ダンジョンはモンスターでいっぱい!! ~スライムと成り上がる最弱冒険者の物語〜

なか

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魔晶石

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 アレンは次の日も薬草採取に出かけた。
 今はお金が少しでもほしい。わがままは言ってられない。
 そう思い昨日と同じ場所で採取を始めた。

 昨日と同じいろいろなことが頭をめぐるがそれらを振り払い薬草を集める。
 このクエストも立派なことだと思いたい。誰かの役に立ってる誇れるクエストなのだと思いたい。
 だが黒い自分が出てきて、意味のない、恥だ、とアレンを蔑む。
 またアレンは暗く殻に閉じこもろうとしていた。

 目標の半分くらい採取したときアレンは後ろに何かの気配を感じた。
 余計なことを考え周りに集中していないアレンはそれの接近を最大限まで許してしまった。

「!!!!!」

 ふり返った目の前に何とスライムがいた。
 まぎれもないモンスターだ。
 かなり近い!しまった!!
 この距離で攻撃されては回避はおろかまともに防御すらできない。直撃を食らえば下手したら、、、、
 背筋が凍りつく。
 そしてスライムと見つめあいながら身動きが取れなくなる。

 こんなことだ。仮にダンジョンに入っていてもすぐこんな感じでモンスターにやられて死んでいただろう。
 ここはダンジョンではない、だが気を抜く場面ではなかった。
 そういう所も含めあのカレンという老婆もアレンの資質のなさを言ったのではないか。

 こういうクエストでも勉強になることはたくさんあるな。

 そう思うと少し冷静になった。
 スライムはアレンと見つめあい身動きを取らない。
 不思議に思っていると突然スライムはウネウネと体をうねらせて
 ペッと口のようなところから何かを吐き出した。
 そしてそれはアレンの足元にボトっと落ちた。

 突然の動きに緊張感が最大まで高まったアレンは足元に落ちたものを注視する。

「これは、、」

 よく見るとそれは薬草だった。
 しかもかなりの量の薬草だ。
 しかしなぜスライムが薬草を吐く?

「お前、、、まさか昨日の、、、」

「キュイキュイ」

 嬉しそうに飛び跳ねながらアレンの廻りを飛び跳ねるスライム。

「昨日の恩返しのつもりか?、、冗談はやめてくれよ。
 モンスターが人間に恩返しなんて聞いた事ねぇーよ。」

 事態が呑み込めず混乱するアレンをよそに命の恩人に出会えて大喜びするスライムの姿があった。

 ーーーーーー

 おそらくこのスライムは昨日大けがをしていたスライムだ。
 昨日の薬草で元気に回復している。
 そのことにまずホッとした。

 この薬草は自分を助けてもらった恩返し的な意味なのだろうか?
 それとも自分が集めているのを見てまねしているだけなのだろうか?

 こいつの意図はわからないがこの薬草を合わせれば今回の依頼量は達成しているどころか少しはみ出すくらいだ。
 ひとまずこのスライムはアレンに危害を及ぼす気はないようなのでこの薬草はもらっておくことにした。

 しかしここで深刻な問題が発生したのだ。

「お前のおかげで薬草がたまったのはうれしいけどさー。
 お前を街まで連れて行くわけにはいかないんだよ。」

 そう言って帰ろうとするとスライムが後ろからついてくる。
 さすがにモンスターを街まで連れてきたと分かればただでは済まない。

「どうしたもんかなー。」

 かといってこいつをここで倒すなんてこともちろんできやしない。
 カバンの中に隠すか?
 いや危険すぎる。

 もし見つかったら最悪アレンも死罪である。
 罪状は魔物を街へ誘導し国家の転覆をはかった国家反逆罪といったところか。

 悩むアレン。
 む~と悩んでいたときあるひらめきが頭の中に降ってきた。

「もしかすると、、、」

 アレンはカバンから魔晶石を取り出した。
 魔晶石は冒険者のカバンの役割を果たす。
 他にもモンスター討伐によって発生するモンスターの体や部分的パーツを中に収容できるようになっている結晶石だ。
 しかし魔晶石は大変もろく内側からの衝撃でも簡単に破損してしまう。
 生きているモンスターがを魔晶石に収めてもその凶暴性から中で暴れてしまい、簡単に魔晶石が砕けて中のモンスターが出てきてしまう。

 だがこのおとなしくなったスライムならなんとかできるのではないか。
 この調子だと中で暴れたりもないだろう。
 仮に失敗してもこのスライムが死んでしまったりはないはずだ。

「試してみる価値はありそうだな。」

 そういうとスライムに魔晶石をかがけて念じる。

 すると魔晶石は光だしスライムも光の粒子に変わった。
 それがすごい勢いでバシュっと魔晶石にぶつかったと思えば光は消えスライムもいなくなっていた。

 魔晶石がコロコロと動いている気がするが壊れる気配は今のところない。

 もう一度魔晶石をかざして念じる。
 するとバシュっと光が出てきてスライムが目の前に現れた。

「ピキュピキュ」

 相変わらず元気だ。
 体調面も問題なさそうだ。

「うん。これは使える。何とかできそうだぞお前。」
「ピキュピキュ」

 相変わらず飛び跳ねている。
 しかしこのスライム、一体どういうことなのか。
 アレンのことは襲わないみたいだが果たしてほかの人間だったらどうなのか?
 そもそも人に見せれるものではないので何とも言えないのだが。
 モンスターが人間になついたなんて話は聞いたことがない。

 もちろん考えてもわからなかった
 いろいろ考えているうちに日も暮れてきた。
 その日はとりあえず宿に連れ帰ることにした。
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