母さんは異世界の神様 父さんは神殺しの竜 その両親の子供の俺は?

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです

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第2章

24:表と裏

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ドンッ!ドン!

「ヴェガ様!大変です!」

ドアの外で大声をあげてノックする。

「入れ。」

部屋の中には1人の男性が高級そな椅子に腰かけ、目の前の机に山積みにされている書類と格闘してる最中だった。

「何事だ。騒がしい。」

「はっ! 失礼しました。 が、しかし緊急の事態がっ!」

そう言って、男性がヴェガに書類を差し出す。

ヴェガが手渡された書類に目を通す。

読むにつれて、ヴェガの顔つきが険しくなっていく。

「ふう……。」

読み終えて、大きく溜め息をつくヴェガ。

「如何いたしますか?」

「仕方がない。 フード産業への拡大は一時取りやめて。

アミューズメント方面への拡張を優先する。」

「了解しました。」

「それと。 幹部育成部の予算増額は来月から実地。

アミューズメントへの拡張に成功したら、開発部への増額を見直すと伝えろ。」

「了解です!」

返事を返すと、男は部屋を出ていく。


そう、ここは。 悪の組織シャドーの本部ビル。

火乃原ひのもとの中央部に存在する。

目と鼻の先には、忌まわしい|勇者協会の火乃原ひのもと本部が見えている。

が。 お互いに、そのことは知らない。

まさか、悪の組織本部と、勇者ヒーロー協会の火乃原ひのもと本部同士が大通りを挟んで向かい合っているとは、お天道様でも驚くだろう。

悪の秘密組織とて、資金が無尽蔵に溢れ出ていると言う事など無い。

活動するには、活動資金が必要になる。

なら、その活動資金はどうしているのか。

稼ぐしかないのだ。

世界でも有数の総合企業。シア堂。

表は、薬品医療、ファミレス、カラオケ、アミューズメント。

裏は、臓器密売、兵器開発、兵器販売。

「もう昼か。」

時計を見れば、12時を指していた。

集中力も切れたことだし。 ちょうど良い。昼にしよう。

何を食べようかと少し悩む。

最近脂っこいものが多かったので、サッパリ系が食べたい。

蕎麦そばにするか。」

部屋を出て、エレベーターに向かいボタンを押す。

エレベーターが来たので乗り込み1階を押す。

エレベーターに乗りながら、なんとなく蕎麦そばだけだと物足りなくもなく感じてしまう。

「天ざるにするか。」

エレベーターを降りて、入り口のロビーを出る時に、受付の女性社員が軽く頭を下げる。

入り口を出て右に曲がる。

突き当りに来ると、目の前に店が。

店の名前は【更科・居酒屋 中立】中立ちゅうりつではなく、中立なかだて

値段は手頃で味は評判の店だ。

何でも店主が、元は有名な割烹かっぽう料理店で働いていたのだが。

独立して建てたのが、この店。

暖簾のれんをあげて引き戸を開き中に入る。

中には先客が1名。

「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」

女性店員が来てヴェガに尋ねる。

「ええ。」

「カウンター席でよろしいでしょうか?」

「構わんよ。」

ふと、カウンター席に目をやれば見知った人物が座っていた。

「おや。 アルセイヌさん。」

「おや。 ヴェガさん。 お久しぶりですね。」

期しくも、勇者ヒーロー協会のトップと、悪の組織のトップが顔を合わせる。

お互いに、裏の顔は知らないが。

「天ざるを。」

「あいよっ! 天ざる1丁です!」

女性店員が、気持ちの良い声で注文を通す。

「良いですね。 私も天ざるで。」

「天ざる1丁追加です!」

「あいよっ!」

「おや。ご注文はまだでしたか?」

席に座りながらヴェガが言う。

「ええ。 注文のしようとしたら。 携帯が鳴りましてね。 ちょうどヴェガさんが入って来た時に話が付いたので。」

「お互いに大変ですな。」

「本当ですね。 時に、シア堂がアミューズメント方面に力を入れたとの噂が。(本心:ふん。フード方面が厳しいから撤退しおったか。)」

「耳が早いですな。さすがは大手建築企業 協会建設ですな。(本心:ちっ。どこで情報を手に入れてんだこの爺は。)」

「ご縁があったら、是非とも、うちの方で手掛けたいですな。(本心:田舎の方で良いのなら、安い土地が余ってる。 そこを紹介してやるよ。)」

「それは有難い。是非、見積もりを。(ふん。どうせド田舎の土地を処理したいだけだろう。 見え見えなんだよ!)」

「っと。ちょっとトイレに。」

アルセイヌが席を立ちトイレに向かう。

アルセイヌがトイレに入るのを確認すると。 ヴェガは携帯を取り出して電話を掛ける。

2度目の呼び出しで携帯が繋がる。

『はい。 清水です。 どうかなされましたか?』

「多分だが、今日中に協会建設の方から連絡が入る。 田舎の土地なら、出来るだけ安い値で広めに買え。」

『分かりました。 そのように手配をしておきます。』

「分かっていると思うが、建築物件に関しては応相談だぞ。」

『心得ています。』

「以上だ。切るぞ。」

そう言って、携帯を切るヴェガ。


 * * アルセイヌ * *


「私だ。」

『どうかなさりましたか?』

「今日中に、シア堂のアミューズメント部門に連絡を入れて。

どれくらいの土地の規模が必要なのか確認してくれ。」

『アポなしだと難しいですよ?』

「大丈夫だ。 恐らく、すんなり通るはずだ。」

『分かりましたけど。 期待はしないでくださいよ?』

「安心しろ。いま、総代表のヴェガと話している。 遠まわしだが確証は出来た。

それと、当然だが。 建築の方も必要になるなら見積もりも出すと言っておけ。」

『ぶっ!どこで会ってるんですか!? まさか談合!?』

「アホか。 する訳ないだろう。 昼を食べに来たら偶然同じ店に入って話しただけだ。 切るぞ。」

『……。』向こうで何か言いかけていたが通話を切りトイレを流して出る。


 * * * *


「食事前に失礼。 どうにも、年を取ると近くなってしまって。(本心:怪しまれてはいないな?)」

「エンシェント・エルフでしたかな?長寿で羨ましい限りです。(本心:まったく。どんだけ長生きすり気が済むんだ。とっととくたばれよ。)」

「いやいや。年だけ食っていくと言うのも、なかなかにシンドイものですよ。(本心:若造が、ほざきおって。)」

「そう言うもんですかね?(本心:どのくらいでボケが進行するんだ?)」

「天ざる。お待たせですっ!」

「おっ。 来た来た。」

「来ましたね。 美味しそうだ。」

「それでは、頂きますか。」

「そうですね。」

「「いただきます。」」

薬味を入れて、ワサビを入れ蕎麦そばすするアルセイヌ。

「いつ食べても美味しいですな。ここの蕎麦そばは。」

対してヴェガは。

アツアツの海老天を天つゆに浸けて一口かじる。

サクッとした触感と天つゆの味が口に広がる。

「うむ、天ぷらも美味しいですぞ。」

「どれ、私も天ぷらを。」

「私は蕎麦を。」

「「美味いですなっ!!」」

お互いに、良い笑顔で美味いと言う二人だった。
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