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028.ディンブラ
しおりを挟む「全くです。まずは立場をわかってもらいましょうか」
色々なことを教えられた。
ハーレムのこと、序列のこと。
リゼに惹かれるのは仕方ないけど、それなら何よりリゼの意思を尊重すること。
リゼが男だと聞かされたときは、信じられなかった。あんな可憐な男が存在するのか……?
だがリゼを見れば見るほど、性別などどうでもよくなった。
「何故、是を助けた?」
一番の疑問はそれだった。
我を忘れていたとはいえ、是は罪を犯した。
リゼが動かなければ、ルフナも殺していた。
けれど周囲を取り囲む気配に、怒りはなかった。
「もし貴方が、私やガルに一つでも傷を負わせていたら、生きてはいなかったでしょう。傷を治してまで、貴方を生かしたのは利用価値があったのと」
「リゼが優しいからだな」
「……利用価値はわかる」
是はドラゴニュートだ。使い道はあるだろう。
「優しい、とはどういうことだ?」
「現状を見ればわかるだろ?」
誰も怒っていない。
「トレントたちには被害が出た。ドライアドであるニルギリも怒って当然だ。だけど、みんなリゼに影響されて、今ではお前に同情してるよ」
「何故、同情する?」
「ここに来たときには傷だらけで、憤怒状態だったからだな」
「貴方が自分の意思で、トレントの集落を襲ったなら話は別です。ですがそうでないなら、話せるであろうとリゼ様は考えました」
「考える時間があったのも大きいだろうな。その間に復興も進んだ」
同情する余地が生まれた、ということか。
「それもリゼ様のお心次第です。リゼ様がお怒りであれば、ニルギリたちは今でも怒っていたでしょう。魔族は強者に影響されやすいですから」
「リゼは無自覚だけどな」
そう言って、ガルは肩を竦め、ルフナは笑った。
「私たちはそんなリゼ様を守りたいと思っています」
「甘ちゃんな部分も含めてな」
「リゼ様は私たちに安らぎを与えてくださりますから」
ドラゴニュートは強者である。
強者が、他の強者の影響を受けることは少ない。
けれどルフナの語る安らぎがどういうものかは、自分を取り囲む者たちを見ればわかった。
巣立ち前を思いだす。
親に守られ、安寧を享受していた時代。
リゼに惹かれたのは、美しさもあるが、一番は是より強いからだ。強い者と交われば、高みに至れる。
しかし話を聞く内に、強者のあり方を教えられた気がした。
強いから、弱いものを倒していくのではない。
強いから、弱いものを守っていく。
「甘さも言い換えれば優しさだ。ここでリゼのことを語るには、時間が足んねぇよ」
「そうですね、貴方には機会があるんです。ご自身でリゼ様のことを学んでください」
「わかった……」
「あと、ご存じの通り、リゼ様の力は強大です。あまり怒らせないようにしてくださいね」
「リゼがキレたら大変なのは、身をもって知ってるだろ?」
「わかった……リゼに逆らうなということだな」
「違ぇよ。もうケガすんなってことだ」
「……意味が理解できない」
「簡単なことだ。俺たちがケガすると、リゼが怒るんだよ」
「何故?」
ルフナやガルはわかる。
何故、会ったばかりの自分も含まれる?
「会って、話をしたからな。そういう奴なんだよ。まぁ優先順位は、俺らのが上だけどな!」
得意げにガルが見下ろしてくる。
久しぶりにイラッとした。
「けどお前もハーレムに入るなら、差はなくなる。まぁ頑張れ」
頭をポンポンと叩かれる。
イライラは一瞬で霧散した。こいつは魔法使いか?
「リゼ様は押しに弱いですからね。貴方が強く希望すれば、第三夫人にもなれるでしょう」
「ルフナの場合は、元々リゼが尊敬してたのもあるだろうが。まぁ押しに弱いのは否定しねぇが」
「……お前たちは構わないのか?」
「決めるのはリゼだ。俺の条件は、自分の身は、自分で守れる奴だな」
「私の条件は、リゼ様の利になることです。ドラゴニュートなら、むしろ迎え入れたいぐらいですね」
貴方と交われば、リゼ様も更に強くなれますから、とルフナは続ける。
「性行為で互いに魔力を循環させれば、相手の力も取り入れられます。そうとわかっていても、異種間となると抵抗が生まれるものですが、リゼ様の場合、気になさりませんから」
「筋肉が好きなのかと思ったら、ルフナでもいいんだもんな」
「私もエルフの中では筋肉があるほうですが、ガル殿とは比べものになりませんからね」
「……回り回って、力はハーレム内で共有されるのか」
それも多種族の。
聞けば聞くほど、ハーレムに加わりたくなってくる。
「リゼは……最強を目指してるのか?」
「結果的にそうなっているだけです」
「リゼは無自覚だけどな」
「どうすれば……いい?」
リゼに好かれるためには。
もう既に序列ができているからか、ルフナとガルは好意的に相談にのってくれた。
色々なことを教えられた。
ハーレムのこと、序列のこと。
リゼに惹かれるのは仕方ないけど、それなら何よりリゼの意思を尊重すること。
リゼが男だと聞かされたときは、信じられなかった。あんな可憐な男が存在するのか……?
だがリゼを見れば見るほど、性別などどうでもよくなった。
「何故、是を助けた?」
一番の疑問はそれだった。
我を忘れていたとはいえ、是は罪を犯した。
リゼが動かなければ、ルフナも殺していた。
けれど周囲を取り囲む気配に、怒りはなかった。
「もし貴方が、私やガルに一つでも傷を負わせていたら、生きてはいなかったでしょう。傷を治してまで、貴方を生かしたのは利用価値があったのと」
「リゼが優しいからだな」
「……利用価値はわかる」
是はドラゴニュートだ。使い道はあるだろう。
「優しい、とはどういうことだ?」
「現状を見ればわかるだろ?」
誰も怒っていない。
「トレントたちには被害が出た。ドライアドであるニルギリも怒って当然だ。だけど、みんなリゼに影響されて、今ではお前に同情してるよ」
「何故、同情する?」
「ここに来たときには傷だらけで、憤怒状態だったからだな」
「貴方が自分の意思で、トレントの集落を襲ったなら話は別です。ですがそうでないなら、話せるであろうとリゼ様は考えました」
「考える時間があったのも大きいだろうな。その間に復興も進んだ」
同情する余地が生まれた、ということか。
「それもリゼ様のお心次第です。リゼ様がお怒りであれば、ニルギリたちは今でも怒っていたでしょう。魔族は強者に影響されやすいですから」
「リゼは無自覚だけどな」
そう言って、ガルは肩を竦め、ルフナは笑った。
「私たちはそんなリゼ様を守りたいと思っています」
「甘ちゃんな部分も含めてな」
「リゼ様は私たちに安らぎを与えてくださりますから」
ドラゴニュートは強者である。
強者が、他の強者の影響を受けることは少ない。
けれどルフナの語る安らぎがどういうものかは、自分を取り囲む者たちを見ればわかった。
巣立ち前を思いだす。
親に守られ、安寧を享受していた時代。
リゼに惹かれたのは、美しさもあるが、一番は是より強いからだ。強い者と交われば、高みに至れる。
しかし話を聞く内に、強者のあり方を教えられた気がした。
強いから、弱いものを倒していくのではない。
強いから、弱いものを守っていく。
「甘さも言い換えれば優しさだ。ここでリゼのことを語るには、時間が足んねぇよ」
「そうですね、貴方には機会があるんです。ご自身でリゼ様のことを学んでください」
「わかった……」
「あと、ご存じの通り、リゼ様の力は強大です。あまり怒らせないようにしてくださいね」
「リゼがキレたら大変なのは、身をもって知ってるだろ?」
「わかった……リゼに逆らうなということだな」
「違ぇよ。もうケガすんなってことだ」
「……意味が理解できない」
「簡単なことだ。俺たちがケガすると、リゼが怒るんだよ」
「何故?」
ルフナやガルはわかる。
何故、会ったばかりの自分も含まれる?
「会って、話をしたからな。そういう奴なんだよ。まぁ優先順位は、俺らのが上だけどな!」
得意げにガルが見下ろしてくる。
久しぶりにイラッとした。
「けどお前もハーレムに入るなら、差はなくなる。まぁ頑張れ」
頭をポンポンと叩かれる。
イライラは一瞬で霧散した。こいつは魔法使いか?
「リゼ様は押しに弱いですからね。貴方が強く希望すれば、第三夫人にもなれるでしょう」
「ルフナの場合は、元々リゼが尊敬してたのもあるだろうが。まぁ押しに弱いのは否定しねぇが」
「……お前たちは構わないのか?」
「決めるのはリゼだ。俺の条件は、自分の身は、自分で守れる奴だな」
「私の条件は、リゼ様の利になることです。ドラゴニュートなら、むしろ迎え入れたいぐらいですね」
貴方と交われば、リゼ様も更に強くなれますから、とルフナは続ける。
「性行為で互いに魔力を循環させれば、相手の力も取り入れられます。そうとわかっていても、異種間となると抵抗が生まれるものですが、リゼ様の場合、気になさりませんから」
「筋肉が好きなのかと思ったら、ルフナでもいいんだもんな」
「私もエルフの中では筋肉があるほうですが、ガル殿とは比べものになりませんからね」
「……回り回って、力はハーレム内で共有されるのか」
それも多種族の。
聞けば聞くほど、ハーレムに加わりたくなってくる。
「リゼは……最強を目指してるのか?」
「結果的にそうなっているだけです」
「リゼは無自覚だけどな」
「どうすれば……いい?」
リゼに好かれるためには。
もう既に序列ができているからか、ルフナとガルは好意的に相談にのってくれた。
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