42 / 58
一緒に行こう
しおりを挟む
悔しさにポタポタと涙が瞳から零れ落ちる。
一人ではどうすることもできない事態にタヌキはただ自分をふがいなく思うだけだった。
タヌキはたしかにブルーノを恨んで入いる。
しかしまだ騙される前の楽しい日々を覚えている。
いや騙されたのではなく何か事故でこういう結果になってしまっただけじゃないのか?
そう思う部分もある。
しかしあの時、ブルーノに何が起こっているのか聞いた時、ブルーノは興味しかない笑ってもいない慌ててもいない、ただ観測しているだけの無表情な顔だった。
無表情で目を見開き自分たちの変化を観測している。それだけ以外の感情が欠落しているような顔。
何も聞けないまま逃げ出したタヌキだが自分がこんな姿になり感覚だがもう元には戻れないことはなんとなくなのだがわかる。生命としての形が変わってしまったような、そんな感覚を感じる。
リンを元に戻す方法はないのだろう。そういう意味ではもはやリンを救うことは叶わない。
何もできない自分に悔しさがこみ上げる。こんなことまでされてまだブルーノになぜこんなことをしたのか聞きたい自分を情けなく思う。
アレンはタヌキのそばに歩み寄ってしゃがみこみ目をタヌキの高さに合わせる。
「タヌキ、一緒に行こう。」
アレンが何の迷いもない言葉で語り掛ける。
「俺たちもブルーノに用があるんだ。ちょうどよかった。話し合いで何とかなるもんでもなかったから。」
ニアもクラウスも笑みを浮かべ優しい雰囲気が辺りを包む。
「今日あったばかりの俺を信用してくれるのか?」
「まぁそういうのわかるんだよ俺。職業柄な。」
「わかるって......お前......何者だ?」
「何者? ん~、ただの魔物使いってやつだ。」
聞いたこともない職業だったが何となくわかる気がした。
現にスライムやあの狼を従えているのが証拠といったところだろう。
「魔物使いって......モンスターを操るって事か?」
少し警戒心が強くなるタヌキ。現にタヌキは自分が人間だとは思ってはいない。
モンスターなのかと言われればそれもわからないが十分にその要素は含まれている。
それゆえアレンの職業の能力はかなり警戒するところなのだ。
「そんないいもんじゃないよ。ただ友達になれるってくらいだよ。強制力はかけらもない。」
普段なら信じない話だが信じられる何かがある。これも魔物使いの力なのか?
だがタヌキは一瞬考えはしたがすぐにどうでもよくなってきた。
こいつらは信用できる。俺の勘がそう言ってる。今はそれだけでいいじゃないか。
「俺は復讐したい。だがブルーノの話も聞きたい。なぜこんなことをしたのか? そしてリンを死なせてあげたい。死なせてあげる方法があるのかわからないが。それでもいいのか? ただ巻き込んでるだけだ。お前らにメリットがない。」
「メリットだけで行動できないから人間は愚かなんだよ。」
自身の剣を磨きながらそう言葉にするクラウス。
少なからず兄弟への想いは通じるところがあるのだろうか、優しい顔をしている。
「確かにね。クラウスはバカだけどたまにいいこと言うのよね。」
「なに!? 僕がバカだと!? ドコとドコとドコがだ!!」
涼しい顔から一気にふくれっ面になりニアに問い詰めるクラウス。
「ココとココとココとココよ!!」
頭を何度も指差し、クラウスがバカなのを伝える。
「ドコとドコとドコとドコとドコだ!!」
「ココとココとココとココと!!」
「何やってんだか。」
アレンは笑いながらタヌキに話しかける。
「お前らはいいな。リンがいたら一緒に冒険したがったと思う。」
「まだいるよ。リンは。こいつの中に。」
リンを抱き上げてそう言うアレン。
「わかるのか?」
「あぁ。少しだけだけど、不安がってる。心も閉じかかってて大きくはわからないけど。
俺たちの声も聞こえてない。
だから解放してあげよう。」
「お前......。」
アレンの言葉に言葉が詰まるタヌキ。
「お前泣き虫だな。」
ニヤニヤしてアレンはタヌキの顔を覗き込む。
「うるせぇ......。」
「助けてあげよう。リンを。」
アレンは改めてタヌキに言葉をかける。
そんな言葉を聞いてクラウスと言い争いをしていたニアがアレンたちに近寄り
「ほんっと、私は許せないわ。ブルーノって奴が。」
ニアがアレンからリンを取り上げ自分の胸に抱きかかえる。
「もともといい噂の聞かない人だ。僕らの内容も内容だし穏便には進まなそうだね。」
「とりあえず会ってみよう。タヌキは悔しいと思うけどまずはリンの解放する方法を聞き出さないと。」
一同がうなずく。
明日には順調なら50階層に到着する。
全ては明日。
一人ではどうすることもできない事態にタヌキはただ自分をふがいなく思うだけだった。
タヌキはたしかにブルーノを恨んで入いる。
しかしまだ騙される前の楽しい日々を覚えている。
いや騙されたのではなく何か事故でこういう結果になってしまっただけじゃないのか?
そう思う部分もある。
しかしあの時、ブルーノに何が起こっているのか聞いた時、ブルーノは興味しかない笑ってもいない慌ててもいない、ただ観測しているだけの無表情な顔だった。
無表情で目を見開き自分たちの変化を観測している。それだけ以外の感情が欠落しているような顔。
何も聞けないまま逃げ出したタヌキだが自分がこんな姿になり感覚だがもう元には戻れないことはなんとなくなのだがわかる。生命としての形が変わってしまったような、そんな感覚を感じる。
リンを元に戻す方法はないのだろう。そういう意味ではもはやリンを救うことは叶わない。
何もできない自分に悔しさがこみ上げる。こんなことまでされてまだブルーノになぜこんなことをしたのか聞きたい自分を情けなく思う。
アレンはタヌキのそばに歩み寄ってしゃがみこみ目をタヌキの高さに合わせる。
「タヌキ、一緒に行こう。」
アレンが何の迷いもない言葉で語り掛ける。
「俺たちもブルーノに用があるんだ。ちょうどよかった。話し合いで何とかなるもんでもなかったから。」
ニアもクラウスも笑みを浮かべ優しい雰囲気が辺りを包む。
「今日あったばかりの俺を信用してくれるのか?」
「まぁそういうのわかるんだよ俺。職業柄な。」
「わかるって......お前......何者だ?」
「何者? ん~、ただの魔物使いってやつだ。」
聞いたこともない職業だったが何となくわかる気がした。
現にスライムやあの狼を従えているのが証拠といったところだろう。
「魔物使いって......モンスターを操るって事か?」
少し警戒心が強くなるタヌキ。現にタヌキは自分が人間だとは思ってはいない。
モンスターなのかと言われればそれもわからないが十分にその要素は含まれている。
それゆえアレンの職業の能力はかなり警戒するところなのだ。
「そんないいもんじゃないよ。ただ友達になれるってくらいだよ。強制力はかけらもない。」
普段なら信じない話だが信じられる何かがある。これも魔物使いの力なのか?
だがタヌキは一瞬考えはしたがすぐにどうでもよくなってきた。
こいつらは信用できる。俺の勘がそう言ってる。今はそれだけでいいじゃないか。
「俺は復讐したい。だがブルーノの話も聞きたい。なぜこんなことをしたのか? そしてリンを死なせてあげたい。死なせてあげる方法があるのかわからないが。それでもいいのか? ただ巻き込んでるだけだ。お前らにメリットがない。」
「メリットだけで行動できないから人間は愚かなんだよ。」
自身の剣を磨きながらそう言葉にするクラウス。
少なからず兄弟への想いは通じるところがあるのだろうか、優しい顔をしている。
「確かにね。クラウスはバカだけどたまにいいこと言うのよね。」
「なに!? 僕がバカだと!? ドコとドコとドコがだ!!」
涼しい顔から一気にふくれっ面になりニアに問い詰めるクラウス。
「ココとココとココとココよ!!」
頭を何度も指差し、クラウスがバカなのを伝える。
「ドコとドコとドコとドコとドコだ!!」
「ココとココとココとココと!!」
「何やってんだか。」
アレンは笑いながらタヌキに話しかける。
「お前らはいいな。リンがいたら一緒に冒険したがったと思う。」
「まだいるよ。リンは。こいつの中に。」
リンを抱き上げてそう言うアレン。
「わかるのか?」
「あぁ。少しだけだけど、不安がってる。心も閉じかかってて大きくはわからないけど。
俺たちの声も聞こえてない。
だから解放してあげよう。」
「お前......。」
アレンの言葉に言葉が詰まるタヌキ。
「お前泣き虫だな。」
ニヤニヤしてアレンはタヌキの顔を覗き込む。
「うるせぇ......。」
「助けてあげよう。リンを。」
アレンは改めてタヌキに言葉をかける。
そんな言葉を聞いてクラウスと言い争いをしていたニアがアレンたちに近寄り
「ほんっと、私は許せないわ。ブルーノって奴が。」
ニアがアレンからリンを取り上げ自分の胸に抱きかかえる。
「もともといい噂の聞かない人だ。僕らの内容も内容だし穏便には進まなそうだね。」
「とりあえず会ってみよう。タヌキは悔しいと思うけどまずはリンの解放する方法を聞き出さないと。」
一同がうなずく。
明日には順調なら50階層に到着する。
全ては明日。
0
お気に入りに追加
512
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる