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職業診断
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もちろんアレンは職業診断書の場所もわかっている。
何をするところか全くわかっていないが。
「あぁ着いた。ここが職業診断所だ。」
ギルドと比べ少しこじんまりした印象ではあるがそれでも立派な建物には違いなかった。
いつも妄想していた建物とは少し違ったが。
「そういえば、マップリスト。これからよく使うようになるって言ってたな。
まぁそんなことしなくてもわかるんだけど。」
アレンは頭の中でアークグラッドの地図を浮かび上がらせてその地図に職業診断書を書き込んだ。
マップリストとは広大なダンジョンを探索するためにできた魔術の一種。
頭の中に地図を作成し記憶に定着させることができる。
訪れた場所しか記憶できないがほかの人から記憶をもらったり
店で記憶を買ったりとかなり便利で冒険者だけでなく一般の人も良く使用する。
最も簡単な部類の魔術に入るので学校で習得させられる。
白紙の多いアレンのマップリストはこれからどんどん埋まっていくことになるのだろう。
「よし、それじゃあ職業診断と行きますか。」
冒険者になれる年に同じくできるようになる職業診断。というよりこの職業診断がこの年までできないから冒険者になる年齢制限が設けられている。
なんでもあまり幼い時に診断結果を出してもその後の成長で大きく変わってしまうのだ。その変化が顕著に小さくなるのがこの年齢から。
アレンの年になると職業の適性はほとんど変化しない。
職業診断は国から選ばれた職業診断士と呼ばれる優秀な人材が建物の中でこれから冒険者を目指す者たちの職業の適性を占ってくれる。
職業とは人が与えられる世界からの加護である。
人はそれぞれ何かしらの適性を持って生まれてくる。
力自慢なら戦士の適性。
魔力が高ければ魔法使いの適性。
もちろん戦士と魔法使いを修練すれば魔法戦士なんていう職業にもなれる。
それにともない適性値の高い職業の加護をもらうと自らのステータスに大幅なボーナスが割り振られる。
このボーナスは簡単に説明すると例えば戦士なら
まったく戦士の才能のない冒険者と戦士としての才能が豊かな冒険者をステータスで比べてみると。
まったく才能のない冒険者だと戦士のボーナス値を割り振られてもこうなる。
◆才能なし
能力 数値 + ボーナス値 合計能力
力 15 + 2 17
体力 15 + 1 16
防御 15 + 1 16
素早さ 15 + 1 16
魔力 15 + 0 15
魔法防御 15 + 1 16
だが才能ありの場合元の数値が高いのに加えボーナス値も高くなる。
◆才能あり
能力 数値 + ボーナス値 合計能力
力 50 + 20 70
体力 40 + 15 55
防御 40 + 15 55
素早さ 20 + 10 30
魔力 15 + 5 20
魔法防御 30 + 10 40
職業の熟練度が上がれば自然とボーナス値も上昇していく。
これだけ前者と後者ではステータスに開きが出るが実際はこれよりもっと加護によるボーナス値に開きが出る。
加護によるボーナス値の力補正が200なんていう天才もまれに出現するくらいだ。
ステータスがある一定を越えなければ使えない武器や技もあり適性がない職業を選ぶメリットなど全くない。
もちろん職業によってボーナス値も変化するし勇者や賢者などの最上級職のボーナス値など
想像するだけで恐ろしいことになる。
これにより冒険者は自分がなりたい職業ではなく自らの適性に沿った職業を選び上級職へつなげていく。
ゆえにこの職業診断でこれからの冒険者生活の8割は決まってしまうと考えてもおかしくない。
実際の戦闘ではこれに加え職業での経験から獲得する”スキル”、冒険者本人が持ち合わせるユニークスキルというものが複合的に備わる。
例えば戦士のスキルで有名なのが
・【力アップ(大)】
・【剣術修練度アップ】
などがある。
ちなみにスキルのステータスアップは基礎値やボーナスとはまた別枠で付与される。
だが職業からの恩恵で授かったスキルとはいえ同じスキルを習得できるかは自身の才能にゆだねるところが多く、1つしかスキルを習得できない冒険者もいればいくつも所持できるものもいる。
一度覚えたスキルは生涯忘れないので戦士から魔法使いになっても戦士の時のスキルは継続される。
しかし職業の熟練度が上がるにつれて上質なスキルを覚える傾向にあるので基本的には上級職を目指さないものがコロコロ職業を変えるものではない
それとは別にユニークスキルがあり、その名の通り職業で左右されるものではなく冒険者個人についたスキルである。
その内容は様々で冒険者の数だけあるともいわれている。
全く役に立たないスキルもあるが基本的には強力なものが多く、その冒険者の戦闘スタイルを変えるほどの効果があるものも珍しくない。
先天的に初めから持っているものと後天的に習得するものがあるが詳しくはほとんどわかっていない。
こちらも複数個持ってるものもいれば一つもない冒険者も珍しくない。
モンスターもこのスキルを持っていることがある。
かつて大魔導士として名をはせた当時の円卓の騎士の一人だったクラウネリアは【予見】というユニークスキルを持ち合わせていた。
その内容はすさまじくこれから敵が起こす行動が手に取るように分かったという。
これによりすべての行動にカウンタースペルを発動し相手に何もさせず勝利する姿が幾度となく目撃されていたらしい。
このように、ステータスとは重要な数値には変わりないのだが本番の戦闘でステータスに過信してしまうと手痛いしっぺ返しを食らう羽目になる。
ともあれ、まずはこの場所で適性の診断をしてもらい、自らの能力を把握することが冒険者のスタートであるのだ。
「できればソロでの攻略も楽になる戦士系がいいな。剣を華麗に扱ってさー。前線に立ってバタバタ敵をなぎ倒して。でももし魔力適性があるのなら攻撃魔法特化型の魔法使いとかもかっこいいよなー。
極大呪文を詠唱する!!みんな時間を稼いでくれ!!」
「でもあれは、、威力が大きすぎてあなたの体が!!」
「わかってくれ。みんなを救う方法はこれしかないんだ......」
「そんな!!あなたを愛してるの!!」
「俺も、、あ、、あい、、、あいし、、」
ぐへへへへと下品な笑みを浮かべながら職業診断所の前で一人妄想するアレン。
よく見るとアレン以外にも建物の前でにやける少年が複数。
これはアークグラッド名物、「ひとときの勇者」という光景らしい。
ルーキーとは夢を見るものだ。
さておき夢から覚めたアレンは気持ちを切り替え中に入る。
まずはここで激レアスキルを診断してもらわないといけない。
生半可な気持ちではいけないのだ。
しっかりと大地を踏みしめ1歩1歩アレンは職業診断所に向かう。
中に入ると少し薄暗くお香の香りが、そこかしこに漂っていた。
アレンの身長と同じくらいの仕切りでいくつか部屋を仕切っていて1部屋ごとに1人診断していくみたいだ。
一人入るとカーテンを閉められ、中の様子は伺えない。
人生を決める一大イベントの場所がこんな質素な作りに少しがっかりしたが すぐ気を取り直して列に並ぶ。
順番はすぐに回ってきた。
出てきた人と交代で中に入るとカーテンが ”シャー”っとひとりでに閉まった。
目の前にテーブルがあり、その上に人の頭より大きな水晶の球があった。
入ってきた入り口からテーブルをはさんでその奥に小柄な老婆が座っていた。
「早く座りなされ。」
そう促されるとアレンの方にあった椅子が自然に動き出し座れるスペースを作った。
うぉーー。魔法だーーー。
先ほどから物がひとりでに動いている。心の中でアレンはそう叫び顔を高揚させた。
座ると何の質問などはない中で老婆が目の前の水晶に向かって呪文を言い始めた。
「ほんわかほんわか へばぶっぶー ほんわかほんわか ばっふもふ!!ばっふもふ!!ばふばっは、、、、」
何か流れ作業のように急かされ嘘くさい呪文だと感じてしまう。
しかしここは少しでも評価を上げるため、凛々しい顔をしてみたりポーズを変えてみたりしてみた。
「そんなふざけた顔をしても無駄じゃ。適性は生まれたときに決まる。
わしはそれを見るだけじゃ。そんな不細工な顔をしても診断にはなんも影響はせん。」
恥ずかしくなりうつむくアレン。
わかっていたんだ。そんなこと。
何事もない。診断は一瞬で終わった。
老婆はけだるそうにアレンを見つめこう言った。
「ほれ。結果が出たぞ。
おぬし、何の適性もない。帰りなされ。」
老婆の投げやりな態度と衝撃の言葉に恐ろしい数のクエッションマークが出ていた。
もしかすると自分の顔は今”?”という形になっているのではないか。
そう思うほどの言葉だった。
これからたくさんのことが起こるだろうと夢見た冒険者生活。
何年も夢を温め続けた少年にとって、とてもではないが今の言葉を自らの辞書に書き記すことはできなかった。
というか頭の中の辞書は開かなくなっていた。頭が停止してしまった。
空想の中で計画した冒険者人生設計。
かえりなされ?!
1000年に1度の勇者と呼ばれこの街に栄光をもたらす夢も何度も見た。
朝起きたときおねしょをしていたのは内緒だけれど。
かえりなされ?!
パーティーの1人のヒーラーと恋に落ちるがなかなか二人とも素直になれないシーンも何度妄想したことか?
かえりなされ?!
そもそも帰りなされとはどういう意味なのだ。
”かえり”は まぁわかる。
”なされ”ってなんだ?どういう意味だ。”なされ”
アレンはの脳はもう止まっていた。衝撃すぎる言葉”適性がない”によって。
ゆえに問題のすり替えをしなくてはいけなかった。
老婆が言った真意から外した言葉。”なされ”の意味を聞いてみなければと思った。
質問の意味が分からないと言われればアレンもわからない。
だがもう聞くしかなかった。現実を受け入れられないのだから。
「はは、、あのー”なされ”って」
アレンは目の前の老婆にそう伝えようとしたが老婆の方も普通ではなかった。
老婆はアレンの言葉などはなから聞く気などなかった。
「やかましいわい!おぬしは戦士の適性もなければ魔法使いの適性もない。
かといって鍛冶屋や錬金術師の適性もないといったんじゃ!」
聞きたくなくて現実逃避したのに無理やりすぐに現実に戻された。
もう一回言われた。しかも詳しく。適性がないと。
アレンの頭の中には”なされ”という言葉もなくなっていた。
もう否定するしかない。理性を保つにはそれしかなかった。
「いやーそんなわけないじゃないですか?お婆さん。
僕もね、そりゃ最初は勇者とか賢者とか少、、、」
「うるさいのーこの小童!!なんの才能もないと言っておるんじゃ!
はよ帰れ!!わしは忙しいんじゃ!!」
アレンが言い終わる前に老婆はまくしたてるように言ってきた。
それは形はどうあれ何度も冷静に会話をしようと言葉を選んできたアレンをキレさせるには十分の言葉だった。
何をするところか全くわかっていないが。
「あぁ着いた。ここが職業診断所だ。」
ギルドと比べ少しこじんまりした印象ではあるがそれでも立派な建物には違いなかった。
いつも妄想していた建物とは少し違ったが。
「そういえば、マップリスト。これからよく使うようになるって言ってたな。
まぁそんなことしなくてもわかるんだけど。」
アレンは頭の中でアークグラッドの地図を浮かび上がらせてその地図に職業診断書を書き込んだ。
マップリストとは広大なダンジョンを探索するためにできた魔術の一種。
頭の中に地図を作成し記憶に定着させることができる。
訪れた場所しか記憶できないがほかの人から記憶をもらったり
店で記憶を買ったりとかなり便利で冒険者だけでなく一般の人も良く使用する。
最も簡単な部類の魔術に入るので学校で習得させられる。
白紙の多いアレンのマップリストはこれからどんどん埋まっていくことになるのだろう。
「よし、それじゃあ職業診断と行きますか。」
冒険者になれる年に同じくできるようになる職業診断。というよりこの職業診断がこの年までできないから冒険者になる年齢制限が設けられている。
なんでもあまり幼い時に診断結果を出してもその後の成長で大きく変わってしまうのだ。その変化が顕著に小さくなるのがこの年齢から。
アレンの年になると職業の適性はほとんど変化しない。
職業診断は国から選ばれた職業診断士と呼ばれる優秀な人材が建物の中でこれから冒険者を目指す者たちの職業の適性を占ってくれる。
職業とは人が与えられる世界からの加護である。
人はそれぞれ何かしらの適性を持って生まれてくる。
力自慢なら戦士の適性。
魔力が高ければ魔法使いの適性。
もちろん戦士と魔法使いを修練すれば魔法戦士なんていう職業にもなれる。
それにともない適性値の高い職業の加護をもらうと自らのステータスに大幅なボーナスが割り振られる。
このボーナスは簡単に説明すると例えば戦士なら
まったく戦士の才能のない冒険者と戦士としての才能が豊かな冒険者をステータスで比べてみると。
まったく才能のない冒険者だと戦士のボーナス値を割り振られてもこうなる。
◆才能なし
能力 数値 + ボーナス値 合計能力
力 15 + 2 17
体力 15 + 1 16
防御 15 + 1 16
素早さ 15 + 1 16
魔力 15 + 0 15
魔法防御 15 + 1 16
だが才能ありの場合元の数値が高いのに加えボーナス値も高くなる。
◆才能あり
能力 数値 + ボーナス値 合計能力
力 50 + 20 70
体力 40 + 15 55
防御 40 + 15 55
素早さ 20 + 10 30
魔力 15 + 5 20
魔法防御 30 + 10 40
職業の熟練度が上がれば自然とボーナス値も上昇していく。
これだけ前者と後者ではステータスに開きが出るが実際はこれよりもっと加護によるボーナス値に開きが出る。
加護によるボーナス値の力補正が200なんていう天才もまれに出現するくらいだ。
ステータスがある一定を越えなければ使えない武器や技もあり適性がない職業を選ぶメリットなど全くない。
もちろん職業によってボーナス値も変化するし勇者や賢者などの最上級職のボーナス値など
想像するだけで恐ろしいことになる。
これにより冒険者は自分がなりたい職業ではなく自らの適性に沿った職業を選び上級職へつなげていく。
ゆえにこの職業診断でこれからの冒険者生活の8割は決まってしまうと考えてもおかしくない。
実際の戦闘ではこれに加え職業での経験から獲得する”スキル”、冒険者本人が持ち合わせるユニークスキルというものが複合的に備わる。
例えば戦士のスキルで有名なのが
・【力アップ(大)】
・【剣術修練度アップ】
などがある。
ちなみにスキルのステータスアップは基礎値やボーナスとはまた別枠で付与される。
だが職業からの恩恵で授かったスキルとはいえ同じスキルを習得できるかは自身の才能にゆだねるところが多く、1つしかスキルを習得できない冒険者もいればいくつも所持できるものもいる。
一度覚えたスキルは生涯忘れないので戦士から魔法使いになっても戦士の時のスキルは継続される。
しかし職業の熟練度が上がるにつれて上質なスキルを覚える傾向にあるので基本的には上級職を目指さないものがコロコロ職業を変えるものではない
それとは別にユニークスキルがあり、その名の通り職業で左右されるものではなく冒険者個人についたスキルである。
その内容は様々で冒険者の数だけあるともいわれている。
全く役に立たないスキルもあるが基本的には強力なものが多く、その冒険者の戦闘スタイルを変えるほどの効果があるものも珍しくない。
先天的に初めから持っているものと後天的に習得するものがあるが詳しくはほとんどわかっていない。
こちらも複数個持ってるものもいれば一つもない冒険者も珍しくない。
モンスターもこのスキルを持っていることがある。
かつて大魔導士として名をはせた当時の円卓の騎士の一人だったクラウネリアは【予見】というユニークスキルを持ち合わせていた。
その内容はすさまじくこれから敵が起こす行動が手に取るように分かったという。
これによりすべての行動にカウンタースペルを発動し相手に何もさせず勝利する姿が幾度となく目撃されていたらしい。
このように、ステータスとは重要な数値には変わりないのだが本番の戦闘でステータスに過信してしまうと手痛いしっぺ返しを食らう羽目になる。
ともあれ、まずはこの場所で適性の診断をしてもらい、自らの能力を把握することが冒険者のスタートであるのだ。
「できればソロでの攻略も楽になる戦士系がいいな。剣を華麗に扱ってさー。前線に立ってバタバタ敵をなぎ倒して。でももし魔力適性があるのなら攻撃魔法特化型の魔法使いとかもかっこいいよなー。
極大呪文を詠唱する!!みんな時間を稼いでくれ!!」
「でもあれは、、威力が大きすぎてあなたの体が!!」
「わかってくれ。みんなを救う方法はこれしかないんだ......」
「そんな!!あなたを愛してるの!!」
「俺も、、あ、、あい、、、あいし、、」
ぐへへへへと下品な笑みを浮かべながら職業診断所の前で一人妄想するアレン。
よく見るとアレン以外にも建物の前でにやける少年が複数。
これはアークグラッド名物、「ひとときの勇者」という光景らしい。
ルーキーとは夢を見るものだ。
さておき夢から覚めたアレンは気持ちを切り替え中に入る。
まずはここで激レアスキルを診断してもらわないといけない。
生半可な気持ちではいけないのだ。
しっかりと大地を踏みしめ1歩1歩アレンは職業診断所に向かう。
中に入ると少し薄暗くお香の香りが、そこかしこに漂っていた。
アレンの身長と同じくらいの仕切りでいくつか部屋を仕切っていて1部屋ごとに1人診断していくみたいだ。
一人入るとカーテンを閉められ、中の様子は伺えない。
人生を決める一大イベントの場所がこんな質素な作りに少しがっかりしたが すぐ気を取り直して列に並ぶ。
順番はすぐに回ってきた。
出てきた人と交代で中に入るとカーテンが ”シャー”っとひとりでに閉まった。
目の前にテーブルがあり、その上に人の頭より大きな水晶の球があった。
入ってきた入り口からテーブルをはさんでその奥に小柄な老婆が座っていた。
「早く座りなされ。」
そう促されるとアレンの方にあった椅子が自然に動き出し座れるスペースを作った。
うぉーー。魔法だーーー。
先ほどから物がひとりでに動いている。心の中でアレンはそう叫び顔を高揚させた。
座ると何の質問などはない中で老婆が目の前の水晶に向かって呪文を言い始めた。
「ほんわかほんわか へばぶっぶー ほんわかほんわか ばっふもふ!!ばっふもふ!!ばふばっは、、、、」
何か流れ作業のように急かされ嘘くさい呪文だと感じてしまう。
しかしここは少しでも評価を上げるため、凛々しい顔をしてみたりポーズを変えてみたりしてみた。
「そんなふざけた顔をしても無駄じゃ。適性は生まれたときに決まる。
わしはそれを見るだけじゃ。そんな不細工な顔をしても診断にはなんも影響はせん。」
恥ずかしくなりうつむくアレン。
わかっていたんだ。そんなこと。
何事もない。診断は一瞬で終わった。
老婆はけだるそうにアレンを見つめこう言った。
「ほれ。結果が出たぞ。
おぬし、何の適性もない。帰りなされ。」
老婆の投げやりな態度と衝撃の言葉に恐ろしい数のクエッションマークが出ていた。
もしかすると自分の顔は今”?”という形になっているのではないか。
そう思うほどの言葉だった。
これからたくさんのことが起こるだろうと夢見た冒険者生活。
何年も夢を温め続けた少年にとって、とてもではないが今の言葉を自らの辞書に書き記すことはできなかった。
というか頭の中の辞書は開かなくなっていた。頭が停止してしまった。
空想の中で計画した冒険者人生設計。
かえりなされ?!
1000年に1度の勇者と呼ばれこの街に栄光をもたらす夢も何度も見た。
朝起きたときおねしょをしていたのは内緒だけれど。
かえりなされ?!
パーティーの1人のヒーラーと恋に落ちるがなかなか二人とも素直になれないシーンも何度妄想したことか?
かえりなされ?!
そもそも帰りなされとはどういう意味なのだ。
”かえり”は まぁわかる。
”なされ”ってなんだ?どういう意味だ。”なされ”
アレンはの脳はもう止まっていた。衝撃すぎる言葉”適性がない”によって。
ゆえに問題のすり替えをしなくてはいけなかった。
老婆が言った真意から外した言葉。”なされ”の意味を聞いてみなければと思った。
質問の意味が分からないと言われればアレンもわからない。
だがもう聞くしかなかった。現実を受け入れられないのだから。
「はは、、あのー”なされ”って」
アレンは目の前の老婆にそう伝えようとしたが老婆の方も普通ではなかった。
老婆はアレンの言葉などはなから聞く気などなかった。
「やかましいわい!おぬしは戦士の適性もなければ魔法使いの適性もない。
かといって鍛冶屋や錬金術師の適性もないといったんじゃ!」
聞きたくなくて現実逃避したのに無理やりすぐに現実に戻された。
もう一回言われた。しかも詳しく。適性がないと。
アレンの頭の中には”なされ”という言葉もなくなっていた。
もう否定するしかない。理性を保つにはそれしかなかった。
「いやーそんなわけないじゃないですか?お婆さん。
僕もね、そりゃ最初は勇者とか賢者とか少、、、」
「うるさいのーこの小童!!なんの才能もないと言っておるんじゃ!
はよ帰れ!!わしは忙しいんじゃ!!」
アレンが言い終わる前に老婆はまくしたてるように言ってきた。
それは形はどうあれ何度も冷静に会話をしようと言葉を選んできたアレンをキレさせるには十分の言葉だった。
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