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ツヴァイ編:居るよね、こう言う奴

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今、現在。

俺は、闘技場の中にいる。

闘技場の中にいる、目の前の男性プレイヤーと向き合っている。

見学ではなく、闘技場の中に居る。

とても大事なことだから、3回言ったぞ。


「化けの皮を剥がしてやる。 糞吟遊詩人バード。」

目の前の男性プレイヤー。

名前は・・・・えっと・・・・。

プレイヤータグを見る。

そうそう、【モブ其の一】

・・・・・・・・・・・・


スイマセン・・・嘘です。


目の前の男性プレイヤーの名前は【宗一郎そういちろう】。

なぜ、俺が、宗一郎と闘技場で、決闘デュエルする事になったのか。

事の次第は、数十分前に逆上る。



    **** 数十分前 ****



「・・・以上を持って、来週の日曜日に、レイド討伐を行う事にします。」

最早、恒例と為りつつある。

新ダンジョンの、レイド討伐編成会議(打ち合わせ)。

俺としては、嬉しくない会談の場である。


「質問したい!」

突然、大声で1人の男性プレイヤーが席から立ち上がりながら。

会談の場を取り仕切る、ティファに向かって言う。

「何か、説明不足でも有りましたか? 宗一郎そういちろうさん。」

立ち上がる、男性プレイヤー宗一郎そういちろうに向かってティファが声をかける。


「前回、前々回と。常々つねづね、思っていたのだが。

ガイと、亜里亜が、LAラストアタック組に居るのは判るが。

なぜ、毎回。

そこの吟遊詩人バードも一緒に 、LAラストアタック組に居るのかが理解できない。」


LAラストアタック:ゲーム用語★
*レイド戦に置いて、高い攻撃力で留めを刺すプレイヤー達の事。
*多くのゲームは、このLAラストアタックでのオーバーキルで倒すと、より多くの(より良い)ドロップが出来るシステムが多い。

★オーバーキル:ゲーム用語★
*最後に、どれだけHP0からダメージを伸ばせるかの事を言う。
☆例:モンスターを、HP1でオーバーキルしようとする場合。。
*マイナス100のダメージで倒すか(実質計算99オーバーダメージ)。
*マイナス1000のダメージ(実質計算999オーバーダメージ)で倒すの違い。


 
宗一郎。たしか、コイツは、一番最初の会談には居らず。

地竜アンタラス討伐の時には、自由参加のギルドとして入っていて。

魔狼フェンリル討伐の時から、会談参加してたギルマスだったな。



「宗一郎さんは、最初の会談の時は居なかったので知らないと思いますが。

イクルは、数少ないOSオリジナルスキルホルダーです。

彼のOSオリジナルスキルは、パーティー&フォースに居る時に効果を発揮できる特殊なOSオリジナルスキルなのです。

だからこそ。

彼には、LAラストアタック組に入って貰っています。」

ティファが、宗一郎を含む、その他面々に最小限の説明をする。

「だけど、彼がモンスター相手に、ダメージを入れている所を見た事は無いのだが。」

宗一郎の言葉に、数人のギルド代表者が頷き同意する。

「先程も、言った通り。

彼のOSオリジナルスキルは、パーティー&フォースに入っている事で、効果が発揮されるんです。

任意発動型《アクティブスキル》ではなく、常時発動型《パシッブスキル》と思ってください。」


任意発動型アクティブスキル
*ウェポンスキル等の、プレイヤーの意思で発動させることが出来るスキル全般のことを言う。

常時発動型パシッブスキル
*持っているだけで、プレイヤーの意思とは関係なく効果を発揮するスキルの事を言う。



「効果内容は?」

宗一郎が、俺に視線を向けて聞いてくる。


「言えないね。」

肩を窄めながら、俺は答える。

「この中で、彼のOSオリジナルスキル内容を知っている人は何人だ?」

宗一郎の言葉に。


ゾディアックの、ティファと、アルスター。

シャッフル同盟の、カーマインと、神楽かぐら

ゆるふわ同盟の、ねぎトロと、ザッハトルテ。

黒薔薇十字軍の、黒姫。

筋肉愛好家の、アドン。

そして、ガイと、蒼夜そうやが手を上げる。

「白姫と、サムソンは知らないのか?」

宗一郎が、サブギルマスなのに、手を挙げていない2人に訪ねた。

「知らない。

黒ちゃんが知ってて、私に話さないのは理由があるからだろうし。

それに彼は、嘘はつくけど、騙す事をしないのは、SOXソックスの時から知ってるから。」

「嘘と、騙すと、どう違うんだ?」

白姫の言葉に宗一郎が聞く。

「彼の嘘は、悪戯いたずらや、人をからかう為の嘘。

彼の嘘には、悪意は含まれていない方が多い。

騙すは。悪意を持って、人をおとしいれようとすること。

一件似ているようだけど、中身は全然違う。」

片肘を机につきながら、白姫が宗一郎に向かって言う。

〝彼の〟を強調して言う辺りは。

白姫の、俺への信頼が含まれているのだろう。

「俺の場合は、酒を飲むと。

リアルでも、USO内でも、口を滑らせてしまう可能性が有るからだそうだ。

まぁ、実際否定できないから文句は言えないがな。」

サムソンが苦笑を浮かべてながら言う。


2人の返事を聞き。

宗一郎が言葉を続けた。


「効果内容は言えない。

効果内容を分かっている人物は、僅かに10人足らず。

今までの、レイドでは。

五大ギルドの面々や。

PKギルド、及びPKKギルドの事柄も考慮すれば、彼の行動を配慮してのLAラストアタック組みへの参加も黙認できたでしょうが。

今回は、2000人以上のプレイヤーが参加するレイド戦です。

他のプレイヤー達が、納得できると思いますか?」

その場の、代表者たちに視線を向けて宗一郎は言う。



彼の言う事は、至極当然のことだ。

知り合いのギルドを主軸として動いていた、地竜アンタラスや、魔狼フェンリル討伐とは違い。

今回は、その他大勢のプレイヤーが参加する。
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