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1章

7話

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「突然お呼び立てして申し訳ありません」

2階の応接室に呼び出された一行、少々ぎゅうぎゅうになりながらソファで待機している

「よろしければどうぞ」

それぞれの目の前にティーカップが置かれ、部屋に紅茶の優しい匂いが溢れる

「い、いただきます」

ぎこちない所作でティーカップを手に取り、口元に運ぶ

「美味しいです!」

「お口に合ったようでなによりです」

ブレンの優しい口振りと、紅茶のおもてなしで、怒られる訳では無いと安堵した

「皆さんをお呼び立てしたのは、先程買取に出されていた、延棒についてお聞きしたかったからです」

目の前のソファに腰掛け、買取表の様な紙を差し出してくる

「ゴーレムを倒した際にドロップしたアイテムですね」

雅の右からひょいっと前に乗り出すクリスタル

「やはり、ゴーレムを討たれたのですね」

「何かまずかったですか…?」

「いえ、むしろその逆、これは非常に喜ばしいことです」

髭を撫でながら、嬉しそうに微笑む

「長年、我々はゴーレムを倒せぬままでおりましてね、ギルド最大の課題だったのです」

3人を一瞥し話を続ける

「そんな我々の大きな壁を、貴方たちは初日で倒してしまった、これはとんでもない偉業です」

「そんなすごいことだったんですか」

無意識にギルド最大の問題を解決していたらしい

「そこで、皆さんには何かお礼をしなければと、お呼び立てした次第なのです」

ソファから立ち上がり、棚から布袋を取り出しテーブルに置く

「これは謝礼です、お納めください」

「洒落ですか?」

「雅さん、謝礼です、お金のことですよ」

「えっ!?そんないいんですか?」

「もちろんです、それから皆さんの冒険者ランクを、特例でDランクにさせて頂きました」

冒険者ランクが上がると、受注出来るギルドクエストの幅が広がる他、飲食店や武具屋等での割引を受けれるなどの特典がある

「何から何までありがとうございます」

「これでも少ないくらいです、ギルドの規約上これ以上の報酬は難しく、ご容赦願いたい」

膝に手を付き、深々と頭を下げる

「そんなそんな、充分すぎます」

「お気遣い感謝します」

もちろん気遣ったつもりはなかった

「何か私に出来ることがあれば、気軽に仰ってください、最大限努力致しますので」

「あの、早速であれなんですけど、オススメの服屋さんとか教えてもらえたりしますか?」

ブレンに意外過ぎる要望に、思わず吹き出してしまう

「えっと、私変なこと言っちゃいましたか?」

「失礼しました、意外なお願いに驚いてしまっただけです。受付のスタッフに詳しいものが居りますので、その者から伝えさせるようにしましょう」

受付のお姉さんから、街の外れにある仕立て屋さんを教えてもらい、そこに向かい街を歩いていた

「雅殿たちは服が欲しかったのか?」

「はい、街の人達にすっごく見られてるなぁって思ってたので、街に馴染む服を買いたいんです」

「うむ、確かに雅殿達の服装はやや変だな」

「フリーダムさんに言われたくは無い気もしますけれど」

クリスタルが思わずツッコむ

「お金も稼げましたし、みんなで可愛い服買いましょう!」

転生してから、慣れない事の連続だったが、元の世界でも大好きだった買い物ができる

雅は喜ばずにはいられなかった

受付のお姉さんに教えてもらった仕立て屋に到着、店前のウインドには元の世界でも見慣れた服装が並んでいた

「可愛い服いっぱいだ~!」

「服にもたくさん種類があるんですね」

目をキラキラさせて眺める雅と、服の多さに驚くクリスタル

「人というのは大変なのだな」

そんな2人を俯瞰するフリーダム

仕立て屋の前で、三者三様の反応をする3人は、通行人の注目の的になっている事に気付いていなかった

「お邪魔します」

色鮮やかな木の扉を開け中へ入ると、ポップな音楽が流れる店内に、綺麗なレイアウトで色とりどりの服が並べられている


フリーダム以外の2人は、各々の好きな服を選び買い物を楽しむ

アイテムの買取分と、ブランからの謝礼で、服を買うのには充分事足りた

「思いのほか買いすぎちゃいました」

「これで当分服の心配は無用ですね」

たくさん服を買えた雅とクリスタルはご満悦の様子

「しかし、そなた達は馴染む服装が欲しいと言っていなかったか?今着ているものと同じ様な服ばかり買っていいのか?」

「完全に忘れてました…」

その場にへたり込む雅

「まぁ、雅さんは少し服装が変わると思いますし大丈夫ですよ」

「え?注目されてたのはクリスタルのえっちな服装のせいですから、クリスタルさんの服装をガラッと変えないとと思ってたんですけど…」

「え?私は雅さんの見慣れない服装が注目される原因だと思ってました…」

「ハッハッハ、どちらも自分自身が原因という発想はなかったようだな」

雅とクリスタルは顔を見合わせると、思わず笑ってしまった

「まぁ着たい服を着れば良いではないか、大衆の目など気にしていては生きにくいぞ」

「フリーダムさんの言う通りですね、せっかく買っちゃいましたし、自由に好きな服着ればいいですよね!」

「そうですね、見られたところで何も恥じることなどありませんものね」

世界に馴染む服装を買う目的は達せられなかったが、それよりも大事な何かに気づけてよかったのかもしれない

「でも、フリーダムさんは本当に買わなくてよかったんですか?」

「うむ、私は自由に外見を変えることが出来るから必要ない」

「へー便利な機能があるんですね」

買い物に時間を割いた為、辺りは暗くなり人通りもかなり少なくなってしまっていた

「とりあえず、今日の宿を探して、食事にしましょうか」

クリスタルの提案に同意し、一行は宿探しを始めるのであった
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