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味覚篇

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ミリアさんの店舗は、1階の一番奥に在る。

ハウス所有者権限が有るのだから、もっと目立つ所に店を構えても良いのだが。

ミリアさん曰く「私は此処が良いんです。」とのこと。

店が並ぶ横に在る。共用調理場に向かい。

ミリアさんが、ステータスウィンドウを開いて調理器具を出し、食材を出していく。

ジャガイモに、人参、ドレイクの生肉に、ネギ。

人参を手に持ち、右手に持つ包丁を人参に当てると。

人参が一瞬で、角切りにされて鍋の中に。

ちなみに、聞いた話では。

食材の切り方も数種類在り。

短冊切り、細切り、角切り、輪切り。他にも色々と選べるらしい。


同じ手順で、ジャガイモとネギを。

そこで、鍋を置く釜に火が点火された。

最後にドレイクの生肉を入れて。

調味料を入れていく。


3秒後に、料理が出来上がった。

まぁ、ゲームなので、製作過程は追求したら負けだ・・・・・。

出来上がった料理は、肉じゃがだった。

見た目も、香りも、美味しそうな肉じゃが。

箸で挟んで、ジャガイモを口に運ぶ。

美味い。

熱々のジャガイモに染み込んだ、チョコレートの味。だった事を除けば。

亜里亜以外のメンバーの顔を見ると。

作った本人の、ミリアさんですらも顔を顰めていた。

「ミリアさん。 もう一度、作ってもらってもいいですか?同じのを。」

「えぇ。」

そう言って、ミリアは再び、肉じゃがを作る。

今度は、苺味。

もう一度、肉じゃがを作ってもらう。

酸っぱ! 今度はレモンだ。


が、何となくなくだが。 何が原因なのかは判った気がする。


「ミリアさん。調味料は何を使ってるんですか?」

そう、3度とも同じ食材で、同じ食べ物を作ったのに。味は3品とも違う。

そうなると、問題は調味料としか思えない。

「普通の調味料ですよ。塩に砂糖。ミリンに醤油。調味酒に〝味の元〟です。」


「「「「味の素!?」」」」

何だそれ?そんなの在ったっけ?アップデートで入ったのか?

「味の素って。あの味の素ですか?」

ルナが聞くと。

「そうだと思いますよ。舐めてみましたけど。あの、味の元でした。」

そう言って、ミリアは小皿に入れた粉末状の物を見せる。

試しに、舐めてみた。

うん。味の素だ・・・。

微妙な独特な旨さ。味の素に間違いない。

他のメンバーにも目をやれば、皆んな指に付けて味見している。

「アップデートで追加されたのかな?」

沙耶さやが言うと。

「追加されていませんよ。」

ミリアさんが答えた。

「「「「えっ!?」」」」

女性陣の声がハモる。

「どうやって、手に入れたんですか?」

シャナが聞く。

「調理してたら、OSオリジナルスキルとして取れちゃいました。」

ニコッ。と笑いながら。ミリアが答える。

「「「「「「「はいっ!?」」」」」」」

ミリア以外の、全員の声が重なる。

「なにそれ!?OSオリジナルスキル!?」

ルナが驚きながら尋ねると。

「はい。 今日の調理中に取れました。」

そう言って、ミリアはスキル欄を公開表示で見せる。

そこには、こう書かれていた。


OSオリジナルスキル:味の元*
*調理物に味の変化を付ける。


「あっ!わかった。 それだ!」

キョウが、ミリアのOSオリジナルスキルの説明を見て言った。

「はいっ?」

ミリアは不思議そうな顔でキョウを見る。

「ちょっと待っててくれ。」

そう言って、キョウは隣の店の売り子から。ミルクを購入して持ってくる。

「これ。 今、買ってきたミルクだ。で、誰か飲んでみてくれ。」

キョウに言われて、沙耶さやがミルクを手に取り、口に入れる。

「味は?」

キョウの言葉に。

「普通のミルクだよ。」

「OK。じゃぁ、ミリアさん。 これに、味の元を入れてくれ。」

「はい。」

ミルクの瓶に、味の元を少量入れる。

「飲んでみて。」

沙耶さやに向かって、キョウが言う。

沙耶がミルクを飲んだ瞬間、顔が微妙な表情になる。

「コーラの味がする。」

沙耶とキョウ以外の皆の視線が、ミルク瓶に集まる。

「やっぱりな。 それ、調味料じゃなくて。

味、そのものを変えるOSオリジナルスキルだな。」

「味、そのものを変える?」

シャナが聞く。

「そう。 味を変える=変化させるOSオリジナルスキル。」

「何? その効果の無さそうなOSは。意味あるの?」

ルナが自分の意見を言う。

沙耶さや。 我慢して、全部飲んで、ステータスを見てみろ。」

「うん。」

まぁ、見た目ミルクのコーラ味なら、相性も悪くないだろうミルクコーラだし(タブン)。

沙耶は言われた通りに、コーラ味ミルクを全部飲み干すと、ステータスを確認する。

「すごっ! ステータスが上昇してる!」

「どのくらい、上がってるんだ?」

キョウが尋ねると。

「HPが150も上がってます。」

「「「「「「「おおぉお!!」」」」」」」

みんなの声が重なる。

ステータスの最高値が200のUSOで、150も上がるとは。

「どうやら、完食しないと、効果は出ないみたいだな。」

ステータスアップの効果は嬉しいが。

納豆味のピザとか、クサヤ味の味噌汁とか出来たら悲惨だな・・・。

などと、思いながら考えていると。

「うぇっ。」

急に、キョウが声を上げる。

キョウを見ると、空になった牛乳瓶を持ち、しかめた顔をしている。

どうやら、新たに牛乳を買ってきて、味の元を入れて飲んだようだ。

反応からすると、ハズレ味だったようだな。

「おっ、俺のは魔力MPが150増えたな。」

自分のステータスを確認して、キョウが言う。

「効果はランダムなのでしょうか?」

沙耶が言うと。

「みたいだな。」

キョウも答える。


 * * * * * *


プレイヤー名:ミリア
メイン職業:錬金術師アルケミスト

取得スキル

調理   100%
錬金術  100%
薬草学  100%
治療学  100%
人体学  100%
調合   100%
交渉   100%



取得OSオリジナルスキル:味の元
OSオリジナルスキル効果:食べ物の味を変化させて、ステータスアップの効果もある。
 消費MP:30


HP  150
MP  150
STM 150

腕力  100
知識  200
素早さ 100
器用さ 150

OSオリジナルスキルを取得したミリアさんだった。
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