52 / 58
うめき
しおりを挟む
そんな中、タヌキはひっそりと意識を取り戻し、あやふやな意識で現在の状況を確認するため周りを見渡し始めた。
「俺はいったい......。うっ!!」
動こうとして腹部に鈍い痛みがあることに気が付いた。
記憶はないがおそらくブルーノにやられたものなのだろう。
離れたところでクラウスのうめき声が聞こえていた。ニアは椅子に座ったまま動けないようだ。
ブルーノが何やら話しているようだが内容は聞き取れない。
「うぅ......頭がぼんやりする。俺はたしか......目の前に飯が並んでて、そうだ! ブルーノに術をかけられたんだ。動けなくなって......そうか、俺気づかない間にやられてたのか。」
徐々にはっきりしだした記憶を探りながら現状の理解に努める。
「ごふっ!! ぐふっ!!」
突然近くで苦しそうな息遣いが聞こえてきた。
何が起きているのかとタヌキは周囲を再度見渡す。
聞こえるのはタヌキがいたガレキではなくもう一つのがれきの山だった。
よく見るとガレキの山から手だけかろうじて見えていた。
「まさか......アレンか!!」
タヌキは痛む体をかえりみずにアレンの元へ急ぐ。
ガレキを押しのけアレンの体を起こすと......
それはひどいありさまだった。
ヒーラーという職業からすぐに内臓がひどく損傷していることに気づく。
骨は内臓に突き刺さり急な外部からの圧迫に耐え切れず破裂しているところもあるだろう。
口から黒い血を吐いているのがその証拠だ。
「これは......まずい......すぐに治療しないと。だがみんなが......」
アレンを治療しなくてはいけないのはわかっている。
しかしその間にもニアとクラウスは命の危機にさらされている。
「どうすれば......」
その時タヌキはひどく寒気を感じることに気づいた。
悪寒などではなく、この部屋の気温が低くなっていることに。
そしてすぐにその正体に気づく。
ニアの足元のじゅうたんが霜で覆いつくされている。
何が起こっているのかも全く理解できないが今はニアを信じよう!
この男は死なせてはいけない。
仲間だからというのもある。いい奴だからというのもある。
しかしそれだけではない。それだけではない何かを期待させるこの男を自分たちとの冒険で死なしてしまえるわけがない。それはおそらくニアもクラウスも同じ考えなのではないだろうか。
今はこの男を復活させることが一番、この危機を脱することにつながるはず。
タヌキは己の全魔力を注ぎ込むイメージでアレンに回復魔法をかける。
致命傷を受けたこの状態でどれほど救える可能性があるのか不明だがやるしかない。
アレンを救う。それがみんなを救うことになり、リンを救う事にもつながるのだと自分に言い聞かせて。
ーーーーーーーーーーー
ゴンゾウとディアドラは黒い球体を持ってアレンの元へ向かう。
不死の再生力があるこの球体の呪いを二匹が解くことはできない。
庫の封印が解けなければアレン達の勝利の可能性は限りなく低い。
1度ブルーノと戦っているディアドラはブルーノの力の恐ろしさをわかっているつもりだ。
「急ぐぞ青いの。主(あるじ)の元へ。」
急ぎ向かう道中。ゴンゾウを乗せながらものすごいスピードでかけていくディアドラ。元来た道をかけていく。
「きゅぴぴ!!」
間もなく来た道の階段が見えてくるはず。しかしその先に見える何かにゴンゾウが慌ただしく叫び出す。
階段の前が妙に暗く映った。
地面が黒く動いている。
それは波打つようにモゾモゾと。
「あれは......」
ディアドラも気づきその足を止める。
それは不快感を煽るような黒い色。そうあの蜘蛛のモンスターであった。
1匹や2匹ではない。何百匹と群れをなし出口の階段を塞いでいる。
「きゅぴぴぷぷ!!!!」
「ええいわかっている!! しかしあの群れを相手にしている時間はない!」
今にも襲ってきそうな蜘蛛の群れ。いくらディアドラとゴンゾウとはいえこの数では骨が折れる。
「仕方ない。おい青いの!! お前ではあいつらと相性というものが悪い。ここは私に任せて先に行け。道は作る。」
「きゅぴぴぴ!!!!」
「ははは、見くびるな。あの程度のモンスターもどきなど何匹いようが関係ない。」
ディアドラは咥えていた黒い球体を頭の上のゴンゾウに投げ渡し、そのままゴンゾウを咥え大きく振りかぶって階段へぶん投げる。
「きゅぴぴ!!」
投げ出されたゴンゾウ。しかしそのゴンゾウに向けて蜘蛛たちが黒い波のようになって壁を作り飲み込もうとした。
「なめるな!!!」
ディアドラは大きく息を吸い込みその波に向かって強烈な咆哮をぶつける。
恐ろしい振動を含んだ音の砲弾。ゴンゾウをかすめて飛んでいき黒い波の中心に当たると バン!! と波の中心がはじけ飛び大きく穴が開いた。
そこに飛び込むようにゴンゾウが穴を潜ろうとする。
しかし波を作っている以外の蜘蛛たちが更なる追い打ちをゴンゾウにけしかける。
しかしゴンゾウは一瞬の間に雷切に【帯電】をすませ空中で回転しながら溜めた電撃を放出する。
『スライム一刀流広範囲戦術 【 磁気嵐(じきあらし 】』
回転するゴンゾウを中心に電撃の嵐が巻き起こり飛びつこうとした蜘蛛たちがのきなみ黒ずみになっていった。
「きゅぴ!」
そのままゴンゾウは中心の黒い穴に吸い込まれるように入っていきその先の階段のあたりで着地したのを最後に黒い波は修復しその姿が見えることはなかった。
「ああ、任せたぞ。相棒。」
ディアドラはすでに蜘蛛たちに囲まれ逃げ場を失っていた。
「ふざけたやつらだ。いいだろう。お前たちも冒険者の端くれ。その誇りに免じて私も本気で相手をしよう。それがお前たちへのせめてもの手向けだ。」
ディアドラは グルルルルゥゥゥゥゥ と毛を逆立てていき徐々にその体を大きくしていく。
そして終いには黒い波と同じくらいの大きさまでになりそしてそれは目の前の蜘蛛たちを強烈な威圧感が襲った。
ディアドラは上を向き大きく遠吠えのような恰好を見せるが、発した音は考えるような遠吠えではなく爆発音にも似た言葉で表現できないほどの衝撃音だった。
それが合図と言わんばかりに黒い波はディアドラに襲い掛かる。
哀れな冒険者たちの怨念を乗せて。
「俺はいったい......。うっ!!」
動こうとして腹部に鈍い痛みがあることに気が付いた。
記憶はないがおそらくブルーノにやられたものなのだろう。
離れたところでクラウスのうめき声が聞こえていた。ニアは椅子に座ったまま動けないようだ。
ブルーノが何やら話しているようだが内容は聞き取れない。
「うぅ......頭がぼんやりする。俺はたしか......目の前に飯が並んでて、そうだ! ブルーノに術をかけられたんだ。動けなくなって......そうか、俺気づかない間にやられてたのか。」
徐々にはっきりしだした記憶を探りながら現状の理解に努める。
「ごふっ!! ぐふっ!!」
突然近くで苦しそうな息遣いが聞こえてきた。
何が起きているのかとタヌキは周囲を再度見渡す。
聞こえるのはタヌキがいたガレキではなくもう一つのがれきの山だった。
よく見るとガレキの山から手だけかろうじて見えていた。
「まさか......アレンか!!」
タヌキは痛む体をかえりみずにアレンの元へ急ぐ。
ガレキを押しのけアレンの体を起こすと......
それはひどいありさまだった。
ヒーラーという職業からすぐに内臓がひどく損傷していることに気づく。
骨は内臓に突き刺さり急な外部からの圧迫に耐え切れず破裂しているところもあるだろう。
口から黒い血を吐いているのがその証拠だ。
「これは......まずい......すぐに治療しないと。だがみんなが......」
アレンを治療しなくてはいけないのはわかっている。
しかしその間にもニアとクラウスは命の危機にさらされている。
「どうすれば......」
その時タヌキはひどく寒気を感じることに気づいた。
悪寒などではなく、この部屋の気温が低くなっていることに。
そしてすぐにその正体に気づく。
ニアの足元のじゅうたんが霜で覆いつくされている。
何が起こっているのかも全く理解できないが今はニアを信じよう!
この男は死なせてはいけない。
仲間だからというのもある。いい奴だからというのもある。
しかしそれだけではない。それだけではない何かを期待させるこの男を自分たちとの冒険で死なしてしまえるわけがない。それはおそらくニアもクラウスも同じ考えなのではないだろうか。
今はこの男を復活させることが一番、この危機を脱することにつながるはず。
タヌキは己の全魔力を注ぎ込むイメージでアレンに回復魔法をかける。
致命傷を受けたこの状態でどれほど救える可能性があるのか不明だがやるしかない。
アレンを救う。それがみんなを救うことになり、リンを救う事にもつながるのだと自分に言い聞かせて。
ーーーーーーーーーーー
ゴンゾウとディアドラは黒い球体を持ってアレンの元へ向かう。
不死の再生力があるこの球体の呪いを二匹が解くことはできない。
庫の封印が解けなければアレン達の勝利の可能性は限りなく低い。
1度ブルーノと戦っているディアドラはブルーノの力の恐ろしさをわかっているつもりだ。
「急ぐぞ青いの。主(あるじ)の元へ。」
急ぎ向かう道中。ゴンゾウを乗せながらものすごいスピードでかけていくディアドラ。元来た道をかけていく。
「きゅぴぴ!!」
間もなく来た道の階段が見えてくるはず。しかしその先に見える何かにゴンゾウが慌ただしく叫び出す。
階段の前が妙に暗く映った。
地面が黒く動いている。
それは波打つようにモゾモゾと。
「あれは......」
ディアドラも気づきその足を止める。
それは不快感を煽るような黒い色。そうあの蜘蛛のモンスターであった。
1匹や2匹ではない。何百匹と群れをなし出口の階段を塞いでいる。
「きゅぴぴぷぷ!!!!」
「ええいわかっている!! しかしあの群れを相手にしている時間はない!」
今にも襲ってきそうな蜘蛛の群れ。いくらディアドラとゴンゾウとはいえこの数では骨が折れる。
「仕方ない。おい青いの!! お前ではあいつらと相性というものが悪い。ここは私に任せて先に行け。道は作る。」
「きゅぴぴぴ!!!!」
「ははは、見くびるな。あの程度のモンスターもどきなど何匹いようが関係ない。」
ディアドラは咥えていた黒い球体を頭の上のゴンゾウに投げ渡し、そのままゴンゾウを咥え大きく振りかぶって階段へぶん投げる。
「きゅぴぴ!!」
投げ出されたゴンゾウ。しかしそのゴンゾウに向けて蜘蛛たちが黒い波のようになって壁を作り飲み込もうとした。
「なめるな!!!」
ディアドラは大きく息を吸い込みその波に向かって強烈な咆哮をぶつける。
恐ろしい振動を含んだ音の砲弾。ゴンゾウをかすめて飛んでいき黒い波の中心に当たると バン!! と波の中心がはじけ飛び大きく穴が開いた。
そこに飛び込むようにゴンゾウが穴を潜ろうとする。
しかし波を作っている以外の蜘蛛たちが更なる追い打ちをゴンゾウにけしかける。
しかしゴンゾウは一瞬の間に雷切に【帯電】をすませ空中で回転しながら溜めた電撃を放出する。
『スライム一刀流広範囲戦術 【 磁気嵐(じきあらし 】』
回転するゴンゾウを中心に電撃の嵐が巻き起こり飛びつこうとした蜘蛛たちがのきなみ黒ずみになっていった。
「きゅぴ!」
そのままゴンゾウは中心の黒い穴に吸い込まれるように入っていきその先の階段のあたりで着地したのを最後に黒い波は修復しその姿が見えることはなかった。
「ああ、任せたぞ。相棒。」
ディアドラはすでに蜘蛛たちに囲まれ逃げ場を失っていた。
「ふざけたやつらだ。いいだろう。お前たちも冒険者の端くれ。その誇りに免じて私も本気で相手をしよう。それがお前たちへのせめてもの手向けだ。」
ディアドラは グルルルルゥゥゥゥゥ と毛を逆立てていき徐々にその体を大きくしていく。
そして終いには黒い波と同じくらいの大きさまでになりそしてそれは目の前の蜘蛛たちを強烈な威圧感が襲った。
ディアドラは上を向き大きく遠吠えのような恰好を見せるが、発した音は考えるような遠吠えではなく爆発音にも似た言葉で表現できないほどの衝撃音だった。
それが合図と言わんばかりに黒い波はディアドラに襲い掛かる。
哀れな冒険者たちの怨念を乗せて。
0
お気に入りに追加
512
あなたにおすすめの小説
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。


【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】領地に行くと言って出掛けた夫が帰って来ません。〜愛人と失踪した様です〜
山葵
恋愛
政略結婚で結婚した夫は、式を挙げた3日後に「領地に視察に行ってくる」と言って出掛けて行った。
いつ帰るのかも告げずに出掛ける夫を私は見送った。
まさかそれが夫の姿を見る最後になるとは夢にも思わずに…。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる