ダンジョンはモンスターでいっぱい!! ~スライムと成り上がる最弱冒険者の物語〜

なか

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お風呂

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 3階層から地上までモンスターに会うこともなくすんなり地上に戻ることができた。
 それだけディアドラがここらの階層に出現したのは異常事態だったのだ。

 朝に出発したアレンたちは昼になる前にダンジョンを脱出していた。

「なんだか久しぶりに外に出た気がする。ダンジョンも明るいけどやっぱり外の光はまた違うねぇ~。」
「あんた本当に呑気ね。昨日は命がけの戦いをしたとは思えないわ。」

 しみじみ語る二人だが街へ戻るとその異様な雰囲気に気づく。

「なに?なんかざわついてる、、、何かあったのかな?」

 不安そうなニアをよそにアレンは道行く男を呼び止め何があったか聞いていた。

「はぁ?おめぇ知らねぇのか?あぁ、、ダンジョン帰りのルーキーか。なら知らねぇのも無理はねぇ。」

 男は興奮した様子で話し始める。

「なんでもよ。70階層のヌシ、ウォーウルフが遂に討伐されたって電報が来て街は祭りの準備をしてたんだよ。
 それがよ、昨日の夜ごろ傷だらけの冒険者がダンジョンから戻ってきて、、、なんと5階層で討伐したはずのウォーウルフが息を吹き返して魔晶石ぶち破って出てきたんだとよ。
 たちまち周りのやつらはやられちまって。ウォーウルフを討伐したはずの剣聖様のパーティーも70階層を突破するや否やそのまま奥の階層に行っちまってその場にはいなかったらしいんだよ。
 まだ討伐されてないらしくて5階層をうろついてる可能性もあるんだとよ。」

 正直驚いたがよく考えると当たり前の話だった。
 長年、冒険者の進行を妨げていたモンスターが浅い階層で解き放たれたのだ。
 モンスターはよほどのことがないかぎりダンジョンから出ることはないがそれでも浅い階層のモンスターが地上で確認されることも少なくない。
 それがディアドラのような危険度超級モンスターとあらば街も穏やかではいられないはずだ。

「お前ら気をつけろよ。とはいってもダンジョンは高ランクパーティー以外はしばらく封鎖されるって話だがな。」
「えっ!!じゃあダンジョンに入れないって事かよ!しばらくってどのぐらいなんだ?」
「さぁな。とりあえず安全が確保されるまでじゃないか?もしかすると王国軍の出兵の可能性もあるって言ってたからな。」
「そんな~、、、高ランクってどのぐらいのランクなんだ?」
「詳しいことはギルドに聞いた方がいいだろうよ。だがウォーウルフ相手となっちゃーな。少なくとも【シンカー】以上の冒険者でないとダメなんじゃねぇーかな?」

 冒険者には功績や実力などを考慮しランク分けが施されている。
 ダンジョンへのアタックは冒険者個人による権利となるが、高難度クエストなどはギルドからランク規制することが多く
 その間はダンジョンへのアタックが禁止されることも多い。
 したがって冒険者は更なる名誉のため上位ランクを目指すことを目標に冒険するという者も多い。


「【シンカー】って上級冒険者じゃない!!そんな人じゃないとダンジョンに入れなくなるの?!」
「だから俺にはわからねぇって、、ギルドで聞いてくれよ、、とはいっても今お前らみたいな冒険者でごった返しててとても聞ける様子じゃなかったけどな。」

 男はニアの勢いに押され何も悪いことはしていないのに逃げるようにその場を後にした。
 むーと顔をしかめて難しい顔をするニア。

「まだ規制は張られてないみたいだしギルドも今聞けるような状況じゃないみたいね。
 私たちも今戻ったところだしアイテムの換金もしたいけど魔石はギルドでしか買取はしてないのよね。とりあえず先にお婆ちゃんに診断してもらうのが先ね。
 今なら職業診断所だわ。でもさすがにそこでゴンちゃんとディアちゃんを出すわけにもいかないし私の家に来なさいよ。どうせ宿も取ってないんでしょ。家でお婆ちゃんを待ちましょ。」
「えっ……ニアの家……」

 突然のニアの誘いに一瞬頭が真っ白になるアレン。
 たしかに1度来たことはあるのだが、こう真正面から誘われると……
 もじもじとニアの顔を見るアレン。

「なに?あたしの顔になんかついてる?」
「へっ!いや……なにも……それじゃあお言葉に甘えて。」
「へんなの?あーほんとに疲れた。早くお風呂に入りたーい。体べとべと。」
「べとべと……」

 疲れたーと、腕を伸ばし大きく伸びをするニア。
 細く引き締まった体のライン弓なりに反り形のいいふくらみを前に押し出すような姿勢をとる。。
 ニアは体は細いのだが出るところはしっかり出ており年齢よりもずっと大人っぽく見えアレンと同じ年には見えない雰囲気がある。
 さっきまで真っ白だった頭の中はすでにまっピンクに染まっていた。

「アレン、ゴンちゃんとディアちゃんも一緒にお風呂に入れるから魔晶石から出して。」

 当たり前のように言うニアにアレンは「一緒に!!」と声を荒げる。

「なによ? ダンジョンで汚れてるだろうから体を洗ってあげようってだけじゃない。早くしてよ。」

 タオルなどを用意しながらニアはいそいそとお風呂の支度をしている。
 アレンはニアの言うとうりに2匹を魔晶石から出す。

「私はあまり水浴びの習慣などないので気は進まんが……」
「ダメよ! ディアちゃん! 体もドロドロだしちゃんときれいにしないと!!」
「むぅ~ワフ……」

 ニアの強い口調に仕方ないと犬のように鳴くディアドラ。
 なぜ嫌がる? 俺と変わってくれ。アレンはディアドラを横目でにらむ。
 ゴンゾウは相変わらず何がうれしいのか部屋を飛び跳ねている。

 そのままトボトボとニアの後ろをついていくディアドラ。
 アレンはしれっとディアドラの後ろについていきお風呂場の脱衣所の扉の前までついてきたところでニアに バタン!!  と強めに扉を閉められてしまった。

 なんだか自分が恥ずかしくなったアレンだった。

 じきにお風呂場でキャッキャという声が聞こえてきた。
 もちろんアレンは急いで外に出て家の裏手に回った。
 アレンは知っていた。
 風呂場に小窓があることを。

 ニアの家の裏は丘になっていて傾斜があり木や草も生い茂っている。
 逆にその環境が覗きという行為を隠してくれる効果がある。
 アレンは草を分け 木を潜り 手入れのされていない裏庭を進んでいく。

 あった!!

 小窓は家の屋根の下の位置についており手を伸ばしても届かないくらい。
 アレンは家から持ってきた椅子を全くの無表情で小窓の下に置きその上に乗る。

「はぁはぁ これが本当の はぁはぁ なのか。ん? 俺は今何を言っているんだ。」

 興奮でわけがわからなくなっているアレンだが目の前に餌をつられりゃ誰だって。

 小窓からはモアモアと白い湯気が出てきている。

「あの湯気はニアが通り過ぎた湯気!!」

 くんかくんか と鼻をピクピクさせながら湯気をありがたく吸い込むアレン。
 もちろんこれで満足するわけではない。

「前菜は終わりだ。メインディシュは早めにいただくタイプなんだぜ俺は。」

 全くもって意味のわからない言葉を発しながらアレンは風呂場の小窓を覗くのだった。

 お湯から出る湯気によって視界は悪かったがある程度見えなくもない。

 うっすらと湯気の隙間からディアドラの体を洗っているニアの姿が見えてきた。

 おぉぉぉぉ!!!

 危なく声に出しそうになった心の声をかみ殺す。
 白く透き通った滑らかな肌が確認できる。
 ニアは石鹸でワシャワシャとディアドラの体毛を泡立てておりその泡に隠れて腕を動かすたび揺れる程よく大きな二つのふくらみがあった。

「くそ、ディアドラじゃまだ。湯気でよく見えない。」

 アレンはそのまんまスケベな顔で小窓に食い込むほど顔を押し付けている。もはや窓になっている。

 異変に気付いたのはディアドラだった。すぐにゴンゾウも気づき現状を理解した。

「やれやれ、困った主だ。」

 はぁ~とため息を吐きながらげんなりするディアドラ。

「なに? どうしたの?」

 ニアの不思議そうな顔をよそにディアドラはやれやれという顔で

「女よ。すまんな。主の願いとあらば断れん。」

 ディアドラはそういうとゴロンと床に仰向けに寝転び体をクネクネさせた。

「ちょっとディアちゃん?何してるの!まだ洗い終わってないわよ!」

 ? な顔をするニア。
 アレンは「もうちょっとなのに!」とニアの体を見るのに必死で中のやりとりなど聞こえていない。

 仰向けになったディアドラは大きく息をすきこみその息をそっと吐き出した。
 ディアドラ自身は そっと はいたのだがそれは強烈な風を巻き起こし風呂場の中を駆け回る。

「きゃぁぁ!! なんなのいったい?!」

 泡と湯気が入交る空気は強烈な風からの逃げ場を求めてアレンの覗いている小窓から一気に噴き出した。

「おぶぶぶおぶぶぶぶ……」

 湯気と泡を同時に浴びながら怯むアレン。
 再び覗き込むと風が収まり次第に湯気が晴れていっている。

 さっぱりと湯気が晴れきったその先にはディアドラが仰向けになり股を開き渋い声でアレンに

「主よ。これが見たかったのだろう。」
「なわけあるか!!! てめぇオスだろうが!!!!」

 激しい突込みが風呂場にこだました。

「あっ……」

 アレンの方を見てあっけにとられるニア。
 あまりにも驚いたニアは自分の体を隠そうともせずただただポカーンとしている。
 その一糸まとわぬ姿にアレンは目玉が飛び出て舌がグルグルにねじれて飛び出た。

 それにしても何とも美しい体だ。
 水をピチピチにはじいている健康的な肌。
 スレンダーだがさすが冒険者というべき鍛えられた身体。
 重力をものともしない斜め45度に持ち上がったお尻。
 そしてその豊かで寄せなくても自然と谷間ができる文化遺産に登録すべき丘が二つあった。

 もっと小窓に張り付いて覗き込みたいのだがアレンの股間がズボン越しに壁に突き刺さりこれ以上近づくことが出来なくなっていた。
 バキバキのギンギンなそれは今にも壁を突き破りそうだ。

 アレンは満足した笑顔でにっこりとニアに会釈をしてそのまま小窓から消えていった。

「ねぇ、今そこの窓に誰かいた,,,,?」

 誰に尋ねるでもなく独り言のようにつぶやくニア。
 股を広げ鼻の先に泡をつけたディアドラが渋く答えた。

「いや、なにも……」

 風呂場から出たニアが一直線にアレンをボコボコにしたのは言うまでもない。
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