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一緒に行こう
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悔しさにポタポタと涙が瞳から零れ落ちる。
一人ではどうすることもできない事態にタヌキはただ自分をふがいなく思うだけだった。
タヌキはたしかにブルーノを恨んで入いる。
しかしまだ騙される前の楽しい日々を覚えている。
いや騙されたのではなく何か事故でこういう結果になってしまっただけじゃないのか?
そう思う部分もある。
しかしあの時、ブルーノに何が起こっているのか聞いた時、ブルーノは興味しかない笑ってもいない慌ててもいない、ただ観測しているだけの無表情な顔だった。
無表情で目を見開き自分たちの変化を観測している。それだけ以外の感情が欠落しているような顔。
何も聞けないまま逃げ出したタヌキだが自分がこんな姿になり感覚だがもう元には戻れないことはなんとなくなのだがわかる。生命としての形が変わってしまったような、そんな感覚を感じる。
リンを元に戻す方法はないのだろう。そういう意味ではもはやリンを救うことは叶わない。
何もできない自分に悔しさがこみ上げる。こんなことまでされてまだブルーノになぜこんなことをしたのか聞きたい自分を情けなく思う。
アレンはタヌキのそばに歩み寄ってしゃがみこみ目をタヌキの高さに合わせる。
「タヌキ、一緒に行こう。」
アレンが何の迷いもない言葉で語り掛ける。
「俺たちもブルーノに用があるんだ。ちょうどよかった。話し合いで何とかなるもんでもなかったから。」
ニアもクラウスも笑みを浮かべ優しい雰囲気が辺りを包む。
「今日あったばかりの俺を信用してくれるのか?」
「まぁそういうのわかるんだよ俺。職業柄な。」
「わかるって......お前......何者だ?」
「何者? ん~、ただの魔物使いってやつだ。」
聞いたこともない職業だったが何となくわかる気がした。
現にスライムやあの狼を従えているのが証拠といったところだろう。
「魔物使いって......モンスターを操るって事か?」
少し警戒心が強くなるタヌキ。現にタヌキは自分が人間だとは思ってはいない。
モンスターなのかと言われればそれもわからないが十分にその要素は含まれている。
それゆえアレンの職業の能力はかなり警戒するところなのだ。
「そんないいもんじゃないよ。ただ友達になれるってくらいだよ。強制力はかけらもない。」
普段なら信じない話だが信じられる何かがある。これも魔物使いの力なのか?
だがタヌキは一瞬考えはしたがすぐにどうでもよくなってきた。
こいつらは信用できる。俺の勘がそう言ってる。今はそれだけでいいじゃないか。
「俺は復讐したい。だがブルーノの話も聞きたい。なぜこんなことをしたのか? そしてリンを死なせてあげたい。死なせてあげる方法があるのかわからないが。それでもいいのか? ただ巻き込んでるだけだ。お前らにメリットがない。」
「メリットだけで行動できないから人間は愚かなんだよ。」
自身の剣を磨きながらそう言葉にするクラウス。
少なからず兄弟への想いは通じるところがあるのだろうか、優しい顔をしている。
「確かにね。クラウスはバカだけどたまにいいこと言うのよね。」
「なに!? 僕がバカだと!? ドコとドコとドコがだ!!」
涼しい顔から一気にふくれっ面になりニアに問い詰めるクラウス。
「ココとココとココとココよ!!」
頭を何度も指差し、クラウスがバカなのを伝える。
「ドコとドコとドコとドコとドコだ!!」
「ココとココとココとココと!!」
「何やってんだか。」
アレンは笑いながらタヌキに話しかける。
「お前らはいいな。リンがいたら一緒に冒険したがったと思う。」
「まだいるよ。リンは。こいつの中に。」
リンを抱き上げてそう言うアレン。
「わかるのか?」
「あぁ。少しだけだけど、不安がってる。心も閉じかかってて大きくはわからないけど。
俺たちの声も聞こえてない。
だから解放してあげよう。」
「お前......。」
アレンの言葉に言葉が詰まるタヌキ。
「お前泣き虫だな。」
ニヤニヤしてアレンはタヌキの顔を覗き込む。
「うるせぇ......。」
「助けてあげよう。リンを。」
アレンは改めてタヌキに言葉をかける。
そんな言葉を聞いてクラウスと言い争いをしていたニアがアレンたちに近寄り
「ほんっと、私は許せないわ。ブルーノって奴が。」
ニアがアレンからリンを取り上げ自分の胸に抱きかかえる。
「もともといい噂の聞かない人だ。僕らの内容も内容だし穏便には進まなそうだね。」
「とりあえず会ってみよう。タヌキは悔しいと思うけどまずはリンの解放する方法を聞き出さないと。」
一同がうなずく。
明日には順調なら50階層に到着する。
全ては明日。
一人ではどうすることもできない事態にタヌキはただ自分をふがいなく思うだけだった。
タヌキはたしかにブルーノを恨んで入いる。
しかしまだ騙される前の楽しい日々を覚えている。
いや騙されたのではなく何か事故でこういう結果になってしまっただけじゃないのか?
そう思う部分もある。
しかしあの時、ブルーノに何が起こっているのか聞いた時、ブルーノは興味しかない笑ってもいない慌ててもいない、ただ観測しているだけの無表情な顔だった。
無表情で目を見開き自分たちの変化を観測している。それだけ以外の感情が欠落しているような顔。
何も聞けないまま逃げ出したタヌキだが自分がこんな姿になり感覚だがもう元には戻れないことはなんとなくなのだがわかる。生命としての形が変わってしまったような、そんな感覚を感じる。
リンを元に戻す方法はないのだろう。そういう意味ではもはやリンを救うことは叶わない。
何もできない自分に悔しさがこみ上げる。こんなことまでされてまだブルーノになぜこんなことをしたのか聞きたい自分を情けなく思う。
アレンはタヌキのそばに歩み寄ってしゃがみこみ目をタヌキの高さに合わせる。
「タヌキ、一緒に行こう。」
アレンが何の迷いもない言葉で語り掛ける。
「俺たちもブルーノに用があるんだ。ちょうどよかった。話し合いで何とかなるもんでもなかったから。」
ニアもクラウスも笑みを浮かべ優しい雰囲気が辺りを包む。
「今日あったばかりの俺を信用してくれるのか?」
「まぁそういうのわかるんだよ俺。職業柄な。」
「わかるって......お前......何者だ?」
「何者? ん~、ただの魔物使いってやつだ。」
聞いたこともない職業だったが何となくわかる気がした。
現にスライムやあの狼を従えているのが証拠といったところだろう。
「魔物使いって......モンスターを操るって事か?」
少し警戒心が強くなるタヌキ。現にタヌキは自分が人間だとは思ってはいない。
モンスターなのかと言われればそれもわからないが十分にその要素は含まれている。
それゆえアレンの職業の能力はかなり警戒するところなのだ。
「そんないいもんじゃないよ。ただ友達になれるってくらいだよ。強制力はかけらもない。」
普段なら信じない話だが信じられる何かがある。これも魔物使いの力なのか?
だがタヌキは一瞬考えはしたがすぐにどうでもよくなってきた。
こいつらは信用できる。俺の勘がそう言ってる。今はそれだけでいいじゃないか。
「俺は復讐したい。だがブルーノの話も聞きたい。なぜこんなことをしたのか? そしてリンを死なせてあげたい。死なせてあげる方法があるのかわからないが。それでもいいのか? ただ巻き込んでるだけだ。お前らにメリットがない。」
「メリットだけで行動できないから人間は愚かなんだよ。」
自身の剣を磨きながらそう言葉にするクラウス。
少なからず兄弟への想いは通じるところがあるのだろうか、優しい顔をしている。
「確かにね。クラウスはバカだけどたまにいいこと言うのよね。」
「なに!? 僕がバカだと!? ドコとドコとドコがだ!!」
涼しい顔から一気にふくれっ面になりニアに問い詰めるクラウス。
「ココとココとココとココよ!!」
頭を何度も指差し、クラウスがバカなのを伝える。
「ドコとドコとドコとドコとドコだ!!」
「ココとココとココとココと!!」
「何やってんだか。」
アレンは笑いながらタヌキに話しかける。
「お前らはいいな。リンがいたら一緒に冒険したがったと思う。」
「まだいるよ。リンは。こいつの中に。」
リンを抱き上げてそう言うアレン。
「わかるのか?」
「あぁ。少しだけだけど、不安がってる。心も閉じかかってて大きくはわからないけど。
俺たちの声も聞こえてない。
だから解放してあげよう。」
「お前......。」
アレンの言葉に言葉が詰まるタヌキ。
「お前泣き虫だな。」
ニヤニヤしてアレンはタヌキの顔を覗き込む。
「うるせぇ......。」
「助けてあげよう。リンを。」
アレンは改めてタヌキに言葉をかける。
そんな言葉を聞いてクラウスと言い争いをしていたニアがアレンたちに近寄り
「ほんっと、私は許せないわ。ブルーノって奴が。」
ニアがアレンからリンを取り上げ自分の胸に抱きかかえる。
「もともといい噂の聞かない人だ。僕らの内容も内容だし穏便には進まなそうだね。」
「とりあえず会ってみよう。タヌキは悔しいと思うけどまずはリンの解放する方法を聞き出さないと。」
一同がうなずく。
明日には順調なら50階層に到着する。
全ては明日。
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