ぼく、魔王になります

楢山幕府

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009.アミーコ

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「チッ、何でわかってくれねぇんだよ……」

 ガルのバカヤロウ。
 昼間見た光景を思いだす。
 夜になれば、木陰だった場所は闇に覆われていた。
 松明片手に、二人が抱き合っていた場所に立つ。

「くっそ」

 女々しいと、自分でも思う。
 けれど胸に燻る感情を抑えることはできなかった。
 焦がれる気持ちを、相手は一向にわかってくれないが。
 ケガはないのに、振り払われた手が痛い。

「あんな、拒絶することはねぇだろうが」

 オーガの男はハーレムを作る。
 相対的に女が多いからだが、誰もが強い男の子どもを作りたがった。
 オーガに限らず、魔族なら当然だ。
 そして強い男相手なら、男だって足を開く。
 繋がれば繋がるほど、魔力が増えるからだ。
 本来、一人が持つ魔力の量は決まっている。
 けれど大量の魔力を体に循環させることで、保有量が増えることもわかっていた。

「しかもめちゃくちゃ気持ち良いって聞くしよ」

 ガルが村で一番強いことは周知の事実だ。
 オレじゃ、力不足だっていう自覚はある。
 けれど諦めきれなかった。

「そういやぁ、この近くで採取するって言ってたな」

 ずっと一人で突っ立っているのも虚しくなって足を向ける。
 最後にお互いの姿がギリギリ見えるところで、ガルが振り返ったのをリゼは知らない。

「ったく、妬けるよなぁ」

 幼なじみがあんな顔をするなんて知らなかった。
 いつも自信に満ちている男が、恋い焦がれると、ああも弱気になるなんて知らなかった。
 モヤモヤする胸の内を、舌打ちで吐き出す。

「チッ」

 リゼが向かった先には獣道に似た細い道ができていた。
 オーガには狭く、邪魔な枝を折りながら進む。
 エルフからは薬草の採取場所には近付かないよう、普段から注意を受けている。
 だがむしゃくしゃしている今、そんなことはどうでもよかった。
 昼間に見た幻影を追うようにして足を進ませると、ほどなくして開けた場所に着く。

「なんだ?」

 視界が悪くてよく見えない。
 松明をかざし、ようやく足元に背丈の低い花があることに気付いた。

「もしかして一面に植わってるのか?」

 ぞくっと背筋が震える。
 本能が、ここは危険だと訴えた。

「くそっ、毒かよ!?」

 慌てて鼻と口を腕で塞ぎ、来た道を引き返す。
 ドクン、ドクン……。
 一歩進むたびに、心臓の鼓動が大きくなる。

「村までもってくれよ……っ」

 建設を手伝うため、今はエルフの村で寝泊まりしていた。
 お互いに古い付き合いなので、村の中にもオーガ用の住まいがある。
 戻りさえすれば、すぐに回復薬を用意してくれるはずだ。
 しかし無情にも、体が限界を迎える。
 膝をついた場所は、昼間の木陰だった。

「はっ……あ、なんだ、これ……」

 心臓がうるさかった。
 けどそれ以上に、下半身に熱が集まるのを感じる。
 触れた股間は完全に勃起していた。

「嘘だろ……まさか……そういうやつなのか?」

 遂には理性が焼き切れて、オレは一心不乱に自身を扱いた。
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