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新しい可能性
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パチパチと焚火が火の粉を上げて燃えている。
3人と2匹の顔が明るく光り体温を温めていく。
「で最近やっと僕は立ち直ることができて、兄さんと冒険する夢をもう一度叶えたくてね。
とはいえ兄さんは今や超有名冒険者、なかなかそうもいかない。だから僕も冒険者になって少しでも兄さんに近づこうと思ったわけだよ。」
クラウスの強さの意味を理解したアレンは言葉を選びながら話す。
「そっか。クラウスはそういう夢があるんだな。叶うといいな。」
「そうだね。でもアレン君、僕は兄さんに感じた威圧感を君と戦った時も感じた。僕は君との冒険も心から楽しみにしているよ。」
「俺もクラウスがいると心強いよ。」
「なんで男ってこう熱いのが好きなのかしら。」
「きゅぷぷ。」
ニアはゴンゾウに ねぇ と話しかけまたカチャカチャと明日の支度を始める。
ディアドラはアレンが褒められてうれしいのか尻尾をブンブン振りながら うんうん とクラウスの話を聞いている。
「でさ。クラウスの兄さんって誰なんだ? 有名な冒険者なんだろ?」
「あぁそこはいずれ。今日は明日の支度もある。早めに休もう。見張りは交代で。まずは僕が見るよ。」
「なんだよ。教えてくれよ。気になって寝れねぇよ。」
「クラウス、見張りはいらないわよ。ゴンちゃんとディアちゃんがいれば敵に気づかれる前に起こしてくれるわ。」
「ゴンゾウ君が?」
ディアドラはわかるとしてこのスライム。なぜこんなにも有能なんだ。
冷汗を垂らしながらゴンゾウと目が合うクラウス。
「きゅぴぴぴ。」
こう見ているとただの人懐っこいだけのスライムだ。
これもアレン君の力なのか?
答えの出ない謎に頭を埋め尽くされそうになるが考えても仕方ない。
職業柄かすぐには信用できないが疑っても仕方ない。
これは新たな可能性にあふれた冒険なのだ。
寝れずとも目を瞑るクラウス。
しかし疲れもあり次第に睡魔の中へ引きこまれていくのであった。
ーーーーーーーーーー
アレンはまた暗闇にいた。
似たような夢は以前にも見た覚えがある。
怖い夢だった。心の中を見透かされるような。
暗い空間を前も後ろもなく歩いているとやはり一か所だけ明るい場所がありそこに少女が立っていた。
薄手のワンピースに腰のあたりまである美しく光る金髪。
暗闇に幻想的に輝く彼女だ。
「君は、前にも......。」
夢の中ゆえ前の記憶があやふやなアレン。
「力が欲しい?」
徐々に思い出すアレン、前もこんな話だったような。
「力が欲しい?」
「あぁほしいよ。」
「すべてを失っても?」
「えっ!?」
要領を得ない問いかけにアレンの警戒心も増していく。
「すべてを失っても?」
「いや、ちょっと待ってくれ。いったい君は何者なんだ? この話にどういう意味があるんだ?」
「卑しい、悔しい、嫉妬、妬み。あるであろう、おぬしにも。」
突然話し方が変わる少女。先ほどまでのかわいらしい話し方ではなく年配の人が話すような話し方だ。
「なぜ自分には力がない。あいつにあってなぜ自分にはない。」
「確かに自分に力がないのがもどかしい。助けられてばっかだし。でも仲間の事をそんなふうに思ったことはない。」
「あの女の隣に騎士の青年が立っていることにもどかしさを覚えているだろう? あのスライムもおぬしが命令する前に動いておる。おぬしは必要があるか?」
卑しい問いにアレンはまっすぐ瞳を見据えて答える。
「俺が必要なのかはわからないけど俺は仲間のために力が欲しい。それを失うなら本末転倒ってやつだ。あと仲間に対してもどかしい?ってな感じはないよ。心からあいつらを信用してる。」
「つまらんの。まぁよい。我は力、負の力をまといし王たる力。力が欲しくばそう願え。おぬしの負の力が強ければ強いほど我の力もまた強い。」
「負の力?」
アレンの言葉と同時にまたアレンの足元の地面がなくなり吸い込まれるように真下に落下していく。
「うわぁぁああああああ!!!!!!」
落下しながら少女の方を見上げると少女ははっきりと
「時期は近い。」
そう口にしたところでアレンは現実の世界へ引き戻された。
はっ!!!
目をパッと開き周りを確認する。
月明かりが照らしているような薄明かりだが先ほどの暗闇よりははるかに明るい。
焚火がパチパチと燃えていたが日は眠る前より小さくなっていた。
枯れ木を焚火に入れ火を整えるアレン。
「力か......」
力への嫉妬心で身を滅ぼしたクラウスの父の話を思い出す。
力は炎のようなものだ。必要なものだがそれが強ければ強いほど自身も傷つきやがては身を焦がす。
クラウスの兄はどういう人なのだろう? 力を持って産まれた者。選ばれし者。
産まれながらに業火に身を焼く彼に興味がわく。
それにあの少女。夢の中とはいえ何か気になる。夢で終わらせればそれでいいのだろうが。
ダンジョンに潜る限りは力は必要になる。手に入れれるのであればいくらでも欲しい。
だが気になるのはすべてを失うという言葉。すべてとは何なのか? どこまでなのか。
ただ夢の話をいくら考えても仕方ない。
そう思ったアレンはひとしきり焚火を見つめた後また目を閉じ眠ってしまうのだった。
3人と2匹の顔が明るく光り体温を温めていく。
「で最近やっと僕は立ち直ることができて、兄さんと冒険する夢をもう一度叶えたくてね。
とはいえ兄さんは今や超有名冒険者、なかなかそうもいかない。だから僕も冒険者になって少しでも兄さんに近づこうと思ったわけだよ。」
クラウスの強さの意味を理解したアレンは言葉を選びながら話す。
「そっか。クラウスはそういう夢があるんだな。叶うといいな。」
「そうだね。でもアレン君、僕は兄さんに感じた威圧感を君と戦った時も感じた。僕は君との冒険も心から楽しみにしているよ。」
「俺もクラウスがいると心強いよ。」
「なんで男ってこう熱いのが好きなのかしら。」
「きゅぷぷ。」
ニアはゴンゾウに ねぇ と話しかけまたカチャカチャと明日の支度を始める。
ディアドラはアレンが褒められてうれしいのか尻尾をブンブン振りながら うんうん とクラウスの話を聞いている。
「でさ。クラウスの兄さんって誰なんだ? 有名な冒険者なんだろ?」
「あぁそこはいずれ。今日は明日の支度もある。早めに休もう。見張りは交代で。まずは僕が見るよ。」
「なんだよ。教えてくれよ。気になって寝れねぇよ。」
「クラウス、見張りはいらないわよ。ゴンちゃんとディアちゃんがいれば敵に気づかれる前に起こしてくれるわ。」
「ゴンゾウ君が?」
ディアドラはわかるとしてこのスライム。なぜこんなにも有能なんだ。
冷汗を垂らしながらゴンゾウと目が合うクラウス。
「きゅぴぴぴ。」
こう見ているとただの人懐っこいだけのスライムだ。
これもアレン君の力なのか?
答えの出ない謎に頭を埋め尽くされそうになるが考えても仕方ない。
職業柄かすぐには信用できないが疑っても仕方ない。
これは新たな可能性にあふれた冒険なのだ。
寝れずとも目を瞑るクラウス。
しかし疲れもあり次第に睡魔の中へ引きこまれていくのであった。
ーーーーーーーーーー
アレンはまた暗闇にいた。
似たような夢は以前にも見た覚えがある。
怖い夢だった。心の中を見透かされるような。
暗い空間を前も後ろもなく歩いているとやはり一か所だけ明るい場所がありそこに少女が立っていた。
薄手のワンピースに腰のあたりまである美しく光る金髪。
暗闇に幻想的に輝く彼女だ。
「君は、前にも......。」
夢の中ゆえ前の記憶があやふやなアレン。
「力が欲しい?」
徐々に思い出すアレン、前もこんな話だったような。
「力が欲しい?」
「あぁほしいよ。」
「すべてを失っても?」
「えっ!?」
要領を得ない問いかけにアレンの警戒心も増していく。
「すべてを失っても?」
「いや、ちょっと待ってくれ。いったい君は何者なんだ? この話にどういう意味があるんだ?」
「卑しい、悔しい、嫉妬、妬み。あるであろう、おぬしにも。」
突然話し方が変わる少女。先ほどまでのかわいらしい話し方ではなく年配の人が話すような話し方だ。
「なぜ自分には力がない。あいつにあってなぜ自分にはない。」
「確かに自分に力がないのがもどかしい。助けられてばっかだし。でも仲間の事をそんなふうに思ったことはない。」
「あの女の隣に騎士の青年が立っていることにもどかしさを覚えているだろう? あのスライムもおぬしが命令する前に動いておる。おぬしは必要があるか?」
卑しい問いにアレンはまっすぐ瞳を見据えて答える。
「俺が必要なのかはわからないけど俺は仲間のために力が欲しい。それを失うなら本末転倒ってやつだ。あと仲間に対してもどかしい?ってな感じはないよ。心からあいつらを信用してる。」
「つまらんの。まぁよい。我は力、負の力をまといし王たる力。力が欲しくばそう願え。おぬしの負の力が強ければ強いほど我の力もまた強い。」
「負の力?」
アレンの言葉と同時にまたアレンの足元の地面がなくなり吸い込まれるように真下に落下していく。
「うわぁぁああああああ!!!!!!」
落下しながら少女の方を見上げると少女ははっきりと
「時期は近い。」
そう口にしたところでアレンは現実の世界へ引き戻された。
はっ!!!
目をパッと開き周りを確認する。
月明かりが照らしているような薄明かりだが先ほどの暗闇よりははるかに明るい。
焚火がパチパチと燃えていたが日は眠る前より小さくなっていた。
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力は炎のようなものだ。必要なものだがそれが強ければ強いほど自身も傷つきやがては身を焦がす。
クラウスの兄はどういう人なのだろう? 力を持って産まれた者。選ばれし者。
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それにあの少女。夢の中とはいえ何か気になる。夢で終わらせればそれでいいのだろうが。
ダンジョンに潜る限りは力は必要になる。手に入れれるのであればいくらでも欲しい。
だが気になるのはすべてを失うという言葉。すべてとは何なのか? どこまでなのか。
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