34 / 58
コボルト戦
しおりを挟む
コボルトはジリジリとアレンたちを包囲していっている。
その間も絶えず霧の向こうから矢が放たれアレンたちの命を狙っていた。
「さっきは助けてくれてありがとう。今度は私の番ね。」
ニアは杖を高く掲げ詠唱に入る。
しかしコボルトもそこはほかの冒険者から学んでいる部分だ。
詠唱を阻害しようと一斉に矢をニアに集中させた。
だがニアには当たらない。
華麗に踊るように避けていく。
その美しい姿にクラウスはほんの一瞬ニアを守ることを忘れていた。
ハッと我に返りニアへの矢を持っている騎士剣で払い落す。
「ありがとうクラウス。もう大丈夫。」
ニアは掲げていた杖を真下の地面に トン と置くとそこから地面に波紋が伝わりコボルト達の足元を駆け抜けていった。
「我と共に風の精霊たちよ。緑葉の風に乗りその大地にいたずらな罰を。エアードスリップ!!!」
波紋が通り抜けたコボルトの足の裏から突然空気が入っていき地面との摩擦をなくしていく。
みるみるコボルト達は立っていられなくなり滑って転ぶというお祭り状態になった。
立ち上がろうにも滑って立ち上がれず、統率のないコボルトなど敵ではない。
瞬時にクラウスが周りのコボルトを斬っていく。
「ぐぎゃぁぁああああ!!!」
バタバタと倒れるコボルト。
「まだ霧の中にいるはずだ!! 気を引き締めるん...」
そう言いかけたクラウスだったが霧からうっすらと影が見えそれが近づいてくる。
ピョンピョンとは跳ねた仕草には見覚えがある。
「ゴンゾウ君...まさか...」
そのまさかだ。
ニアとクラウスが周りのコボルトを退治している中、ゴンゾウは一人霧の中のコボルトをやっつけていたのである。
「きゅぷぷぷぴぴ。」
自慢げに雷切をくるくる回しながら背中に背負った鞘にしまう。
「これはさすがに大したものだな......」
「ゴンちゃんお疲れ様。さすがね。」
ゴンゾウはニアの足元まで跳ねていくとピョンとニアの胸に飛び込んだ。
「もうゴンちゃんったら。くすぐったいでしょ。」
「きゅぴぴ。」
ゴンゾウはニアの薄い衣類の下で膨らんでいる柔らかい丘に体をぐりぐりと擦り付けている。
豊かなふくらみがゴンゾウが動くたび揺れて危険だ。
そんな戯れを凝視し生唾を飲み込むクラウス。
いかんいかん。平常心だ。ここはダンジョン、いつ何があるかわからない。
僕はどうしてこうなんだ。アレン君からなにを学んだんだ。変わるんじゃなかったのか? アレン君のようにまっすぐに! 師匠のように純粋に!
アレンは舌を出し はぁはぁ 言いながら
「おい、ディアドラ見ろよ。なぁなぁあれ。」
と純粋さのかけらもない下品な顔で凝視していた。
「いや、主よ。私はあまりああいうのは興味が...わかった! 見るから! 見てるから! シッポを掴まないでくれ。」
ディアドラもアレンのあまりの下品な顔に困惑している。
「くそっ!! わかっていたんだ。僕はアレン君がああいう人間だという事に!!」
アレンに助けを求めた自分の醜い心を恥じているクラウスだが醜いのはアレンだ。
ゴンゾウの活躍が早々と薄れ、一同がさらに深みへ進み出す。
敵を敵ともしていない今のパーティーの戦力はまさに上級冒険者で構成されたパーティと同じようなスピードでダンジョンを降りていく。
そうして彼らは1日の冒険で20階層もの深みにたどり着いた。
「すごい!前回潜った時は3階層あたりで野営を取ったのに!」
この短期間にここまで状況が変わるとは、驚きを隠せないニア。
「ほぼノンストップだったからね。疲れただろう?」
クラウスがへたり込んであるアレンに水筒の水を差し出す。
「ありがとうクラウス。」
んぐんぐ と勢いよく水を飲み プハァァァ!! とおっさん臭くうまそうに息を漏らす。
「バカは何してても幸せそうでいいわね。」
ニアが横目でアレンを見ている。
20階層、クリスタルの結晶が至る所から突き出しておりそこから染み出す水にヒカリゴケがまとわりついている。
クリスタルが光を乱射するおかげでこの辺りは更に明るいフロアになってきている。
「下に降りるごとに明るくなってる気がするな。」
率直な疑問をぶつけるアレンにクラウスが丁寧に答える。
「ダンジョンの光はそこら中に付いているヒカリゴケからまかなわれてる。深層に行けば行くほど魔力の純度も高くなる。明るいのは当然の事なんだ。特にこの辺りはクリスタルが豊富にある。光は隅々まで届きフロアを照らしているんだ。」
「へぇー。」
アレンとニアが同じタイミングで頷く。
ゴンゾウも きゅぴー と二人を真似ているようだ。
「今日はこの辺りで野営を取ろう。ここからは今までのようには進まないかもしれない。」
クラウスが一瞬気を引き締めて言うのだがその言葉にアレンが腰から地面に落ちていき ドシャ! っと崩れ落ちてしまう。
「もう歩けない。ここら辺で勘弁してくれ。」
「ちょうどその話をしてたんだけどね。OK。準備は僕らでやるからアレン君は休んでいてくれ。」
アレンのくたびれた姿に少し心が緩むクラウスであった。
その間も絶えず霧の向こうから矢が放たれアレンたちの命を狙っていた。
「さっきは助けてくれてありがとう。今度は私の番ね。」
ニアは杖を高く掲げ詠唱に入る。
しかしコボルトもそこはほかの冒険者から学んでいる部分だ。
詠唱を阻害しようと一斉に矢をニアに集中させた。
だがニアには当たらない。
華麗に踊るように避けていく。
その美しい姿にクラウスはほんの一瞬ニアを守ることを忘れていた。
ハッと我に返りニアへの矢を持っている騎士剣で払い落す。
「ありがとうクラウス。もう大丈夫。」
ニアは掲げていた杖を真下の地面に トン と置くとそこから地面に波紋が伝わりコボルト達の足元を駆け抜けていった。
「我と共に風の精霊たちよ。緑葉の風に乗りその大地にいたずらな罰を。エアードスリップ!!!」
波紋が通り抜けたコボルトの足の裏から突然空気が入っていき地面との摩擦をなくしていく。
みるみるコボルト達は立っていられなくなり滑って転ぶというお祭り状態になった。
立ち上がろうにも滑って立ち上がれず、統率のないコボルトなど敵ではない。
瞬時にクラウスが周りのコボルトを斬っていく。
「ぐぎゃぁぁああああ!!!」
バタバタと倒れるコボルト。
「まだ霧の中にいるはずだ!! 気を引き締めるん...」
そう言いかけたクラウスだったが霧からうっすらと影が見えそれが近づいてくる。
ピョンピョンとは跳ねた仕草には見覚えがある。
「ゴンゾウ君...まさか...」
そのまさかだ。
ニアとクラウスが周りのコボルトを退治している中、ゴンゾウは一人霧の中のコボルトをやっつけていたのである。
「きゅぷぷぷぴぴ。」
自慢げに雷切をくるくる回しながら背中に背負った鞘にしまう。
「これはさすがに大したものだな......」
「ゴンちゃんお疲れ様。さすがね。」
ゴンゾウはニアの足元まで跳ねていくとピョンとニアの胸に飛び込んだ。
「もうゴンちゃんったら。くすぐったいでしょ。」
「きゅぴぴ。」
ゴンゾウはニアの薄い衣類の下で膨らんでいる柔らかい丘に体をぐりぐりと擦り付けている。
豊かなふくらみがゴンゾウが動くたび揺れて危険だ。
そんな戯れを凝視し生唾を飲み込むクラウス。
いかんいかん。平常心だ。ここはダンジョン、いつ何があるかわからない。
僕はどうしてこうなんだ。アレン君からなにを学んだんだ。変わるんじゃなかったのか? アレン君のようにまっすぐに! 師匠のように純粋に!
アレンは舌を出し はぁはぁ 言いながら
「おい、ディアドラ見ろよ。なぁなぁあれ。」
と純粋さのかけらもない下品な顔で凝視していた。
「いや、主よ。私はあまりああいうのは興味が...わかった! 見るから! 見てるから! シッポを掴まないでくれ。」
ディアドラもアレンのあまりの下品な顔に困惑している。
「くそっ!! わかっていたんだ。僕はアレン君がああいう人間だという事に!!」
アレンに助けを求めた自分の醜い心を恥じているクラウスだが醜いのはアレンだ。
ゴンゾウの活躍が早々と薄れ、一同がさらに深みへ進み出す。
敵を敵ともしていない今のパーティーの戦力はまさに上級冒険者で構成されたパーティと同じようなスピードでダンジョンを降りていく。
そうして彼らは1日の冒険で20階層もの深みにたどり着いた。
「すごい!前回潜った時は3階層あたりで野営を取ったのに!」
この短期間にここまで状況が変わるとは、驚きを隠せないニア。
「ほぼノンストップだったからね。疲れただろう?」
クラウスがへたり込んであるアレンに水筒の水を差し出す。
「ありがとうクラウス。」
んぐんぐ と勢いよく水を飲み プハァァァ!! とおっさん臭くうまそうに息を漏らす。
「バカは何してても幸せそうでいいわね。」
ニアが横目でアレンを見ている。
20階層、クリスタルの結晶が至る所から突き出しておりそこから染み出す水にヒカリゴケがまとわりついている。
クリスタルが光を乱射するおかげでこの辺りは更に明るいフロアになってきている。
「下に降りるごとに明るくなってる気がするな。」
率直な疑問をぶつけるアレンにクラウスが丁寧に答える。
「ダンジョンの光はそこら中に付いているヒカリゴケからまかなわれてる。深層に行けば行くほど魔力の純度も高くなる。明るいのは当然の事なんだ。特にこの辺りはクリスタルが豊富にある。光は隅々まで届きフロアを照らしているんだ。」
「へぇー。」
アレンとニアが同じタイミングで頷く。
ゴンゾウも きゅぴー と二人を真似ているようだ。
「今日はこの辺りで野営を取ろう。ここからは今までのようには進まないかもしれない。」
クラウスが一瞬気を引き締めて言うのだがその言葉にアレンが腰から地面に落ちていき ドシャ! っと崩れ落ちてしまう。
「もう歩けない。ここら辺で勘弁してくれ。」
「ちょうどその話をしてたんだけどね。OK。準備は僕らでやるからアレン君は休んでいてくれ。」
アレンのくたびれた姿に少し心が緩むクラウスであった。
0
お気に入りに追加
512
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる