15 / 16
15
しおりを挟む
──本当のことを言えば許したいと思った。上辺の中に、確かに罪悪感があったから。
だけど、地界の皆から赦すなと言われていた。
曰く、本来なら天界で勉強できたことを、地界で勉強した。曰く、家族の中で生まれる知識や道徳を、ルーラを代表とする死神皆から学んだ。何より……彼等は一生、知ることがないものを私は負ったから、たとえ私が許しても、赦せないそうだ。
死ぬまで治ることのない、傷跡を背負ってしまったから。
それは痣だったり、火傷だったり、武器の痕だったり、様々ではあるけど。女ということを除いても酷いものだそう。
治療をしなかった故に、全て残ってしまった。
だから、決して当時の天使を赦すなと言われた。正直彼等のことは許すも許さないもないとは思ってるのが本音。そこまで考えたことがないというのもそうだが、理解したからもうどうでもいい存在だと思ってる。向こうがきちんと反省しているのなら許す、これはどんな事柄に通じること。
私にとっての天使とは、その程度の存在。例外は、ザレブさんとアーオンさん……部下となった二人くらいか。
アーオンさんは当時一般天使、私の幼少時代を知らない。つまり元から対象外。ザレブさんは助けようとしてくれた。だから多分、ルーラ達の説得も大丈夫だろう。
……というか、部下の選別でさえ何か関わりがあるようで怖い。溺愛とはまた違うが、可愛がってもらっている自覚はある。そして死神の仕事上、天使と提携することもあるから……つまりはそういうことである。
そんな、ある意味濃い初日を終えて着替える。天使の服装は苦手。ゆったりとしてるし、白いから髪と合わないし。
体にフィットした黒い私服に落ち着いて吐息を吐くと扉を叩く音がして、返事をすれば音を立てて開いた。
「ルネ、地界に帰るなら急いだ方がいいよ? 閉門時間が……」
部屋に入ってきたザレブさんが固まる。着替えは済ませているから変なものはないはずだけど……。
「……どうかなさいましたか?」
「あ、いや……。気を悪くしたらごめんね? それ、似合ってるなって思って」
言われて自分の服装を見る。別段いつもと変わらない、体に合う服。見慣れていないだけなのかもしれない。でも、ザレブさんは長い間上位天使だから地界とかにも行ったことありそうだからそんなことはない、と思う。
「……別に、悪い気はしませんが」
「そう? 天使だから、やっぱりそういうこと言われるのは嫌なのかなって思って」
「……好きで着ていますから」
容姿は確かに気にしてる。でももう、変えられるわけじゃない。ならそれに見合う服装をすればいいと思ったから着てる。
天使だから地界の服なんてって、古株の地界住民には結構言われてはいる。でもそれが天界に戻った時への配慮と知ったときの気持ちを思い出して、思わず口元が緩んだ。
二人に別れの挨拶を交わし扉を潜り抜けた途端閉まり始める。大きな音を立てて閉じたのを確認して、帰り道を歩こうとして足を止めた。
ずっと避けていたアキが目の前にいた。
だけど、地界の皆から赦すなと言われていた。
曰く、本来なら天界で勉強できたことを、地界で勉強した。曰く、家族の中で生まれる知識や道徳を、ルーラを代表とする死神皆から学んだ。何より……彼等は一生、知ることがないものを私は負ったから、たとえ私が許しても、赦せないそうだ。
死ぬまで治ることのない、傷跡を背負ってしまったから。
それは痣だったり、火傷だったり、武器の痕だったり、様々ではあるけど。女ということを除いても酷いものだそう。
治療をしなかった故に、全て残ってしまった。
だから、決して当時の天使を赦すなと言われた。正直彼等のことは許すも許さないもないとは思ってるのが本音。そこまで考えたことがないというのもそうだが、理解したからもうどうでもいい存在だと思ってる。向こうがきちんと反省しているのなら許す、これはどんな事柄に通じること。
私にとっての天使とは、その程度の存在。例外は、ザレブさんとアーオンさん……部下となった二人くらいか。
アーオンさんは当時一般天使、私の幼少時代を知らない。つまり元から対象外。ザレブさんは助けようとしてくれた。だから多分、ルーラ達の説得も大丈夫だろう。
……というか、部下の選別でさえ何か関わりがあるようで怖い。溺愛とはまた違うが、可愛がってもらっている自覚はある。そして死神の仕事上、天使と提携することもあるから……つまりはそういうことである。
そんな、ある意味濃い初日を終えて着替える。天使の服装は苦手。ゆったりとしてるし、白いから髪と合わないし。
体にフィットした黒い私服に落ち着いて吐息を吐くと扉を叩く音がして、返事をすれば音を立てて開いた。
「ルネ、地界に帰るなら急いだ方がいいよ? 閉門時間が……」
部屋に入ってきたザレブさんが固まる。着替えは済ませているから変なものはないはずだけど……。
「……どうかなさいましたか?」
「あ、いや……。気を悪くしたらごめんね? それ、似合ってるなって思って」
言われて自分の服装を見る。別段いつもと変わらない、体に合う服。見慣れていないだけなのかもしれない。でも、ザレブさんは長い間上位天使だから地界とかにも行ったことありそうだからそんなことはない、と思う。
「……別に、悪い気はしませんが」
「そう? 天使だから、やっぱりそういうこと言われるのは嫌なのかなって思って」
「……好きで着ていますから」
容姿は確かに気にしてる。でももう、変えられるわけじゃない。ならそれに見合う服装をすればいいと思ったから着てる。
天使だから地界の服なんてって、古株の地界住民には結構言われてはいる。でもそれが天界に戻った時への配慮と知ったときの気持ちを思い出して、思わず口元が緩んだ。
二人に別れの挨拶を交わし扉を潜り抜けた途端閉まり始める。大きな音を立てて閉じたのを確認して、帰り道を歩こうとして足を止めた。
ずっと避けていたアキが目の前にいた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる