上 下
3 / 92

第3話 朝チュンしちゃいました

しおりを挟む
自分と同じような発言に、思わず声のした方に顔を向ける。

セミロングのオレンジの髪。 金色の瞳。

フチ無し眼鏡をかけ。体系はスレンダー。

相手も同じように、俺を見ていた。

お互いに、顔を合わせたまま苦笑いを。

「どうかしたの?」

声を掛けてきたのは、相手の女性からだった。

「まあね。ちょっと。働いていた血盟クランをクビになってね。

これからどうしようかと。」

「奇遇だね。私もなんだよ。」

「「ははは……。」」

2人で乾いた笑いを。

ぐう~~。

タイミング良くと言うか何というか。

俺の腹の虫が鳴った。

「2人して、こんな場所で出会って失業中。

どう。失業した者同士で。失業記念食事会でも。」

「良いね。割り勘で良いなら。」

「そこはカッコ良く、俺が奢るから。じゃないの!?」

「失業して、明日からどうするか迷ってる俺に?」

「あははは。冗談よ。で、どうする?」

「割り勘で良いなら。これは譲れない。」

「あははっ! 決まり! 行こう。行こう!」

時刻は夕方。逢魔が時。

近くの飯処に入って2人で注文を頼む。

「出会いと!失業に!乾杯!」

「ぷっ。なんだよ。それ。」

店の隅のテーブル席で、エールが入ったジョッキを掲げて乾杯する。

「私はルナ。貴方は?」

「俺は、アベル。」

追加のエールを頼んで、飲み食いしながら、お互いの事を話す。

ルナも孤児で、俺とは違う地区の孤児院出身。

年は、俺と同じで18歳。

職業ジョブスキルは錬金術師アルケミスト

「錬金術師?聞いたことないな。

錬金術って、どんな職業ジョブスキルなんだ?」

「素材と、素材を融合させて。 全く別の物にできるスキルだと思う?」

「何で、疑問形なんだよ。」

「だって、戦闘で役に立たないから。パーティー組んで貰えないんだよっ!
パーティー組んで討伐も採取も出来ないから!

スキルビルドが育たないってのっ!

しかも!錬金術師って! 私が初めてらしのよっ!」

「ああぁ~~。うん。納得……。」

俺も、そうなんだが、スキルを鍛える為には、スキルに関連する行動をしないといけない。

剣術とかなら、剣を使って魔物を倒すとか。

鍛冶師なら、武器防具を作るとか。

調理なら、料理を作るとか。

そうする事で、スキルポイントと言うのが貯まっていく。

貯まったスキルポイントを、自分にしか見る事が出来ない、スキルボードと言う不思議な半透明な板に触れてスキルを開放していく。

そして、俺も色々やってみた。

家事手伝いなんだから、洗濯に掃除。料理に裁縫。

帳簿付けに、血盟クラン仲間の子供の世話。

しかし。スキルポイントは増えなかった。

「ほ~んと。なんで、こんな職業ジョブスキルなんだろう……。」

「俺だって。そうさ。可もなく不可もなくって何だよってかんじだよ……。」

「「はああああ……。」」

2人揃って、大きく溜め息をつく。

「やめっ!やめっ! 気持ちを切り替えて!飲もうっ!」

ルナが声をあげて言う。

「だなっ! 飲もうっ!」


 * * * *


「ん……。」

朝日に照らされて目が覚める。

「つっ……。」

頭が痛い。 二日酔いか。

昨日、だいぶ飲んだしな。

体を起こして、ボーっとしながら部屋を見る。

「えっ!?」

隣には、ルナが寝ている。 裸で。

慌てて、布団をルナに掛ける。

そして、自分を確認する。

俺も裸だ。

「う……。ん……。」

ルナも目を覚ます。

「ん……? アベル?」

「えっと。おはよう?ルナ。」

「あ……れ……?」

事態が呑み込めていないらしい。

が。布団の中で、自分が何も身に着けてない事を自覚すると。

みるみる、顔が真っ赤になっていく。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

無能と蔑まれた七男、前世は史上最強の魔法使いだった!?

青空一夏
ファンタジー
ケアニー辺境伯爵家の七男カイルは、生まれつき魔法を使えず、家族から蔑まれて育った。しかし、ある日彼の前世の記憶が蘇る――その正体は、かつて世界を支配した史上最強の大魔法使いアーサー。戸惑いながらも、カイルはアーサーの知識と力を身につけていき、次第に自らの道を切り拓く。 魔法を操れぬはずの少年が最強の魔法を駆使し、自分を信じてくれる商店街の仲間のために立ち上げる。やがてそれは貴族社会すら揺るがす存在へと成長していくのだった。こちらは無自覚モテモテの最強青年になっていく、ケアニー辺境伯爵家の七男カイルの物語。 ※こちらは「異世界ファンタジー × ラブコメ」要素を兼ね備えた作品です。メインは「異世界ファンタジー」ですが、恋愛要素やコメディ要素も兼ねた「ラブコメ寄りの異世界ファンタジー」になっています。カイルは複数の女性にもてますが、主人公が最終的には選ぶのは一人の女性です。一夫多妻のようなハーレム系の結末ではありませんので、女性の方にも共感できる内容になっています。異世界ファンタジーで男性主人公なので男性向けとしましたが、男女関係なく楽しめる内容を心がけて書いていきたいです。よろしくお願いします。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

めでたく婚約破棄で教会を追放されたので、神聖魔法に続いて魔法学校で錬金魔法も極めます。……やっぱりバカ王子は要らない? 返品はお断りします!

向原 行人
ファンタジー
教会の代表ともいえる聖女ソフィア――つまり私は、第五王子から婚約破棄を言い渡され、教会から追放されてしまった。 話を聞くと、侍祭のシャルロットの事が好きになったからだとか。 シャルロット……よくやってくれたわ! 貴女は知らないかもしれないけれど、その王子は、一言で表すと……バカよ。 これで、王子や教会から解放されて、私は自由! 慰謝料として沢山お金を貰ったし、魔法学校で錬金魔法でも勉強しようかな。 聖女として神聖魔法を極めたし、錬金魔法もいけるでしょ! ……え? 王族になれると思ったから王子にアプローチしたけど、思っていた以上にバカだから無理? ふふっ、今更返品は出来ませーん! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...