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コボルト戦
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コボルトはジリジリとアレンたちを包囲していっている。
その間も絶えず霧の向こうから矢が放たれアレンたちの命を狙っていた。
「さっきは助けてくれてありがとう。今度は私の番ね。」
ニアは杖を高く掲げ詠唱に入る。
しかしコボルトもそこはほかの冒険者から学んでいる部分だ。
詠唱を阻害しようと一斉に矢をニアに集中させた。
だがニアには当たらない。
華麗に踊るように避けていく。
その美しい姿にクラウスはほんの一瞬ニアを守ることを忘れていた。
ハッと我に返りニアへの矢を持っている騎士剣で払い落す。
「ありがとうクラウス。もう大丈夫。」
ニアは掲げていた杖を真下の地面に トン と置くとそこから地面に波紋が伝わりコボルト達の足元を駆け抜けていった。
「我と共に風の精霊たちよ。緑葉の風に乗りその大地にいたずらな罰を。エアードスリップ!!!」
波紋が通り抜けたコボルトの足の裏から突然空気が入っていき地面との摩擦をなくしていく。
みるみるコボルト達は立っていられなくなり滑って転ぶというお祭り状態になった。
立ち上がろうにも滑って立ち上がれず、統率のないコボルトなど敵ではない。
瞬時にクラウスが周りのコボルトを斬っていく。
「ぐぎゃぁぁああああ!!!」
バタバタと倒れるコボルト。
「まだ霧の中にいるはずだ!! 気を引き締めるん...」
そう言いかけたクラウスだったが霧からうっすらと影が見えそれが近づいてくる。
ピョンピョンとは跳ねた仕草には見覚えがある。
「ゴンゾウ君...まさか...」
そのまさかだ。
ニアとクラウスが周りのコボルトを退治している中、ゴンゾウは一人霧の中のコボルトをやっつけていたのである。
「きゅぷぷぷぴぴ。」
自慢げに雷切をくるくる回しながら背中に背負った鞘にしまう。
「これはさすがに大したものだな......」
「ゴンちゃんお疲れ様。さすがね。」
ゴンゾウはニアの足元まで跳ねていくとピョンとニアの胸に飛び込んだ。
「もうゴンちゃんったら。くすぐったいでしょ。」
「きゅぴぴ。」
ゴンゾウはニアの薄い衣類の下で膨らんでいる柔らかい丘に体をぐりぐりと擦り付けている。
豊かなふくらみがゴンゾウが動くたび揺れて危険だ。
そんな戯れを凝視し生唾を飲み込むクラウス。
いかんいかん。平常心だ。ここはダンジョン、いつ何があるかわからない。
僕はどうしてこうなんだ。アレン君からなにを学んだんだ。変わるんじゃなかったのか? アレン君のようにまっすぐに! 師匠のように純粋に!
アレンは舌を出し はぁはぁ 言いながら
「おい、ディアドラ見ろよ。なぁなぁあれ。」
と純粋さのかけらもない下品な顔で凝視していた。
「いや、主よ。私はあまりああいうのは興味が...わかった! 見るから! 見てるから! シッポを掴まないでくれ。」
ディアドラもアレンのあまりの下品な顔に困惑している。
「くそっ!! わかっていたんだ。僕はアレン君がああいう人間だという事に!!」
アレンに助けを求めた自分の醜い心を恥じているクラウスだが醜いのはアレンだ。
ゴンゾウの活躍が早々と薄れ、一同がさらに深みへ進み出す。
敵を敵ともしていない今のパーティーの戦力はまさに上級冒険者で構成されたパーティと同じようなスピードでダンジョンを降りていく。
そうして彼らは1日の冒険で20階層もの深みにたどり着いた。
「すごい!前回潜った時は3階層あたりで野営を取ったのに!」
この短期間にここまで状況が変わるとは、驚きを隠せないニア。
「ほぼノンストップだったからね。疲れただろう?」
クラウスがへたり込んであるアレンに水筒の水を差し出す。
「ありがとうクラウス。」
んぐんぐ と勢いよく水を飲み プハァァァ!! とおっさん臭くうまそうに息を漏らす。
「バカは何してても幸せそうでいいわね。」
ニアが横目でアレンを見ている。
20階層、クリスタルの結晶が至る所から突き出しておりそこから染み出す水にヒカリゴケがまとわりついている。
クリスタルが光を乱射するおかげでこの辺りは更に明るいフロアになってきている。
「下に降りるごとに明るくなってる気がするな。」
率直な疑問をぶつけるアレンにクラウスが丁寧に答える。
「ダンジョンの光はそこら中に付いているヒカリゴケからまかなわれてる。深層に行けば行くほど魔力の純度も高くなる。明るいのは当然の事なんだ。特にこの辺りはクリスタルが豊富にある。光は隅々まで届きフロアを照らしているんだ。」
「へぇー。」
アレンとニアが同じタイミングで頷く。
ゴンゾウも きゅぴー と二人を真似ているようだ。
「今日はこの辺りで野営を取ろう。ここからは今までのようには進まないかもしれない。」
クラウスが一瞬気を引き締めて言うのだがその言葉にアレンが腰から地面に落ちていき ドシャ! っと崩れ落ちてしまう。
「もう歩けない。ここら辺で勘弁してくれ。」
「ちょうどその話をしてたんだけどね。OK。準備は僕らでやるからアレン君は休んでいてくれ。」
アレンのくたびれた姿に少し心が緩むクラウスであった。
その間も絶えず霧の向こうから矢が放たれアレンたちの命を狙っていた。
「さっきは助けてくれてありがとう。今度は私の番ね。」
ニアは杖を高く掲げ詠唱に入る。
しかしコボルトもそこはほかの冒険者から学んでいる部分だ。
詠唱を阻害しようと一斉に矢をニアに集中させた。
だがニアには当たらない。
華麗に踊るように避けていく。
その美しい姿にクラウスはほんの一瞬ニアを守ることを忘れていた。
ハッと我に返りニアへの矢を持っている騎士剣で払い落す。
「ありがとうクラウス。もう大丈夫。」
ニアは掲げていた杖を真下の地面に トン と置くとそこから地面に波紋が伝わりコボルト達の足元を駆け抜けていった。
「我と共に風の精霊たちよ。緑葉の風に乗りその大地にいたずらな罰を。エアードスリップ!!!」
波紋が通り抜けたコボルトの足の裏から突然空気が入っていき地面との摩擦をなくしていく。
みるみるコボルト達は立っていられなくなり滑って転ぶというお祭り状態になった。
立ち上がろうにも滑って立ち上がれず、統率のないコボルトなど敵ではない。
瞬時にクラウスが周りのコボルトを斬っていく。
「ぐぎゃぁぁああああ!!!」
バタバタと倒れるコボルト。
「まだ霧の中にいるはずだ!! 気を引き締めるん...」
そう言いかけたクラウスだったが霧からうっすらと影が見えそれが近づいてくる。
ピョンピョンとは跳ねた仕草には見覚えがある。
「ゴンゾウ君...まさか...」
そのまさかだ。
ニアとクラウスが周りのコボルトを退治している中、ゴンゾウは一人霧の中のコボルトをやっつけていたのである。
「きゅぷぷぷぴぴ。」
自慢げに雷切をくるくる回しながら背中に背負った鞘にしまう。
「これはさすがに大したものだな......」
「ゴンちゃんお疲れ様。さすがね。」
ゴンゾウはニアの足元まで跳ねていくとピョンとニアの胸に飛び込んだ。
「もうゴンちゃんったら。くすぐったいでしょ。」
「きゅぴぴ。」
ゴンゾウはニアの薄い衣類の下で膨らんでいる柔らかい丘に体をぐりぐりと擦り付けている。
豊かなふくらみがゴンゾウが動くたび揺れて危険だ。
そんな戯れを凝視し生唾を飲み込むクラウス。
いかんいかん。平常心だ。ここはダンジョン、いつ何があるかわからない。
僕はどうしてこうなんだ。アレン君からなにを学んだんだ。変わるんじゃなかったのか? アレン君のようにまっすぐに! 師匠のように純粋に!
アレンは舌を出し はぁはぁ 言いながら
「おい、ディアドラ見ろよ。なぁなぁあれ。」
と純粋さのかけらもない下品な顔で凝視していた。
「いや、主よ。私はあまりああいうのは興味が...わかった! 見るから! 見てるから! シッポを掴まないでくれ。」
ディアドラもアレンのあまりの下品な顔に困惑している。
「くそっ!! わかっていたんだ。僕はアレン君がああいう人間だという事に!!」
アレンに助けを求めた自分の醜い心を恥じているクラウスだが醜いのはアレンだ。
ゴンゾウの活躍が早々と薄れ、一同がさらに深みへ進み出す。
敵を敵ともしていない今のパーティーの戦力はまさに上級冒険者で構成されたパーティと同じようなスピードでダンジョンを降りていく。
そうして彼らは1日の冒険で20階層もの深みにたどり着いた。
「すごい!前回潜った時は3階層あたりで野営を取ったのに!」
この短期間にここまで状況が変わるとは、驚きを隠せないニア。
「ほぼノンストップだったからね。疲れただろう?」
クラウスがへたり込んであるアレンに水筒の水を差し出す。
「ありがとうクラウス。」
んぐんぐ と勢いよく水を飲み プハァァァ!! とおっさん臭くうまそうに息を漏らす。
「バカは何してても幸せそうでいいわね。」
ニアが横目でアレンを見ている。
20階層、クリスタルの結晶が至る所から突き出しておりそこから染み出す水にヒカリゴケがまとわりついている。
クリスタルが光を乱射するおかげでこの辺りは更に明るいフロアになってきている。
「下に降りるごとに明るくなってる気がするな。」
率直な疑問をぶつけるアレンにクラウスが丁寧に答える。
「ダンジョンの光はそこら中に付いているヒカリゴケからまかなわれてる。深層に行けば行くほど魔力の純度も高くなる。明るいのは当然の事なんだ。特にこの辺りはクリスタルが豊富にある。光は隅々まで届きフロアを照らしているんだ。」
「へぇー。」
アレンとニアが同じタイミングで頷く。
ゴンゾウも きゅぴー と二人を真似ているようだ。
「今日はこの辺りで野営を取ろう。ここからは今までのようには進まないかもしれない。」
クラウスが一瞬気を引き締めて言うのだがその言葉にアレンが腰から地面に落ちていき ドシャ! っと崩れ落ちてしまう。
「もう歩けない。ここら辺で勘弁してくれ。」
「ちょうどその話をしてたんだけどね。OK。準備は僕らでやるからアレン君は休んでいてくれ。」
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