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第一章
第5話 夢
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「ん……」
ゆっくりと目を開ける。
見慣れた、何も無い真っ白な空間。
そこに、ただ一人、彼女が佇んでいる。
「久しぶり、オリヴィー」
「久しぶりね、私の愛する人」
彼女は、薄紫の長髪を人差し指で弄りながらこう告げてくる。
「シヴ、大変なことになったわね」
「いや、本当に。まさか、また勇者召喚をするとはな。本当に、やってくれたよ」
ゆっくりと歩みを進めてくる彼女に苦笑いしながら、「隣においで」とジェスチャーする。
「これじゃ、どっちが使徒か分からないわね」
「俺は、一度死んだ時から、お前の熱狂的な信者であり、お前の唯一の使徒だ。愛しいオリヴィエ」
「ふふ、私も愛しているわ?」
隣に座り込んだオリヴィエが肩に頭を乗せながらそんなことを言ってくる。
「それで、どうするの?」
「どうするも何も、向こうが仕掛けてこない限り何もしないぞ。何せ、俺の国は永世中立国だからな」
「ふ~ん」
オリヴィエがジトっとしたアメジスト色の目でこちらを見てくる。
「……なんだよ」
「んー、もしかしたら、聖女ちゃんがいるからかなぁって」
「んなわけないだろ。まぁ、ユイだけは、俺を殺さなかったから、恨んではない。それに、あの国には関係の無い人達が沢山住んでるんだぞ? おいそれと滅ぼせるかっての」
「シヴは優しいわね」
「こう見えても、元勇者なもんでね」
優しく頭を撫でながら答える。
「私は、いつまでも貴方の味方よ。貴方が成したいように成せばいい。それがどんな結果になろうとも、私は──」
彼女は息を吸い直して言葉を紡いだ。
「──私の生涯をかけて、貴方と共にいるわ」
「早く、お前が常に現界できるようにしないとな」
「そんなに急がなくても大丈夫よ。たまにあの娘に降ろしてもらえれば──」
そこで「しまった!」という顔をするオリヴィエ。
「ついに白状しやがったな堕女神め。やっぱり、エルフィを用意したのはお前じゃねぇか。分霊か?」
「そんなのじゃないわ。ただ単に、その辺で捨てられてた神子の才能がある娘を貴方がいるところに転移させただけよ」
「……まあ、エルフィにお前を降ろすのはナシな。極力。どうせあいつの身体に負担が掛かるんだろ?」
「ま、まあ、ね……」
えへへ、と苦笑いするオリヴィエ。
たく、こいつは。
「……ちっ、そろそろ時間みたいだな」
「そうね。貴方のおかげで、私が貴方を天界に招来できる時間が増えたとはいえ、まだまだ力が戻っていない。今日はここまでのようね。また、逢いましょう?」
「ああ。愛してるぞ、オリヴィー」
「私の方こそ、愛してるわ、シヴ」
段々と遠のいていく意識の中、オリヴィエにこう告げられる。
「あ、そうそう、あの子が貴方に会いたがっていたわ。今度、あっちに呼ばれるかもね」
そして、視界が暗転した。
ゆっくりと目を開ける。
見慣れた、何も無い真っ白な空間。
そこに、ただ一人、彼女が佇んでいる。
「久しぶり、オリヴィー」
「久しぶりね、私の愛する人」
彼女は、薄紫の長髪を人差し指で弄りながらこう告げてくる。
「シヴ、大変なことになったわね」
「いや、本当に。まさか、また勇者召喚をするとはな。本当に、やってくれたよ」
ゆっくりと歩みを進めてくる彼女に苦笑いしながら、「隣においで」とジェスチャーする。
「これじゃ、どっちが使徒か分からないわね」
「俺は、一度死んだ時から、お前の熱狂的な信者であり、お前の唯一の使徒だ。愛しいオリヴィエ」
「ふふ、私も愛しているわ?」
隣に座り込んだオリヴィエが肩に頭を乗せながらそんなことを言ってくる。
「それで、どうするの?」
「どうするも何も、向こうが仕掛けてこない限り何もしないぞ。何せ、俺の国は永世中立国だからな」
「ふ~ん」
オリヴィエがジトっとしたアメジスト色の目でこちらを見てくる。
「……なんだよ」
「んー、もしかしたら、聖女ちゃんがいるからかなぁって」
「んなわけないだろ。まぁ、ユイだけは、俺を殺さなかったから、恨んではない。それに、あの国には関係の無い人達が沢山住んでるんだぞ? おいそれと滅ぼせるかっての」
「シヴは優しいわね」
「こう見えても、元勇者なもんでね」
優しく頭を撫でながら答える。
「私は、いつまでも貴方の味方よ。貴方が成したいように成せばいい。それがどんな結果になろうとも、私は──」
彼女は息を吸い直して言葉を紡いだ。
「──私の生涯をかけて、貴方と共にいるわ」
「早く、お前が常に現界できるようにしないとな」
「そんなに急がなくても大丈夫よ。たまにあの娘に降ろしてもらえれば──」
そこで「しまった!」という顔をするオリヴィエ。
「ついに白状しやがったな堕女神め。やっぱり、エルフィを用意したのはお前じゃねぇか。分霊か?」
「そんなのじゃないわ。ただ単に、その辺で捨てられてた神子の才能がある娘を貴方がいるところに転移させただけよ」
「……まあ、エルフィにお前を降ろすのはナシな。極力。どうせあいつの身体に負担が掛かるんだろ?」
「ま、まあ、ね……」
えへへ、と苦笑いするオリヴィエ。
たく、こいつは。
「……ちっ、そろそろ時間みたいだな」
「そうね。貴方のおかげで、私が貴方を天界に招来できる時間が増えたとはいえ、まだまだ力が戻っていない。今日はここまでのようね。また、逢いましょう?」
「ああ。愛してるぞ、オリヴィー」
「私の方こそ、愛してるわ、シヴ」
段々と遠のいていく意識の中、オリヴィエにこう告げられる。
「あ、そうそう、あの子が貴方に会いたがっていたわ。今度、あっちに呼ばれるかもね」
そして、視界が暗転した。
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