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研究所
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タヌキは優秀だった。
クラウスの時も思ったがパーティーの生存率を上げる役割がいるというのがこれほどダンジョン攻略を楽にするとは考えなかった。主に精神的な負担が減少したことにより連携の制度は上がり難敵もそれほど苦戦するというのは皆無だった。
「まさかこれほど戦闘が楽になるとは。」
クラウスもタヌキの活躍に舌を巻く。
ヒーラーであるタヌキは回復はもちろん、パーティーの強化も一任できるほど多彩な魔法が使えた。
足りないところを補充する感覚と謙遜しタヌキは言うがその足りないところがダンジョンでは死につながり全滅につながる。
そう言った部分を任せられるようになったニアとクラウスはさらに自分たちの長所を思い切って戦闘で生かすことができるようになっていた。
タヌキは冒険者だったころ妹のリンが優秀だからと思っているところが多くあった。
しかし本当のところを言うとタヌキの力は優秀なパーティーであればあるほど輝きを放つ。
もちろんリンも優秀な武闘家だったのだがタヌキの力を最大限引き出すのはできていなかった。
人数のあるパーティーに参加し今その才能が輝きだそうとしていた。
タヌキは自分の名前を思い出せない。
近い過去なら思い出せるが遠い記憶はリンが絡まないと思い出せない。
ただ今は生きる目的がリンにあることもあり自分の過去に全く興味がなくなっていた。
だから名前はタヌキでいいと。いやなんでもいいという事だったんだがそれならもうタヌキでいいかとアレンの決定でそうなった。
相変わらずニアはそんなアレンのセンスに嫌な顔をしていたが......
戦うというのはいい。
よけいなことを考えないですむ。
今から向かう所はタヌキにとって恐怖でしかない。
リンの為にこそ向かう場所であり、そうでなければ誰が再び......
そんな一同は50階層にたどり着いていた。
研究所の場所はタヌキが覚えている。
重い足取り、そう遠くはない。
何から何まで鮮明に覚えている場所。
記憶がなくなったところにすっぽりとこの場所の記憶が収まっている。
50階層はなぜか光が少ないエリアだ。ヒカリゴケは多いのだが出す光は薄い黒のフェイルターがかかっているように淡い光を出す。
冒険者によっては暗黒層とも呼ばれここから60階層まで暗い世界が続いていく。そのせいかモンスターも奇妙ないでたちの者が多く暗黒層の名に恥じぬ恐ろしいエリアとなっている。
もちろん暗闇で生きる暗闇ここのモンスターたちは利口でずるがしこい。
騙し、隠れ、欺き、誘い......
あらゆる方法で生き物を狩ろうとするモンスターたち。
ここで生きるものはすべてがそういう生き物だ。
おそらくブルーノも......
「ここだ。ここがブルーノの研究所だ。」
タヌキの声に皆が前を見上げる。
暗いダンジョンにひと際 異質な空気を漂わせる建物があった。
周りはコケとシダに覆われていて幻想的に見える。
ダンジョンの隆起物などと同化しているところが多々ありダンジョンの一部になりかけているのではないか。そこまで大きい建物ではないがダンジョンにこれを立てようという考えに少し異常な感覚を覚えてしまう。
入口の前に集結する一同。ゴンゾウとディアドラはすでに魔晶石にしまわれている。
「これ入り口ってこの正面のシャッターなのか? 閉まってるけど。」
アレンが入口を探していると突然正面の大きなシャッターが ガゴゴゴゴゴ と大きな音を立てて開きだす。
「なに? 開いたわよ!」
「ブルーノは全て見てる。俺らがここに到着する前から監視してるはずだ。そう言うやつなんだ。」
タヌキは何もしていないのに緊張からかそれとも怒りか、息が荒くなってきている。
シャッター開き始め暗かったあたりが中の光で眩しくなる。
逆光の中に1人の人間の影が映っていた。
目が慣れ出すと次第にその影の様子がわかってくる。
その体型から男、仮面を被っており顔は把握できない。
貴族がよく来ている襟の長い装飾の含まれた服を着ているが黒を基調としているので派手やかには映らない。黒に近い紫色をした髪の毛はアゴの下あたりまで伸びているがきれいに整えられている。
真っ直ぐに姿勢良く立っているその男。
その立ち姿からも気品の良さが伺える。
その男はアレンたちを確認するとゆっくりと腰を深く曲げお辞儀をし顔だけアレンたちの方を向けて
「ようこそ。わが研究所へ。」
確かに男は「わが研究所」そう言った。
クラウスの時も思ったがパーティーの生存率を上げる役割がいるというのがこれほどダンジョン攻略を楽にするとは考えなかった。主に精神的な負担が減少したことにより連携の制度は上がり難敵もそれほど苦戦するというのは皆無だった。
「まさかこれほど戦闘が楽になるとは。」
クラウスもタヌキの活躍に舌を巻く。
ヒーラーであるタヌキは回復はもちろん、パーティーの強化も一任できるほど多彩な魔法が使えた。
足りないところを補充する感覚と謙遜しタヌキは言うがその足りないところがダンジョンでは死につながり全滅につながる。
そう言った部分を任せられるようになったニアとクラウスはさらに自分たちの長所を思い切って戦闘で生かすことができるようになっていた。
タヌキは冒険者だったころ妹のリンが優秀だからと思っているところが多くあった。
しかし本当のところを言うとタヌキの力は優秀なパーティーであればあるほど輝きを放つ。
もちろんリンも優秀な武闘家だったのだがタヌキの力を最大限引き出すのはできていなかった。
人数のあるパーティーに参加し今その才能が輝きだそうとしていた。
タヌキは自分の名前を思い出せない。
近い過去なら思い出せるが遠い記憶はリンが絡まないと思い出せない。
ただ今は生きる目的がリンにあることもあり自分の過去に全く興味がなくなっていた。
だから名前はタヌキでいいと。いやなんでもいいという事だったんだがそれならもうタヌキでいいかとアレンの決定でそうなった。
相変わらずニアはそんなアレンのセンスに嫌な顔をしていたが......
戦うというのはいい。
よけいなことを考えないですむ。
今から向かう所はタヌキにとって恐怖でしかない。
リンの為にこそ向かう場所であり、そうでなければ誰が再び......
そんな一同は50階層にたどり着いていた。
研究所の場所はタヌキが覚えている。
重い足取り、そう遠くはない。
何から何まで鮮明に覚えている場所。
記憶がなくなったところにすっぽりとこの場所の記憶が収まっている。
50階層はなぜか光が少ないエリアだ。ヒカリゴケは多いのだが出す光は薄い黒のフェイルターがかかっているように淡い光を出す。
冒険者によっては暗黒層とも呼ばれここから60階層まで暗い世界が続いていく。そのせいかモンスターも奇妙ないでたちの者が多く暗黒層の名に恥じぬ恐ろしいエリアとなっている。
もちろん暗闇で生きる暗闇ここのモンスターたちは利口でずるがしこい。
騙し、隠れ、欺き、誘い......
あらゆる方法で生き物を狩ろうとするモンスターたち。
ここで生きるものはすべてがそういう生き物だ。
おそらくブルーノも......
「ここだ。ここがブルーノの研究所だ。」
タヌキの声に皆が前を見上げる。
暗いダンジョンにひと際 異質な空気を漂わせる建物があった。
周りはコケとシダに覆われていて幻想的に見える。
ダンジョンの隆起物などと同化しているところが多々ありダンジョンの一部になりかけているのではないか。そこまで大きい建物ではないがダンジョンにこれを立てようという考えに少し異常な感覚を覚えてしまう。
入口の前に集結する一同。ゴンゾウとディアドラはすでに魔晶石にしまわれている。
「これ入り口ってこの正面のシャッターなのか? 閉まってるけど。」
アレンが入口を探していると突然正面の大きなシャッターが ガゴゴゴゴゴ と大きな音を立てて開きだす。
「なに? 開いたわよ!」
「ブルーノは全て見てる。俺らがここに到着する前から監視してるはずだ。そう言うやつなんだ。」
タヌキは何もしていないのに緊張からかそれとも怒りか、息が荒くなってきている。
シャッター開き始め暗かったあたりが中の光で眩しくなる。
逆光の中に1人の人間の影が映っていた。
目が慣れ出すと次第にその影の様子がわかってくる。
その体型から男、仮面を被っており顔は把握できない。
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真っ直ぐに姿勢良く立っているその男。
その立ち姿からも気品の良さが伺える。
その男はアレンたちを確認するとゆっくりと腰を深く曲げお辞儀をし顔だけアレンたちの方を向けて
「ようこそ。わが研究所へ。」
確かに男は「わが研究所」そう言った。
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