2 / 2
1話 愚者
しおりを挟む
鼻を突く生ゴミの臭い、久しく感じる重力の重み、僕は帰ってきたのだこの『現実』と言うどうしようもない地獄に。
────クソッタレ
壁を拳で叩いた。
さてと、干渉に浸っている場合では無いか。
ここは何処だ?そして──彼等は誰だ?
こちらを見下す二人の男。
背が高いな、いや……俺が腰をついているだけか。
眼前に突き付けられたナイフ、逃げ場の無い路地道、下卑た顔、品格の『ひ』の字もないような容姿───あぁ、なるほど。
───ホモセクシュアルか。
「違ぇわ!!ぶっ殺すぞ!!」
一人は高身長で筋肉質、頭にバンダナを巻いた褐色の男、一見して野蛮そうだ。もう一人は低身長、猫背、後顔色が悪い、こっちが権威的には上か。
「ふむ、ホモセクシュアルでないのならば、押し倒されている意味が分からないな、まさか、カツアゲなんていう低俗な事をする人間だとは思わないし…」。
男のナイフを握る拳が力む。
「さっさと、金目の物を出せや、殺すぞ」。
流石に筋肉ダルマとは違って考える知能はあるか、コイツは人を刺せる目をしている、これは何人か殺しているな。
「おっと、待ってくれ、見ての通り金目の物どころか一銭すらも持っていない、只、そこで提案がある───」。
「?何だ、言ってみろ」。
「────君等が持っている銭を全て置いて行け、そうしたらソレを向けた事を許してやる」。
冷笑的な笑みを浮かべ、彼奴等に嘲笑を向けた。その行いは反面教師であり、因果応報、当然のごとく男の右肩に刺し出されたナイフ。距離にして六寸、ほぼゼロ距離。只、男が無抵抗に刃渡り五センチのナイフを右肩に受けたかというと─────
────否である。
狭い路地の壁面を使い滑空する。突発的な急動に怯む男の手の甲に蹴りを入れる。堪らずナイフ握る手を緩めた。瞬間、一切の間髪入れずに空でナイフを拾い曲芸師の如く男の首の脈を断つ。
膝から崩れ落ちる男を傍目で見た肉ダルマはその刹那に起きた出来事を呑み込めずにいた……いや、呑み込むことが出来なかった。
血を垂れ流しピクリとも動かない同胞、壁面に飛び散った血汚れ、それらを目視した後ゆっくりと先程まで弱者だった者へと目を向けた。
放ったナイフのキンという鋭いノイズを最後に男が一瞬にして殺された事を悟る。
「う、う、うわぁ゛ぁぁあ!!」
腰を抜かし忽ち失禁をした。後退りする手が震えで思うように動かない。
「やるなら、そのナイフを拾え、ソレを使っていいのは死ぬ覚悟がある奴だけだ、お前はまだ、それを取っていない」。
首を大きく横に振った。例え自分がソレを取ったとして抵抗虚しく殺されるのが目に見えていたからだ。
大柄な男は尻尾を巻いて逃げて行く。結局の所、皆自分が可愛いのだ。
復讐とか敵討ちとか、そんな一時の感情や気の迷いで人生を棒に振るなど無駄遣いにも程がある。死んだのが同胞であろうと家族であろうと、自分の人生を天秤に掛けたらどう考えたって自分の人生を取る。だから『殺し屋』なんて仕事があるのだ。
どちらも欲しい『我儘』な奴らは文字通りどちらも取る。自分の復讐、敵という怨むべき相手の生殺与奪を赤の他人に放棄する。他人の手を介したソレは復讐なんていう大義じみたもの等では無い。
それは只の──
───殺人だ。
────クソッタレ
壁を拳で叩いた。
さてと、干渉に浸っている場合では無いか。
ここは何処だ?そして──彼等は誰だ?
こちらを見下す二人の男。
背が高いな、いや……俺が腰をついているだけか。
眼前に突き付けられたナイフ、逃げ場の無い路地道、下卑た顔、品格の『ひ』の字もないような容姿───あぁ、なるほど。
───ホモセクシュアルか。
「違ぇわ!!ぶっ殺すぞ!!」
一人は高身長で筋肉質、頭にバンダナを巻いた褐色の男、一見して野蛮そうだ。もう一人は低身長、猫背、後顔色が悪い、こっちが権威的には上か。
「ふむ、ホモセクシュアルでないのならば、押し倒されている意味が分からないな、まさか、カツアゲなんていう低俗な事をする人間だとは思わないし…」。
男のナイフを握る拳が力む。
「さっさと、金目の物を出せや、殺すぞ」。
流石に筋肉ダルマとは違って考える知能はあるか、コイツは人を刺せる目をしている、これは何人か殺しているな。
「おっと、待ってくれ、見ての通り金目の物どころか一銭すらも持っていない、只、そこで提案がある───」。
「?何だ、言ってみろ」。
「────君等が持っている銭を全て置いて行け、そうしたらソレを向けた事を許してやる」。
冷笑的な笑みを浮かべ、彼奴等に嘲笑を向けた。その行いは反面教師であり、因果応報、当然のごとく男の右肩に刺し出されたナイフ。距離にして六寸、ほぼゼロ距離。只、男が無抵抗に刃渡り五センチのナイフを右肩に受けたかというと─────
────否である。
狭い路地の壁面を使い滑空する。突発的な急動に怯む男の手の甲に蹴りを入れる。堪らずナイフ握る手を緩めた。瞬間、一切の間髪入れずに空でナイフを拾い曲芸師の如く男の首の脈を断つ。
膝から崩れ落ちる男を傍目で見た肉ダルマはその刹那に起きた出来事を呑み込めずにいた……いや、呑み込むことが出来なかった。
血を垂れ流しピクリとも動かない同胞、壁面に飛び散った血汚れ、それらを目視した後ゆっくりと先程まで弱者だった者へと目を向けた。
放ったナイフのキンという鋭いノイズを最後に男が一瞬にして殺された事を悟る。
「う、う、うわぁ゛ぁぁあ!!」
腰を抜かし忽ち失禁をした。後退りする手が震えで思うように動かない。
「やるなら、そのナイフを拾え、ソレを使っていいのは死ぬ覚悟がある奴だけだ、お前はまだ、それを取っていない」。
首を大きく横に振った。例え自分がソレを取ったとして抵抗虚しく殺されるのが目に見えていたからだ。
大柄な男は尻尾を巻いて逃げて行く。結局の所、皆自分が可愛いのだ。
復讐とか敵討ちとか、そんな一時の感情や気の迷いで人生を棒に振るなど無駄遣いにも程がある。死んだのが同胞であろうと家族であろうと、自分の人生を天秤に掛けたらどう考えたって自分の人生を取る。だから『殺し屋』なんて仕事があるのだ。
どちらも欲しい『我儘』な奴らは文字通りどちらも取る。自分の復讐、敵という怨むべき相手の生殺与奪を赤の他人に放棄する。他人の手を介したソレは復讐なんていう大義じみたもの等では無い。
それは只の──
───殺人だ。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります
真理亜
ファンタジー
有栖佑樹はアラフォーの会社員、結城亜理須は女子高生、ある日豪雨に見舞われた二人は偶然にも大きな木の下で雨宿りする。
その木に落雷があり、ショックで気を失う。気がついた時、二人は見知らぬ山の中にいた。ここはどこだろう?
と考えていたら、突如猪が襲ってきた。危ない! 咄嗟に亜理須を庇う佑樹。だがいつまで待っても衝撃は襲ってこない。
なんと猪は佑樹達の手前で壁に当たったように気絶していた。実は佑樹の絶対防御が発動していたのだ。
そんな事とは気付かず、当て所もなく山の中を歩く二人は、やがて空腹で動けなくなる。そんな時、亜理須がバイトしていたマッグのハンバーガーを食べたいとイメージする。
すると、なんと亜理須のイメージしたものが現れた。これは亜理須のイメージ転送が発動したのだ。それに気付いた佑樹は、亜理須の住んでいた家をイメージしてもらい、まずは衣食住の確保に成功する。
ホッとしたのもつかの間、今度は佑樹の体に変化が起きて...
異世界に飛ばされたオッサンと女子高生のお話。
☆誤って消してしまった作品を再掲しています。ブックマークをして下さっていた皆さん、大変申し訳ございません。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる