10 / 13
ミリアVSクロエ
しおりを挟む「狩技…7'sマシンガン…!」
異様な力が籠った、クロエの折り畳まれた右足が、開かれた刹那、ミリアの盾に7発の蹴りが叩き込まれる
恐らく動体視力が向上している俺以外に、盾に7発の蹴りが叩き込まれたことは見えてはいないだろう
「………………」
「ミリア!」
「……っ!」
俺とクーデリカはミリアに駆け寄る、盾が力なくへたり込むミリアに覆いかぶさっていた
「ずびまぜん…負げてじまいまじだ…」
ボロボロと大粒の涙を零しながら、小刻みに震えている
「命の恩人のユーキさんをバカにされたのに…勝でまぜんでじだ…」
「ミリアさん…俺の為に…」
俺の為に闘ってくれたのに、情けねぇ…
「興醒めだな…皆の者!訓練の準備だ!」
俺たちを一瞥し、ひらりと体を仲間の方へ向いて歩いていってしまう
「待ってくれ」
「あ?」
首だけをこちらに向けとんでもない睨みを効かせてくる
「俺とも1戦やってほしい」
なんだろうな、人と争うのとか好きじゃないし、争いなんて起きない方がいいと思ってる平和主義な俺だけど
仲間の仇討ちをできない方が…嫌いだ…
「腑抜け面にしては威勢がいいな、いいだろう、さっきのじゃ不完全燃焼だったからな…相手をしてやろう」
俺の誘いを買って、再び対峙する
「フラン!」とだけ呼ばれた少女が、またも宣言者に抜擢された
「また私かよぉ~…それでは、クロエ対腑抜け面の模擬戦闘を行います!……始め!」
おいいぃぃぃい!あのくせっ毛失礼過ぎんだろぉ!!
「余所見をするとは余裕だなっ…!」
またも距離を詰めてくる、が、俺にはあんたのその自慢のスピードも、余裕で見えちゃうんだな~これが
打ってくる拳をすんでのところで躱す
「何っ!?」
休みなく打ち込んでくる拳を躱しながら、どんな展開が1番いいか、脳内異世界転生シュミレーションしていた
(よし、この展開に決めた)
右の拳が打ち込まれると同時にしゃがみ込み、そのまま足払いで体制を崩す
「なっ…!?」
拳を突き出した勢いも相まって、クロエは一回転して地面に叩きつけられる
「ぐぅ…!」
足払いした俺はそのまま倒れるクロエの真上へ跳躍、空中で右足を腹前に折り畳む
「まさか!あれはクロエの!?」
前のめりに驚愕するフラン
「ミリアのお返しだ!!
狩技…7'sマシンガン…!」
折り畳まれた右足から、目にも止まらぬ7発の蹴りが放たれた
砂煙が立ち上り俺たちの姿を隠す、その間にミリアとクーデリカの元に駆け寄り、2人を抱えあげてその場を離脱
「クロエ!」
フランが駆け寄ると、クロエは無傷で横たわっていた
「やられたよ……」
当たりを見渡すと、クロエの周りに穴が7箇所空いている
「あいつ、クロエじゃなく地面に蹴りを当てて逃げたのか!?」
「逃げた…というより、見逃してもらったというのが正しいだろうな…」
してやられたと言うのに、クロエの表情は明るいものである
「あいつ、何者なんだ…?」
「わからん…いずれにしても、面白い男だ」
不気味にほくそ笑むクロエだった
ーーーーーーーーーーーー
アカデミアを飛び出した俺たちは街の公園で一息ついていた
「すみません、また抱えてしまって」
露店で購入した飲み物を2人に渡しながら謝る
「いえ、おかけで助かりましたから」
顔を背けたどたどしい様子
「んー…出来れば……オレンジが…良かったかな……?」
こいつは相変わらずである
「そんなことより!何で貴方があの技使えるんですか??」
「あの技?あークロエさんの技のこと?あれはなんというか、見よう見まねというか」
頭をかきながら返答する
しかし本当に見よう見まねなのだ、ミリアとの闘いの際に見たクロエの技を、脳内でシュミレーションして、それをぶっつけ本番でかまして…
あれ?もしかしてこの脳内異世界転生シュミレーションも結構なチート性能なのでは??
「ふふふふふ」
「なんだか気持ち悪いですよ、ユーキさん」
「…割と通常運転…………」
とんでもなく失礼な発言が飛び込んできたが、気にしたら負けだ、己の新たな力の発見に喜びを隠せるものか
「ユーキさん少しよろしいでしょうか?」
浮かれる俺に、真剣な表情で割り込んできた
「どうしました?」
「私を強くしてくださいませんか」
クロエとの闘いで、何か思うことがあったのだろう、表情だけで本気であることが伝わってくる
「先ほどの闘いで、自分自身の弱さを痛感致しました…同時に、ユーキさんの強さも再認識しました」
拳を握りしめ、唇をきゅっと噛み締める
「貴方の元で特訓すれば強くなれる、そう確信しております」
「分かりました…人に教えた経験はあまりないですけど、アカデミア入学までに猛特訓しましょう!」
もちろん快諾、選択肢的にも正解だろうし、ミリアが強くなることは、今後パーティーを組んでいく上でもメリットしかない
「私も……強く…して……」
「もちろん!」
てなわけで、アカデミア入学に向け、ミリア&クーデリカの代特訓の日々が始まるのであった
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる