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決闘
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「まっっっっったく考えてる意味が解らないんですけど!!!」
ニアの剣幕がすごい。
クラウスと決闘の準備をしていたアレンもさすがにたじろぐ。
「いいじゃないか。職業聖騎士だぜ。ランクもシンカーだし。クラウスが仲間になればダンジョンにも入れる。」
たしかに言っていることはわかる。
クラウスが仲間になればアレンたちの戦力は格段に跳ね上がる。
聖騎士という職業も魅力的だ。
守りと回復に特化したスキルを覚えるその職業はパーティーの生存率を大幅に上げる。
攻撃主体のアレンのパーティーには欠かせない存在だ。
「それはもういいの!! 問題はアレンが負けたら私たちパーティー解散なのよ!! わかってるの?!」
涙目になりながら訴えるニアにさすがにアレンも
「ごめんニア。そんなつもりはなかったんだ。」
「アレンがクラウスに勝てるわけないじゃない!! アレン今呪印のせいでステータス オール1なんだよ。」
言葉に出されると グサっ と来る。
「まぁ任せろよ。考えはあるんだ。」
たしかに考えなしにこんな決闘を受けたのなら本当の大馬鹿だ。
アレンの目は戦いをあきらめている目ではなかった。
ここぞというときによく見るアレンの目にニアは
「信じるしかないよね。」
そう独り言のようにつぶやき自分のホホをパチンと両手で叩く。
ーーーーーー
ニアの慌てた様子からやはりアレン君と自分には相当な実力差があるはず。
それでもアレン君は決闘という方法でケリをつけに来た。
何か秘策があるはず。十分気を付けなければ。
職業柄なのかいつも以上に守りに入っているクラウス。
決闘の広場には多くの人が集まっていた。
ダンジョンに潜れずふて腐れた冒険者たちの格好のオカズである。
「さて、そろそろ時間だ。準備はいいかな?」
「あぁ、いつでも。」
二人は互いに向かい合いお互いを見たまま後ろに下がって徐々に距離をとる。
距離が十分に取れたことを確認すると互いに剣を抜き構えをとった。
けん制しあう二人だが先に動いたのはアレン。
スキルの効果により刀の扱いには問題ない。
素早い連撃でクラウスのスキを突こうとする。
しかしクラウスはいともたやすくその連撃をしのいで見せた。
おかしい。剣の扱い方はなかなかのものだ。
この連撃もルーキーにしては出来すぎの部類。
何かがおかしい。
なぜこんなに剣撃が軽いんだ。
この扱い方でこの体さばきでどうして。
疑りすぎるのも職業柄か。
ただステータスが低くてそうなっているアレンに慎重すぎるクラウス。
それでも激しい連撃は続く。
アレンは息の続く限り激しく突き立てる。
流石のクラウスも
もしかして、これが実力なのか?
確かにアレン君のステータスはわずかだがのぞいてしまったことがある。酷いものだった。
体さばきに惑わされてはいけない。
確かに武器の扱い方は心得てるようだがまだまだ甘いところも多い。
ここは一度距離を取ってあの連撃を止めよう。
クラウスはアレンの連撃を強めに上に弾き軽くバックステップを踏みアレンとの距離を少しだけ取った。
「待ってました!」
弾かれた刀をすぐさま鞘に収め体を捻り力を溜める。
なんだこれは? ここからじゃ届かないはず? 嫌な予感がする。
クラウスも素人ではない。相手の武器の射程距離などは間違えようもない。
しかし今までの経験値から確実に考えてることでは済まないという感覚が頭を埋める。
しかしアレンは止まらない。
貯めた力を一気に前方へ噴出させる。
鞘を発射台に刀の刃先を加速させ圧倒的音速域で振り抜くことにより真空の斬撃が相手を襲う。
「椿一閃!!!」
刀の刃先が見えないスピードで降りぬかれクラウスの腹部に届いてないはずの斬撃が到達する。
チュン!!!!
乾いた甲高い音と共に傷一つ付いてはいないが確かに当たった衝撃がクラウスの顔に動揺を覗かせた。
「なっ!!」
圧倒的な実力差。
警戒はしていたがその実力差に気づいた瞬間のスキを突かれた。
なんというセンスか。
この一撃がクラウスにダメージを与えることができていない時点でアレンの勝利は絶望的に見える。
証拠に周りの冒険者は「なんでぇつまんねぇ!!」など悪態をつき始め「もっとやれ!!」と戦いをあおり始めた。
「さぁクラウス。もうこれで俺の実力はすべて見せた。結果だけどダメージは与えられてない。」
突然のアレンの言葉にクラウスはさらに困惑を隠せない表情を見せる。
「何を言っているんだ!? 君は僕に1撃を入れたんだ。まだ何か隠しているんだろ?」
「いや、もうなんもない。」
「はぁ? これで終いかい? なら何のために勝負を挑んだんだ?」
「なんもないけど負けたとは言ってない。剣での戦いはこれで終わり。そもそも1撃喰らったら俺死ぬかもしれないし。」
たしかにクラウスもアレンの実力が見えない中、殺さないように手加減もあった。
そう言ったスキを突かれたのだがそれでもアレンの言葉に納得ができない。
「どういうことだ!? 剣以外で何で戦うんだ。君はその武器しかもっていないだろう!?」
神聖なる決闘を透かされた気分になり若干の苛立ちを見せるクラウス。
もはやアレンの思うつぼだった。
「見せてやるよ。お前は初めから負けてたんだ。」
アレンの醜悪な笑みがクラウスを更なる必要のない警戒におびき寄せることとなる。
ニアの剣幕がすごい。
クラウスと決闘の準備をしていたアレンもさすがにたじろぐ。
「いいじゃないか。職業聖騎士だぜ。ランクもシンカーだし。クラウスが仲間になればダンジョンにも入れる。」
たしかに言っていることはわかる。
クラウスが仲間になればアレンたちの戦力は格段に跳ね上がる。
聖騎士という職業も魅力的だ。
守りと回復に特化したスキルを覚えるその職業はパーティーの生存率を大幅に上げる。
攻撃主体のアレンのパーティーには欠かせない存在だ。
「それはもういいの!! 問題はアレンが負けたら私たちパーティー解散なのよ!! わかってるの?!」
涙目になりながら訴えるニアにさすがにアレンも
「ごめんニア。そんなつもりはなかったんだ。」
「アレンがクラウスに勝てるわけないじゃない!! アレン今呪印のせいでステータス オール1なんだよ。」
言葉に出されると グサっ と来る。
「まぁ任せろよ。考えはあるんだ。」
たしかに考えなしにこんな決闘を受けたのなら本当の大馬鹿だ。
アレンの目は戦いをあきらめている目ではなかった。
ここぞというときによく見るアレンの目にニアは
「信じるしかないよね。」
そう独り言のようにつぶやき自分のホホをパチンと両手で叩く。
ーーーーーー
ニアの慌てた様子からやはりアレン君と自分には相当な実力差があるはず。
それでもアレン君は決闘という方法でケリをつけに来た。
何か秘策があるはず。十分気を付けなければ。
職業柄なのかいつも以上に守りに入っているクラウス。
決闘の広場には多くの人が集まっていた。
ダンジョンに潜れずふて腐れた冒険者たちの格好のオカズである。
「さて、そろそろ時間だ。準備はいいかな?」
「あぁ、いつでも。」
二人は互いに向かい合いお互いを見たまま後ろに下がって徐々に距離をとる。
距離が十分に取れたことを確認すると互いに剣を抜き構えをとった。
けん制しあう二人だが先に動いたのはアレン。
スキルの効果により刀の扱いには問題ない。
素早い連撃でクラウスのスキを突こうとする。
しかしクラウスはいともたやすくその連撃をしのいで見せた。
おかしい。剣の扱い方はなかなかのものだ。
この連撃もルーキーにしては出来すぎの部類。
何かがおかしい。
なぜこんなに剣撃が軽いんだ。
この扱い方でこの体さばきでどうして。
疑りすぎるのも職業柄か。
ただステータスが低くてそうなっているアレンに慎重すぎるクラウス。
それでも激しい連撃は続く。
アレンは息の続く限り激しく突き立てる。
流石のクラウスも
もしかして、これが実力なのか?
確かにアレン君のステータスはわずかだがのぞいてしまったことがある。酷いものだった。
体さばきに惑わされてはいけない。
確かに武器の扱い方は心得てるようだがまだまだ甘いところも多い。
ここは一度距離を取ってあの連撃を止めよう。
クラウスはアレンの連撃を強めに上に弾き軽くバックステップを踏みアレンとの距離を少しだけ取った。
「待ってました!」
弾かれた刀をすぐさま鞘に収め体を捻り力を溜める。
なんだこれは? ここからじゃ届かないはず? 嫌な予感がする。
クラウスも素人ではない。相手の武器の射程距離などは間違えようもない。
しかし今までの経験値から確実に考えてることでは済まないという感覚が頭を埋める。
しかしアレンは止まらない。
貯めた力を一気に前方へ噴出させる。
鞘を発射台に刀の刃先を加速させ圧倒的音速域で振り抜くことにより真空の斬撃が相手を襲う。
「椿一閃!!!」
刀の刃先が見えないスピードで降りぬかれクラウスの腹部に届いてないはずの斬撃が到達する。
チュン!!!!
乾いた甲高い音と共に傷一つ付いてはいないが確かに当たった衝撃がクラウスの顔に動揺を覗かせた。
「なっ!!」
圧倒的な実力差。
警戒はしていたがその実力差に気づいた瞬間のスキを突かれた。
なんというセンスか。
この一撃がクラウスにダメージを与えることができていない時点でアレンの勝利は絶望的に見える。
証拠に周りの冒険者は「なんでぇつまんねぇ!!」など悪態をつき始め「もっとやれ!!」と戦いをあおり始めた。
「さぁクラウス。もうこれで俺の実力はすべて見せた。結果だけどダメージは与えられてない。」
突然のアレンの言葉にクラウスはさらに困惑を隠せない表情を見せる。
「何を言っているんだ!? 君は僕に1撃を入れたんだ。まだ何か隠しているんだろ?」
「いや、もうなんもない。」
「はぁ? これで終いかい? なら何のために勝負を挑んだんだ?」
「なんもないけど負けたとは言ってない。剣での戦いはこれで終わり。そもそも1撃喰らったら俺死ぬかもしれないし。」
たしかにクラウスもアレンの実力が見えない中、殺さないように手加減もあった。
そう言ったスキを突かれたのだがそれでもアレンの言葉に納得ができない。
「どういうことだ!? 剣以外で何で戦うんだ。君はその武器しかもっていないだろう!?」
神聖なる決闘を透かされた気分になり若干の苛立ちを見せるクラウス。
もはやアレンの思うつぼだった。
「見せてやるよ。お前は初めから負けてたんだ。」
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