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理由
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よほど腹が減っていたのかニアの作ったスープを一気に飲み干すタヌキ。
多めに食料は持ってきてあるが今の量では足りそうにもないので魔晶石から新たな食材を取り出す。
「落ち着いたか?」
相変わらずニコニコしているアレンはタヌキに興味津々だ。
タヌキはそんなアレンに少し警戒した様子を見せるが、すぐに彼らに敵意がないことを理解するとスープが空になったお椀を置き
「ありがとう。助けてくれて。しかも飯まで......。」
「お腹空いてたんでしょ。気にしなくてもいいわ。こっちにも何にも働かないのにご飯ばっかり食べるやつがいるから。」
ジロリとアレンの方を見るニア。
「なんだよ。ゴンゾウも一応俺の力じゃないかよ。」
たれた眉毛で反論するがニアはクスクス笑いながら
「冗談よ。」
そう言いながらタヌキに近づきリンと呼ばれるタヌキの仲間の頭をさする。
「そのかわり、ちゃんとワケを話してもらうわよ。」
ニアはタヌキに顔を近づけ悪戯な笑みをみせる。
タヌキは顔が真っ赤に火照ってしまいうつむいてしまった。
「まだ体も治ってないんだから無理しちゃだめよ。」
ニアはタヌキがうつむいたことを傷の痛みだと勘違いしたみたいだ。
「まず君がどこから来てどうしてあの場所にいたのか?」
クラウスは尋問のようにタヌキを問いただす。ただそこに敵意は全くなかった。
それを感じ取ってか深く考え込んでいたタヌキだったが大きくため息をつき、ゆっくりと言葉を話し始めた。
「まず信じられないかもしれないが俺は人間だ。元人間といった方がいいかもしれない。名前は思い出せない。覚えてるのはこいつ......リンとある施設から逃げ出してきたことだ。」
タヌキの言葉に驚きはするものの真剣なまなざしで話を聞く一同。
「リンと俺は兄弟だ。こいつは妹。何にも覚えてないけどそれだけはわかる。こいつは俺の妹だ。」
リンは緊迫して話すタヌキのそばに行こうとニアの膝から這いずり出す。
それをタヌキは優しく迎え入れ自分の膝の上に乗せた。
「なんで記憶があいまいなのかもわからないし、なんでこんなところにいるのかもわからない。でもおそらく俺やリンの体をこんな風にしたやつは誰だかわかる。」
タヌキから怨念のような強い気配がほとばしり始める。
殺気とはまた違うがよほどの恨みを抱えているのだろう。
「お前をそんな風にした奴っていったい......。」
アレンがそろりと問いかける。
「すまないが全部は思い出せないんだ。わかる範囲で話すがそれでもいいか?」
「ええ、私たちはあなたの事を信用したいだけだから。」
もう信用しているような言い方だが......
そう思いながらもそれでも話す義理があるとタヌキは感じた。
「さっきも言ったが俺たちは人間だ。人間だった。記憶はあいまいだがリンと二人で冒険者をしていた。」
リンは武闘家、俺はヒーラー。異色のコンビだけどなかなか強かったんだぜ俺らは。
リンは猪突猛進って感じでさ。回復役がいないとすぐに体力がなくなっちまう。その代わり攻撃力は抜きんでて強くてさ。バカみたいに大きいモンスターも1発で吹っ飛ばしちまったことがあんだよ。
そんな感じで俺がサポートばっかり回らないとダメでさ、男なら剣を持ってって思ってたけどこれはこれでやりがいのある職業だと思ったよ。
あ、そうそう俺たちはアークグラッド産まれじゃないんだ。ここからずっと東にある島国で育ってさ。リンは性格も明るいから友達がいっぱいいてさ、俺なんかは性格が暗いから家で遊んでたらよく手を引っ張られて島の子供の世話とか見させられたっけ。いいとこだったな。
魚もうまくて水もきれいで......
あーすまない。自分の記憶はあまりないのにリンとの思い出は覚えてるんだ。
で、冒険者だったって話からだったかな? リンは好奇心旺盛でさ、ダンジョンの奥には何があるんだろうっていつも言ってた。俺たちもいつかそれを見れたらいいなって話はずっとしてたんだ。
そうして冒険を重ねるうちに俺らもどんどん強くなっていった。
上には上がいたがそれでもそこそこのランクだったんだ。
妹は【シンカー】だったと思う。俺は覚えてないけど。
ある日、いつものようにダンジョンに潜ったんだがそこである人物に出会ったんだ。
ダンジョンで人に出会うなんてありえなかったからかなり驚いた。
そいつは怪しい仮面をかぶっていた。
俺たちに優しく話しかけてきたそいつは「ダンジョンの深淵を見たくないか?」って。
初めは警戒してたけどそいつの話はすごかった。
ダンジョンは自然にできた者じゃない。誰かが作ったものだって。
それを裏付ける証拠もたくさん見つかってるって。
リンがすごいはしゃいでさ、絶対見に行きたいって。
さすがに怪しかったけどそいつのスキルなのか道具なのかはわからないがそれがもっとすごくてさ。
ついていくって言ったとたんそいつが何かをして、そしたら一気に場所が変わった。
そいつは50階層まで移動したって言ってた。俺たちがその時いたのはせいぜい30階層だ。
ありえないって思ったよ。
でもたしかにおかしなことがあった。
ダンジョンの中に敷設があったんだ。
多めに食料は持ってきてあるが今の量では足りそうにもないので魔晶石から新たな食材を取り出す。
「落ち着いたか?」
相変わらずニコニコしているアレンはタヌキに興味津々だ。
タヌキはそんなアレンに少し警戒した様子を見せるが、すぐに彼らに敵意がないことを理解するとスープが空になったお椀を置き
「ありがとう。助けてくれて。しかも飯まで......。」
「お腹空いてたんでしょ。気にしなくてもいいわ。こっちにも何にも働かないのにご飯ばっかり食べるやつがいるから。」
ジロリとアレンの方を見るニア。
「なんだよ。ゴンゾウも一応俺の力じゃないかよ。」
たれた眉毛で反論するがニアはクスクス笑いながら
「冗談よ。」
そう言いながらタヌキに近づきリンと呼ばれるタヌキの仲間の頭をさする。
「そのかわり、ちゃんとワケを話してもらうわよ。」
ニアはタヌキに顔を近づけ悪戯な笑みをみせる。
タヌキは顔が真っ赤に火照ってしまいうつむいてしまった。
「まだ体も治ってないんだから無理しちゃだめよ。」
ニアはタヌキがうつむいたことを傷の痛みだと勘違いしたみたいだ。
「まず君がどこから来てどうしてあの場所にいたのか?」
クラウスは尋問のようにタヌキを問いただす。ただそこに敵意は全くなかった。
それを感じ取ってか深く考え込んでいたタヌキだったが大きくため息をつき、ゆっくりと言葉を話し始めた。
「まず信じられないかもしれないが俺は人間だ。元人間といった方がいいかもしれない。名前は思い出せない。覚えてるのはこいつ......リンとある施設から逃げ出してきたことだ。」
タヌキの言葉に驚きはするものの真剣なまなざしで話を聞く一同。
「リンと俺は兄弟だ。こいつは妹。何にも覚えてないけどそれだけはわかる。こいつは俺の妹だ。」
リンは緊迫して話すタヌキのそばに行こうとニアの膝から這いずり出す。
それをタヌキは優しく迎え入れ自分の膝の上に乗せた。
「なんで記憶があいまいなのかもわからないし、なんでこんなところにいるのかもわからない。でもおそらく俺やリンの体をこんな風にしたやつは誰だかわかる。」
タヌキから怨念のような強い気配がほとばしり始める。
殺気とはまた違うがよほどの恨みを抱えているのだろう。
「お前をそんな風にした奴っていったい......。」
アレンがそろりと問いかける。
「すまないが全部は思い出せないんだ。わかる範囲で話すがそれでもいいか?」
「ええ、私たちはあなたの事を信用したいだけだから。」
もう信用しているような言い方だが......
そう思いながらもそれでも話す義理があるとタヌキは感じた。
「さっきも言ったが俺たちは人間だ。人間だった。記憶はあいまいだがリンと二人で冒険者をしていた。」
リンは武闘家、俺はヒーラー。異色のコンビだけどなかなか強かったんだぜ俺らは。
リンは猪突猛進って感じでさ。回復役がいないとすぐに体力がなくなっちまう。その代わり攻撃力は抜きんでて強くてさ。バカみたいに大きいモンスターも1発で吹っ飛ばしちまったことがあんだよ。
そんな感じで俺がサポートばっかり回らないとダメでさ、男なら剣を持ってって思ってたけどこれはこれでやりがいのある職業だと思ったよ。
あ、そうそう俺たちはアークグラッド産まれじゃないんだ。ここからずっと東にある島国で育ってさ。リンは性格も明るいから友達がいっぱいいてさ、俺なんかは性格が暗いから家で遊んでたらよく手を引っ張られて島の子供の世話とか見させられたっけ。いいとこだったな。
魚もうまくて水もきれいで......
あーすまない。自分の記憶はあまりないのにリンとの思い出は覚えてるんだ。
で、冒険者だったって話からだったかな? リンは好奇心旺盛でさ、ダンジョンの奥には何があるんだろうっていつも言ってた。俺たちもいつかそれを見れたらいいなって話はずっとしてたんだ。
そうして冒険を重ねるうちに俺らもどんどん強くなっていった。
上には上がいたがそれでもそこそこのランクだったんだ。
妹は【シンカー】だったと思う。俺は覚えてないけど。
ある日、いつものようにダンジョンに潜ったんだがそこである人物に出会ったんだ。
ダンジョンで人に出会うなんてありえなかったからかなり驚いた。
そいつは怪しい仮面をかぶっていた。
俺たちに優しく話しかけてきたそいつは「ダンジョンの深淵を見たくないか?」って。
初めは警戒してたけどそいつの話はすごかった。
ダンジョンは自然にできた者じゃない。誰かが作ったものだって。
それを裏付ける証拠もたくさん見つかってるって。
リンがすごいはしゃいでさ、絶対見に行きたいって。
さすがに怪しかったけどそいつのスキルなのか道具なのかはわからないがそれがもっとすごくてさ。
ついていくって言ったとたんそいつが何かをして、そしたら一気に場所が変わった。
そいつは50階層まで移動したって言ってた。俺たちがその時いたのはせいぜい30階層だ。
ありえないって思ったよ。
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