43 / 58
研究所
しおりを挟む
タヌキは優秀だった。
クラウスの時も思ったがパーティーの生存率を上げる役割がいるというのがこれほどダンジョン攻略を楽にするとは考えなかった。主に精神的な負担が減少したことにより連携の制度は上がり難敵もそれほど苦戦するというのは皆無だった。
「まさかこれほど戦闘が楽になるとは。」
クラウスもタヌキの活躍に舌を巻く。
ヒーラーであるタヌキは回復はもちろん、パーティーの強化も一任できるほど多彩な魔法が使えた。
足りないところを補充する感覚と謙遜しタヌキは言うがその足りないところがダンジョンでは死につながり全滅につながる。
そう言った部分を任せられるようになったニアとクラウスはさらに自分たちの長所を思い切って戦闘で生かすことができるようになっていた。
タヌキは冒険者だったころ妹のリンが優秀だからと思っているところが多くあった。
しかし本当のところを言うとタヌキの力は優秀なパーティーであればあるほど輝きを放つ。
もちろんリンも優秀な武闘家だったのだがタヌキの力を最大限引き出すのはできていなかった。
人数のあるパーティーに参加し今その才能が輝きだそうとしていた。
タヌキは自分の名前を思い出せない。
近い過去なら思い出せるが遠い記憶はリンが絡まないと思い出せない。
ただ今は生きる目的がリンにあることもあり自分の過去に全く興味がなくなっていた。
だから名前はタヌキでいいと。いやなんでもいいという事だったんだがそれならもうタヌキでいいかとアレンの決定でそうなった。
相変わらずニアはそんなアレンのセンスに嫌な顔をしていたが......
戦うというのはいい。
よけいなことを考えないですむ。
今から向かう所はタヌキにとって恐怖でしかない。
リンの為にこそ向かう場所であり、そうでなければ誰が再び......
そんな一同は50階層にたどり着いていた。
研究所の場所はタヌキが覚えている。
重い足取り、そう遠くはない。
何から何まで鮮明に覚えている場所。
記憶がなくなったところにすっぽりとこの場所の記憶が収まっている。
50階層はなぜか光が少ないエリアだ。ヒカリゴケは多いのだが出す光は薄い黒のフェイルターがかかっているように淡い光を出す。
冒険者によっては暗黒層とも呼ばれここから60階層まで暗い世界が続いていく。そのせいかモンスターも奇妙ないでたちの者が多く暗黒層の名に恥じぬ恐ろしいエリアとなっている。
もちろん暗闇で生きる暗闇ここのモンスターたちは利口でずるがしこい。
騙し、隠れ、欺き、誘い......
あらゆる方法で生き物を狩ろうとするモンスターたち。
ここで生きるものはすべてがそういう生き物だ。
おそらくブルーノも......
「ここだ。ここがブルーノの研究所だ。」
タヌキの声に皆が前を見上げる。
暗いダンジョンにひと際 異質な空気を漂わせる建物があった。
周りはコケとシダに覆われていて幻想的に見える。
ダンジョンの隆起物などと同化しているところが多々ありダンジョンの一部になりかけているのではないか。そこまで大きい建物ではないがダンジョンにこれを立てようという考えに少し異常な感覚を覚えてしまう。
入口の前に集結する一同。ゴンゾウとディアドラはすでに魔晶石にしまわれている。
「これ入り口ってこの正面のシャッターなのか? 閉まってるけど。」
アレンが入口を探していると突然正面の大きなシャッターが ガゴゴゴゴゴ と大きな音を立てて開きだす。
「なに? 開いたわよ!」
「ブルーノは全て見てる。俺らがここに到着する前から監視してるはずだ。そう言うやつなんだ。」
タヌキは何もしていないのに緊張からかそれとも怒りか、息が荒くなってきている。
シャッター開き始め暗かったあたりが中の光で眩しくなる。
逆光の中に1人の人間の影が映っていた。
目が慣れ出すと次第にその影の様子がわかってくる。
その体型から男、仮面を被っており顔は把握できない。
貴族がよく来ている襟の長い装飾の含まれた服を着ているが黒を基調としているので派手やかには映らない。黒に近い紫色をした髪の毛はアゴの下あたりまで伸びているがきれいに整えられている。
真っ直ぐに姿勢良く立っているその男。
その立ち姿からも気品の良さが伺える。
その男はアレンたちを確認するとゆっくりと腰を深く曲げお辞儀をし顔だけアレンたちの方を向けて
「ようこそ。わが研究所へ。」
確かに男は「わが研究所」そう言った。
クラウスの時も思ったがパーティーの生存率を上げる役割がいるというのがこれほどダンジョン攻略を楽にするとは考えなかった。主に精神的な負担が減少したことにより連携の制度は上がり難敵もそれほど苦戦するというのは皆無だった。
「まさかこれほど戦闘が楽になるとは。」
クラウスもタヌキの活躍に舌を巻く。
ヒーラーであるタヌキは回復はもちろん、パーティーの強化も一任できるほど多彩な魔法が使えた。
足りないところを補充する感覚と謙遜しタヌキは言うがその足りないところがダンジョンでは死につながり全滅につながる。
そう言った部分を任せられるようになったニアとクラウスはさらに自分たちの長所を思い切って戦闘で生かすことができるようになっていた。
タヌキは冒険者だったころ妹のリンが優秀だからと思っているところが多くあった。
しかし本当のところを言うとタヌキの力は優秀なパーティーであればあるほど輝きを放つ。
もちろんリンも優秀な武闘家だったのだがタヌキの力を最大限引き出すのはできていなかった。
人数のあるパーティーに参加し今その才能が輝きだそうとしていた。
タヌキは自分の名前を思い出せない。
近い過去なら思い出せるが遠い記憶はリンが絡まないと思い出せない。
ただ今は生きる目的がリンにあることもあり自分の過去に全く興味がなくなっていた。
だから名前はタヌキでいいと。いやなんでもいいという事だったんだがそれならもうタヌキでいいかとアレンの決定でそうなった。
相変わらずニアはそんなアレンのセンスに嫌な顔をしていたが......
戦うというのはいい。
よけいなことを考えないですむ。
今から向かう所はタヌキにとって恐怖でしかない。
リンの為にこそ向かう場所であり、そうでなければ誰が再び......
そんな一同は50階層にたどり着いていた。
研究所の場所はタヌキが覚えている。
重い足取り、そう遠くはない。
何から何まで鮮明に覚えている場所。
記憶がなくなったところにすっぽりとこの場所の記憶が収まっている。
50階層はなぜか光が少ないエリアだ。ヒカリゴケは多いのだが出す光は薄い黒のフェイルターがかかっているように淡い光を出す。
冒険者によっては暗黒層とも呼ばれここから60階層まで暗い世界が続いていく。そのせいかモンスターも奇妙ないでたちの者が多く暗黒層の名に恥じぬ恐ろしいエリアとなっている。
もちろん暗闇で生きる暗闇ここのモンスターたちは利口でずるがしこい。
騙し、隠れ、欺き、誘い......
あらゆる方法で生き物を狩ろうとするモンスターたち。
ここで生きるものはすべてがそういう生き物だ。
おそらくブルーノも......
「ここだ。ここがブルーノの研究所だ。」
タヌキの声に皆が前を見上げる。
暗いダンジョンにひと際 異質な空気を漂わせる建物があった。
周りはコケとシダに覆われていて幻想的に見える。
ダンジョンの隆起物などと同化しているところが多々ありダンジョンの一部になりかけているのではないか。そこまで大きい建物ではないがダンジョンにこれを立てようという考えに少し異常な感覚を覚えてしまう。
入口の前に集結する一同。ゴンゾウとディアドラはすでに魔晶石にしまわれている。
「これ入り口ってこの正面のシャッターなのか? 閉まってるけど。」
アレンが入口を探していると突然正面の大きなシャッターが ガゴゴゴゴゴ と大きな音を立てて開きだす。
「なに? 開いたわよ!」
「ブルーノは全て見てる。俺らがここに到着する前から監視してるはずだ。そう言うやつなんだ。」
タヌキは何もしていないのに緊張からかそれとも怒りか、息が荒くなってきている。
シャッター開き始め暗かったあたりが中の光で眩しくなる。
逆光の中に1人の人間の影が映っていた。
目が慣れ出すと次第にその影の様子がわかってくる。
その体型から男、仮面を被っており顔は把握できない。
貴族がよく来ている襟の長い装飾の含まれた服を着ているが黒を基調としているので派手やかには映らない。黒に近い紫色をした髪の毛はアゴの下あたりまで伸びているがきれいに整えられている。
真っ直ぐに姿勢良く立っているその男。
その立ち姿からも気品の良さが伺える。
その男はアレンたちを確認するとゆっくりと腰を深く曲げお辞儀をし顔だけアレンたちの方を向けて
「ようこそ。わが研究所へ。」
確かに男は「わが研究所」そう言った。
0
お気に入りに追加
512
あなたにおすすめの小説


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】領地に行くと言って出掛けた夫が帰って来ません。〜愛人と失踪した様です〜
山葵
恋愛
政略結婚で結婚した夫は、式を挙げた3日後に「領地に視察に行ってくる」と言って出掛けて行った。
いつ帰るのかも告げずに出掛ける夫を私は見送った。
まさかそれが夫の姿を見る最後になるとは夢にも思わずに…。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

黒豚辺境伯令息の婚約者
ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。
ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。
そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。
始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め…
ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。
誤字脱字お許しください。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる