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1章

2話

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盗賊との戦いで疲弊した雅は、森の中にある泉で一息ついていた

「自然って気持ちいいね~」

『そうだね!森にはマイナスイオンが多いからね!』

原っぱにごろんと寝そべり、人生初の森林浴を満喫する



「それにしてもお腹すいたなぁ…プリクラ撮った後に、ミンスタで気になってたカフェでランチしようと思ってたのになぁ…」

※ミンスタ・・・女子高生に人気のオシャレSNS

『街に着いたら美味しいご飯食べようよ!』

「そうだね!異世界のランチってどんなのがあるんだろ~。なんか楽しみになってきたよ!」

『ここから街まではもう目と鼻の先!もう少しの辛抱だよ!』

「うん!」

異世界ランチに思いを馳せていると

ザバーンという爆音と共に、泉から水しぶきが立ち上がる

「え!?なになになに!?」

ガバっと体を起こし、泉に目を向けると、岸辺に誰かが倒れ込んでいる

「ステちゃん!あの人!」

『怪我をしてるみたいだ!どうする?』

「そんなの、助けるに決まってるよ!」

倒れ込む人物の元へと駆け寄る、体中怪我だらけで痛々しい

「だ、大丈夫ですか?」

「貴方は…?」

力なくこちらを見つめるのは、青く長い髪、貝模様のビキニに、フリルスカート、頭にティアラを付けた女性



「えっと、私は!闘う女子k」
『雅ちゃん!この場合はその名乗りじゃなくていいよ!』

「あ、すみません…えっと、私は天使 雅(あまつか みやび)です」

「アマツカ、ミヤビ…私はクリスタル…とにかくこの場から離れてください、今この泉にマオウが…」

「ま、魔王!?」

クリスタルと名乗った女性は意識を失ってしまった

「ステちゃん!泉に魔王がいるって!」

『こんなところに魔王!?にわかには信じられないけど…』

泉に目をやると、中心に激しい泡立ちが起こっている、徐々に泡立ちが大きくなっていき、水中から魔王?と思われる物が現れた

「ギャース!」

魚の体に人間の手足が生えた、全長2mはある化け物

「あ、あれが魔王?」

『雅ちゃん!残念ながら違ったみたい!あれはマウオっていう獰猛な魔物だ!』

どうやらクリスタルの振り絞って伝えた名前を、聞き間違えたようだ

「そっか、ちょっと残念だけど…クリスタルさんを助けよう!」

『うん!雅ちゃんならそう言うと思ってたよ!』

マウオに向き合い、なんとも可愛いらしいファイティングポーズで構える雅

「ギャオース!!」

魚の見た目とは裏腹に、もの凄いスピードでこちらに向かってくる

特に意味をなさないが、胸の前で腕をクロスさせ防御の姿勢をみせる

『Auto REFLECTION』

マウオの突撃は、【オートリフレクション】により跳ね返され、空中に無防備に浮かぶ

『雅ちゃん!今だよ!』

「うん!みやビーム!!」

必殺のみやビームが空中のマウオを貫き、マウオは泉に落ちていく

そして、水中で爆散

爆散の衝撃で、辺りに泉の水が、雨のように降り注いだ

「ふぅ~勝ったね、ステちゃん」

『さすが雅ちゃん!ナイスな闘いっぷりだったよ!』

勝利の余韻に浸っていると、クリスタルが目を覚ました

「ん、これは…雨?」

辺りを見渡したクリスタルは、これが雨ではなく、泉の水が降り注いでいるのだと瞬時に理解した

「ミヤビさん、貴方マウオを倒したのですか?」

「あ、はい、クリスタルさんに怪我をさせたので、懲らしめました!」

「ぷっ」

思わず吹き出してしまうクリスタル

「ふふ、あの獰猛なマウオを、懲らしめたのですか」

「す、すみません…余計なお世話でしたか…?」

「いえ、そんなことはありません。貴方には感謝しています。本当にありがとう」

よろよろと立ち上がり、深々と頭を下げる

「そ、そんな、やめてください」

両手をブンブン振る雅

「ですが、泉の水はほとんど無くなってしまいました」

悲しく泉を見つめる

「それは、ほんとにすみません…」

「いえ、貴方に助けてもらわなければ、泉はあっても命はありませんでした。ですので、気になさらないでください」

ふとクリスタルを見ると、傷がほとんど治っている

「クリスタルさん、体の傷は…?」

「ええ、私たちマーメイドの種族は水を浴びると回復力が高まるのです、なのでもう動いても問題ありません」

ほえぇと関心する雅に、また吹き出すクリスタル

「しかし、貴方のような可愛いらしい方が、マウオを倒したなんて、まだ信じられません」

「そんな可愛いだなんて、クリスタルさんの方がお綺麗です」

「まぁ、もうお世辞が言えるんですね」

和やかな時間が流れる

「ところで、ミヤビさんはどうしてここに?」

「私は、魔王を倒す為に旅をしています」

ステちゃんから、こういう質問がきたらこう返せと、事前に教えてもらっていたことを、そのままクリスタルに伝える

「魔王を?それは、壮絶な旅になりそうですね。なるほど魔王を…」

顎に手を当て1人考え込んでいる

「あの、どうかされましたか?」

「ふふ、ミヤビ、その旅に私も同行させていただけませんか?」

優しく微笑み、雅との旅に同行を希望してきた

「え、いいんですか!」

「はい、見ての通り泉は住める状態ではありませんし、水霊術には多少の心得がありますので、少しでも恩返しに使わせてもらいたいのですが、いかがでしょう?」

「大歓迎です!!私1人でとっても心細かったので、とっても心強いです!」

ステちゃんの存在は、この世界の者にとっては異質なため、隠す手筈になっている

「快諾頂きありがとうございます、ではこれからよろしくお願いいたしますね」

『マーメイドのクリスタルが仲間になった!』

(ステちゃん!わざわざ教えてくれなくても分かってるよ!でもありがとうね!)

小声で話しかける雅、RPGでは仲間が増えると演出があるのはベタなのだが、さすがは雅である



かくして、クリスタルを仲間にした雅は、
異世界ランチを目指し、街を目指すのであった
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