ダンジョンはモンスターでいっぱい!! ~スライムと成り上がる最弱冒険者の物語〜

なか

文字の大きさ
上 下
2 / 58

ここから始まる

しおりを挟む
 
 涼やかな風が吹き込むここアースグラッド。
 冒険者で賑わうこの街は年中気候が安定しているゆえに様々な生物が生息しており
 多種多様なクエストがギルドから発行されることで有名なエリアである。

 しかし冒険者が集まる真の目的はこれ。
 そうダンジョン。

 ダンジョンとはある日突然出現し、外の世界とはかけ離れた環境、生物体系を有し、そこで手に入る素材は地上ではまず見られない希少性や純度、そして有用性をかねそろえている。
 しかし特殊な環境で成長したダンジョン内生物は地上の生物とは比べ物にならないほど狂暴に進化しておりそれゆえ地上の生物とは違う生命、モンスターと呼ばれていた。

 冒険者は希少な素材を手に入れるため、自身の実力を示し名誉を勝ち取るため、日々ダンジョンに潜り命を削っている。

 そしてこの少年。名はアレン。
 彼もこの街で一旗揚げようと息を巻きこの街へやってきた。


「でけー。家が山ぐらいでけー。これが天下のアースグラッドかー。」


 アレンはまるで自らを田舎者と公表するかのように街を見回す。


「おっと。こうしちゃいられない。早く冒険者手続きをしないと。
 俺はこの街で円卓の騎士のようなスゲー武勇伝を残すんだ。
 そのためにもダンジョンで自分を鍛えて名のある冒険者にならないとな。」


 円卓の騎士とはこの街の伝説。この街の名のある冒険者が大国リッドギアの国王直属の騎士になった話はあまりにも有名だ。
 このように冒険者とは名誉でいかようにも自分の未来を変えられる夢のある仕事となっていた。
 どれだけ命の危険があろうとも子供のころに一度は夢見るのが冒険者なのである。

 アレンも幼いころから冒険者にあこがれ自らの生きる道と決めてきた。
 そしてついに今日その日がやってきたのである。
 しかしこの15分後にこの夢はまるで中空を飛ぶ泡のようにパチンと冷めてしまうことになる。





「何ですって? もう一度お願いします。」


 アレンは目の前の老婆にそう聞き返す。


「何度も言わせるな! おぬしは戦士の資質もなければ魔法使いの資質もない。
 かといって鍛冶屋や錬金術師の資質もないといったんじゃ!」


 老婆は手加減なくアレンにそう伝える。
 アレンは言葉の暴力に意識が何度も飛びそうになる。
 ”資質がない”
 今から冒険者になろうとしてる人に絶対言ってはいけない言葉だ。


 なぜこんなことに。


 これはそんな死の宣告にも似た言葉を告げられる15分前。
 まだアレンが夢と希望に満ち溢れていた時。

 一人の少年の夢がもろく崩れるまでの15分。


 アレンはアースグラッドを迷いなくまっすぐにあるところに向かった。
 それはギルド。
 もちろんアースグラッドには初めて来る。
 ではなぜ迷いなくこの少年はギルドに向かえているのだろうか?

 それは彼が小さい頃から欠かさず冒険者になる日をシミュレーションしていたからに他ならない。

 アースグラッドの地図を引っ張り出し空想の中でその道を歩く。
 彼にとってアースグラッドという町は幼い頃からの庭であり遊び場だったのである。

 ではなぜ彼が真っ先にギルドに向かうかというと、

 ギルドとはその街の冒険者の活動を統括する組合である。
 冒険者とは希少な素材をもたらし街の繁栄に協力したり街の人々から依頼を受け危険な仕事を肩代わりする仕事である。

 ゆえに実力がものをいう世界であり功績を上げれば先ほども言った通り平民出身のものが国王直属の騎士団に配属されることもある。

 迷いのない足取りでアレンはギルドへの道を進んだ。
 ギルドには多くの冒険者がクエストの受注や達成報酬を受け取っていた。

 アレンの目にはそのむさくるしい光景が輝くヒーローのように見えたことであろう。
 一刻も早く冒険者へ。アレンの心は焦るばかりであった。

 賑わうギルド内。まずは冒険者登録をしなくてはダンジョンに進むことはできない。
 アレンは登録の申請を行うため受付カウンターに足を運ぶ。


「うわー、、、、、」


 カウンターの前でぽかんと口を開けたまま、間抜けな言葉を出すアレン。
 それも仕方ない。なぜならカウンターに立っていた女性がとんでもない美少女だったからである。

 美しい金色の髪を肩まで伸ばし、気の強そうな少し吊りあがった目をしているがとても清楚な顔立ちをしている。


「何か御用でしょうか?」


 透き通る女性らしい声からでもわかる気の強そうな性格。
 少し怒っているのかと感じてしまう人も多いだろう。
 ボーと立っているだけのアレンに受付の少女は事務的な言葉を投げかけた。


「えっ!いや、あのー、すいません。俺アレンって言います。冒険者になりたいんですが。」


 慌てて答えるアレン。
 街の地図を見てシミュレーションは散々とやってきたつもりだが実際にどうやって冒険者になればいいのかアレンはまったくわかっていなかった。

 ギルドの制服なのだろう、それをビシッと着こなし、見た目からお堅い感じがする女性はマニュアル通りであろう言葉でアレンに対応する。


「申請ですか?それでは適性証明をお出しください。」

「あ、す、すいません。まだこの街についたばかりで、、あの、、何も用意してないんです!」


 アレンは緊張し上ずった声で答える。最後の方は声が裏返ってしまった。


「そうなんですね。では隣の建物が職業診断所になります。装備は適性が決まってから購入なされたほうがよろしいかと思います。その後のステータス診断も職業診断所で行いますのでマップリストに入れていた方がよろしいかと思います。ほかの説明は以上のことがお済みになってからの方がよろしいですね。」

 アレンの目を見ずに話す女性、おそらく今のアレンのような若者への受け答えを何万回もしてきたのだろうか。
 恐ろしくつまらなそうに見える彼女に見とれていると


「他に何かご用件はございますか?」


 矢継ぎ早にまくしたてる彼女にあたふたと情けない姿を見せてしまう。


「い、いえ!何にもありません。俺アレンって言います。またすぐ帰ってきますんで!!!」


 業務的に話されはしたが親切に教えてくれたギルドの女性に一礼してアレンはギルドを飛び出していった。


「アレン、、、」


 彼女はそう小さくつぶやくとすぐにいつもの業務に戻っていった。


「かぁー緊張したー。あんなきれいな人が毎回受付にいるのかな?俺緊張して話せなくなりそう、、、」


 先ほどのギルドの受付嬢、あの事務的な話し方さえなければ、、、
 なぜかアレンがもったいない。と受付嬢の将来の心配をし、ため息を漏らした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...