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階段
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時が止まったように静まり返る室内。
先ほどまで湯気が上がっていた料理がすでに冷たくなっている。
ブルーノは最後に 「あくまで仮説ですがね。」 と付け加えたが確かな確信があって話したのであろう。
アレンたちは出された食事に軽く手は付けるもののとても食べる空気ではない。
皿にはほぼそのままの形で食事が取り残されていた。
「おやおや、料理が冷めてしまいましたね? 申し訳ありません。」
スッ とナイフとフォークをテーブルに置き、また指を パチン と鳴らし鎧の者たちを呼び寄せる。
瞬く間に数人が部屋に入ってきてテーブルの上を片付けてしまった。
緊張が走るアレン達。
両肘をテーブルにつけ顔の前で手を組み スッ とアレンを見据えるブルーノ。
「まずはその実験体。私に返す気があるのか伺いたい。」
冷たい視線の矢がアレンを貫く。
「なんでそんな事を聞くんだ? 返しに来たからここにいるんだろ。」
「いえ、そうではない。あなたたちは何か隠している。ここへ来た目的はそうではないはず。」
「......」
ブルーノの質問に答えないアレン。
「では質問を変えましょう。その実験体からどこまで聞きましたか?」
ゾワっと背中から寒気が襲い掛かる。先ほどまでと変わらず陽気に話しているのだが一瞬で心まで凍るような寒い場所に連れてこられてような感覚だ。
ずっと不気味な雰囲気は漂わせてはいたが今、目の前にいる男は同じ人間とは思えないほどの嫌悪感のあるオーラを漂わせていた。
「私をだまして不意打ちを狙うというにはお粗末すぎます。何か別の理由...... そうですね。例えば時間稼ぎとか。ですかね。それですと私のつまらない話はお役に立てたのではないでしょうか?」
クックックック 笑いをこらえられないような様子のブルーノ。すべてお見通しという事なのだろうか?
しかしかなりの時間を稼いだ気がする。ここが引き際か?
ーーーーーーーーーーーー
ゴンゾウとディアドラは消えた本棚の後ろにあった地下へと続く長い階段をひたすら降りる。
しかしすでにもうかなりの段数を下りているのに一向に出口が見えてこない。
「化かされているな。」
ディアドラは今おりている階段を不審に思い始めていた。
何かの魔力装置なのだろう。永久に同じ場所を下りていることになっているらしい。
「まったく......私はこういうのに疎いのだ。青いの、貴様の方がこういうのは得意ではないのか?」
ディアドラに促され出口を探す方法を押し付けられるゴンゾウ。
「きゅぴぴ!!」
「わかったわかった。また頭に乗せてやるから。」
2匹の間で何かの協定が組まれたらしい。
ゴンゾウは仕方ないという顔をしながら階段の壁を見渡す。
静かな空間に今にも切れそうな張り詰めた空気が漂い出す。
「「「「「 空気の揺らぎ 」」」」」」
「きゅぴ!!!」
ゴンゾウは背中に背負っていた雷切を鞘から抜き出し背中を向けていた壁に向かって投げた。
ガキッ!!!!
固い壁に深く突き刺さった雷切に紫の液体がついている。
「ギュエ! ギュエ!!」
今まで見えなかったはずの部分に黒い大きな蜘蛛が壁に張り付いていた。
赤い目が左右に3つずつあり怪しく光っている。
6本ある足の一つが切り落とされ紫の血がドクドクと流れ出している。
「こいつが原因だったのか。バカらしい。たしかに貴様のような気色の悪い雑魚の気配など気づかなくても不思議ではないな。」
「ギュエ! ギュエ!」
とはいえ5本の足で素早く移動し相手をかく乱する蜘蛛のモンスター。
よく見ると移動した場所には粘着性のある糸を張り巡らしていた。
糸が体に付着し雷切を持っていないゴンゾウの動きが著しく制限され蜘蛛のモンスターを捕まえることができない。
「どいつもこいつも。」
あまりにめんどくさい攻撃。
直接攻撃するのではなく同じところに足止めする幻影を見せたり今も糸で行動を阻害し逃げ回っている。
時間稼ぎの雑魚に手間どうゴンゾウ。
だんだんとイライラしてくるディアドラ。
その間も目にも止まらない速さで移動する蜘蛛のモンスター。
雷切を投げてしまったのが悔やまれる。
「青いの、下がっていろ。」
ディアドラがゴンゾウを押しのけ前へ出る。
「きゅぷぴ。」
かたじけなさそうにディアドラの後ろに下がるゴンゾウ。
シュババババ!!!!
四方八方に飛び回りあっという間にディアドラの周りは蜘蛛の糸だらけになっていく。
恐るべきスピードに目の端でも捕らえられ......
バクッ!!!!!!!
見えないようなスピードで動いていた蜘蛛のモンスターが次第にスピードを緩め最後はフラフラと壁をよじ登ろうとしてパタリとひっくり返り仰向けのまま足をピクピクさせている。
よく見ると頭が半分なくなっていた。
ムシャムシャとディアドラの口が動いている。
ゴクリと飲み込み一言。
「不味い。」
蜘蛛のモンスターは少しの間、足をピクピクさせていたがすぐに絶命しそれに伴い階段の下に出口の光が現れた。
「青いの、行くぞ。」
慌てて雷切を壁から引抜きディアドラの頭に乗るゴンゾウ。
「コラ、乗るでない。ダメだ。さっきの奴に苦戦するとは何事だ。だから頭に乗せるのは無しだ。」
「きゅぷぷぷぷ!!!!きゅぴぴぴ!!!!」
そして二人は無事、目的の研究室にたどり着くのであった。
先ほどまで湯気が上がっていた料理がすでに冷たくなっている。
ブルーノは最後に 「あくまで仮説ですがね。」 と付け加えたが確かな確信があって話したのであろう。
アレンたちは出された食事に軽く手は付けるもののとても食べる空気ではない。
皿にはほぼそのままの形で食事が取り残されていた。
「おやおや、料理が冷めてしまいましたね? 申し訳ありません。」
スッ とナイフとフォークをテーブルに置き、また指を パチン と鳴らし鎧の者たちを呼び寄せる。
瞬く間に数人が部屋に入ってきてテーブルの上を片付けてしまった。
緊張が走るアレン達。
両肘をテーブルにつけ顔の前で手を組み スッ とアレンを見据えるブルーノ。
「まずはその実験体。私に返す気があるのか伺いたい。」
冷たい視線の矢がアレンを貫く。
「なんでそんな事を聞くんだ? 返しに来たからここにいるんだろ。」
「いえ、そうではない。あなたたちは何か隠している。ここへ来た目的はそうではないはず。」
「......」
ブルーノの質問に答えないアレン。
「では質問を変えましょう。その実験体からどこまで聞きましたか?」
ゾワっと背中から寒気が襲い掛かる。先ほどまでと変わらず陽気に話しているのだが一瞬で心まで凍るような寒い場所に連れてこられてような感覚だ。
ずっと不気味な雰囲気は漂わせてはいたが今、目の前にいる男は同じ人間とは思えないほどの嫌悪感のあるオーラを漂わせていた。
「私をだまして不意打ちを狙うというにはお粗末すぎます。何か別の理由...... そうですね。例えば時間稼ぎとか。ですかね。それですと私のつまらない話はお役に立てたのではないでしょうか?」
クックックック 笑いをこらえられないような様子のブルーノ。すべてお見通しという事なのだろうか?
しかしかなりの時間を稼いだ気がする。ここが引き際か?
ーーーーーーーーーーーー
ゴンゾウとディアドラは消えた本棚の後ろにあった地下へと続く長い階段をひたすら降りる。
しかしすでにもうかなりの段数を下りているのに一向に出口が見えてこない。
「化かされているな。」
ディアドラは今おりている階段を不審に思い始めていた。
何かの魔力装置なのだろう。永久に同じ場所を下りていることになっているらしい。
「まったく......私はこういうのに疎いのだ。青いの、貴様の方がこういうのは得意ではないのか?」
ディアドラに促され出口を探す方法を押し付けられるゴンゾウ。
「きゅぴぴ!!」
「わかったわかった。また頭に乗せてやるから。」
2匹の間で何かの協定が組まれたらしい。
ゴンゾウは仕方ないという顔をしながら階段の壁を見渡す。
静かな空間に今にも切れそうな張り詰めた空気が漂い出す。
「「「「「 空気の揺らぎ 」」」」」」
「きゅぴ!!!」
ゴンゾウは背中に背負っていた雷切を鞘から抜き出し背中を向けていた壁に向かって投げた。
ガキッ!!!!
固い壁に深く突き刺さった雷切に紫の液体がついている。
「ギュエ! ギュエ!!」
今まで見えなかったはずの部分に黒い大きな蜘蛛が壁に張り付いていた。
赤い目が左右に3つずつあり怪しく光っている。
6本ある足の一つが切り落とされ紫の血がドクドクと流れ出している。
「こいつが原因だったのか。バカらしい。たしかに貴様のような気色の悪い雑魚の気配など気づかなくても不思議ではないな。」
「ギュエ! ギュエ!」
とはいえ5本の足で素早く移動し相手をかく乱する蜘蛛のモンスター。
よく見ると移動した場所には粘着性のある糸を張り巡らしていた。
糸が体に付着し雷切を持っていないゴンゾウの動きが著しく制限され蜘蛛のモンスターを捕まえることができない。
「どいつもこいつも。」
あまりにめんどくさい攻撃。
直接攻撃するのではなく同じところに足止めする幻影を見せたり今も糸で行動を阻害し逃げ回っている。
時間稼ぎの雑魚に手間どうゴンゾウ。
だんだんとイライラしてくるディアドラ。
その間も目にも止まらない速さで移動する蜘蛛のモンスター。
雷切を投げてしまったのが悔やまれる。
「青いの、下がっていろ。」
ディアドラがゴンゾウを押しのけ前へ出る。
「きゅぷぴ。」
かたじけなさそうにディアドラの後ろに下がるゴンゾウ。
シュババババ!!!!
四方八方に飛び回りあっという間にディアドラの周りは蜘蛛の糸だらけになっていく。
恐るべきスピードに目の端でも捕らえられ......
バクッ!!!!!!!
見えないようなスピードで動いていた蜘蛛のモンスターが次第にスピードを緩め最後はフラフラと壁をよじ登ろうとしてパタリとひっくり返り仰向けのまま足をピクピクさせている。
よく見ると頭が半分なくなっていた。
ムシャムシャとディアドラの口が動いている。
ゴクリと飲み込み一言。
「不味い。」
蜘蛛のモンスターは少しの間、足をピクピクさせていたがすぐに絶命しそれに伴い階段の下に出口の光が現れた。
「青いの、行くぞ。」
慌てて雷切を壁から引抜きディアドラの頭に乗るゴンゾウ。
「コラ、乗るでない。ダメだ。さっきの奴に苦戦するとは何事だ。だから頭に乗せるのは無しだ。」
「きゅぷぷぷぷ!!!!きゅぴぴぴ!!!!」
そして二人は無事、目的の研究室にたどり着くのであった。
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