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35話

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ふと目が覚め、周りをみたらまだ夜中だった・・・。私は隣にいるはずのディアス様がいない事に気づいた。

「・・・ディアス様?」

寝るまでは一緒だったはず、どこに行ったのかしら?私はベッドから出た。

「あれ、窓が開いてる?」

フワリと頬に風を感じ窓をみた。よく見るとレースのカーテンが風で揺れその向こうに誰かいた。

ディアス様かな?こんな夜更けにバルコニーへ出てるなんてどうしたのかしら?

「ディアス様、こんな夜更けにどうしたのですか?」

私はカーテンを開けてバルコニーへ出た。

「残念、愛しのディアス様じゃねぇよ」

「あなた、誰?」

そこにいたのは頭を黒い布で隠した全身黒尽くめの男だった。

「俺か?俺は諜報部隊隊長、クロムだ。ディアスが番いの女を連れて来たって聞いたから見に来てやったぜ?」

「諜報部隊隊長?あなた、こんな夜更けにレディの寝室を覗くなんてディアス様に殺されるわよ?」

隙のない男ね、敵意は無いみたいだけどディアス様の名前を呼び捨てしているから親密な間柄なの?

「はっ、あいつは直ぐには来ねぇよ。今頃お前を狙う暗殺者達を始末してるんだから」

「え?!」

私に暗殺者?何かの間違えじゃ・・・。まさか、私がディアス様と番いだから!?

「その通り!今まで居なかった番いが急に現れ、都合の悪い奴らがあんたを狙って暗殺者を差し向けたのさ」

「まだ何も言って無いのに心を読まないでよ?!まるでルイスみたいな人ね?それに、何でディアス様が直接動いてるのよ!」

「あははっ!あんた、分かり易すぎるんだよ?まぁ、読みは良いみたいだな。ルイスは俺の双子の弟だし。それとお前関係の暗殺者はディアスが命令して全部自分が始末するから手を出すなって言われてんだ」

まさかルイスが双子で兄がいたなんて!?しかもお互い隊長って凄い双子ね・・・。

「双子だったなんて驚いたわ。それに、ディアス様もどうして自分で始末しようとしてるのかしら?貴方みたいな隠密部隊がいるなら瞬殺でしょ?」

「あー、ディアスが言うには『俺のリリーに暗殺者を寄こすなど万死に値する。俺の手で後悔させてやる!』って、気合い入れて始末しに行ったぜ?」

・・・うわー、なんだか暗殺者の人達が可哀想に思えてきた。

「ディアス様って、ときどき脳筋気味よね。簡単には楽にしてくれなそうだもの・・・」

「ディアスも脳筋だが、そう言ってるあんたも脳筋だからな?」

「なっ、私が脳筋・・・?!」

「ルイスから聞いたが大体のことを物理で片付けてる時点で脳筋だからな?」

私は崩れ落ちた、まさか私が脳筋だったなんて。そうか、変態を鞭で片付けている私は脳筋・・・。

「あ、でもディアス様も私も脳筋ならお似合いよね!!ふふっ、嬉しいわ」

私はポジティブに考える事にした。

「あー、そうだなーお似合いだなー」

「ちょっと、棒読みやめてよ。それで、話しを戻すけどディアス様は暗殺者の始末に行って、貴方・・・クロムは本当に私を見に来ただけなの?」

私を見るだけなら今じゃなくても良い気がするから、他にも用がありそうなのよね。

「そうだな・・・今だけ、あんたの護衛を頼まれた。外にも見張りがいるんだがあいつらは弱いからな、手の空いてる俺が呼ばれた」

「そうだと思った。ディアス様が私を一人にしてどっかに行くこと無いもの。ねぇ、その顔を隠してる布取らないの?私、クロムの顔をみて話したいわ?」

私がそう言うとクロムの雰囲気が変わった。なんだか嫌そうな感じが伝わってきた。

「俺の顔か・・・あんまり見せたく無いんだが見ても驚くなよ?」

ルイスと双子だからそんなに驚かないと思うけど・・・。人見知りなのかしら?

「ええ、大丈夫よ。驚かないから見せてよ?」

私がそう言うとクロムが溜息をつき、頭に巻いている布をシュルシュルとほどき始めた。



「さぁ、全部取ったぞ」
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