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支度

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 スライムを魔晶石に入れ街へ出たアレンとニア。
 前回のクエストで不思議キノコを採取していたアレンだが途中で野犬に襲われ失敗したかと思っていた。

「しかしお前が不思議キノコを大量に集めてくれてたとはな。」

 アレンはスライムの入っている魔晶石に声をかける。
 スライムがアレンのもとを離れているとき、探していた不思議キノコを前の薬草と同じで大量に集めていたのだ。
 さすが【採取】のスキル。アレンは少しうらやましく思う。

「おかげでクエスト依頼料と余った不思議キノコを売って、12万ゴールドにもなったんだぜ。」

 とはいえほくほく顔のアレンにニアは

「あんた本当にこの子がいないと何の役にも立たないのね。」

 と皮肉を言う。
 確かに野犬に襲われた所を助けてもらい不思議キノコまで集めてもらった。
 今回のクエストでアレンは何をやったというのだろう。
 言い返せないアレンは ブスー とほほを膨らませいつか言い返してやると心に決めるのだった。

「しかし魔晶石をそんな風に使う人がいるなんてね。」

 ニアは魔晶石にスライムを入れていることに感心している。

「ほんとたまたまだったけどな。思いつたからやってみようてな感じでさ。」
「ほんと、バカなのかすごいのか、紙一重ね。」

 やれやれと両手を挙げて首を振る。

「とはいえ、新しいモンスターを仲間に入れるには新しい魔晶石が必要ね。
 おそらく生きてるモンスターを2匹も入れるのはモンスターの環境的にもよくないでしょうし。」
「あぁそうだな。それと装備品、あと食料と。とりあえずは浅い階層でもいいから力を試してみたい。」
「あの子のね。」

 そういうニアにさっきまでの俺への評価は何だったんだ。
 そんな思いを胸にしまい、二人は武器屋にたどり着いた。

「へいらっしゃい!!」

 元気な挨拶に面食らうアレン。

「こんにちは。おじさん。」
「あーニアちゃん。おはよう。今日はデートかい?」
「そ、そんなんじゃないわよ!!」

 急いで否定するニア。そんなに否定しなくてもと思うアレン。

「武器を探してるの。この人のじゃないんだけど。
 もっと小さい子なんだけど。」
「小さい?子供かい?子供に武器は売りづらいな、、」
「子供じゃないの?なんて言えばいいのかな、、?」
「女性の冒険者かい?ならちゃんとサイズ合わせた方がいいと思うけどなー」

 渋る店主を横目にアレンは一つの短剣が目に入った。

「おっちゃん、これ、、」

 手に取るアレン。

「あーそれか、刀っていうんだとよ。東洋のどっかにある島の剣みたいなんだけどよ。」

 アレンから刀を取り鞘から刃の部分を抜く。
 美しく反り返る片刃の部分は白く彩られている。

「脇差っていうみたいでよ。予備のナイフみたいなもんだったらしい。
 でもナイフとしては使いにくいしメインの剣としては少し短いんだよな。若干反り返ってるのも使いにくそうって
 不評でよ。ずっと売れ残ってる始末よ。」

 困った顔でそういう店主。

「だが切れ味は保証するぜ。こいつは雷切っていう品でよ。
 かつて雷さえも切ったって言われる伝説の剣のシリーズらしいんだ。」

 濃い顔がさらに濃くなる。
 たじろぐニアだがアレンは

「おっちゃん、これにするよ。」

 と雷切を指さし答える。

「あんたバカなの?!こんな剣いきなり使えるわけないでしょ。それにもっと小さなものじゃないと扱えるわけないじゃない。」

 アレンの暴走に割って入る ニアだったが

「いや、こいつがこれがいいって言ってんだ。」

 アレンは魔晶石を見ながら答える。
 ニアはその姿に

「ん~もう!勝手にすれば!!」

 と何を言っても聞かないだろうアレンの表情に言うのをあきらめてしまった。

「あいよ。この刀、料金は200万ゴールド」
「200万ゴールド!!!!!」

 二人して声を上げてしまったが、そもそも剣の相場とは
 安物の剣で1万ゴールドくらいから販売しているがなかなかのものを手に入れようと思ったら5万ゴールドから10万ゴールドは見ておかないといけない。
 上物になると10万ゴールドから100万ゴールドくらいの幅が出るだろう。
 最上物となると値段は青天井だ。
 何億ゴールドで取引される剣も珍しくはない。

 店主の話が本当ならこれは最上物の剣であろう。その料金が200万ならまだ安い方なのだ。
 店主はオロオロする二人にいたずらな笑みを浮かべ

「だったらいいんだが俺もこれが本物だとは思ってねぇ。
 だが上物には間違いねぇ。刃を見ればわかる。
 だから10万ゴールドでどうだ。必ず損はさせせねぇよ。」

 その言葉を聞きアレンはこれがいいんだよな。と魔晶石に語りかける。
 魔晶石からの返事はこの二つ返事だった。

「買った!!」

 アレンは声高に店主に言った。

 やれやれと頭を抱えるニア。
 この二人の旅、前途多難だ。


 ーーーーーーー


「どうするのよ!!あと2万ゴールドしかないわよ」

 アレンは買った刀を早くスライムに見せてあげたくてうずうずしている。

「あいつも早く触りたいんだろうな。なんたって初めて買った武器だしな。」
「食料とかどうするの?2万じゃ十分な量変えないわよ。あんた魔晶石も買うんでしょ。もうお金ほとんど残ってないじゃない!!」
「そういえば、、」

 間抜けな答えにローキックを打ち込むニア。

「まぁ買えるだけ買ってさ。もし足りなくなったらダンジョンで調達しよう。」

 その言葉にニアはギョッという顔をする。

「あんたまさか、、ダンジョンのものを食べようとしてる、、、」
「ん?あぁそうだけど。だって深層目指す冒険者はみんな中で食料を調達するんだぜ。」
「それはそうだけど、あんたダンジョンの食用知識あるの?もし毒入りなんて食べたら一発でアウトなんだからね!!」
「あ!そうか!なら食用図鑑を買えばいいんだ。なんで思いつかなかったんだろう。ありがとうニア。」

 すっとぼけた答えをされニアは

「勝手にしなさいよ!!私は自分の食料だけ買うからね!!」

 きつめの返事ももはや耳には入らず小さいころから記憶している地図でどこに本屋があるのかわかっているアレンは
 ニアを置いて先に歩いていってしまう。

「ちょっと待ちなさいよ。おいてかないでよ。」

 と先行くアレンをニアも追いかけた

 買い出しも終え帰ってきた二人。
 とりあえず今日は準備の日だ。
 宿に戻った二人は明日必要なものを確認し魔晶石に詰めていく。

 スライムは今日買ってもらった雷切で遊んでいる。
 自分の体長より長い刀に遊ばれているようで全く使いこなせていない。
 それでも楽しそうに遊んでいる。

 その隣でルンルンと道具をまとめているアレンを見た。

 こいつ、間違いない。食料を最低限しかもっていかないつもりだ。
 フライパンとか調味料とかも魔晶石に詰めているのを見た。
 何ということだ、、、

 もしものためにアレンの分も食料を多めに持って行かなくてはと思うニアであった。
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