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おかしい、デビュタントのときにも挨拶して、見知っているはずなんだけど……。
どうしよう、何か間違えたんだろうか。
声をかける前に必要な手順がなかったか、頭をフル回転させる。
しかし該当するミスが浮かばない。
……もしかして怖がられてる?
ヴィヴィアンは普通に接してくれるし、アルフレッドやイアンも懐いてくれてるから忘れていたけど、僕は表情が変わらない。
前世を理解したとき、窓に映っていた自分を思いだす。
氷像のような容姿に、凍てついた眼差し。
まだ幼いとはいえ、ゲームの終盤、ラスボスとして登場する冷血なルーファスの面影があった。
大人からすれば、今の僕は子どもでしかない。
けれど同年代の子にしてみれば?
アルフレッドもイアンも、最初から打ち解けていたわけじゃなんだ。
やっぱり僕は、子どもとしての感覚が薄れているらしい。
あれ? でもこれって八方塞がりなんじゃ……。
怖がられているなら、誰に挨拶しても同じ反応をされるはずだ。
けれど突っ立っているわけにもいかない。
せめて挨拶を返してくれないかな、と声をかけた少年を見ると、彼は物理的にもジリジリと後退していた。
心配しなくても、とって食べたりしないのに。
僕がどこかへ行ったほうがいいのかな、と考えた矢先、少年を背中に庇うようにして別の子が現れる。
背が僕よりも高い。
「不要に相手を威圧するのが、あなたのやり方か」
短い深緑の髪には覚えがあった。
エリック・ジラルド。
僕が探そうか悩んでいた、ゲームの攻略対象だ。
彼の目には、僕が少年を威圧していたように映ったらしい。
「そんなつもりはない」
つもりはないんだけど……父上のことを考えると、同様に表情の動かない僕は、威圧感を出しているかもしれなかった。
「現に相手を怯えさせておいて?」
「あ、あの……ぼ、ぼくは……」
「気にしなくていい、きみは悪くないのだ」
僕が悪役なら、エリックはさしずめ正義の味方か。
ゲームでは実際そうなんだけど。
エリック・ジラルド。
ジラルド子爵家の長男。戦闘に長けた家系で、現当主も騎士団長を務めている。
ゲームのエリックには、アルフレッドの近衛隊長になる未来があった。騎士団の中で一番名誉のある職だ。
アルフレッドが光剣で戦う前衛なら、エリックは強固な盾でもって、敵の攻撃から味方を守る前衛。
わざと敵を挑発して、自分に攻撃を集中させる盾職だった。
ウッドワード家が魔力で国を守るなら、ジラルド家は戦闘で国を守るといった感じだろうか。
無口だけど、誰よりも熱い男。
正義感の強さは変わらないみたいだけど……あのエリックの声が聞けるのは新鮮だった。
ゲームの彼は、ほとんど喋らない。
唯一語るのが、ゲーム主人公への思いだけで、それがまたプレイヤーを魅了した。
そんな彼は今、僕に敵意のこもった眼差しを向けている。
どうしよう、何か間違えたんだろうか。
声をかける前に必要な手順がなかったか、頭をフル回転させる。
しかし該当するミスが浮かばない。
……もしかして怖がられてる?
ヴィヴィアンは普通に接してくれるし、アルフレッドやイアンも懐いてくれてるから忘れていたけど、僕は表情が変わらない。
前世を理解したとき、窓に映っていた自分を思いだす。
氷像のような容姿に、凍てついた眼差し。
まだ幼いとはいえ、ゲームの終盤、ラスボスとして登場する冷血なルーファスの面影があった。
大人からすれば、今の僕は子どもでしかない。
けれど同年代の子にしてみれば?
アルフレッドもイアンも、最初から打ち解けていたわけじゃなんだ。
やっぱり僕は、子どもとしての感覚が薄れているらしい。
あれ? でもこれって八方塞がりなんじゃ……。
怖がられているなら、誰に挨拶しても同じ反応をされるはずだ。
けれど突っ立っているわけにもいかない。
せめて挨拶を返してくれないかな、と声をかけた少年を見ると、彼は物理的にもジリジリと後退していた。
心配しなくても、とって食べたりしないのに。
僕がどこかへ行ったほうがいいのかな、と考えた矢先、少年を背中に庇うようにして別の子が現れる。
背が僕よりも高い。
「不要に相手を威圧するのが、あなたのやり方か」
短い深緑の髪には覚えがあった。
エリック・ジラルド。
僕が探そうか悩んでいた、ゲームの攻略対象だ。
彼の目には、僕が少年を威圧していたように映ったらしい。
「そんなつもりはない」
つもりはないんだけど……父上のことを考えると、同様に表情の動かない僕は、威圧感を出しているかもしれなかった。
「現に相手を怯えさせておいて?」
「あ、あの……ぼ、ぼくは……」
「気にしなくていい、きみは悪くないのだ」
僕が悪役なら、エリックはさしずめ正義の味方か。
ゲームでは実際そうなんだけど。
エリック・ジラルド。
ジラルド子爵家の長男。戦闘に長けた家系で、現当主も騎士団長を務めている。
ゲームのエリックには、アルフレッドの近衛隊長になる未来があった。騎士団の中で一番名誉のある職だ。
アルフレッドが光剣で戦う前衛なら、エリックは強固な盾でもって、敵の攻撃から味方を守る前衛。
わざと敵を挑発して、自分に攻撃を集中させる盾職だった。
ウッドワード家が魔力で国を守るなら、ジラルド家は戦闘で国を守るといった感じだろうか。
無口だけど、誰よりも熱い男。
正義感の強さは変わらないみたいだけど……あのエリックの声が聞けるのは新鮮だった。
ゲームの彼は、ほとんど喋らない。
唯一語るのが、ゲーム主人公への思いだけで、それがまたプレイヤーを魅了した。
そんな彼は今、僕に敵意のこもった眼差しを向けている。
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