怜くん、ごめんね!親衛隊長も楽じゃないんだ!

楢山幕府

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高等部二年生

046※

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 氷の帝王様の降臨を、ぼくは止めることができなかった。
 けど眞宙くんとのことを、内緒にしておくのも不誠実だよね?
 「反省しろ」と言われたから、三角座りの姿勢で悶々と考えを巡らせる。

 ぼくが悪かったところ。

 繰り返してはいけない点について、頭の中でレポートを書いた。
 ちゃんと目に見える形で書き起こしたほうがいいのかな、と考えたところで怜くんが部屋に戻ってくる。
 幾分表情がスッキリしているような?

「怜くん、おかえり……って戻ってきて良かったの? 午後の授業はじまっちゃうよ?」
「午後はサボる」
「えぇっ!?」

 言い放つなり、怜くんは三角座りするぼくの両脇に手を差し込んで、ぼくを立たせる。
 あれよあれよという間に、ベッドに座らされた。
 怜くんも隣に腰掛けると、ぼくと向き合う。
 午後の授業に出るつもりは毛頭なさそうだ。

「で、反省はできたか?」
「はいっ」

 「反省」という言葉に背筋を伸ばす。
 両手はそれぞれ太ももの上に置いた。

「ぼくが弱かったのが原因だけど、それでも慰められるままだったのが悪かったと思う。相手が眞宙くんだからって気を許し過ぎてました。次からは慰められても、一定の距離を保ちたいと思います!」
「よし。今年に入ってからも板垣先輩の親衛隊員が、信じてた友人に襲われた事件があっただろう。お前も他人事じゃないんだぞ」
「うん」
「不安にさせて悪かった。今後は、俺にぶつけろ」
「怜くん……」
「俺は今まで言葉が足りなかった。そして無自覚にお前に甘えていた」

 ぼくより反省した表情の怜くんに、胸が締め付けられる。
 しかし顔を近付け、耳元で囁かれると、切なさより腰のざわつきが勝った。

「俺はお前と一緒に幸せになりたい。今後は気持ちを口に出すよう心がける」
「……そのときは、普通に言ってね」
「普通?」
「こんな風に、耳元で言われるのは……ちょっと……」
「感じるか?」
「ばっ!?」

 バカ! という言葉が言葉にならない。
 けど実際は、正鵠を射抜かれていて、自分でも顔が赤くなるのが分かった。

「可愛いな」

 熱を持つ頬を、怜くんが撫でる。
 恥ずかしさから怜くんを見ていられなくなって、ぼくは顔を逸らした。

「可愛くなんて……」
「可愛いよ。保、お前は昔からずっと可愛い」
「止めて。心臓が壊れそうだから」

 バクバクと今にも口から飛び出してきそうだった。
 昼食を取っていたときの、気恥ずかしさが戻ってくる。
 その恥ずかしさを振り払うべく、ぼくも負けじと口を開いた。

「れ、怜くんも小さいときは天使のような可愛らしさだったよね! ぼく、一目惚れだったんだ! 小等部の高学年からどんどん格好良くなって……あっ! でも今も、気の抜けたときとか、可愛いとおもっ……んくっ」

 段々調子が戻ってきたところで、怜くんの唇がぼくの口を覆った。
 勢いに負けて、後ろへ倒れる。
 視界の端で自分の黒髪が躍るのを見たときには、ベッドが軋んでいた。

「ん……ふんんっ」
「はっ……お前は、どうして、そう……」

 唇の端と一緒に、口元のホクロも食まれる。
 甘噛みされる仕草に、獣めいたものを感じた。

「ぁ……っ」

 口に行っていた意識が動く。
 気付いたときには、部屋着を胸元までたくし上げられていた。
 怜くんの手が心臓の上に乗り、更に心音がけたたましくなる。
 自分の中から響く音に、三半規管を揺さぶられて酔ってしまいそうだ。

「ひんっ、怜くん、待って……」
「待たない」

 怜くんの指が、胸の突起を抓む。
 ピリッとした刺激に逃げたくなって腰を揺らすも、その腰から下着と一緒にスウェットを脱がされた。
 あっという間に下半身が外気に晒され、膝を擦り合わす。

「足を閉じるな」
「で、でも」
「嫌か?」

 うぅ、その質問はズルい。
 好きな人に好きだと言ってもらえて、肌を重ねることが嫌だなんてことがあるわけなかった。

「さ、最後まで、しない……?」
「嫌か?」
「あうう……」

 質問で返されて、顔を両手で覆った。
 自分が今、どんな顔になっているのか分からない。

「嫌、じゃない……けど、少し……怖い」
「優しくするよう努める」

 急に重圧が消えて、何かと見上げれば、怜くんが上半身を起こしてネクタイを緩めていた。
 ネクタイの結び目に指をかけ、揺する姿に色気を感じる。
 外したネクタイを無造作に投げ捨てた怜くんは、上着を脱ぎ、ベルトにも手をかけた。
 一連の行動が凄く様になっていて、目を惹き付けられる。

「足、開けるか」
「ん……」

 思わず見惚れていたけど、自分のズボンもどこにあるか分からない状態だった。
 下半身を晒していることに羞恥の熱が全身を駆ける。
 乞われて足を開こうにも、体が言うことを聞いてくれない。
 何とか数センチ膝の間を空けたところで、怜くんが股の間に手を差し込んだ。

「ひゃっ」

 ただ内ももを撫でられただけなのに、情けない声が出た。
 言葉通り優しく揉まれ、指先だけで肌をなぞられると背中が浮く。

「んんっ、指、だめっ……!」
「くすぐったいか?」
「うん……っ」

 逃げられないと分かっていても腰が引けた。
 内ももをなぞる指は止まらず、遂に睾丸に触れる。
 睾丸を持ち上げられる感覚に、堪らず首を振った。

「やぁっ」
「まだこれからだぞ。保、気持ちいいって言ってみろ」
「やだ、そんなっ」

 恥ずかしい。
 自分から感じてるのを示すなんて。

「その方が自己暗示にかかって、恐怖心も薄れる。痛くはないだろう?」
「ん、でも……っ」

 答えてる途中で、竿を握られた。
 あくまで、そっと。そしてゴムを着けられて、ゴムのローションが下に伝い落ちる。

「体はちゃんと反応してるぞ。ゴムを装着できるぐらいにはな。ほら、言ってみろ。どうせ俺しか聞いてないんだ」

 滑りを得た怜くんの手が、ぼくの中心を扱き出す。
 裏筋を押すように撫で上げられて、息が上がった。

「はっ……ぁあっ」
「保、気持ちいいか? 言うなら、このままイカせてやる」
「そん、あっ……ぅんんっ」

 与えられる快感に、後頭部がベッドに沈んだ。
 いつの間にか、ぼくの足を持った怜くんが足の間に入り込んでいる。
 けど全ての意識が、怜くんが握る自身に持っていかれていた。
 わざとなのか、いつになくゆっくりとした動きで扱かれ、焦れる気持ちが募る。

「ん、ふっ……れい、くんっ」

 呼びかけても、そこへ自分の手を伸ばしても、上下に動かされる手の速度は変わらない。
 時を追うごとに、思考は理性と共に薄らいでいった。

「っ……いいっ、怜くん、気持ち、いいっ……あっ! あぁっ!」

 感じていることを伝えた途端、きゅっと竿を握り込まれた。
 覚えのある感覚に、体が期待する。
 その矢先だった。

「ひぅん!?」
「大丈夫だ、痛くはしない」

 異物感を覚えて、喉が鳴る。
 自分でも意識して触れたことのない場所に、怜くんの指が埋まっていた。
 入り込んだ指は、躊躇なく進む。

「前立腺があるのは知ってるか? 勃起時のほうが、分かりやすいらしくてな」
「あっ……やぁ、変、な……感じっ」

 痛くはない。
 痛くはないけど。
 ヌルヌルと指が体内で動かされる感覚は、言葉にするのが難しい。
 同時に前も扱かれて、息が早くなる。

「はっ……あぁ、んっ……」

 はっはっ、と息をつく度、湿った吐息が唇を撫でるのが分かった。
 快感が恋しくて、無意識に腰も前後に揺れはじめる。
 熱にうなされ、時折上半身を捻りながら、ベッドのシーツを握った。

「怜くん、怜くん……っ」
「気持ちいいか?」
「うん……っ、いいっ……あっ、ぁあああっ!」

 突如、全身に電流を流されたようだった。
 今まで感じたことのない快感に侵され、体がその発信源から逃げようと動く。

「やっ! なに、やだぁっ、あっ! んんっ! 怜くん、放してっ、放してぇっ」

 腰を引いても、体を捻っても、逃がしてもらえない。

「ここか」
「ひぅっ、だめぇ! そこっ……やぁあん!」

 だめっ、だめっ。
 何が、とか、そういうことじゃなくて。
 気が狂って、おかしくなりそうだった。
 にちにちと水音を立てながら、怜くんの指がぼくの中を押し上げ続ける。

「保、いいんだろ? 心配するな、お前は感じてるだけだ」
「でも……っ……こんな、知らないっ」
「これから知るさ。ほら、いいって言ってみろ」
「ぅんんっ、いいっ、いい、からぁ!」

 言えば解放されるなら。
 その一心で声を上げても、怜くんの手は止まらない。
 行き場のなさに、足の間にいる怜くんを両足で挟んだ。

「あっ、あ……いい、もう、いいっ……は、ぁあああん!」

 太ももが痙攣する。
 扱かれていた中心から熱が弾け、自分の腹に散った。
 けど、相変わらず息をつく暇がない。
 ずっと、脇腹が引き攣るように震えていた。

「ぁ……あっ、なん、で……っ、感じるの、止まん、ないっ」
「馴れれば、こっちだけでイケるらしいぞ。その場合、射精は伴わないようだが」
「も、やだぁっ」

 やけに怜くんだけ冷静なのが、憎たらしい。
 でもそう思っていたのは、ぼくだけだった。

「じゃあ、次の段階だな。……俺も流石に我慢の限界だ」

 指が蕾から抜かれる感覚に、体が震える。
 それが終わりではないことは、すぐに分かった。
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