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許せない
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「どうです? 私の予想、当たってますか?」
相変わらず凍り付くような悪寒をアレン達に与えながら話を続けるブルーノ。
撤退しようにもこの空気、簡単には逃げられないだろう。
誰もが戦闘もやむなしと考えた中、ニアがブルーノに質問し始めた。
「あなたのしていた実験というのは人間に魔素を無理やり与えてモンスター化させるというものなの?」
いきなりの核心つく質問にさすがのブルーノも一瞬言葉に詰まったがすぐにクスクスと笑い出し答え始める。
「クスクス、あなたは嘘が嫌いなのですね。私と同じだ。」
人を逆なでするような言葉。しかしニアは表情を変えない。
「質問に答えましょう。あなたの質問、大まかにいえば当たりです。ただ本当に大まかなものでしかないですが。本当の根本的な理由でいえばその意味は全く違うものになってくる。」
「どうしてそんなことをするの?」
「意味などたくさんありすぎて、ただ一つ言えることは好奇心。あなたもなぜダンジョンに入るかという理由を聞かれれば何と言いますか? 強くなりたいから、金が欲しい、名誉、そのすべては好奇心なのです。どうすればこうなる。こうしたらこうなる。そういった事を連想しながら何かの行動へ欲をまき散らす。それはすべて好奇心という言葉に置き換えることができます。私は言ってしまえば好奇心の従者、下部(しもべ)なのですよ。」
「そんなことを聞いてるんじゃないの。私は......どうしてこんなひどいことができるの? この子たちにも未来はあったはず。もちろんダンジョンの中で命を落とすこともある。仲間に騙されて命を落とした冒険者だっているわ。でもこれは......いくら何でもひどすぎる。人間の尊厳を壊す仕打ちだわ。」
ニアは声を声をかすらせてそれでも強く言い放つ。今泣いてはいけない。それでもタヌキとリンの事を思えば瞳から涙が浮かび上がってきた。
「個人の感情で話されても困ります。私は今生物の歴史を変えるかもしれない実験に携わっているのです。とても崇高な行いなのです。あなたは神を信じますか? 神とは何か考えたことがありますか? 神とは人物ではない。神とは現象の事を指すのです。私は神を起こそうとしているのですよ!!」
「ひどい......そんな訳の分からないことのために......あなただけは許せない。」
ニアは持っていた杖を強く握りしめる。
「わからない人はいつまでもわからないものです。どれだけ説明しても、どれだけ目の前で実演しても。己の身に降りかかってから初めて理解する。」
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ。」
アレン達も初めはニアの暴走に焦りを見せたが最早そんな感情はなくなった。
一撃でもこいつをぶん殴らないと気が済まない。
皆がその思いだった。
「お返し頂いてありがとうございます。それでどうしますか? 動けない体で私をどうするというのです?」
その言葉と同時に全員の体がきつい縄で縛られたように身動きできなくなった。
「ぐっ、いつの間に.....」
クラウスはもがきながら苦しい声を出す。
「今ですよ。たった今。知ってましたか? 地上では私は呪いのブルーノと呼ばれています。」
「これが呪術!? 一気に全員の動きを完全に封じるなんて。」
ふざけたような呪術の力に圧倒されるアレン達。
するとタヌキが
「これだけの力を一瞬で使う発動の速さ。ぐっ、呪術師の技は強力な分必ず術者に反動が降りかかる。証拠に今こいつは次の技をかけられないでいる。今耐えればすぐに魔力不足に陥って技が出せない状態になるぞ。」
「クククク、よくご存じじゃないですか? そうなんです呪術師というのは不便な職業でして、技の反動が大きすぎて一人では戦闘も満足にできないのですよ。ただ、私以外の呪術師はですが。」
ブルーノはそのままタヌキに手をかざすとタヌキの目の前の空間が バン!! と弾けるように歪んでそのまま壁へ吹き飛ばされてしまった。ぶつかった壁は粉々に崩れタヌキはそのがれきの中で失神してしまっているようだ。
「そんな......予備動作なしで、しかも攻撃も目視できないであの威力......こんなのって。」
ニアは瞬時に自分たちとブルーノとの戦力差を思い知ってしまう。
しかしアレンは動けない体で暴れようともせずブルーノを見ながら
「おかしいとは思ってた。お前ウォーウルフと戦って呪印かけたんだろ? その反動も見せてない。そんな中で今の攻撃......お前、呪印の反動受けてないだろ?」
「ほう、ウォーウルフという言葉が出ますか? ますますあなたは面白い。いかにも、なぜあなたがそれを知っているかは知りませんが。とびきり強力な奴をね。本当はもっと試してみたかったんですがあまりにウォーウルフが強力だったのでその一つの呪術で【ストック】が切れてしまいましてね。」
その言葉にニアは戦慄する。
【ストック】とはどういう意味か? いったい何の目的の実験をしていたのか? 魔素を人体に浴びせる実験? 今まで聞いたブルーノの言葉がニアの頭に一つの仮説を導き出した。
「まさか......呪印を肩代わりさせてる......。」
その言葉にクラウスは
「そんなまさか!! そんな事できるはずがない。あれは職業についてまわる能力みたいなものだ!!」
「いや、たぶんそうだよクラウス。ニアの言うとおりだ。」
アレンはクラウスにそういうとブルーノを見ろと顔をブルーの方へやった。
ブルーノはおかしくてたまらない様子で腹を抱え笑っていた。
おそらく今の話が的を得ていたという事なのだろう。
「面白い!! あなたたちは本当に面白い!! なぜなのですか!? なぜそんなに私を喜ばしてくれるのですか!? 今までだれ一人私の理解者などいなかった。ついに現れたのですね、私の理解者が!!」
狂ったように言葉の語気を強めるブルーノ。仮面から覗く目は血走り強引なまでに見開かれている。
相変わらず凍り付くような悪寒をアレン達に与えながら話を続けるブルーノ。
撤退しようにもこの空気、簡単には逃げられないだろう。
誰もが戦闘もやむなしと考えた中、ニアがブルーノに質問し始めた。
「あなたのしていた実験というのは人間に魔素を無理やり与えてモンスター化させるというものなの?」
いきなりの核心つく質問にさすがのブルーノも一瞬言葉に詰まったがすぐにクスクスと笑い出し答え始める。
「クスクス、あなたは嘘が嫌いなのですね。私と同じだ。」
人を逆なでするような言葉。しかしニアは表情を変えない。
「質問に答えましょう。あなたの質問、大まかにいえば当たりです。ただ本当に大まかなものでしかないですが。本当の根本的な理由でいえばその意味は全く違うものになってくる。」
「どうしてそんなことをするの?」
「意味などたくさんありすぎて、ただ一つ言えることは好奇心。あなたもなぜダンジョンに入るかという理由を聞かれれば何と言いますか? 強くなりたいから、金が欲しい、名誉、そのすべては好奇心なのです。どうすればこうなる。こうしたらこうなる。そういった事を連想しながら何かの行動へ欲をまき散らす。それはすべて好奇心という言葉に置き換えることができます。私は言ってしまえば好奇心の従者、下部(しもべ)なのですよ。」
「そんなことを聞いてるんじゃないの。私は......どうしてこんなひどいことができるの? この子たちにも未来はあったはず。もちろんダンジョンの中で命を落とすこともある。仲間に騙されて命を落とした冒険者だっているわ。でもこれは......いくら何でもひどすぎる。人間の尊厳を壊す仕打ちだわ。」
ニアは声を声をかすらせてそれでも強く言い放つ。今泣いてはいけない。それでもタヌキとリンの事を思えば瞳から涙が浮かび上がってきた。
「個人の感情で話されても困ります。私は今生物の歴史を変えるかもしれない実験に携わっているのです。とても崇高な行いなのです。あなたは神を信じますか? 神とは何か考えたことがありますか? 神とは人物ではない。神とは現象の事を指すのです。私は神を起こそうとしているのですよ!!」
「ひどい......そんな訳の分からないことのために......あなただけは許せない。」
ニアは持っていた杖を強く握りしめる。
「わからない人はいつまでもわからないものです。どれだけ説明しても、どれだけ目の前で実演しても。己の身に降りかかってから初めて理解する。」
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ。」
アレン達も初めはニアの暴走に焦りを見せたが最早そんな感情はなくなった。
一撃でもこいつをぶん殴らないと気が済まない。
皆がその思いだった。
「お返し頂いてありがとうございます。それでどうしますか? 動けない体で私をどうするというのです?」
その言葉と同時に全員の体がきつい縄で縛られたように身動きできなくなった。
「ぐっ、いつの間に.....」
クラウスはもがきながら苦しい声を出す。
「今ですよ。たった今。知ってましたか? 地上では私は呪いのブルーノと呼ばれています。」
「これが呪術!? 一気に全員の動きを完全に封じるなんて。」
ふざけたような呪術の力に圧倒されるアレン達。
するとタヌキが
「これだけの力を一瞬で使う発動の速さ。ぐっ、呪術師の技は強力な分必ず術者に反動が降りかかる。証拠に今こいつは次の技をかけられないでいる。今耐えればすぐに魔力不足に陥って技が出せない状態になるぞ。」
「クククク、よくご存じじゃないですか? そうなんです呪術師というのは不便な職業でして、技の反動が大きすぎて一人では戦闘も満足にできないのですよ。ただ、私以外の呪術師はですが。」
ブルーノはそのままタヌキに手をかざすとタヌキの目の前の空間が バン!! と弾けるように歪んでそのまま壁へ吹き飛ばされてしまった。ぶつかった壁は粉々に崩れタヌキはそのがれきの中で失神してしまっているようだ。
「そんな......予備動作なしで、しかも攻撃も目視できないであの威力......こんなのって。」
ニアは瞬時に自分たちとブルーノとの戦力差を思い知ってしまう。
しかしアレンは動けない体で暴れようともせずブルーノを見ながら
「おかしいとは思ってた。お前ウォーウルフと戦って呪印かけたんだろ? その反動も見せてない。そんな中で今の攻撃......お前、呪印の反動受けてないだろ?」
「ほう、ウォーウルフという言葉が出ますか? ますますあなたは面白い。いかにも、なぜあなたがそれを知っているかは知りませんが。とびきり強力な奴をね。本当はもっと試してみたかったんですがあまりにウォーウルフが強力だったのでその一つの呪術で【ストック】が切れてしまいましてね。」
その言葉にニアは戦慄する。
【ストック】とはどういう意味か? いったい何の目的の実験をしていたのか? 魔素を人体に浴びせる実験? 今まで聞いたブルーノの言葉がニアの頭に一つの仮説を導き出した。
「まさか......呪印を肩代わりさせてる......。」
その言葉にクラウスは
「そんなまさか!! そんな事できるはずがない。あれは職業についてまわる能力みたいなものだ!!」
「いや、たぶんそうだよクラウス。ニアの言うとおりだ。」
アレンはクラウスにそういうとブルーノを見ろと顔をブルーの方へやった。
ブルーノはおかしくてたまらない様子で腹を抱え笑っていた。
おそらく今の話が的を得ていたという事なのだろう。
「面白い!! あなたたちは本当に面白い!! なぜなのですか!? なぜそんなに私を喜ばしてくれるのですか!? 今までだれ一人私の理解者などいなかった。ついに現れたのですね、私の理解者が!!」
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