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実験
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研究施設のようだった。
しかもかなり高度な、おそらく地上より高度な機材がそろってたと思う。
そこで俺たちは数日かけていろいろな事を教えてもらった。
どうしてモンスターがダンジョンの中で産み出され続けるのか?
魔素はどこから産まれてくるのか?
魔法の仕組み、人間とは? 上位モンスター......
どれも正解にはまだ行きついてないみたいだったけどすごい発想から生まれる話だった。
俺とリンはそれぞれ部屋を貸してもらって客人みたいな待遇で世話をしてもらった。
ある日面白い実験をするから見に来ないかと言われた。
もう奴への警戒心なんてこれっぽっちもなくなっていた俺たちは何の疑いもなく奴の実験に付き合っちまった。
あの時俺がもっとしっかりしてたらリンはこんな姿にはならなかったかもしれない。
いずれにしても奴は俺たちを最初からこうするために研究所に連れてきたんだと思う。
そこにはそれぞれに魔法陣が書かれた2つのステージがあった。
奴は階段を上りその魔方陣の中心に立つように俺たちに言った。
リンはもう楽しみで仕方ない顔をしてた。その顔に俺もうれしくなってさ。
何の実験か聞いても奴は何も答えなかった。
よくわからない機械の操作をしたと思ったらすぐに魔法陣が光始めた。
その時に俺は何かおかしいと思って奴にもう一度何の実験か問いかけたんだ。
今でも忘れないよ。あの好奇心でしか俺たち兄弟を見ていない顔を。
もう何もかも遅かった。魔法陣は結界で包まれてその外に出ることができなくなった。
まだリンは何が起きたのかわからず不安そうな顔をしてた。
俺は騙されたことに気づいて魔法陣から出ようと必死になったけど......
リンは「お兄ちゃん!! お兄ちゃん!!」って必死に叫んでた。リンの力でも結界はビクともしないんだ。俺の力で壊れるはずがなかった。
俺は必死でリンを落ち着かせようとしたよ。「大丈夫。兄ちゃんがついてるからな。」って。
その時は突然来た。俺とリンの魔法陣から黒い霧みたいなのが出てきたんだ。
俺らはそれに包まれて......
何もできなかった。突然激痛に襲われて転げまわって痛がったよ。
クセなんだろうな、そんなときでも自分に回復魔法をかけながらさ。
次第に痛みになれてきて、俺は回復しながらだからまだマシだったんだろうな。
リンはひどかったよ。
「お兄ちゃん!! 痛い!! 何にも見えない!! 目がぁ!! あぁぁああああ!!」
耳を塞ぎたくなるような声と、もう妹とは思えない姿だった。
その姿見てさ、自分の痛みなんかどっかいったよ。泣いてまともに話せてなかったと思うけど。
「リン......うぅ......しっかりしろ......に、兄ちゃんが...うぅぅ...必ず助けてやる......」
目と耳を最初に潰されたせいでリンは孤独の中で死ねない痛みだけ与えられ続けて真っ暗な世界で苦しみ続けた。リンが最後に残した言葉は
「ころ...じて...ころじて......。」
そしてリンは心まで何かに喰われちまった。
俺たちは実験が終わると何かの容器に入れられそうになった。
俺が動けるとは思ってなかったらしい。
不意を突いてリンと逃げ出してきたんだ。
この体のおかげなのか飯も何日か喰わなくても平気だった。
リンもそうだ。飯を食わなくても死なないし水を飲まなくても死なない。
今いるこいつはリンであってリンじゃない。
俺は自分に回復魔法をかけてたせいでこんな姿になるだけで済んだ。
でもリンはもう人間でもなければモンスターでもない。
全て反応で動いてる。
光や温度や音だな。
ただの生物的な反応だけだ。
だけど......
焚火の音がパチパチと静かなダンジョンの中で響いている。
タヌキは目から次々と涙をこぼし言葉を紡ごうと必死だ。
「タヌキ君......もう......。」
クラウスがそばに寄りタヌキを止めようとするが
「いや、聞いてくれ。さっき会ったばっかのあんたたちにこんなこと話すのもなんだけど。」
ニアは悲しそうな顔をしている。
アレンはじっとタヌキを見据えて話を聞いていた。
「俺はそれでも......リンがまだ少しはこの中にいるんじゃないかって思うんだ。殺してくれって頼まれたんだ。兄ちゃんが助けてやるって言ったんだ。何度も試した。傷をつければ痛がるし、血だって出るんだぜ。でも死なないんだ! 死ねないんだよ!! 呪印のせいで!!!!!」
怒りをまとい強く放った言葉がダンジョンの壁に跳ね返りこだまとなって何度もみんなの耳を通り過ぎる。
呪印という言葉。そのワードから連想できる人物は多くない。ましてやこの階層で......
アレンは強くタヌキを見据えて一言問う。
「ブルーノだな。」
タヌキは涙でくしゃくしゃになった顔で
「たのむ......助けてくれ......。」
確かにうなずき、そう言った。
しかもかなり高度な、おそらく地上より高度な機材がそろってたと思う。
そこで俺たちは数日かけていろいろな事を教えてもらった。
どうしてモンスターがダンジョンの中で産み出され続けるのか?
魔素はどこから産まれてくるのか?
魔法の仕組み、人間とは? 上位モンスター......
どれも正解にはまだ行きついてないみたいだったけどすごい発想から生まれる話だった。
俺とリンはそれぞれ部屋を貸してもらって客人みたいな待遇で世話をしてもらった。
ある日面白い実験をするから見に来ないかと言われた。
もう奴への警戒心なんてこれっぽっちもなくなっていた俺たちは何の疑いもなく奴の実験に付き合っちまった。
あの時俺がもっとしっかりしてたらリンはこんな姿にはならなかったかもしれない。
いずれにしても奴は俺たちを最初からこうするために研究所に連れてきたんだと思う。
そこにはそれぞれに魔法陣が書かれた2つのステージがあった。
奴は階段を上りその魔方陣の中心に立つように俺たちに言った。
リンはもう楽しみで仕方ない顔をしてた。その顔に俺もうれしくなってさ。
何の実験か聞いても奴は何も答えなかった。
よくわからない機械の操作をしたと思ったらすぐに魔法陣が光始めた。
その時に俺は何かおかしいと思って奴にもう一度何の実験か問いかけたんだ。
今でも忘れないよ。あの好奇心でしか俺たち兄弟を見ていない顔を。
もう何もかも遅かった。魔法陣は結界で包まれてその外に出ることができなくなった。
まだリンは何が起きたのかわからず不安そうな顔をしてた。
俺は騙されたことに気づいて魔法陣から出ようと必死になったけど......
リンは「お兄ちゃん!! お兄ちゃん!!」って必死に叫んでた。リンの力でも結界はビクともしないんだ。俺の力で壊れるはずがなかった。
俺は必死でリンを落ち着かせようとしたよ。「大丈夫。兄ちゃんがついてるからな。」って。
その時は突然来た。俺とリンの魔法陣から黒い霧みたいなのが出てきたんだ。
俺らはそれに包まれて......
何もできなかった。突然激痛に襲われて転げまわって痛がったよ。
クセなんだろうな、そんなときでも自分に回復魔法をかけながらさ。
次第に痛みになれてきて、俺は回復しながらだからまだマシだったんだろうな。
リンはひどかったよ。
「お兄ちゃん!! 痛い!! 何にも見えない!! 目がぁ!! あぁぁああああ!!」
耳を塞ぎたくなるような声と、もう妹とは思えない姿だった。
その姿見てさ、自分の痛みなんかどっかいったよ。泣いてまともに話せてなかったと思うけど。
「リン......うぅ......しっかりしろ......に、兄ちゃんが...うぅぅ...必ず助けてやる......」
目と耳を最初に潰されたせいでリンは孤独の中で死ねない痛みだけ与えられ続けて真っ暗な世界で苦しみ続けた。リンが最後に残した言葉は
「ころ...じて...ころじて......。」
そしてリンは心まで何かに喰われちまった。
俺たちは実験が終わると何かの容器に入れられそうになった。
俺が動けるとは思ってなかったらしい。
不意を突いてリンと逃げ出してきたんだ。
この体のおかげなのか飯も何日か喰わなくても平気だった。
リンもそうだ。飯を食わなくても死なないし水を飲まなくても死なない。
今いるこいつはリンであってリンじゃない。
俺は自分に回復魔法をかけてたせいでこんな姿になるだけで済んだ。
でもリンはもう人間でもなければモンスターでもない。
全て反応で動いてる。
光や温度や音だな。
ただの生物的な反応だけだ。
だけど......
焚火の音がパチパチと静かなダンジョンの中で響いている。
タヌキは目から次々と涙をこぼし言葉を紡ごうと必死だ。
「タヌキ君......もう......。」
クラウスがそばに寄りタヌキを止めようとするが
「いや、聞いてくれ。さっき会ったばっかのあんたたちにこんなこと話すのもなんだけど。」
ニアは悲しそうな顔をしている。
アレンはじっとタヌキを見据えて話を聞いていた。
「俺はそれでも......リンがまだ少しはこの中にいるんじゃないかって思うんだ。殺してくれって頼まれたんだ。兄ちゃんが助けてやるって言ったんだ。何度も試した。傷をつければ痛がるし、血だって出るんだぜ。でも死なないんだ! 死ねないんだよ!! 呪印のせいで!!!!!」
怒りをまとい強く放った言葉がダンジョンの壁に跳ね返りこだまとなって何度もみんなの耳を通り過ぎる。
呪印という言葉。そのワードから連想できる人物は多くない。ましてやこの階層で......
アレンは強くタヌキを見据えて一言問う。
「ブルーノだな。」
タヌキは涙でくしゃくしゃになった顔で
「たのむ......助けてくれ......。」
確かにうなずき、そう言った。
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