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プロローグ
しおりを挟むなぜ危険を冒すのか?
裕福になりたいのか?
名誉が欲しいのか?
力が欲しいのか?
冒険が欲しいんだよ。
だから冒険者なんだ。
なるほど......
女は踊るようにダンジョンのフロアを滑っていている。
女が通り過ぎた地面は表面が凍り、そしてすぐに霜になって風に流れるように消えていく。
どうやら足元を凍らせて滑りながら移動しているようだ。
予備動作なく動く上、動きも早い。
予想しづらい動きに冒険者の美しい少女も狙いが定められないでいた。
「テト・ラト・アレル・イル....」
女が言葉を発し始める。
「あの言葉って.....まずい!! 古代呪文!!!」
冒険者達は慌てて女から距離を取ろうとするが間に合わない。
「レイ・イム・サイラ....アドミレアブル....」
女は手のひらを冒険者達に向けそこから考えられない質量の魔力の塊を放出した。
人など簡単に飲み込む大きさの魔力の塊に冒険者達の回避は間に合わない。
「イージスフロート!!!!」
とっさに金髪の青年冒険者はみんなの前に1歩出ると騎士剣を前に掲げ巨大な半透明の盾を作り出した。
「来るよ!!」
青年の言葉とほぼ同時に魔力の塊がイージスフロートにぶつかり地震のような揺れを起こしながら
砂ぼこりを舞い上げていく。
ビシッ!! ビシビシッ!!!
「ぐぅぅうう!! 持ちこたえろ......イージスフロート!!!!」
ヒビ割れ消えかかっているイージスフロートを気力で持たせる青年。
次第に魔力砲は大きさを小さくし消えていった。
同時に冒険者の少女と仲間の狼が一気に少女へと距離を詰める。
狼の咆哮により空気が振動し地面がひび割れていく。
まるでスケートリンクのような地面だった場所が次々にひびが入りガタガタになっていく。
敵の女はなるべくきれいな場所へと方向転換したがそこは冒険者の少女も読んでいた。
「荒ぶふ風たちよ。今こそ乱れ、阻害せよ!! エアウィンザー!!!!!」
冒険者の少女の詠唱と共に女の周りに乱風が巻き起こり思ったように移動ができなくなる。
敵の女はまた何か詠唱を唱える仕草をしたがそこは冒険者の仲間のスライムが見逃さない。
スライムの持つ刀が電気を帯びて激しく放電している。
ギャリィィィィぃいいいい!!!!!!!!!!
耳を塞ぎたくなるような金切り音をさせながら一瞬で女との距離を詰め回避不能の神速の1撃を繰り出した。
繰り出したかのように見えたが少女が両手を左右に広げたような体勢になると
風も止まりスライムも動きを止めすべての動きが制止した。
そして恐ろしい衝撃波が周りを襲い少女とスライムは後方へ弾き飛ばされる。
「きゃぁぁぁあああ!!!」
吹き飛ぶ少女を後方で待機していた狼が背中で受け止める。
スライムは地面にバウンドしながらダンジョンの壁に叩きつけられ きゅぅぅぅ~ と情けない声を出しながらひっくり返っている。
女は表情無く立っている。
冒険者の少女がはなったエアウィンザーだけがダンジョンに吹き荒れていた。
【命とは何か?】
刀を抜いた少年の冒険者がゆっくりと歩きながら女との距離を詰める。
「鬼丸、力を貸せ。」
”はは、言うな主アルジよ。元よりワシは主アルジの力じゃ。存分に使え”
少年が持っている刀「鬼丸」から異質な黒い霧のようなものが少年を包む。
辺りは暴風に見舞われていて少年は砂煙に包まれながら敵の女を見据える。
【冒険とは?】
「アレン!」
「アレン君。」
「アルジ!」
「キュピ!」
それぞれの声に反応することなく、鬼丸から発する黒い霧に顔をゆがめながら少年は女に向かって走り出した。
低く鋭い少年の前進はもはや音よりも早く相手の懐へたどり着く。
少年が低い位置から振り上げた剣筋に女も魔力を纏った手で応戦する。
お互いの命を懸けた戦い。
それこそ冒険者なのだと答えるように。
【冒険者とは?】
自身の命より重きもの。
その誇りこそが冒険者の資格。
これは今戦っている彼らの冒険にまつわる話。
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