺境伯様の御用達に為れと?」
「本当は、それが一番いいんだがな。
此処に来る前に大陸商業組合に寄って、お前たちの稼ぎを凡そだが把握はしてる。
市民権を買っても、お釣りがくる稼ぎだってのはな。
なのに、市民権を買おうとはしない。
つまりは、フリーで居たい。もしくは、何か在った時に、いつでもシグルートの街から離れられる状況にしておきたい。
違うか?」
「……。その通りです。」
「そこで、俺の出番だ。
お前たちの言う厄介事。つまりは、俺たち貴族の事だ。」
降参。と言わんばかりに、アベルが両手の手の平を上に向けて上げる
「俺の爵位は、知っての通り辺境伯だ。
爵位の順位で言えば、王族を除けば上から4番目だ。
俺より上ってのは、大公。公爵。侯爵。
この3爵位と王族だな。
でだ。俺の後ろ盾が無い場合。
お前たちは、間違いなく、貴族間の揉め事に巻き込まれる。
確実に。」
「何で言い切れるんですか?」
ルナが訊ねる。
「有用だからだ。
自覚が無いようだから教えて置いてやる。
お前さん方が扱う錬金術。
それな、古代の秘法とまで言われてんだよ。」
「古代の秘法? 確かに、錬金の使い手は珍しいと思いますが。
そこまで珍しい物では……。」
言いかけて言葉を止めるアベル。
「気が付いたようだな。」
「ええ。2人が作った武器ですね。」
「大当たりだ。」
「でも、アレは誰にも言わないと約束して。」
「そう!誰にも言ってない! それは保証できる。」
「ならなんで?」
「忘れてないか? 職業スキルの事を。」
「……!」
大きく目を見開いて、レイジを見るアベル。
「そうだ、鑑定の職業スキルだ。
偶然、鑑定持ちの職業が居て。
偶然、あの武器を鑑定したんだ。
本当に、気まぐれで。 いい武器使っているなぁ~。くらいの感覚で鑑定をした。
が。 それが不味かった。
なんせ、付いてる付与効果が5つだ。
もはや、国宝級と比べても遜色のない出来だ。」
そこまで言って、残りの茶を一気に飲み干すレイジ。
* * * *
本日は、もう一本。
21時に公表予定です。
ドアノッカーを叩く音がする。
「はい。」
アベルが、少しドアを開いて外を見る。
「突然の訪問失礼。
こちら、錬金術師殿の滞在する家と聞いてきたのだが。
合っているか?」
「合っています。お待ちを。」
ドアを閉めて、ドアチェーンを外してドアを開ききる。
「中へどうぞ。」
「失礼するよ。」
ソファーに座る、ルナとエリスを見て、軽くお辞儀をする男性。
2人も、男性に御辞儀を返す。
「お茶を持ってきますので。座って寛いでてください。」
男性を促し、アベルは台所に向かう。
男性は、ソファーの前で2人に視線を向けて。
「初めまして。お嬢さんがた。 私は、エギンと言います。」
「ルナです。」
「エリスです。」
そこにアベルが、お茶をカップに入れてエギンの前に置く。
そして、エギンの対面の席に腰を下ろす。
「今日は、突然の来訪の無礼を許し願いたい。」
そう言って、エギンはテーブルに置かれたカップを手に取り中身を口にれる。
その様子を見て、アベルが額に手を当てたまま首を垂れる。
「アベル?」
ルナが、アベルに声を掛ける。
「辺境伯様。出された茶を、口するなど不用心が過ぎませんか?」
「「!!?」」
アベルの言葉に、ルナと、エリスが驚く。
「おや? 一応、偽名を名乗ったはずだが?」
「英華の剣に所属の時に。1度だけですが、ご尊顔を拝見したことが御座います。」
「はっはははは! こりゃ参った。」
「それで、護衛も付けず。こんな所に何用ですか?」
「あ~。良い良い。今日は忍びで来ている。敬語は無しだ。
改めて、シグルート領、辺境伯のレイジだ。
なに、最近自領で噂になっている、錬金術師殿の顔を拝見したくてな。
激務を、前倒しで終わらせて来たと言う訳だ。
茶を口にしたのは、毒が入っていないのは判っていたからだ。
それで。どちらの女性が、錬金術師殿なのかな?」
「2人ともです。」
「2人とも、錬金術を使うのか?」
「はい。私も、エリスも、錬金術師です。」
「ええ。使う術式は異なりますが。」
「ほう。 使う術式の違いは?」
「私は、錬金釜を使用しての錬金で。」
「私は、錬金陣を使用しての錬金です。」
「出来上がった物の性能の差に影響は?」
「付与効果に、多少の違いは出ますが。
出来上がった物に対しての劣悪の差は御座いません。」
「着く付与効果に関しては。素材での選別時で決定されるので。
素材固定の、付与効果以外の、付与に関しては、運任せになりますね。」
「ほう……。」
「それで?本題は?」
「ん? 本題?」
「「「えっ?」」」
「何を驚いている?」
「いや、お貴族様だから、てっきり無理難題を……。っと失礼。」
「お前、本当に失礼な奴だな。と言いたいが。
辺境伯なんぞしてると、礼節よりも、自領にとって、使えるか、使えないかの方が問題なんだよ。
実質。シグルートの周辺は、魔物の徘徊率が高い上に。
他の街と比べても、ダンジョンや危険地域の類も多い。
そんな場所で、貴族だからって、ふんぞり返っていてみろ。
速攻で、他の領地の貴族たちに良いように使われるってもんだ。
そこに来て、僅かに8か月で、商業大陸組合ライセンスを10等級から、4等級に上げたライセンス資格者が居ると聞いたら。
合わない訳には、いかんだろうに。」
レイジが言った言葉に、思わずルナに目線を向けてしまうアベル。
「おっ。そっちの嬢ちゃんか。 ルナだったな。」
「は、はい……。」
「そんなに、緊張するなってのも無理だよな。
何も、取って食おうって訳じゃない。
むしろ逆だ。」
「逆ですか?」
「そうだ。 お前たちを【囲いたい】。」
「囲うですか?」
「そうだ。 簡単に言うと。俺を。後ろ盾に着けろって話だ。」
「それは、辺境伯様の御用達に為れと?」
「本当は、それが一番いいんだがな。
此処に来る前に大陸商業組合に寄って、お前たちの稼ぎを凡そだが把握はしてる。
市民権を買っても、お釣りがくる稼ぎだってのはな。
なのに、市民権を買おうとはしない。
つまりは、フリーで居たい。もしくは、何か在った時に、いつでもシグルートの街から離れられる状況にしておきたい。
違うか?」
「……。その通りです。」
「そこで、俺の出番だ。
お前たちの言う厄介事。つまりは、俺たち貴族の事だ。」
降参。と言わんばかりに、アベルが両手の手の平を上に向けて上げる
「俺の爵位は、知っての通り辺境伯だ。
爵位の順位で言えば、王族を除けば上から4番目だ。
俺より上ってのは、大公。公爵。侯爵。
この3爵位と王族だな。
でだ。俺の後ろ盾が無い場合。
お前たちは、間違いなく、貴族間の揉め事に巻き込まれる。
確実に。」
「何で言い切れるんですか?」
ルナが訊ねる。
「有用だからだ。
自覚が無いようだから教えて置いてやる。
お前さん方が扱う錬金術。
それな、古代の秘法とまで言われてんだよ。」
「古代の秘法? 確かに、錬金の使い手は珍しいと思いますが。
そこまで珍しい物では……。」
言いかけて言葉を止めるアベル。
「気が付いたようだな。」
「ええ。2人が作った武器ですね。」
「大当たりだ。」
「でも、アレは誰にも言わないと約束して。」
「そう!誰にも言ってない! それは保証できる。」
「ならなんで?」
「忘れてないか? 職業スキルの事を。」
「……!」
大きく目を見開いて、レイジを見るアベル。
「そうだ、鑑定の職業スキルだ。
偶然、鑑定持ちの職業が居て。
偶然、あの武器を鑑定したんだ。
本当に、気まぐれで。 いい武器使っているなぁ~。くらいの感覚で鑑定をした。
が。 それが不味かった。
なんせ、付いてる付与効果が5つだ。
もはや、国宝級と比べても遜色のない出来だ。」
そこまで言って、残りの茶を一気に飲み干すレイジ。
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