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真実の姿
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「全く人騒がせな奴じゃ。」
アレンの頭を思いっきり杖で殴っておいての言葉とは思えない。
「で、いったい何なんじゃ。わしに用とは。」
こういう所は孫とそっくりだとアレンは思う。
「まさかニアとこの婆さんの血が繋がっているなんて、、、」
アレンは驚き、目を見開いている。
彼女はカレン。アレンを職業診断所で無能と診断した因縁の相手。
とはいえカレンはアレン本来の適性を占ったに過ぎないので何も悪くないのだが。
「お婆ちゃん、相談っていうのはこのスライムの事なの。」
ニアはスライムのヒールについて話はじめる。
「やはりそうか、なにかスキルがないとあの数の野犬相手にスライム1匹ではどうしようもないと思っておった。」
「わかっていたの?」
「わかっていたわけではないよ。ただ普通のスライムではないなと思ってはおった。」
再びアレンの頭の上でくつろぐスライムを顔を近づけて見ながら感心深くうなずくカレン。
顔のドアップをお見舞いされ整理的に嗚咽しそうになるアレン。
アレンのその様子にカレンは
「まったく失礼な奴じゃ。まぁよい、そのスライムをわしの部屋まで連れてきてくれ。」
アレンを睨んだカレンだがすぐにニアにそう指示する。
「なにをするんだ?」
まだカレンを完全に信用していないアレンは不信感のある目をカレンに向ける。
「全く本当に失敬なガキじゃ。礼儀というものがわかっとらん。
占ってやると言っておるんじゃ。そのスライムをな!!」
はやくせい。とカレンはすたこら部屋へ先に行ってしまった。
疑ってしまい悪いことをしたと思うアレンに
「気にしなくていいわ。あっちも気にしてないでしょうし。
いいおばあちゃんでしょ。」
そういうニアに
「いいおばあちゃんだな。」
そう返すアレンだった。
部屋に行くとカレンが水晶のある部屋でスライムを待っていた。
「モンスターでも占えるのか?」
「知らん。やったことはない。だが要領は同じじゃと思うわい。」
ニアはスライムをアレンの頭から持ち上げ水晶の前に置いた。
「キュイ。」
何かが始まると思いワクワクしているスライム。
カレンは水晶を掌でなでながら詠唱を始めた。
「空は赤、大地に芽吹き、風に移ろい、雨に流れる。
大地に御心よ、このスライムの真の姿を映しだもれー」
スライムの体が光に包まれ、その光はすぐに収まった。
カレンが紙に光った指で文字を映し出す。
書き終わったようでカレンがその紙を注視している。
「これは、、、」
目を見開くカレン、一同も横からそれを覗く。
☆ーーーーーーーーー
スライム
マスター : アレン
◆ステータス
Lv.6
力 21
体力 16
防御 19
素早さ 16
魔力 31
魔法防御 26
◆スキル
全武器,防具装備可能
黒魔法 Lv2
白魔法 Lv3
打撃耐性 Lv.3
自動修復 Lv.2
採取 Lv.15
人語理解
◆ユニークスキル
・絶対の忠誠
マスターへの忠誠が高いほどステータスが飛躍的に上昇する。
☆ーーーーーーーーーー
「なんだこりゃ。」
「こりゃたまげたわい。」
「うそ、これがスライム?!」
アレンは心の中でつぶやきまくる。
なんだよこれ。Lv.6でこのステータスはすごくはない。職業のボーナスもないから。
問題はスキルだ。この全武器,防具装備可能はスキル図鑑にも乗ってる。
どんな装備も装備可能、もちろんステータス制限はあるから現時点ではたいして役に立つスキルとは思えないけど
ステータスが上がるにつれて聖剣や神具も装備できるようになる上級者用のスキルだ。
スライムなので身体的に使えない武器も多くなってくるだろうけどこれはとんでもないスキルだ。
あと白魔法はわかる。実際ヒールを見ているのだから、しかし黒魔法とはなんだ?
こいつもしかして攻撃魔法まで唱えれるのか?だとしたら何が使えるんだ。気になる。
打撃耐性はこういう液状モンスターが比較的持っていることの多いスキルって聞くけど自己修復はダメだろ。
これボス級のモンスターしか持ってない能力なのに。
地味に採取のスキルが高い。だから俺じゃ見つけられない素材をいとも簡単に見つけてきたのか。
そして
「ユニークスキル、、、」
・絶対の忠誠
マスターへの忠誠が高いほどステータスが飛躍的に上昇する。
このマスターという表記、ステータス画面にも出ている
マスター : アレン
という文字。
「これって、、、」
ニアはこの不思議なユニークスキルの可能性を考え鼓動が早くなった。
「おいガキよ。すぐに座りなされ。おぬしも占わなければならん。」
カレンは少し興奮気味に話す。
「俺、、何なんだこれ、、、」
少し不安そうな表情のアレンにカレンは
「これだからこの仕事はやめられん。」
そう独り言のようにつぶやき急いでアレンを占う。
カレンも答えを知りたくてたまらないのだ。
アレンの体が光に包まれスライムの時と同じ工程を進める。
映し出された紙にアレンのステータスが映し出された。
☆ーーーーーーーーー
アレン
職業 : 魔物使い
◆ステータス
Lv.1
力 10
体力 9
防御 8
素早さ 9
魔力 14
魔法防御 12
◆スキル
魔を統べるもの
自身の心が届いたとき魔物に スキル:絶対の忠誠 を授けることができる。
◆ユニークスキル
・絶対者への資格
レベルアップにより自身のステータスが上がることはない。
そのかわりに自身のステータスは絶対の忠誠を付与したモンスターのステータスを一部引き継ぐ。
・王の所有物
絶対の忠誠を与えた魔物のスキルを自らも使用できる。
同時使用の場合は制限を超えて使用はできない。
☆ーーーーーーーーーー
「スキルが増えてる、、、ステータスが、、、」
「やはり覚醒条件か、、ここに出ている魔物とはモンスターの事じゃ。まさかこんなところで新種の職業に出会うとは。」
「そういえばアレンは、、わたしギルドの受付で何回も確認したけど料理人じゃ、、」
「天職じゃ。」
「天職、、、?どういう意味だ?」
「例えば勇者は勇者でしかない。戦士になろうと魔法使いになろうとそれは変わらん。
なろうと思ってなれるものではないのと同じことじゃ。まれに天職というものを持っているものが存在する。生まれたときから持ってるものもいれば
おぬしのように何かのきっかけで目覚めるものもいる。」
「俺の天職、、魔物使い、、」
「しかしモンスターを手なずけられる職業とは、、、恐れ入った。」
カレンはいいものを見せてもらったと言わんばかりに満足そうな顔をしている。
アレンは自分の手をしげしげと見る。
「俺、冒険者になれるのか?薬草摘みとかキノコ狩りじゃなくて。冒険できるのか?」
「知らん。それはわしの知るところではない。しかし、、」
カレンは少し考えたそぶりを見せこう答えた。
「そのスライムが強くなればなるほど、はたまた他にも複数モンスターを仲間に入れることが本当に可能なのであれば、おぬしは無限に強くなれるということじゃ。」
カレンのその言葉の意味の大きさにアレンもニアも言葉を失う。
スライムは不思議そうに一同の顔を見渡す。
人の言葉は理解できても内容まではまだ理解できないようだ。
しかしカレンはこの先待つであろう少年の困難を想像し、つくづく神とは悪戯なものだと嘆げいていた。
ーーーーーーーー
「これからおぬしが冒険から戻るたび、新たな仲間と出会うたびにわしのところへ来るのじゃ。
おぬしはほかの冒険者とは違う。自身の力の上昇を実感できん。それは即、死につながる危険なことじゃ。」
カレンは心配そうにアレンを見る。
「あぁ、わかってる。俺はダンジョンに入れるだけでもうれしいんだ。」
アレンはやっと自分の命を賭けた、すべてを賭けた冒険に出られることがうれしくてたまらない。
その姿を見てカレンは、今はこの喜びを祝福しようと説教をするのはあきらめた。
そんな時、横でただ聞いていたニアが小さな椅子から立ち上がり
「アレン。私もあなたと行くわ。」
「へ?」
「キュピ?」
突然のニアの宣言に間抜けな声を出してしまう。
「だって今日の出来事、すごいことよ。
新しい職業が発見されたんだもの。
それに私だって冒険者、ダンジョンの深層に何があるか見てみたいわ。」
深層とはダンジョンで人類が未だ到達していない階層の事。
具体的に何階というものではなく日々それは更新されている。
「はぁ?でもニア、お前は俺よりずっと強いし、第一ギルドの仕事はどうするんだよ。」
困るアレンにニアは
「今辞めるわ。もともとバイト感覚だったし。つまらないの、あの仕事。」
確かにニアのあの仕事ぶりと態度を見て、今のニアを知っているからこそわかるのだが、とても楽しそうには見えないとアレンは思った。
「それに、私わかるの。あなたはたぶん偉大な冒険者になるわ。」
「なに言ってんだよ、、こんなスキルじゃまだ何とも言えないだろ。実際ステータスは低いんだし。」
「ステータスの話じゃない。」
まっすぐニアはアレンを見つめる。
「だってあなた冒険をしたくてたまらない顔してるわ。
野心でもない、自尊心でもない、もちろんお金のためでもない、あなたは冒険がしたいのよ。」
ニアは 私と一緒。 と付け加えて腰に手を当てアレンにウインクする。
その姿は冒険者になってからずっと自分を恥じてきたアレンにとって、まるで女神のように映った。
「綺麗だ、、、」
あまりの美しさについ思っていることが言葉に出るアレン。
その言葉を聞きニアは顔を真っ赤にして言い返す。
「ちょっ、、アレン!!何言ってるのよ!!別にあんたの事なんて何とも思ってないんだからね!!あたしはただあんたとなら
ダンジョンの深層にたどり着けるんじゃないかって思ってるだけなんだからね!!」
慌てふためくニアにアレンもやっと自分が何を言っているのか理解して ごめん、、 と小さく謝罪した。
その言葉を聞きさらに顔を赤めるニアにカレンが
「若いのぉー。ほんにわしと爺さんの若いころにそっくりじゃ。」
ふぉふぉふぉっと高笑いながらカレンはお茶をすする。
げぇ!!とした顔でニアとカレンを交互に見るアレン。
ニアもいつかああなるのか?
そう思うと背筋がぶるっと震えた。
このことは考えないでおこう。
そう思うアレンだった。
「おばあちゃん、いいでしょ。アレンと行っても。」
「お前はもう冒険者じゃ。わしがお前の道を決めるようなことはあってはならん。
自分の道は自分で決めなされ。」
「おばあちゃん,,,」
カレンは最後にとニアに耳を貸せと手招きをする。
ニアは なに? とカレンの口元に耳を持って行った。
「小僧は死んだ爺さんにそっくりじゃ。待っておっても事は進まんぞ。押して押して押しまくるんじゃ。」
カレンの言葉に ボン っと頭から煙を出したニアは顔を真っ赤にしながらもカレンの目を見て コクコク と頷いた。
「お前の事なら何でもわかるよ。あぁかわいいニアよ。行っておいで。
世界は広い。体いっぱいそれを感じておいで。」
カレンは細い腕でニアを抱きしめる。
その胸からあふれて零れ落ちてしまうかのような大きな愛にニアは
「はい!行ってきます!」
と目に涙を浮かべ、年相応な少女の笑顔で答えた。
アレンの頭を思いっきり杖で殴っておいての言葉とは思えない。
「で、いったい何なんじゃ。わしに用とは。」
こういう所は孫とそっくりだとアレンは思う。
「まさかニアとこの婆さんの血が繋がっているなんて、、、」
アレンは驚き、目を見開いている。
彼女はカレン。アレンを職業診断所で無能と診断した因縁の相手。
とはいえカレンはアレン本来の適性を占ったに過ぎないので何も悪くないのだが。
「お婆ちゃん、相談っていうのはこのスライムの事なの。」
ニアはスライムのヒールについて話はじめる。
「やはりそうか、なにかスキルがないとあの数の野犬相手にスライム1匹ではどうしようもないと思っておった。」
「わかっていたの?」
「わかっていたわけではないよ。ただ普通のスライムではないなと思ってはおった。」
再びアレンの頭の上でくつろぐスライムを顔を近づけて見ながら感心深くうなずくカレン。
顔のドアップをお見舞いされ整理的に嗚咽しそうになるアレン。
アレンのその様子にカレンは
「まったく失礼な奴じゃ。まぁよい、そのスライムをわしの部屋まで連れてきてくれ。」
アレンを睨んだカレンだがすぐにニアにそう指示する。
「なにをするんだ?」
まだカレンを完全に信用していないアレンは不信感のある目をカレンに向ける。
「全く本当に失敬なガキじゃ。礼儀というものがわかっとらん。
占ってやると言っておるんじゃ。そのスライムをな!!」
はやくせい。とカレンはすたこら部屋へ先に行ってしまった。
疑ってしまい悪いことをしたと思うアレンに
「気にしなくていいわ。あっちも気にしてないでしょうし。
いいおばあちゃんでしょ。」
そういうニアに
「いいおばあちゃんだな。」
そう返すアレンだった。
部屋に行くとカレンが水晶のある部屋でスライムを待っていた。
「モンスターでも占えるのか?」
「知らん。やったことはない。だが要領は同じじゃと思うわい。」
ニアはスライムをアレンの頭から持ち上げ水晶の前に置いた。
「キュイ。」
何かが始まると思いワクワクしているスライム。
カレンは水晶を掌でなでながら詠唱を始めた。
「空は赤、大地に芽吹き、風に移ろい、雨に流れる。
大地に御心よ、このスライムの真の姿を映しだもれー」
スライムの体が光に包まれ、その光はすぐに収まった。
カレンが紙に光った指で文字を映し出す。
書き終わったようでカレンがその紙を注視している。
「これは、、、」
目を見開くカレン、一同も横からそれを覗く。
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スライム
マスター : アレン
◆ステータス
Lv.6
力 21
体力 16
防御 19
素早さ 16
魔力 31
魔法防御 26
◆スキル
全武器,防具装備可能
黒魔法 Lv2
白魔法 Lv3
打撃耐性 Lv.3
自動修復 Lv.2
採取 Lv.15
人語理解
◆ユニークスキル
・絶対の忠誠
マスターへの忠誠が高いほどステータスが飛躍的に上昇する。
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「なんだこりゃ。」
「こりゃたまげたわい。」
「うそ、これがスライム?!」
アレンは心の中でつぶやきまくる。
なんだよこれ。Lv.6でこのステータスはすごくはない。職業のボーナスもないから。
問題はスキルだ。この全武器,防具装備可能はスキル図鑑にも乗ってる。
どんな装備も装備可能、もちろんステータス制限はあるから現時点ではたいして役に立つスキルとは思えないけど
ステータスが上がるにつれて聖剣や神具も装備できるようになる上級者用のスキルだ。
スライムなので身体的に使えない武器も多くなってくるだろうけどこれはとんでもないスキルだ。
あと白魔法はわかる。実際ヒールを見ているのだから、しかし黒魔法とはなんだ?
こいつもしかして攻撃魔法まで唱えれるのか?だとしたら何が使えるんだ。気になる。
打撃耐性はこういう液状モンスターが比較的持っていることの多いスキルって聞くけど自己修復はダメだろ。
これボス級のモンスターしか持ってない能力なのに。
地味に採取のスキルが高い。だから俺じゃ見つけられない素材をいとも簡単に見つけてきたのか。
そして
「ユニークスキル、、、」
・絶対の忠誠
マスターへの忠誠が高いほどステータスが飛躍的に上昇する。
このマスターという表記、ステータス画面にも出ている
マスター : アレン
という文字。
「これって、、、」
ニアはこの不思議なユニークスキルの可能性を考え鼓動が早くなった。
「おいガキよ。すぐに座りなされ。おぬしも占わなければならん。」
カレンは少し興奮気味に話す。
「俺、、何なんだこれ、、、」
少し不安そうな表情のアレンにカレンは
「これだからこの仕事はやめられん。」
そう独り言のようにつぶやき急いでアレンを占う。
カレンも答えを知りたくてたまらないのだ。
アレンの体が光に包まれスライムの時と同じ工程を進める。
映し出された紙にアレンのステータスが映し出された。
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アレン
職業 : 魔物使い
◆ステータス
Lv.1
力 10
体力 9
防御 8
素早さ 9
魔力 14
魔法防御 12
◆スキル
魔を統べるもの
自身の心が届いたとき魔物に スキル:絶対の忠誠 を授けることができる。
◆ユニークスキル
・絶対者への資格
レベルアップにより自身のステータスが上がることはない。
そのかわりに自身のステータスは絶対の忠誠を付与したモンスターのステータスを一部引き継ぐ。
・王の所有物
絶対の忠誠を与えた魔物のスキルを自らも使用できる。
同時使用の場合は制限を超えて使用はできない。
☆ーーーーーーーーーー
「スキルが増えてる、、、ステータスが、、、」
「やはり覚醒条件か、、ここに出ている魔物とはモンスターの事じゃ。まさかこんなところで新種の職業に出会うとは。」
「そういえばアレンは、、わたしギルドの受付で何回も確認したけど料理人じゃ、、」
「天職じゃ。」
「天職、、、?どういう意味だ?」
「例えば勇者は勇者でしかない。戦士になろうと魔法使いになろうとそれは変わらん。
なろうと思ってなれるものではないのと同じことじゃ。まれに天職というものを持っているものが存在する。生まれたときから持ってるものもいれば
おぬしのように何かのきっかけで目覚めるものもいる。」
「俺の天職、、魔物使い、、」
「しかしモンスターを手なずけられる職業とは、、、恐れ入った。」
カレンはいいものを見せてもらったと言わんばかりに満足そうな顔をしている。
アレンは自分の手をしげしげと見る。
「俺、冒険者になれるのか?薬草摘みとかキノコ狩りじゃなくて。冒険できるのか?」
「知らん。それはわしの知るところではない。しかし、、」
カレンは少し考えたそぶりを見せこう答えた。
「そのスライムが強くなればなるほど、はたまた他にも複数モンスターを仲間に入れることが本当に可能なのであれば、おぬしは無限に強くなれるということじゃ。」
カレンのその言葉の意味の大きさにアレンもニアも言葉を失う。
スライムは不思議そうに一同の顔を見渡す。
人の言葉は理解できても内容まではまだ理解できないようだ。
しかしカレンはこの先待つであろう少年の困難を想像し、つくづく神とは悪戯なものだと嘆げいていた。
ーーーーーーーー
「これからおぬしが冒険から戻るたび、新たな仲間と出会うたびにわしのところへ来るのじゃ。
おぬしはほかの冒険者とは違う。自身の力の上昇を実感できん。それは即、死につながる危険なことじゃ。」
カレンは心配そうにアレンを見る。
「あぁ、わかってる。俺はダンジョンに入れるだけでもうれしいんだ。」
アレンはやっと自分の命を賭けた、すべてを賭けた冒険に出られることがうれしくてたまらない。
その姿を見てカレンは、今はこの喜びを祝福しようと説教をするのはあきらめた。
そんな時、横でただ聞いていたニアが小さな椅子から立ち上がり
「アレン。私もあなたと行くわ。」
「へ?」
「キュピ?」
突然のニアの宣言に間抜けな声を出してしまう。
「だって今日の出来事、すごいことよ。
新しい職業が発見されたんだもの。
それに私だって冒険者、ダンジョンの深層に何があるか見てみたいわ。」
深層とはダンジョンで人類が未だ到達していない階層の事。
具体的に何階というものではなく日々それは更新されている。
「はぁ?でもニア、お前は俺よりずっと強いし、第一ギルドの仕事はどうするんだよ。」
困るアレンにニアは
「今辞めるわ。もともとバイト感覚だったし。つまらないの、あの仕事。」
確かにニアのあの仕事ぶりと態度を見て、今のニアを知っているからこそわかるのだが、とても楽しそうには見えないとアレンは思った。
「それに、私わかるの。あなたはたぶん偉大な冒険者になるわ。」
「なに言ってんだよ、、こんなスキルじゃまだ何とも言えないだろ。実際ステータスは低いんだし。」
「ステータスの話じゃない。」
まっすぐニアはアレンを見つめる。
「だってあなた冒険をしたくてたまらない顔してるわ。
野心でもない、自尊心でもない、もちろんお金のためでもない、あなたは冒険がしたいのよ。」
ニアは 私と一緒。 と付け加えて腰に手を当てアレンにウインクする。
その姿は冒険者になってからずっと自分を恥じてきたアレンにとって、まるで女神のように映った。
「綺麗だ、、、」
あまりの美しさについ思っていることが言葉に出るアレン。
その言葉を聞きニアは顔を真っ赤にして言い返す。
「ちょっ、、アレン!!何言ってるのよ!!別にあんたの事なんて何とも思ってないんだからね!!あたしはただあんたとなら
ダンジョンの深層にたどり着けるんじゃないかって思ってるだけなんだからね!!」
慌てふためくニアにアレンもやっと自分が何を言っているのか理解して ごめん、、 と小さく謝罪した。
その言葉を聞きさらに顔を赤めるニアにカレンが
「若いのぉー。ほんにわしと爺さんの若いころにそっくりじゃ。」
ふぉふぉふぉっと高笑いながらカレンはお茶をすする。
げぇ!!とした顔でニアとカレンを交互に見るアレン。
ニアもいつかああなるのか?
そう思うと背筋がぶるっと震えた。
このことは考えないでおこう。
そう思うアレンだった。
「おばあちゃん、いいでしょ。アレンと行っても。」
「お前はもう冒険者じゃ。わしがお前の道を決めるようなことはあってはならん。
自分の道は自分で決めなされ。」
「おばあちゃん,,,」
カレンは最後にとニアに耳を貸せと手招きをする。
ニアは なに? とカレンの口元に耳を持って行った。
「小僧は死んだ爺さんにそっくりじゃ。待っておっても事は進まんぞ。押して押して押しまくるんじゃ。」
カレンの言葉に ボン っと頭から煙を出したニアは顔を真っ赤にしながらもカレンの目を見て コクコク と頷いた。
「お前の事なら何でもわかるよ。あぁかわいいニアよ。行っておいで。
世界は広い。体いっぱいそれを感じておいで。」
カレンは細い腕でニアを抱きしめる。
その胸からあふれて零れ落ちてしまうかのような大きな愛にニアは
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