上 下
47 / 50
高等部二年生

046※

しおりを挟む
 氷の帝王様の降臨を、ぼくは止めることができなかった。
 けど眞宙くんとのことを、内緒にしておくのも不誠実だよね?
 「反省しろ」と言われたから、三角座りの姿勢で悶々と考えを巡らせる。

 ぼくが悪かったところ。

 繰り返してはいけない点について、頭の中でレポートを書いた。
 ちゃんと目に見える形で書き起こしたほうがいいのかな、と考えたところで怜くんが部屋に戻ってくる。
 幾分表情がスッキリしているような?

「怜くん、おかえり……って戻ってきて良かったの? 午後の授業はじまっちゃうよ?」
「午後はサボる」
「えぇっ!?」

 言い放つなり、怜くんは三角座りするぼくの両脇に手を差し込んで、ぼくを立たせる。
 あれよあれよという間に、ベッドに座らされた。
 怜くんも隣に腰掛けると、ぼくと向き合う。
 午後の授業に出るつもりは毛頭なさそうだ。

「で、反省はできたか?」
「はいっ」

 「反省」という言葉に背筋を伸ばす。
 両手はそれぞれ太ももの上に置いた。

「ぼくが弱かったのが原因だけど、それでも慰められるままだったのが悪かったと思う。相手が眞宙くんだからって気を許し過ぎてました。次からは慰められても、一定の距離を保ちたいと思います!」
「よし。今年に入ってからも板垣先輩の親衛隊員が、信じてた友人に襲われた事件があっただろう。お前も他人事じゃないんだぞ」
「うん」
「不安にさせて悪かった。今後は、俺にぶつけろ」
「怜くん……」
「俺は今まで言葉が足りなかった。そして無自覚にお前に甘えていた」

 ぼくより反省した表情の怜くんに、胸が締め付けられる。
 しかし顔を近付け、耳元で囁かれると、切なさより腰のざわつきが勝った。

「俺はお前と一緒に幸せになりたい。今後は気持ちを口に出すよう心がける」
「……そのときは、普通に言ってね」
「普通?」
「こんな風に、耳元で言われるのは……ちょっと……」
「感じるか?」
「ばっ!?」

 バカ! という言葉が言葉にならない。
 けど実際は、正鵠を射抜かれていて、自分でも顔が赤くなるのが分かった。

「可愛いな」

 熱を持つ頬を、怜くんが撫でる。
 恥ずかしさから怜くんを見ていられなくなって、ぼくは顔を逸らした。

「可愛くなんて……」
「可愛いよ。保、お前は昔からずっと可愛い」
「止めて。心臓が壊れそうだから」

 バクバクと今にも口から飛び出してきそうだった。
 昼食を取っていたときの、気恥ずかしさが戻ってくる。
 その恥ずかしさを振り払うべく、ぼくも負けじと口を開いた。

「れ、怜くんも小さいときは天使のような可愛らしさだったよね! ぼく、一目惚れだったんだ! 小等部の高学年からどんどん格好良くなって……あっ! でも今も、気の抜けたときとか、可愛いとおもっ……んくっ」

 段々調子が戻ってきたところで、怜くんの唇がぼくの口を覆った。
 勢いに負けて、後ろへ倒れる。
 視界の端で自分の黒髪が躍るのを見たときには、ベッドが軋んでいた。

「ん……ふんんっ」
「はっ……お前は、どうして、そう……」

 唇の端と一緒に、口元のホクロも食まれる。
 甘噛みされる仕草に、獣めいたものを感じた。

「ぁ……っ」

 口に行っていた意識が動く。
 気付いたときには、部屋着を胸元までたくし上げられていた。
 怜くんの手が心臓の上に乗り、更に心音がけたたましくなる。
 自分の中から響く音に、三半規管を揺さぶられて酔ってしまいそうだ。

「ひんっ、怜くん、待って……」
「待たない」

 怜くんの指が、胸の突起を抓む。
 ピリッとした刺激に逃げたくなって腰を揺らすも、その腰から下着と一緒にスウェットを脱がされた。
 あっという間に下半身が外気に晒され、膝を擦り合わす。

「足を閉じるな」
「で、でも」
「嫌か?」

 うぅ、その質問はズルい。
 好きな人に好きだと言ってもらえて、肌を重ねることが嫌だなんてことがあるわけなかった。

「さ、最後まで、しない……?」
「嫌か?」
「あうう……」

 質問で返されて、顔を両手で覆った。
 自分が今、どんな顔になっているのか分からない。

「嫌、じゃない……けど、少し……怖い」
「優しくするよう努める」

 急に重圧が消えて、何かと見上げれば、怜くんが上半身を起こしてネクタイを緩めていた。
 ネクタイの結び目に指をかけ、揺する姿に色気を感じる。
 外したネクタイを無造作に投げ捨てた怜くんは、上着を脱ぎ、ベルトにも手をかけた。
 一連の行動が凄く様になっていて、目を惹き付けられる。

「足、開けるか」
「ん……」

 思わず見惚れていたけど、自分のズボンもどこにあるか分からない状態だった。
 下半身を晒していることに羞恥の熱が全身を駆ける。
 乞われて足を開こうにも、体が言うことを聞いてくれない。
 何とか数センチ膝の間を空けたところで、怜くんが股の間に手を差し込んだ。

「ひゃっ」

 ただ内ももを撫でられただけなのに、情けない声が出た。
 言葉通り優しく揉まれ、指先だけで肌をなぞられると背中が浮く。

「んんっ、指、だめっ……!」
「くすぐったいか?」
「うん……っ」

 逃げられないと分かっていても腰が引けた。
 内ももをなぞる指は止まらず、遂に睾丸に触れる。
 睾丸を持ち上げられる感覚に、堪らず首を振った。

「やぁっ」
「まだこれからだぞ。保、気持ちいいって言ってみろ」
「やだ、そんなっ」

 恥ずかしい。
 自分から感じてるのを示すなんて。

「その方が自己暗示にかかって、恐怖心も薄れる。痛くはないだろう?」
「ん、でも……っ」

 答えてる途中で、竿を握られた。
 あくまで、そっと。そしてゴムを着けられて、ゴムのローションが下に伝い落ちる。

「体はちゃんと反応してるぞ。ゴムを装着できるぐらいにはな。ほら、言ってみろ。どうせ俺しか聞いてないんだ」

 滑りを得た怜くんの手が、ぼくの中心を扱き出す。
 裏筋を押すように撫で上げられて、息が上がった。

「はっ……ぁあっ」
「保、気持ちいいか? 言うなら、このままイカせてやる」
「そん、あっ……ぅんんっ」

 与えられる快感に、後頭部がベッドに沈んだ。
 いつの間にか、ぼくの足を持った怜くんが足の間に入り込んでいる。
 けど全ての意識が、怜くんが握る自身に持っていかれていた。
 わざとなのか、いつになくゆっくりとした動きで扱かれ、焦れる気持ちが募る。

「ん、ふっ……れい、くんっ」

 呼びかけても、そこへ自分の手を伸ばしても、上下に動かされる手の速度は変わらない。
 時を追うごとに、思考は理性と共に薄らいでいった。

「っ……いいっ、怜くん、気持ち、いいっ……あっ! あぁっ!」

 感じていることを伝えた途端、きゅっと竿を握り込まれた。
 覚えのある感覚に、体が期待する。
 その矢先だった。

「ひぅん!?」
「大丈夫だ、痛くはしない」

 異物感を覚えて、喉が鳴る。
 自分でも意識して触れたことのない場所に、怜くんの指が埋まっていた。
 入り込んだ指は、躊躇なく進む。

「前立腺があるのは知ってるか? 勃起時のほうが、分かりやすいらしくてな」
「あっ……やぁ、変、な……感じっ」

 痛くはない。
 痛くはないけど。
 ヌルヌルと指が体内で動かされる感覚は、言葉にするのが難しい。
 同時に前も扱かれて、息が早くなる。

「はっ……あぁ、んっ……」

 はっはっ、と息をつく度、湿った吐息が唇を撫でるのが分かった。
 快感が恋しくて、無意識に腰も前後に揺れはじめる。
 熱にうなされ、時折上半身を捻りながら、ベッドのシーツを握った。

「怜くん、怜くん……っ」
「気持ちいいか?」
「うん……っ、いいっ……あっ、ぁあああっ!」

 突如、全身に電流を流されたようだった。
 今まで感じたことのない快感に侵され、体がその発信源から逃げようと動く。

「やっ! なに、やだぁっ、あっ! んんっ! 怜くん、放してっ、放してぇっ」

 腰を引いても、体を捻っても、逃がしてもらえない。

「ここか」
「ひぅっ、だめぇ! そこっ……やぁあん!」

 だめっ、だめっ。
 何が、とか、そういうことじゃなくて。
 気が狂って、おかしくなりそうだった。
 にちにちと水音を立てながら、怜くんの指がぼくの中を押し上げ続ける。

「保、いいんだろ? 心配するな、お前は感じてるだけだ」
「でも……っ……こんな、知らないっ」
「これから知るさ。ほら、いいって言ってみろ」
「ぅんんっ、いいっ、いい、からぁ!」

 言えば解放されるなら。
 その一心で声を上げても、怜くんの手は止まらない。
 行き場のなさに、足の間にいる怜くんを両足で挟んだ。

「あっ、あ……いい、もう、いいっ……は、ぁあああん!」

 太ももが痙攣する。
 扱かれていた中心から熱が弾け、自分の腹に散った。
 けど、相変わらず息をつく暇がない。
 ずっと、脇腹が引き攣るように震えていた。

「ぁ……あっ、なん、で……っ、感じるの、止まん、ないっ」
「馴れれば、こっちだけでイケるらしいぞ。その場合、射精は伴わないようだが」
「も、やだぁっ」

 やけに怜くんだけ冷静なのが、憎たらしい。
 でもそう思っていたのは、ぼくだけだった。

「じゃあ、次の段階だな。……俺も流石に我慢の限界だ」

 指が蕾から抜かれる感覚に、体が震える。
 それが終わりではないことは、すぐに分かった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。

春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。  新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。  ___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。  ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。  しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。  常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___ 「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」  ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。  寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。  髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?    

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...