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高等部二年生
015
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「一般生徒は使わないって何だよ? 校則にも、生徒はみんな平等だって明記されてるのに、特権階級があるなんておかしいだろ!?」
あー……そういえば、校則には平等だって書いてあるんだっけ……。
建前ってやつだね。生徒間の実情はお察し。
ただ先生たちは生徒のことを公平に扱ってくれるから、先生たちにしてみれば生徒が平等であるのは事実だ。
よく通るゲーム主人公くんの声に、怜くんたちも階段のほうへ視線を向けた。
「あれは……編入生か」
「七瀬都生くんだっけ? 二年生からの編入なんて珍しいよね。突然親御さんの海外赴任が決まって、全寮制の鳳来学園へ編入を決めたという話だけど」
「流石、眞宙様! お詳しいですね!」
「生徒会室に資料があったからね」
ゲーム主人公くんは、七瀬くんって言うのか!
ゲームプレイ時は、名前を変更してたから、デフォルト名が記憶に残ってなかったんだよね。
「親衛隊なんてのもわけ分かんねぇし。一生徒を『様』付けして特別扱いするなんて、どうかしてる」
この言葉には、南くんの動きが止まった。
あああ、七瀬くん声が通るから! 親衛隊には、枠組みを作ることで、狂信的な生徒を暴走させないって抑止力もあったりね! するんだけどね! 編入してきたばかりの七瀬くんには分からないよねー……。
他にも風紀委員との情報共有があるけど、これはどちらかというと親衛隊員を守るためのものだ。
「どうかしてる、か……」
怜くんが七瀬くんの言葉尻を拾うと、七瀬くんもぼくたちの存在に気付いた。
分厚い瓶底眼鏡のせいで、その視線が誰の上で止まっているのかまでは分からない。
けれど少なくともこれが、七瀬くんと怜くんとの出会いイベントになるはずだ。
「生徒会長だって一生徒であることには変わりないだろ? なのに『怜様』とか呼ばれて、一般生徒を従えるなんて、何考えてるんだ?」
「ふん、それがお前の理屈か」
階段の傍で、こちらに体を向けて立つ七瀬くん。
片や頬杖を付きながら、足を組んで座る怜くんの姿は、正に氷の帝王様だった。
ただ座ってるだけでも絵になるなんて、怜くんはやっぱり格好良いなぁ。
「なるほど。お前の言う通り、生徒会長である俺も学園の一生徒に過ぎない。だから何だ? おかしいと感じるのは、お前の主観でしかない」
「それは……」
「この学園の現状について、異を唱えるのは簡単だろう。誰だって口では好きなように言えるからな」
「でもっ、おかしいのは確かだろ! 普通の学校じゃあり得ないことだ!」
うんうん、鳳来学園は普通の学校じゃないからね。
何せBL恋愛シミュレーションゲームの舞台だから。
全寮制の男子校ってだけでも、特殊な環境だと思うよ。
だから親衛隊っていう独自のルールもあるんだけど。
今日一日で、外部生が学園の全てを理解するのは、無理な話だ。
けどゲーム主人公くんだけあって、七瀬くんは怜くんに対しても引かない。
そんな七瀬くんに、隣にいる上村くんは感心しているようだった。
眞宙くんは、怜くんと七瀬くんのやり取りを面白そうに眺めている。
ぼくはといえば、ようやく記憶が現状に追いついて、リアルの世界で再現されるゲームのやり取りにワクワクしています!
「だったら、お前は『新しい目』になれるか?」
「え……?」
「七瀬、お前にも特別な立場を用意してやる。そこから何が見えるか、何ができるか、よくよく考えてみるがいい」
怜くんは言い終えると、七瀬くんから興味をなくしたように視線を円卓に戻した。
そのさり気ない仕草は、正しくイエスッ、クールビューティ怜様!
これで七瀬くんが生徒会に入ることが決まるんだよね!
七瀬くんは呆然としてたけど、上村くんがフォローしてくれているみたいだった。
「眞宙、七瀬を監査役員の補佐に付けるぞ」
「え? 怜、本気なの?」
監査役員は、会費が正しく使われているかを、その名の通り監査するのが仕事だ。
各部活の財務資料を確認したり、私的流用などの不正がないかも調べるので、中々大変な役職だった。
補佐といっても生徒会の役員に変わりはないので、もちろん発言権もある。
怜くんとしては、監査からの視点で学園全体を見てもらい、七瀬くんの発言に期待したいんだろう。
「俺に面と向かって発言できる人間は少ない。圭吾はどちらかといえば、こちら側の人間だしな。それにあいつなら、俺たちとは違った視点からものを見れそうだ」
「ただ無知なだけかもしれないよ?」
「少なくとも学園外の『普通』を知っている時点で、無知だとも言い切れないだろう。使い物にならないようなら切り捨てるさ。保も構わないだろ?」
「ぼくは、まぁ……」
ぼくが直接七瀬くんと関われるのも生徒会だけだ。
よしっ、次からは取り乱すことなく、ちゃんと七瀬くんと対立するぞ!
あー……そういえば、校則には平等だって書いてあるんだっけ……。
建前ってやつだね。生徒間の実情はお察し。
ただ先生たちは生徒のことを公平に扱ってくれるから、先生たちにしてみれば生徒が平等であるのは事実だ。
よく通るゲーム主人公くんの声に、怜くんたちも階段のほうへ視線を向けた。
「あれは……編入生か」
「七瀬都生くんだっけ? 二年生からの編入なんて珍しいよね。突然親御さんの海外赴任が決まって、全寮制の鳳来学園へ編入を決めたという話だけど」
「流石、眞宙様! お詳しいですね!」
「生徒会室に資料があったからね」
ゲーム主人公くんは、七瀬くんって言うのか!
ゲームプレイ時は、名前を変更してたから、デフォルト名が記憶に残ってなかったんだよね。
「親衛隊なんてのもわけ分かんねぇし。一生徒を『様』付けして特別扱いするなんて、どうかしてる」
この言葉には、南くんの動きが止まった。
あああ、七瀬くん声が通るから! 親衛隊には、枠組みを作ることで、狂信的な生徒を暴走させないって抑止力もあったりね! するんだけどね! 編入してきたばかりの七瀬くんには分からないよねー……。
他にも風紀委員との情報共有があるけど、これはどちらかというと親衛隊員を守るためのものだ。
「どうかしてる、か……」
怜くんが七瀬くんの言葉尻を拾うと、七瀬くんもぼくたちの存在に気付いた。
分厚い瓶底眼鏡のせいで、その視線が誰の上で止まっているのかまでは分からない。
けれど少なくともこれが、七瀬くんと怜くんとの出会いイベントになるはずだ。
「生徒会長だって一生徒であることには変わりないだろ? なのに『怜様』とか呼ばれて、一般生徒を従えるなんて、何考えてるんだ?」
「ふん、それがお前の理屈か」
階段の傍で、こちらに体を向けて立つ七瀬くん。
片や頬杖を付きながら、足を組んで座る怜くんの姿は、正に氷の帝王様だった。
ただ座ってるだけでも絵になるなんて、怜くんはやっぱり格好良いなぁ。
「なるほど。お前の言う通り、生徒会長である俺も学園の一生徒に過ぎない。だから何だ? おかしいと感じるのは、お前の主観でしかない」
「それは……」
「この学園の現状について、異を唱えるのは簡単だろう。誰だって口では好きなように言えるからな」
「でもっ、おかしいのは確かだろ! 普通の学校じゃあり得ないことだ!」
うんうん、鳳来学園は普通の学校じゃないからね。
何せBL恋愛シミュレーションゲームの舞台だから。
全寮制の男子校ってだけでも、特殊な環境だと思うよ。
だから親衛隊っていう独自のルールもあるんだけど。
今日一日で、外部生が学園の全てを理解するのは、無理な話だ。
けどゲーム主人公くんだけあって、七瀬くんは怜くんに対しても引かない。
そんな七瀬くんに、隣にいる上村くんは感心しているようだった。
眞宙くんは、怜くんと七瀬くんのやり取りを面白そうに眺めている。
ぼくはといえば、ようやく記憶が現状に追いついて、リアルの世界で再現されるゲームのやり取りにワクワクしています!
「だったら、お前は『新しい目』になれるか?」
「え……?」
「七瀬、お前にも特別な立場を用意してやる。そこから何が見えるか、何ができるか、よくよく考えてみるがいい」
怜くんは言い終えると、七瀬くんから興味をなくしたように視線を円卓に戻した。
そのさり気ない仕草は、正しくイエスッ、クールビューティ怜様!
これで七瀬くんが生徒会に入ることが決まるんだよね!
七瀬くんは呆然としてたけど、上村くんがフォローしてくれているみたいだった。
「眞宙、七瀬を監査役員の補佐に付けるぞ」
「え? 怜、本気なの?」
監査役員は、会費が正しく使われているかを、その名の通り監査するのが仕事だ。
各部活の財務資料を確認したり、私的流用などの不正がないかも調べるので、中々大変な役職だった。
補佐といっても生徒会の役員に変わりはないので、もちろん発言権もある。
怜くんとしては、監査からの視点で学園全体を見てもらい、七瀬くんの発言に期待したいんだろう。
「俺に面と向かって発言できる人間は少ない。圭吾はどちらかといえば、こちら側の人間だしな。それにあいつなら、俺たちとは違った視点からものを見れそうだ」
「ただ無知なだけかもしれないよ?」
「少なくとも学園外の『普通』を知っている時点で、無知だとも言い切れないだろう。使い物にならないようなら切り捨てるさ。保も構わないだろ?」
「ぼくは、まぁ……」
ぼくが直接七瀬くんと関われるのも生徒会だけだ。
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