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025.勇者
しおりを挟む「うぬぅ……」
「あ、タケル起きた?」
重い頭を手で支えながら、体を起こす。
目の前には見馴れたパーティーメンバーの姿があった。
「おれ、どうし……うわぁっ、素っ裸じゃねぇか!? おまえら何しやがった!?」
辛うじて股間に布が載せられているものの、裸なのに変わりはない。
尻に刺さる河原の石が痛かった。
「バカ! 水浴び中に流されたのはそっちでしょ!?」
「探した。タケル、覗きはよくない」
「そうミャ、タケルの粗末なイチモツなんて誰も興味ないミャ」
「おまっ、絶対に見ただろ!?」
口々にまくし立てられる中、慌てて傍に置かれていた服を着て、帯剣する。
そうだ、これこれ。
やっぱ勇者の剣がないと落ち着かないよな。
国宝だけあって、持っているだけで安心感がある。
「大体おれも水浴びしてただけで、覗いてねぇっつーの」
「どうだか? あなたがわたくしの胸を物欲しげに見ているのは、わかっているのよ? 立場をわきまえなさい」
そう言って腰に手を当て、胸の揺れを見せ付けてくるのは、王様の三女アラビカ様。正真正銘のお姫様だ。
旅に同行するだけあって、剣の腕前は凄い。姫騎士ってやつだな。
「タケル、エッチ」
「おまえに関しては胸がないだろ」
静かに喋るコナは、黒髪黒目で容姿も日本人に近いから親近感が湧く。
けど魔法使いっていう時点で、ファンタジーに溢れていた。しかも若くして魔導具開発で博士号を取得した天才少女らしい。おれよりチート感がある。胸は絶壁だが。
「人のことを言える立場じゃないミャ」
「おまえ見たな? 絶対に見たな?」
最後の一人は猫族の獣人だ。頭にある耳と尻尾以外は、人と変わらない。
リンチェは、大陸の西にあるツッケロ部族連合の氏族の娘なんだとか。人間語が聞き取れるから部族連合を代表して派遣された。
おれはチートで言葉に困らないが、基本的に人間と魔族は言葉が通じないらしい。
リンチェの体は細身だけど筋肉質だから、あまり好みじゃないんだよなぁ。
三人の女の子がパーティーメンバーになると聞いて、最初は喜んだ。
流石、異世界。これでおれもハーレム持ちだってな。
しかしこいつら、みんなして気が強いでやんの。一人ぐらい、気弱そうな奴がいてもいいじゃん。バランス考えろよ。
顔面偏差値は揃って高いんだけど。
純粋な偏差値も高そうで、アラビカとコナも片言なら獣人語を使える。しかしリンチェの言葉はおれ以上にミャーミャー言ってるように聞こえるらしい。
意思の疎通はできるし、細かい話はおれが通訳するから、今のところ困ったことはない。
「あ!? そういえば天使……じゃなかった、エルフの女の子を見なかったか!? ここで水浴びしてたんだよ!」
見るからに儚げだった女の子のことを思いだす。
大きな瞳で見上げられて心配されたときは、ぐっときた。
「わたくしたちだけじゃ飽き足らず、他の子まで覗いていましたの!?」
「流された先にいたんだよ!」
つーか覗いてねぇ! たまたま見える範囲にアラビカたちがいただけだ。断じて覗きじゃない。
ちょっとそっちに気を取られて流されたけど。
「オーガと一緒にいたんだ! 助けないと!」
「オーガとですって? まずいわね……」
「だろ!?」
今頃、巣穴に連れ込まれてるかもしれない。
そのあとは……ダメだ、考えるな! あのオーガは巨根だった。小柄な女の子が耐えられるはずがない。
白い肌に、水が滴っていた光景を思いだす。
残念ながら長い金髪でおっぱいは隠れてたけど……エルフはやっぱりつるぺたが基本なのかな。でもコナと違って、絶壁でも可愛く感じられた。
深窓の令嬢っていう雰囲気がピッタリな、可憐な少女だった。
「めちゃくちゃ可愛い子だったんだよ! このままじゃ、オーガに襲われる!」
「あなた、わたくしたちを侍らせておいて、まだ足りないっていうの? 助けたくても、森に入られたら分が悪いわよ」
「リンチェ、どうにかならないか?」
「匂いは辿れないからミャ-。まだ近場にいるなら移動する足音が聞こえるかもしれないミャ」
だがそれもどの方角へ向かったかわからないと難しいという。
「タケル、ドラゴンはどうする?」
「ドラゴンは息も絶え絶えだったから、急がなくてもいいだろ。先に倒した一頭だけでも、素材にするには十分だって言われたし」
今はとにかく、あの女の子を優先したかった。
「あ、タケル起きた?」
重い頭を手で支えながら、体を起こす。
目の前には見馴れたパーティーメンバーの姿があった。
「おれ、どうし……うわぁっ、素っ裸じゃねぇか!? おまえら何しやがった!?」
辛うじて股間に布が載せられているものの、裸なのに変わりはない。
尻に刺さる河原の石が痛かった。
「バカ! 水浴び中に流されたのはそっちでしょ!?」
「探した。タケル、覗きはよくない」
「そうミャ、タケルの粗末なイチモツなんて誰も興味ないミャ」
「おまっ、絶対に見ただろ!?」
口々にまくし立てられる中、慌てて傍に置かれていた服を着て、帯剣する。
そうだ、これこれ。
やっぱ勇者の剣がないと落ち着かないよな。
国宝だけあって、持っているだけで安心感がある。
「大体おれも水浴びしてただけで、覗いてねぇっつーの」
「どうだか? あなたがわたくしの胸を物欲しげに見ているのは、わかっているのよ? 立場をわきまえなさい」
そう言って腰に手を当て、胸の揺れを見せ付けてくるのは、王様の三女アラビカ様。正真正銘のお姫様だ。
旅に同行するだけあって、剣の腕前は凄い。姫騎士ってやつだな。
「タケル、エッチ」
「おまえに関しては胸がないだろ」
静かに喋るコナは、黒髪黒目で容姿も日本人に近いから親近感が湧く。
けど魔法使いっていう時点で、ファンタジーに溢れていた。しかも若くして魔導具開発で博士号を取得した天才少女らしい。おれよりチート感がある。胸は絶壁だが。
「人のことを言える立場じゃないミャ」
「おまえ見たな? 絶対に見たな?」
最後の一人は猫族の獣人だ。頭にある耳と尻尾以外は、人と変わらない。
リンチェは、大陸の西にあるツッケロ部族連合の氏族の娘なんだとか。人間語が聞き取れるから部族連合を代表して派遣された。
おれはチートで言葉に困らないが、基本的に人間と魔族は言葉が通じないらしい。
リンチェの体は細身だけど筋肉質だから、あまり好みじゃないんだよなぁ。
三人の女の子がパーティーメンバーになると聞いて、最初は喜んだ。
流石、異世界。これでおれもハーレム持ちだってな。
しかしこいつら、みんなして気が強いでやんの。一人ぐらい、気弱そうな奴がいてもいいじゃん。バランス考えろよ。
顔面偏差値は揃って高いんだけど。
純粋な偏差値も高そうで、アラビカとコナも片言なら獣人語を使える。しかしリンチェの言葉はおれ以上にミャーミャー言ってるように聞こえるらしい。
意思の疎通はできるし、細かい話はおれが通訳するから、今のところ困ったことはない。
「あ!? そういえば天使……じゃなかった、エルフの女の子を見なかったか!? ここで水浴びしてたんだよ!」
見るからに儚げだった女の子のことを思いだす。
大きな瞳で見上げられて心配されたときは、ぐっときた。
「わたくしたちだけじゃ飽き足らず、他の子まで覗いていましたの!?」
「流された先にいたんだよ!」
つーか覗いてねぇ! たまたま見える範囲にアラビカたちがいただけだ。断じて覗きじゃない。
ちょっとそっちに気を取られて流されたけど。
「オーガと一緒にいたんだ! 助けないと!」
「オーガとですって? まずいわね……」
「だろ!?」
今頃、巣穴に連れ込まれてるかもしれない。
そのあとは……ダメだ、考えるな! あのオーガは巨根だった。小柄な女の子が耐えられるはずがない。
白い肌に、水が滴っていた光景を思いだす。
残念ながら長い金髪でおっぱいは隠れてたけど……エルフはやっぱりつるぺたが基本なのかな。でもコナと違って、絶壁でも可愛く感じられた。
深窓の令嬢っていう雰囲気がピッタリな、可憐な少女だった。
「めちゃくちゃ可愛い子だったんだよ! このままじゃ、オーガに襲われる!」
「あなた、わたくしたちを侍らせておいて、まだ足りないっていうの? 助けたくても、森に入られたら分が悪いわよ」
「リンチェ、どうにかならないか?」
「匂いは辿れないからミャ-。まだ近場にいるなら移動する足音が聞こえるかもしれないミャ」
だがそれもどの方角へ向かったかわからないと難しいという。
「タケル、ドラゴンはどうする?」
「ドラゴンは息も絶え絶えだったから、急がなくてもいいだろ。先に倒した一頭だけでも、素材にするには十分だって言われたし」
今はとにかく、あの女の子を優先したかった。
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